日本勢が38年ぶりの優勝を目指す世界卓球選手権2017ドイツ・デュッセルドルフ大会。個人戦で行われる2017ドイツ大会ですが、ここでは女子シングルスのドロー(組み合わせ)をご紹介しながら、日本選手が対戦可能性のある中国選手ら海外の強豪選手たちを見ていきたいと思います。(記事中の世界ランキングは2017年5月現在のものです)
世界ランキング6位 石川佳純(いしかわかすみ)
世界ランキング6位と、日本女子選手の中では世界ランキングの最上位に位置する日本のエース、石川佳純選手。この世界ランク6位というのは、中国人選手を除いたランキングでは4位のシンガポール・馮天薇(フォン・ティエンウェイ)に続くランキングの高さとなります。
日本のエースとして挑んだ前回の2015蘇州での世界卓球選手権では、吉村真晴と組んだ混合ダブルスで見事に準優勝を果たしましたが、念願だったシングルスの初メダルはまたもお預けという形になってしまいました。今大会での最大目標は、1969年ミュンヘン大会での小和田敏子さんの金メダルと濱田美穂さんの銅メダル以来、48年ぶりとなる日本女子の世界卓球選手権シングルスでのメダル獲得でしょう。
そんな日本のエースの最初の難関となりそうなのが、4回戦(ベスト16)での日本人対決、佐藤瞳選手なのではないでしょうか。現在の日本でナンバーワンのカットマンである佐藤瞳選手と日本のエースである石川佳純選手とのここでの対戦の可能性はかなり高いと見ます。と同時に、もったいない・・というのが率直な印象です。とはいえ、ここでどちらかが確実に脱落してしまうのですから致し方ありません。石川選手は以前はカットマンを苦手とする傾向が強かったのですが、ここ数年で劇的にカット打ちが上手くなりましたね。凡ミスが減りましたし、なんといってもカットに対するドライブの威力が大きく増しました。リオのシングルスでは初戦でキム・ソンイに敗れましたが、あれは相手が悪かったとしか言いようがありません。元々の強さ的に石川選手があんなところで当たる相手ではないですし。とにかく石川選手の対カットマンは確実に上達しており、日本では有数のカット打ちの盟主といってもいいと思います。いい試合にはなるでしょうが、やや石川選手有利とみます。
ここを突破したらいよいよベスト8。ここに待ち受けるのが現世界王者の丁寧。これまでの石川と丁寧の対戦成績は石川の7戦全敗。石川にとっては天敵といってもいい存在との対戦となります。悲願のオリンピックのシングルスを制して「大満貫(五輪、世界卓球、W杯の三冠の事)」を制した丁寧は今選手としてまさにピークを迎えているといってもいいほど充実しています。しかしだからこそここで超えてほしいですね。平野美宇も伊藤美誠もこの丁寧を国際大会で破っています。石川佳純選手も日本のエースとしてこの大舞台で堂々とこの絶対女王を倒してメダルを確定させてほしいですね。
世界ランキング8位 平野美宇(ひらのみう)
昨年2016年の卓球ワールドカップ女子シングルスでは、中国選手以外で初めてワールドカップ優勝に輝くという快挙を達成、今年のアジア選手権では丁寧、朱雨玲、陳夢を次々に倒してアジア選手権も制覇、さらに平成28年度の日本選手権では石川佳純を撃破して最年少での日本王者に輝くなど、その存在は今や王国中国が最も恐れるといわれている平野美宇選手。アジア選手権での衝撃の中国3選手撃破以来、中国はこの平野美宇選手を徹底的に解剖・研究し、多くの平野美宇選手に似たタイプの選手を練習で仮装平野に見立てて世界卓球に備えたといわれています。そんな平野美宇選手の注目のドローですが、ベスト4までは中国選手との対戦がないブロックに組み込まれました。
最初の大きな関門となりそうなのが、ベスト16(4回戦)での対戦が濃厚な世界ランキング13位の香港・杜凱栞(とがいきん/ドゥホイカン)選手です。まだ20歳の新鋭ですが、将来性抜群で中国打倒の一番手となるという期待も大きい選手です。YGサーブやチキータなどを駆使する新世代のシェークハンド攻撃型選手ですね。ただ一度の対戦は4年前のクウェートオープン。この時は平野選手が4-3のフルゲームを制しています。あれから4年経って、平野選手は当時より何段階も進化しています。ここは簡単な試合ではないですが、突破してくれると思いますね。
続くベスト8(準々決勝)には、世界ランキング4位のシンガポール・馮天薇(フォン・ティエンウェイ)が待ち受けます。
数多くの日本人選手の前に立ちはだかってきたこの選手は既に日本のファンにもお馴染みの選手ですね。通算の対戦成績は平野美宇選手の2勝1敗。直近の2試合はいずれも平野選手が勝利しています。日本人キラーともいわれた馮天薇ですが、新世代の女王候補・平野美宇選手には全く苦手意識はないはずです。格上の選手ですが、ここはむしろ平野選手有利と見ます。
そして続いての準決勝はいよいよ中国選手との対戦の可能性が出ます。丁寧選手や石川佳純選手、佐藤瞳選手らが揃ったブロックの勝者との対決となります。石川選手や佐藤選手との日本人対決を望みたいところですが、丁寧選手は強く、丁寧選手との対戦となる可能性が最も高いと思われます。直近のアジア選手権では3-2で丁寧選手を倒した平野選手ですが、それまでの対戦は5戦全敗。しかもすべて0-4負けという、1ゲームも奪えない完敗といえるものでした。アジア選手権で敗れた丁寧はこれでもかという程平野対策を積んで大会に臨むはず。ここでの対決こそ真価を問われるというべきでしょうか。実現すれば非常に楽しみな試合になりますね。
世界ランキング10位 伊藤美誠(いとうみま)
昨年のリオオリンピックでは史上最年少で卓球女子団体のメダリストとなった伊藤美誠選手。みうみまコンビと呼ばれたのは過去の話となり、今や平野選手と同様に「伊藤美誠」として世界を相手に戦っている日本女子のエース格です。
オリンピック代表にはなったものの、その後のワールドカップ制覇やアジア選手権制覇、日本選手権優勝などという平野美宇の活躍には若干遅れを取っている感もある伊藤美誠選手ですが、この世界卓球での飛躍に期待したいところです。
そんな伊藤選手の最初で最大の難関が4回戦。ベスト8入りをかけた戦いで対戦濃厚なのが、世界ランキング3位の中国の新女王候補筆頭、朱雨玲選手です。
シングルスでのこの二人の対戦は2015年のアジア選手権準々決勝での1度だけ。その時は朱雨玲選手が4-2で勝利しています。
もちろんその試合から1年半以上の時が経ち迎える世界選手権。二人とも当時とは見違えるほどに経験を積んで選手として充実してきています。二人ともスピーディーな卓球を身上とする前陣攻撃スタイルですので、片時も目が離せないスリリングな戦いになる事必至でしょう。何とか伊藤選手にはこの壁を乗り越えてほしいですね。
朱雨玲の壁を越えたとしても、その次の準々決勝でもまた中国の強豪と対戦する可能性が高いですね。恐らく相手は世界ランキング5位の陳夢選手です。この選手も朱雨玲と同じく、丁寧や劉詩雯の後の中国女子の中心となる選手という位置づけで育成されてきたエリート中のエリートです。伊藤選手との対戦は2015年のグランドファイナルでの対戦1度のみ。結果は陳夢選手が4-1で勝利しています。ここも非常に厳しい戦いとなる事が予想されますが、平野選手はこの陳夢選手をアジア選手権で3-0のストレートで降しているというのは、伊藤選手にとっては大きな追い風となるのではないでしょうか。臆することなく向かっていければ勝機は開けるはずです。
続く準決勝は恐らく劉詩雯辺りか・・
というように、伊藤選手は中国選手がひしめく厳しいブロックに入りました。しかし大舞台でこそその強さを発揮する伊藤選手。その底力に期待したいですね。
世界ランキング10位 佐藤瞳(さとうひとみ)
日本最強のカットマン、伊藤美誠選手と並んで世界ランキング10位につける佐藤瞳選手ですが、運命のいたずらともいうべきか、4回戦では日本でも屈指のカット打ちの名手・石川佳純選手と対戦するというドローとなりました。
石川佳純選手との対戦は、どれだけ佐藤瞳選手が粘れるかという事につきそうな試合になるでしょう。いつもよりも攻撃を増やしていかなければならないかもしれませんね。いずれにせよ、日本でも屈指のカットの安定感と守備範囲の広さを誇る佐藤選手、石川選手が相手でもそう簡単に打ち抜かれる心配はないと思います。ポイントはやはり、攻撃と守備のバランスという事になって来そうです。非常に楽しみな試合ですね。長くなるでしょうから視聴する際にはお気を付けください(苦笑)。
石川選手との対戦が予想される4回戦ですが、その前の難敵といえば3回戦で対戦可能性のあるルーマニアのサマラ選手でしょう。ヨーロッパのドライブ攻撃選手の中では安定感のあるタイプで、カット打ちもそれ程苦にはしません。この選手はやや守備に難があるので、やはり攻撃を多めに増やして精度を上げる必要があるかもしれません。それでも普通に戦えば今の佐藤選手であれば負けないでしょう。
やはり一番の難関は4回戦の石川佳純選手との大一番。そこを突破することが出来れば世界王者の丁寧選手への挑戦権を得ることが出来るでしょう。
世界ランキング32位 加藤美優(かとうみゆ)
世界卓球選手権出場を賭けた選考会で優勝して見事にシングルス出場権を手にした加藤美優選手。まだ高校三年生の若手のホープです。
彼女が最初に対戦する難敵となりそうなのが3回戦。世界ランキング24位の韓国・梁夏銀(ヤン・ハウン)選手か77位の北朝鮮のリ・ミギョン選手のどちらかが出てくるでしょう。梁夏銀選手はランキング的にも格上といえる強豪選手。唯一の対戦である2年前のチェコオープンではフルゲームの末、3-4で敗れている難敵です。北朝鮮のリ・ミギョン選手は謎に包まれている不気味な選手です。国際試合に出てくる機会の少ない北朝鮮選手の世界ランキングは全くといっていいほどあてにはならず、77位という世界ランク以上の未知なる強豪であることは間違いないでしょう。どちらが出てきても苦戦は必至となりそうです。
続く4回戦(ベスト16)で待ち受けていそうなのが、台湾の世界ランク7位・鄭怡静(ていいせい/チェン・イーチン)選手。高い打点からのフォアハンドドライブを武器とするタイプですが、フットワークに優れて守備も固く、これといった弱点のないタイプです。ここは3回戦以上に厳しい戦いとなりそうですが、1度だけ対戦して敗れた昨年のクウェートオープンは1-4の結果以上に内容的には接戦の試合でした。力を出し切れば五分の試合ができると思いますね。
準々決勝では前世界ランキング1位の劉詩雯が待ち受けているはずです。ここまで来れば悔いの残らないよう力いっぱいぶつかってジャイアントキリングを狙ってほしいですね。シングルスでは初対戦となるこの対決、嫌なのは間違いなく失うものの大きい劉詩雯の方でしょう。こういったメンタル的な上下関係というのは卓球の試合ではすごく大きな力となります。そこを利用できれば勝てないしあいではなくなるでしょう。頑張って歴史を作ってほしいですね。
男子シングルス及び男女・混合ダブルスについてはこちらの記事をどうぞ。
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