長らく世界卓球界の頂点に君臨する卓球界の絶対的王国・中国。日本をはじめとする世界各国は日々この王国を打倒するために鍛錬しているといっても過言ではなく、それでもなお選手の質量どちらも男女ともに中国が圧倒的なのが現状です。
そんな中国女子ナショナルチームの中で早くも近い将来の世界女王間違いなしといわれる逸材がいます。それが王曼昱(おうばんいく/ワンマンユ)選手なのです。ここではその王選手についてご紹介していきましょう。
女子世界ランキング4位・王曼昱(おうばんいく/ワンマンユ) 右シェークハンドドライブ型
生年月日 :1999年(平成11年)2月9日生まれの20歳
出 身 地:中華人民共和国黒竜江省チチハル市
効 き 腕:右
グリップ :シェークハンド
ラ バ ー:両面裏ソフト
身 長:176cm
タ イ プ:ドライブ攻撃型
世界ランク:4位(2019年4月時点)
リオ五輪金メダリスト世代の丁寧、劉詩ブン(1990~91年生まれ)、そしてその下の朱雨玲や陳夢らの世代(1994~95年生まれ)のさらに下の世代となる1999年生まれのこの王曼昱(おうばんいく/ワンマンユ)や孫穎沙選手(そんえいさ/スンインシャ)たちの世代。東京オリンピックどころか、その次やさらにその先でも活躍が期待できる若手選手です。
国技といわれる程に卓球が盛んな中国。膨大な競技人口の中から選りすぐられた中国中のエリート選手は、小さい頃から英才教育を施され、その過酷な競争を生き残った選手が栄光の代表選手に選ばれる事となります。そんな中国代表選手の大きな特徴がフィジカルの素晴らしさです。
体格的にも恵まれた選手が多く、女子選手でも170cm以上の長身選手は珍しくありません。そんなフィジカルエリートの中国女子の中でもこの王曼昱選手の176cmという高身長は際立っているといっていいでしょう。この恵まれた体格を生かした守備範囲の広さやパワードライブで日本人選手を含めた世界の超一流の脅威となっているのがこの王曼昱という選手なのです。
丁寧世代、朱雨玲世代をごぼう抜きして東京五輪中国代表入りも
前述したように、中国卓球界というのは恐るべき選手層の厚さを誇っており、本来であれば世界ランクトップ10に入れる程の実力者であっても、世界ランキングのポイントを獲得するための大会に出場できずに世界ランキング外となっている選手などザラにいるというのが実情です。
本来ならば次世代や次々世代を担う若手を積極的に世界の舞台に送り出したいところですが、選手層が厚過ぎてなかなかそういう機会を設けれないというのも王国ならではの葛藤といえるかもしれません。
ただし、だからこそこの19歳という若さで中国国内の出場権争いを制して世界のシニア大会に出場し、世界ランキング3位にいるというこの王曼昱選手の凄さは特筆ものといえます。同じ中国国内における同世代ライバルである陳幸同や陳可、孫穎莎らの中でも頭一つ二つ抜け出た感がありますね。
実際、2018年に開催された世界卓球団体戦スウェーデン大会にも見事に代表入りして中国女子の団体戦金メダル獲得に大きく貢献しました。前述した実績十分の丁寧、劉詩ブン、年齢的に全盛期を迎える朱雨玲、陳夢辺りが最有力と見られている東京オリンピックの卓球中国女子代表争いですが、これらの世代を一気にまくって王曼昱が代表入りというのはかなり可能性が高いとみますね。そうなれば当然悲願の金メダルを狙う日本女子にとっても大きく高い壁となる事は間違いありません。
男子選手も顔負けのフィジカルを生かしたダイナミックなプレースタイル(動画有)
プロフィールでもご紹介したように、176cmという長身を誇るこの王曼昱(おうばんいく/ワンマンユ)選手ですが、そのプレースタイル的にはやはりその恵まれたフィジカルを生かしたスケールの大きな卓球というのが一番の特徴でしょう。
この動画は2018年5月に行われたITTFワールドツアー香港オープンの女子シングルス決勝戦です。王曼昱と陳幸同という中国期待の若手選手同士の対戦となりました。このレベルの選手達が現時点で東京五輪のメンバーに入れるか入れないかの当落線上にいるというだけで中国の恐ろしさは十分に伝わると思いますね。
陳幸同は日本人選手とほぼ同じ体格という事で、どれだけ王曼昱が長身かという事もお分かりいただけると思います。
プレースタイル的にこの王曼昱選手の最大の長所は、強烈なバックハンドでしょう。バックハンドドライブに関して言えば、既に世界一といってもいいと思います。長身から放たれる威力はもちろんですが、ピッチの速いドライブを重ねて打つ技術力にも長けており、コースに打ち分ける正確さもこの年齢で既に備えています。台から下がった中陣からでも打ち合えるのも強みですね。
さらに、176cmのリーチを生かした守備範囲の広さも大きな武器です。普通の選手ならば打ち抜ける厳しいフォア或いはバックのコースであってもそのリーチの長さゆえに届いてカウンターを返されるという場面も多々あります。そんなヨーロッパの選手を彷彿とさせるフィジカル面でのアドヴァンテージに加えて中国選手特有の技術力の高さを誇るのですから、それはまあ当然ながら強いわけです(苦笑)
そして、もう一つ特筆すべき武器はサーブの強さでしょう。
フォアからの下回転や横回転のサーブの回転量の凄さも中国選手特有のものですが、特にこの王選手のサーブの回転量は女子選手の域を超えています。この強力なサーブからの3球目攻撃でのポイントによって終始安定した戦いを繰り広げる事が出来るのです。この強烈なサーブを長短分けて繰り出すのですからたまったものではありません。
19歳にしてこれだけのプレーをするのですから、まさに「末恐ろしい」限りなのです。
みうみまひなの2歳年上の王、弱点はミドル攻めとメンタル面?
とにかく全てにおいてスケールの大きさを誇る王曼昱(おうばんいく/ワンマンユ)。個人的には丁寧や李暁霞といった大満貫達成(オリンピック・ワールドカップ・世界選手権のシングルス三冠)のレジェンド選手が台頭してきたばかりの若手時代を思い出します。近い将来必ずやビッグタイトルを手にする事となるでしょう。大満貫達成も有望です。
ただし、弱点もあります。
2018年のITTFワールドツアープラチナジャパンオープンの決勝戦で伊藤美誠選手が勝利した時のように、ミドルを執拗に攻められた上にフォアとバックに散らされた時には若干の脆さを見せる事があります。長身選手最大の弱点といわれるミドル対策には今後克服すべき課題があるといえます。後、メンタル面や試合内での戦術変更などといった臨機応変さも他の選手に比べれば若干不安視される部分もあります。
が、あくまで現時点でという話であり、彼女の才能を考えればいずれ克服してくることでしょう。そうなったら日本にとってはまさに完全体の難敵となるでしょう。
日本のゴールデンエイジ(黄金世代)と呼ばれる同級生トリオ、平野美宇、伊藤美誠、早田ひなのみうみまひなは2000年生まれであり、この王曼昱は学年で彼女たちの2つ上という年齢差となります。まさに向こう10年は日本立ちはだかってくる存在となる事は間違いありません。
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