体操界悲願の団体金メダル獲得
日本体操界の悲願ともいえるのが団体総合での金メダル獲得です。
富田洋之、米田功、塚原直也らを擁したアテネオリンピックの金メダルは今でも語り草となるほどに感動的でした。
そしてアテネ以来12年ぶりとなるオリンピックの舞台での金メダル獲得にはもうすでに手がかかっている状態と言ってもいいでしょう。
北京、ロンドンで中国の壁に屈した日本代表ですが、昨年の世界選手権ではその中国を破って団体優勝を果たしました。
リオオリンピックでは、前回ロンドンオリンピックでの銀メダルメンバーでもある内村航平、加藤凌平、田中佑典、山室光史の4人が再び代表に選ばれ、そこに天才と呼ばれるゆかの世界王者・19歳の白井健三が加わりました。
経験豊富な円熟味と安定感、そして若さ溢れる爆発力も秘めた魅力的なチームに仕上がっています。メンバー的に見ても間違いなく金メダル最有力といって間違いないでしょう。
最大のライバル中国。続くはアメリカ、イギリス、ロシア、ブラジルか?
日本の最大のライバルとなりそうなのは、やはり長年にわたって日本のライバルであり、オリンピックでも立ちはだかってきた中国でしょう。
しかし、北京、ロンドンの頃ほどの爆発力や安定感は無いのが正直なところです。スペシャリストの育成に長けている中国ですが、かつてのような脅威ではなくなりつつあります。
逆に日本は若手・ベテランのバランスがとれており、オールラウンダーとスペシャリストの組み合わさった理想のメンバーを組むことが出来ました。内村航平が言うように、最強の団体メンバーがそろっているのです。
中国以外のライバルは、イギリス、アメリカ、ブラジル、ロシア辺りでしょうか。しかしやはり一番怖いのは中国でしょう。ミスが許されない緊迫の展開となるのは間違いないと思います。
体操男子団体総合の展望、見どころ
ゆかから演技する正ローテーションを獲得するためにも予選で2位以内になる事が重要
予選2位以内に入れば、「正ローテーション」と呼ばれる順番で演技を行う事が出来ます。
恐らく力的に言っても日本が予選で2位以内に入る事は難しくないでしょう。正ローテーションで行けるはずです。いや、正ローテーションで行かなければなりません。
正ローテーションというのは、ゆかから演技が始まるローテーションの事を言います。
正ローテーションだと演技順はこうなります。
ゆか→あん馬→つり輪→跳馬→平行棒→鉄棒
実はこのローテーションこそが日本の強さを最大限に発揮できるローテなのです。
ゆかからスタートするローテーションが日本に有利な理由とは?
なぜ正ローテーションだと日本に有利になるのか?
それは、最初に演技するゆかが日本の得意種目であり、最大の得点源の一つだからです。
言うまでもなく、ゆかにはスペシャリストである世界王者・白井健三がいます。白井の出す得点は他を寄せ付けない圧倒的なものなのです。
そして白井以外にも内村航平、加藤凌平も世界のトップクラスの実力者です。このゆかでロケットスタートを切るのが日本の必勝パターンと言えます。
理想としては、最大のライバルである中国に2~3点という得点差をつけて出鼻を挫くという、まさに必殺ローテーションなのです。
そして高得点を見込めるゆかの後に控える演技が、日本が最も苦手としているといわれる「あん馬」です。
あん馬は我慢の演技となるでしょう。ここで中国に差を詰められるのは想定内です。一番のポイントは、最初の演技であるゆかで貯金できるというところが大きいのです。この順番が逆であれば、日本にかかるプレッシャーは半端ないでしょう。勢いをつけ、ライバルにプレッシャーをかけながら苦手演技に臨めるのが強みですね。
ラスト6種目目に日本のお家芸・鉄棒。歓喜の瞬間を見逃すな!
そして続くつり輪も中国お得意の種目。ここも日本には我慢の展開が予想されます。しかし日本にはつり輪のスペシャリストである山室光史がいるのが大きいです。そして他には内村、加藤、田中の中から二人が出場する事が予想されます。
4種目目は跳馬。ここにもゆかとともにこの種目を得意とするスペシャリスト・白井健三が控えています。他二人は恐らく山室と内村でしょう。跳馬に関しては各国とも力が伯仲しており、そう大きな差はつかないと思われます。
5種目目は平行棒。ここから日本のターンに入ります。予想出場選手は、内村、加藤、田中の日本が誇るオールラウンダートリオ。平行棒は中国も強いですが、総合力では日本の方が若干上とみます。とにかくここは、個人種目別でもメダル候補となるであろう、田中佑典の奮起に期待です。
そしていよいよラストの鉄棒。ここもオールラウンダートリオの内村、加藤、田中で決まりでしょう。種目別でも金メダル候補とされているエース・内村はもちろんの事、加藤と田中もメダルを狙えるほどの実力者です。最後の最後に日本のお家芸の種目が待ち構えているのです。歓喜の瞬間に最もふさわしい種目じゃありませんか。
団体戦の方式「5-4-3」「5-3-3」とは?そして4年後の東京五輪は変更が・・
団体戦の方式は、まず参加国すべてで予選を行います。予選は「5-4-3」という方式で行われます。これは、団体戦全選手5人の中から4人が演技し、得点の良かった上位3人の選手の得点が加算されるというものです。
つまり、一人はミスしても大丈夫であるという仕様です。
予選の結果によって団体決勝が行われます。決勝は「5-3-3」と呼ばれている方式に代わります。団体戦全選手5人の中から3人が演技し、3人の選手全ての得点が加算されるというものです。
つまり、予選とはうって変わって、決勝ではミスが許されない状況となります。技術力とともに精神力も大きな要因となるのは間違いありません。だからこそロンドンを経験している4人が選ばれている日本は強いのだとわたしは思います。
ちなみに、2020年の東京オリンピックでは、団体戦の選手枠が4人へと変更されるのが決定しています。「4-3-3」方式となるのです。これまで以上に各選手へのオールラウンダー化が必要とされるのは間違いありません。これはオールラウンダーの育成に定評のある日本にとって大いに有利になる変更ですね。
体操男子団体予選・決勝の日程・テレビ放送予定
競技日程
8月6日 男子団体予選
8月8日 男子団体決勝
テレビ放送
男子団体予選
【生放送】NHK総合 8月6日22:20~25:00
【録 画】NHKBS-1 8月7日6:20~7:45
男子団体決勝
【生放送】NHK総合 8月 9日4:00~7:00
【録 画】NHKBS-1 8月 9日19:00~21:00
NHKBS-1 8月11日3:03~3:55
放送日程や放送内容は変更の可能性があります。詳細はテレビ欄などにてご確認ください。
オールラウンダーに拘った日本体操界の歴史の正統性を証明するための戦い
男子団体総合は、一人の選手の一人のミスがチームの勝敗を左右するという非常に過酷な競技です。自分の成績だけでなく、チームメイトにも大きく影響を及ぼしてしまうというとてつもないプレッシャーがのしかかる競技なのです。
しかしだからこそ、この団体金メダルには大きな価値があるのです。
ロンドンで悔しさを味わった内村、加藤、田中、山室。恐らく年齢的には加藤以外の三選手は最後のオリンピックとなるのかもしれません。だからこそ何とか金メダルを獲って欲しいのです。このメンバーで金メダルを掴んでほしいのです。
日本体操界がこだわってきたオールラウンダー育成の系譜。スペシャリスト育成に力を注いできた中国とは真逆の考え方です。
その育成や考え方が間違っていなかったという事を、是非この5人には証明してほしいのです。
確かに合理的に考えれば、スペシャリストを育成した方が国としては金メダルは沢山取れるのかもしれません。種目別では6つの金メダルがあるのですから。団体は5人でたった一つの金メダルです。
しかし5人が力を合わせた団体の金メダルというのは、1つの金メダルという以上の価値があるのではないでしょうか。だからこそ内村航平は団体金に拘っているのだと思います。
日本が拘り、培ってきたオールラウンダー育成の歴史。リオ団体メンバーの5人はその歴史が正しかったことを証明するための戦士ともいえるのかもしれませんね。
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