卓球界で一大勢力を築いてタイトルを独占する絶対王者・中国勢。
そんな中国にまた新たに生まれた世界王者、東京オリンピックでは間違いなく日本人選手の高い壁となって立ちはだかるであろう女王・朱雨玲についてここではご紹介したいと思います。
女子世界ランキング2位・朱雨玲(しゅうれい/ジュユリン) 右シェークハンドドライブ型
生年月日 :1995年1月10日生まれの23歳
出 身 地 :中華人民共和国四川省綿陽市
効 き 腕 :右
グリップ :シェークハンド
ラケット :カーボネード45
フォアラバー:キョウヒョウNEO3
バックラバー:ロゼナ
タ イ プ :ドライブ攻撃型
世界ランク :2位(2018年6月時点)
2017年になって、ようやく世界ランキング1位の座へと上り詰めた中国の朱雨玲選手。
ロンドン五輪女子シングルス金メダリストの李暁霞(りぎょうか/リシャオシャ)が2016年のリオ五輪で引退し、李と同世代の丁寧(ていねい/ディンニン)がリオ五輪女子シングルス金メダル獲得で絶対女王の座に上り詰めたと思われましたが、リオ五輪メンバー落選のうっ憤を晴らすかの如く、リオオリンピック後に旧世代女王たちを蹴落として世界ランク1位の座へと昇りつめました。
日本での中国女子選手の人気というとやはり、リオ金メダリストの丁寧と元世界ランキング1位の劉詩ブン(りゅうしぶん/リュウシウェン)が高い人気を誇っており、この朱雨玲は世界ランキング1位といえどもまだまだ日本での一般的な知名度は前者2名に比べると低いといわざるを得ないのが現状ですね。
これからビッグタイトルを次々と獲得し、日本人選手との大舞台での対戦も増えるでしょうから日本でも大きく注目される存在となっていくのは間違いないでしょう。
張怡寧、李暁霞、丁寧、劉詩ブンから続く中国女子の新世代世界王者
1970年代から現在に至るまで続く卓球界における中国一強体制ですが、そんな世界卓球界の中心にある中国女子卓球界における新女王であることはその世界ランキングからも明らかでしょう。
中国女子といえば、史上最年長期間世界ランク1位の記録を持つ絶対女王だった張怡寧(ジャンイーニン)が引退し、同時期にトップ選手だった郭炎や郭躍らも後述する3選手にその座を追われて世界大会から姿を消し、いずれも過去の世界ランク1位選手であるリオ五輪中国女子団体メンバーである李暁霞、丁寧、劉詩ブンの3選手が中国国内及び世界の各種大会でトップを争うという図式が長く続いていました。
リオ五輪前には世界ランキング2位にまで上り詰めた朱雨玲でしたが、リオオリンピック中国女子卓球代表に選ばれたのは李暁霞、丁寧、劉詩ブンの三人で、朱雨玲は国際大会での実績などといった部分から代表落選という悔しさを味わいました。そしてこの三人で編成された中国チームは他を寄せ付けない圧倒的強さでリオ五輪女子卓球の団体・個人ともに金メダルを獲得したのです。
この中国女子三強の図式はリオ五輪を最後に李暁霞が引退する事で崩れました。
五輪後に丁寧、劉詩文の二人がケガや休養などで国際大会を離れた間、ランキング1位の座に就いたのがこの朱雨玲であるというわけです。しかしこのまま丁寧と劉詩ブンが引き下がるわけはありませんし、同世代やさらに下の世代の中国選手からの突き上げも激しく、ますます中国選手内の女王争いは激しさを増す事でしょう。
しかしその中でもこの朱雨玲が圧倒的な次期女王候補であることは間違いありません。
小柄ながらスピードと技術・守備力に鉄のメンタルを備えたプレースタイル(動画有)
朱雨玲は大型化の目立つ中国女子選手の中では小柄な部類に入ります。中国国内から選抜されたフィジカルエリートの中では目立たない存在と言えるでしょう。身長172cmの丁寧などと並ぶとその小ささは際立ちます。
しかしその運動能力は抜群で、特に前陣に張り付いての反応は凄まじく、相手エース級のスマッシュやドライブをカウンターで仕留めるのは大きな得点源の一つです。
この動画は、朱雨玲の三大大会(オリンピック・世界卓球選手権・ワールドカップ)初優勝となった、2017年の卓球ワールドカップ女子シングルス決勝における劉詩ブンとの決勝戦のダイジェストです。ショートカットで黒のユニフォームが朱雨玲選手です。現役中国女子の中でも最高のスピードスターといえる劉詩ブン相手に前陣でのスピード勝負でも全くひけをとっていません。今や前陣速攻の代名詞は劉詩ブンからこの朱雨玲に代わったといってもいいかもしれません。
サーブはフォアサーブメインで3球目攻撃も強烈。ブロックやカウンターなどの守備力も高く、レシーブはストップ、チキータを中心とした台上技術もミスの無い高いテクニックを誇り、全くと言っていいほど隙が無い選手です。特に前陣における速い展開のラリーには圧倒的強さを見せます。
大舞台においての柔軟な試合への対応力も大きな武器です。相手選手の戦術変更への試合中の対応力にも優れ、相手の戦術変更に合わせて自身の戦術を試合中に適切に変更していくクレバーさも持ち合わせています。
弱点らしい弱点は無いのですが、敢えていうのであれば小柄な分、パワー勝負になると少し分が悪いというくらいでしょうか。以前はパワー不足からあまりカット打ちが安定していませんでしたが、現在ではその弱点も克服しつつあります。メンタルは強いのですが、大舞台で取りこぼしがあるのも中国首脳陣の評価の低さにつながっているとの指摘もありますが、王国ならではの実に贅沢な要求とも個人的には思えますね(苦笑)。
スピード・技術・精神力の3つを恐るべき高さのレベルで備えるこの朱雨玲、大きなケガやアクシデントさえなければ、間違いなく東京オリンピックの代表に選ばれる事でしょう。日本女子選手悲願の東京オリンピックでの金メダルは、この朱雨玲を倒さずしてありません。しかしその壁は強大で高く聳え立っています。
五輪・世界卓球・W杯全制覇の大満貫に最も近い女子卓球選手
前述したように、リオ五輪時には世界ランキング2位というポジションにいながら、3人の中国代表メンバーから漏れた悔しさを味わった朱雨玲。その現実はまさに卓球王国・中国の恐るべき層の厚さを示すエピソードでもあるのですが、その悔しさは2020年の東京五輪で晴らすべく、朱雨玲は着々と女王への足固めを始めています。
まずは2017卓球ワールドカップにおいて、悲願の3大大会シングルス初制覇を成し遂げました。現在の中国女子卓球界では大満貫(五輪・世界選手権・W杯全てのシングルス優勝を成し遂げる事)に最も近い存在であることは間違いないでしょう。もちろん、圧倒的な選手層を誇る中国で台頭している下の世代、王曼昱(おうばんいく)や孫穎莎(そんえいさ)も要注意の存在ですが、同世代の次期女王候補と目される陳夢(ちんむ/チェンムン)とともに世界の卓球界の中心となっていくこの超大物をアジア卓球選手権の準決勝でストレートで破った日本の平野美宇選手は改めて凄いなあと感じますね。しかしその後の対戦できっちりリベンジを果たしている朱雨玲選手もまあ流石なのですが(苦笑)
ともかく、平野美宇、伊藤美誠、早田ひなの同級生トリオをはじめとした日本の若手とこの朱雨玲との名勝負はこれから数限りなく見る事が出来るでしょう。本当に楽しみですね。
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