卓球のイメージというと、皆さんの間でどうですか?
これは、もう世代間で全然違うのではないでしょうか。
若い人たちの世代では、女子日本代表を引っ張るエースの福原愛選手や石川佳純選手、さらにはミウミマコンビこと、中学生の平野美宇、伊藤美誠の両選手など期待の若手の台頭もあって、かなりポジティブなイメージなのではないでしょうか。
60代以上の人たち、高齢者の人たちにとっては、日本のお家芸というイメージを持つ方が多いかもしれません。若い人たちにはあまり知られていませんが、1950年代から70年代くらいまでは、日本の卓球界は黄金期であり、世界選手権では中国が台頭してくる1950年代はまさに日本の独壇場であり、中国が台頭した60年代は世界のトップをかけてしのぎを削り、70年代には中国に押し込まれながらも、世界選手権で優勝者を出すなど、踏ん張り続けていました。
そういったポジティブなイメージを持つ人が高齢者になればなるほど多いと思われます。
では、その中間層、40代から50代くらいはどうでしょう。
卓球暗黒時代だった80年代
わたしは40代で、小中学校は卓球部所属でした(小学校はサッカー・ブラスバンドと掛け持ち)。
わたしの中学時代の卓球のイメージは卓球界の歴史上最悪の時期だったと言ってもいいものかもしれません。とにかく暗い。全てが(笑)。
ユニフォームはダサいし(いやホントにw)、卓球台も深緑で映えないし、世間一般で認知されるほどのスター選手はいないし、マイナースポーツである卓球がテレビなどで話題になることもありませんでした。
やってみればこれほど面白いスポーツはないのに、人気は絶望的なほどありませんでした。これは、わたしだけでなく、卓球部の人間全員が思っていた認識です(多分に被害妄想も入っている可能性あり笑)。
しかも、うちの卓球部は結構強かったのに学校内では、バスケ部やサッカー部、野球部などの大して強くもない花形スポーツ部に比べてあまりにも地味(涙)。
結局、そこそこ実力者揃いだったにも関わらず、卓球部の人間のほとんどは、高校に入って違う部活に入ってしまいました(もちろんわたしもw)。
つくづく、今の時代の卓球部だったらなあと思う今日この頃です。
いいともでのタモリの発言、全てはそこから始まった・・
「卓球は暗い」
わたしが卓球を辞めるか辞めないかの80年代後半になって、恐らく多くの卓球をやっていた若者が持っていたであろうこの「暗黙の了解」をついに公言してしまう人物が現れます。
その人こそ、お笑いビッグ3の一人、タモリこと森田一義その人なのであります。
当時人気絶頂だったお昼の人気番組、「笑っていいとも!」のテレフォンショッキングのコーナー。ゲストはミュージシャンの織田哲郎。
学生時代に卓球部であったという織田のエピソードを聞いたタモリは一言、
「卓球って根暗だよねぇ」
ああ、言ってもうた・・誰もが思っていながら口に出さなかった禁断の一言を・・。
これで卓球のイメージは決定されました。
「卓球は根暗なスポーツである」と。
タモリ発言で動いた協会、そしてあの天才少女の出現
しかし、「人間万事塞翁が馬(にんげんばんじさいおうがうま)」。
人生どんな不幸が一転、幸せに転じるか分かったものではありません。
このタモリの誰もが思っていたが、誰も口には出さなかった一言を発した事によって、卓球は大きく変わる事となります。
このタモリの発言の反響は大きく、この発言の翌年には学校の卓球部への入部者が大きく減る事となったそうです。
そこで、卓球協会はこのマイナスイメージの払しょくのために動き出します。
まず、それまで卓球の代名詞であった地味な深緑の卓球台の色を鮮やかな青色へと変更し、それを国内に普及させるのです。これだけでイメージは大きく変わりました。日本発のこの青色の卓球台は、世界的にも普及し、1992年のバルセロナオリンピックでは、五輪の公式卓球台として採用され、世界的に認知される事となります。
そしてその翌年、卓球のイメージを変える一人の天才少女がテレビに登場する事となるのです。
「天才卓球少女」として話題となった「愛ちゃん」こと福原愛選手です。
当時まだ4歳だった愛ちゃんは、その卓越した卓球技術と、負けたら泣きながら試合をするその負けん気と愛らしさで一気に人気者になり、「泣き虫愛ちゃん」として国民的人気を得る事となります。人気だけでなく、実力もともなっており、数多くの日本卓球界の史上最年少記録を塗り替えていくこととなります。
卓球協会もこの愛ちゃん人気を最大限に利用し、卓球のイメージアップや競技普及につなげる事に成功。ここに、現在の卓球のイメージの原型が出来上がる事となったのです。
タモリの発言は、まさに卓球のイメージを良い方に変えるきっかけともなるターニングポイントとなったと言ってもいいほどのものだったのです。
史上最強軍団、中国を倒して世界一になる日が来るかも
以降は皆さんもご存知の通りかと思います。
福原愛選手は順調に成長を遂げ、ロンドンオリンピックでは団体銀メダル獲得の立役者となりました。その後は石川佳純という新エースが登場し、ミウミマという新世代のスター候補生も現れました。
男子でも水谷準が不動のエースとして日本を引っ張り、松平健太というイケメンスター選手も現れ、男子も女子に負けない程の実力と人気を誇っています。
今では、毎年行われる卓球世界選手権をテレビ東京系が放送するなど、わたしが中学生だった30年前とは比べ物にならないくらい卓球を取り巻く環境は変わりました。
今では、「卓球は根暗なスポーツ」と呼ばれていた時代をギャグ交じりに話せるようになりました。若い人たちの意外なリアクションを見るのが楽しみであるのと同時に、時代はこうも変わったんだなぁという隔世の感さえあります。
卓球経験者として、これからも卓球が今以上に日本で人気になるのが楽しみで仕方がないですね。競技人口がどんどん増えていって、日本の卓球界のレベルが今以上に上がっていくことによって、世界最強の中国を打ち負かす日が再び訪れる事を期待しています。
コメント
私は中学、高校と卓球部でした。ちょうど80年代ですね。
“卓球部=根暗”については、今言われているようにタモリさんの発言の影響力はあったと思いますが、りぞっとさんのおっしゃる通り既に”暗黙の了解”がありましたよね〜。
例えば「部活何なってる(やってたの)?」の問いに、すっと返答出来ませんでしたね。
タモリさんは責任を感じられてか、卓球協会に高額寄付をされたとも聞いておりますが…そういう土壌があったからこその”きっかけ”だったので当時は「タモリさんのせいだ」みたいな恨み節は卓球関係者には全くなかったように思いますが、いかがでしょうか?
いずれにせよ、息子はそういったコンプレックス無しに部活を楽しんでいるようで、本当に隔世の感があり羨ましく思います。
そう言えば来年の五輪で卓球の準々決勝が当たったんですよ、楽しみです。ってことも80年代では他人に言えなかったでしょうね。
全く関係ありませんが…『人間万事塞翁が馬』は私の座右の銘です。
タモリさんの「いいとも」での発言以前から卓球の根暗イメージは確かに暗黙の了解としてありましたよね。タモさんは皆が感じていながら口に出さなかったことを敢えて言ったに過ぎないと思います。まさにリキ太さんのおっしゃる「きっかけ」であり、ある意味タモさんの発言が今の卓球界の隆盛につながっているんだと思います。
実際、あの発言で「卓球=地味・根暗」がネタ的なものになったことで、自分も堂々と「いやあ、実は中学時代は卓球少年でさぁ…」と自虐ネタに使えるようになりましたし(笑)
東京五輪卓球準々決勝当選おめでとうございます。メチャクチャ羨ましいです(笑)ぜひ、わたしの分も楽しんできてくださいね。
なんだか申し訳ない気持ちもありつつも…有難うございます。
りぞっとさんにも現地ならではの何か面白そうなご報告が出来ればと思います。
転勤族なので4月に異動があるかも知れませんが⁈その時は有給休暇を取ってでも観戦するつもりです。笑
福原愛さん(我々にとっては”ちゃん”のほうがしっくりきますね。)には本当に頭が下がります。
物心ついた頃からいわゆるアイドル扱いで性格的にも決して頼もしい後輩達と違って⁈”勝負師タイプ”ではなかったように思いますが、よくぞあの地位にまで上り詰めたなあと感心しております。
きっと卓球が好きという以上に「日本中から期待されている」事への責任感を持って努力を続けてこられたんだろうなあと、優等生的な数々のコメント等からも勝手に想像しております。
もちろん後輩達も皆さん凄く努力されているのは間違いないと思いますが、福原愛さんには日本卓球女子のトップクラスというその立場に似つかわしくない”優しい性格”が垣間見える(気がしている)ので、きっと第一人者として無理をしている部分も大きいなと勝手に親戚のおじさんのような目線でみておりました。苦笑
ホント、全ては愛ちゃんからですよね。
確かにその後の石川選手やみうみま選手たちは愛ちゃんより実力は上だと思いますし、だからこそ今でも卓球は本当に面白い状況なのですが…今までに無かった道を切り拓いた愛ちゃんにはそれとは別の敬意を抱かずにはおれません。
そうなんですよね、幼い頃から注目されて卓球の伝道師的存在として活躍を続けた彼女の存在こそが今日の日本卓球界の隆盛を築いたことは間違いないと思います。世界的にみれば大きなタイトルも獲ってないですし、世界ランキングや国際大会での実績でも石川やみうみまらには適いませんが、愛ちゃんこそが正真正銘の日本卓球界のレジェンドであることは疑いようがありません。
だからこそ東京オリンピックには出場させてあげたかった…というのが個人的意見なのですが、石川佳純や平野美宇、伊藤美誠といった打倒中国を成し遂げられる可能性を持つ頼もしい後輩たちにバトンを渡して家庭に入ったというのも愛ちゃんらしいとも思えますね。