2016年のリオデジャネイロオリンピックでは男子が銀メダル、女子が銅メダルを獲得した卓球競技の団体種目。
東京オリンピックでもメダル獲得が有望視される卓球男子団体と女子団体ですが、ここではその団体戦メンバーの選考基準や代表決定システムなどをわかりやすく解説していきたいと思います。
日本卓球協会による東京五輪日本代表選考基準
まずは、日本卓球協会が明示している2020東京オリンピックの卓球日本代表の選考基準をご紹介しておきます。
1.シングルス代表候補選手2 名
2020 年1 月発表の世界ランキング日本人上位2 名をJOC に推薦する。
※上位1 位の世界ランキングポイントが3 名以上、若しくは2 位の選手が2 名以上
重複した場合は、以下の順序で上位を決定する。
(1)ワールドツアー等の優勝回数を評価(〇内の数字は優先順位)
※2019 年1 月1 日~12 月31 日までの期間を評価
※①世界選手権 ②ワールドカップ ③ワールドツアーグランドファイナル
④ワールドツアープラチナ6 大会
(2)世界ランキング30 位以内(日本人選手、同一選手含む)に勝利した回数
(3)該当する選手間で最終決定戦を行う。(詳細は後日決定)
2.団体戦代表候補選手1 名
上記1.の代表候補選手とダブルスが組め、団体戦でシングルス及びダブルスにて活躍が期待できる選手1 名を、強化本部が決定し理事会に報告及びJOC に推薦する。
3.混合ダブルス代表候補選手男女各1 名
上記1.2.代表候補男女各 3 名の選手の中で、最高のペアリングと思われる混合ダブルスペア1 組を、強化本部が決定し理事会に報告及びJOC に推薦する。
なお、日本は開催地枠として全種目のエントリーが保障されており、予選で出場資格を獲得する必要がない。従って、混合ダブルスベスト 4 に代表資格が発生する予定である
2019 年12 月ITTF ワールドツアーグランドファイナルについては、混合ダブルスの代表
候補選手選出の対象大会としない。
※ベスト4 に入ったペアは、所属NF ならびに所属NOC が承認するまで代表ではなく、
所属NF と所属NOC に最終的な決定権があることはITTF と確認済みである。
4.リザーブ候補選手1 名
日本がメダルを獲得するために必要なダブルス及びシングルスでの国際競争力を持ち
合わせている者1 名を、強化本部が決定し理事会に報告及びJOC に推薦する。
リザーブ選手の発表時期はJOC へのエントリー期限直前とする。
5.補足基準
代表候補選手及びリザーブ候補選手が故障等で大会参加が不能となった場合、その代替
候補選手は、強化本部が決定し理事会に報告及びJOC に推薦する。公益財団法人 日本卓球協会HPより引用
以上、日本卓球協会の正式な選考基準です。赤太字の部分が団体戦メンバーの選考基準となっています。
シングルスと違って世界ランキング上位選手が自動的に選出されない団体戦メンバー決定プロセス
東京オリンピックにおける団体戦メンバーは男女各3名づつ。うち2人はシングルス出場選手2名が自動的に団体戦代表にも選出されるという規定となっています。つまり、団体戦のみのメンバーは1名だけと言う事となります。シングルス出場選手の選出については以下の記事をご覧ください。
シングルス出場選手2名は自動的に団体戦出場選手に決定、残り一人の団体戦のみの出場選手を決めるというわけですが、その決定プロセスはシングルス選考とは大きく異なります。
シングルス出場選手が無条件に世界ランキングの日本人上位選手2名で決定されるのに対し、団体戦出場選手は「上記1.の代表候補選手(シングルス出場選手2名の事)とダブルスが組め、団体戦でシングルス及びダブルスにて活躍が期待できる選手1 名」という記述となっています。つまり、単純に世界ランキングで日本人3番目の選手とはなっていないわけです。
その理由として、五輪卓球競技の団体戦種目における独特のシステムが挙げられるのです。
4シングルス・1ダブルスで戦うオリンピック卓球ABCXYZ方式故の団体代表選手選考基準
オリンピックにおける卓球の団体戦のシステムはABCXYZ方式という独特の方法が採用されています。
東京オリンピックで採用される卓球団体戦のABCXYZ方式とは?
東京五輪卓球の団体戦で採用されるABCXYZ方式は、双方のチームの選手3人づつが5試合を行って勝敗を決します。つまり、団体戦日本代表選手3名は必ず試合に出場しなければならず、補欠選手はいないという事であり、原則3人が全試合にレギュラーとして出場しなければならないというわけです。
3人のうち1選手は2シングルス戦を戦い、残り2選手は各自1ダブルス・1シングルス戦を行うというわけです。選考基準の中に「団体戦でシングルス及びダブルスにて活躍が期待できる選手」とあるのはこのためです。
つまり、シングルスと兼任する選手とのダブルス面での相性も考えたうえで選出しなければならないという事なのです。いくら実力があっても、ダブルスが苦手だったり2選手とダブルスを組む際の相性が悪い選手というのは敬遠されることとなるでしょう。一人も補欠選手を入れられない、総力戦で全試合を戦わねばならないオリンピックでは致し方ない選考方法であるといえますね。
ダブルスのスペシャリストが有利?左利きか右利きかの利き腕も重要な判断要素に?
シングルス2戦を戦う選手というのは俗にいうにエースと呼ばれている選手で、シングルスで2勝を見込める、その国で最も実力を持った選手が選ばれるのが一般的で日本でもそれは例外ではありません。つまり、シングルスにも出場する世界ランキング上位2選手のどちらかがシングルス2試合を任される可能性が高いといえます。端的に言うと、必然的に団体戦のみに選ばれる選手はダブルス戦に起用される可能性が高いというわけです。
なので、団体戦枠に選ばれるのはダブルスで実績を残している選手が有利になると思われます。男子ではグランドツアーファイナルで2度の優勝を飾っている大島祐哉選手や森園政崇選手、女子では伊藤美誠選手とのダブルスで世界卓球銅メダルの早田ひな選手辺りが、もしシングルスから漏れたとしても団体戦の有力候補として浮上するかもしれません。
さらに、卓球のダブルスというのは利き手の組み合わせも重要となります。一般的には左利きと右利きの組み合わせが卓球ダブルスでは有利とされており、右&右や左&左の組み合わせは動きの無駄が多くなる分左&右コンビよりは不利といわれています。
というわけで、シングルス出場2選手のうち団体戦ダブルスに出場する選手が左利きなのか右利きなのかというのも重要な要素になるはずです。ダブルスに出場するのが左利きの選手ならば右利きの選手が選ばれる可能性が高くなりますし、逆ならば左利きの選手という事となるのではないでしょうか。そのあたりは、日本の監督が誰をエースとしてシングルス2戦に起用するのかというチーム戦略も大きく絡んでくるでしょう。
このように色々と複雑な要素が絡んでくる団体戦出場選手の決定プロセス。選考する日本卓球協会はギリギリまで悩ましい事でしょうね(苦笑)
混合ダブルス出場選出プロセスについてはこちらをご覧ください。
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