リオデジャネイロオリンピックの卓球競技・男子団体では日本代表が準決勝でドイツチームを3-1で下し、日本男子卓球史上初の団体戦メダル獲得を確定させました。
決勝で金メダルをかけて待ち受けるのは卓球界の絶対王者・中国。
日本チームには日本国内はもちろん、卓球界のためにも中国を倒さなければならない使命があるとわたしは考えます。
金メダル獲得数に見るあまりにも圧倒的なオリンピック卓球での中国選手の強さ
「卓球界のために中国を倒す」といえば、非常に大袈裟な印象を持たれる方も多いかと思いますが、決してオーバーではないと思っています。
その理由は、卓球競技がオリンピックから除外されるのではという危機感です。
実際に前回のロンドン五輪の時にも少なからずそういった話題はメディアで上っていました。
理由はあまりにも突出した中国の強さです。
2000年のシドニーオリンピック以降の中国の卓球金メダル数は、15個。それ以外の国ではわずかに韓国が1つ獲得したのみ。実に中国の金メダル確率は15/16という事なのです。
ダブルス(2004年アテネまで)やシングルスなどの個人戦においては、金銀を中国が独占という事も当たり前となっています。実際に今回のリオオリンピックのシングルスも男女ともに中国選手で金銀を独占しています。
このようにあまりにも偏った勢力図ゆえにIOC(国際オリンピック委員会)からは目をつけられていると言われているのです。
活躍の場を失った元中国選手と手っ取り早い強化を求める諸外国との利害一致
もう一つの原因は、中国からの帰化選手の多さです。
これは卓球競技を見ていれば少なからず皆さんが感じられている事だと思います。特に女子は帰化選手だらけです。
日本女子チームがリオで対戦したチームでも初戦のポーランド戦で1人、準々決勝のオーストリア戦で2人、準決勝のドイツ戦で2人、3位決定戦のシンガポールにも世界ランク4位のフォン・ティエンウェイという元中国の絶対的エースがいます。
リオオリンピックの卓球競技女子の出場選手80人中、何と34人が中国系の選手たちなのです。
確かに中国の選手層は非常に分厚いです。各国のエースクラスでも恐らく中国代表にはなれません。実際に国の出場人数枠を制限せずに卓球のシングルスのトーナメントをすれば、ベスト8は全て中国人で埋まるだろうとまで言われています。
そんな卓球王国中国のエリートコースから漏れてしまった選手は、国際大会での活躍の場を求めて海外に活路を求めるのです。
リオオリンピック団体戦のメンバーは各国3人づつ。2人の強豪中国選手を帰化させれば、それだけで銀メダル、銅メダルを狙えるチームが作れてしまうという事ですね。つまり、卓球弱小国にとっては長い期間とお金を掛けて選手を育てて強化するよりもよっぽど手っ取り早く結果を出せる手段だという事なのです。
帰化して活躍の場を求めている選手と、オリンピックなどで結果を残したい各国の思惑。両者の利害がガッチリ噛み合うからこその現在の歪な卓球界の中国独占状態なのです。
ジャイアントキリングでオリンピックでの卓球競技の安定的存続を!
このような状態が続くようであれば、本格的に卓球がオリンピック種目から除外される危険を招くことになるでしょう。それもかなり近い将来の話だと思います。
それを打ち破るにはどうすればいいのか?
そうです、王国中国に勝って金メダルを獲得する事です。特に中国系の選手を含まずにチーム編成された日本が中国を破る事は最も効果があるでしょう。
IOCに卓球の勢力図が変わりつつある事、そして日本や男子の強豪、ドイツやポルトガルのように中国系の選手無しでも十分に世界で戦えることを証明するのです。
もちろん水谷準、丹羽孝希、吉村真晴の日本代表にプレッシャーをかけるわけではありませんが、今回のリオ男子卓球決勝の日本対中国戦は卓球が今後もオリンピック競技として存続できるかどうかの分水嶺ともいえるほど重要な試合なのかもしれません。
中国の強さは別格であり、日本が勝つというのは非常に難しいミッションです。しかしそれを乗り越えてジャイアントキリングを果たしてこそ、卓球界の未来は明るくなるとも言えるでしょう。
世界ランキング1位・中国との決勝戦展望
中国選手と日本選手との通算対戦成績 成績ほどの絶望的な差は無い!
それでは具体的に決勝の対中国のお話に移りましょう。
まずは日本選手と中国選手の個々の対戦成績からご紹介します。
水谷 準(6位)
対馬 龍(1位) 0勝13敗
対張継科(4位) 0勝 6敗
対許 昕(3位) 0勝12敗
吉村真晴(21位)
対馬 龍(1位) 0勝 2敗
対張継科(4位) 0勝 1敗
対許 昕(3位) 0勝 4敗
丹羽孝希(22位)
対馬 龍(1位) 1勝 6敗
対張継科(4位) 0勝 3敗
対許 昕(3位) 1勝 2敗
水谷選手、吉村選手は今回の中国の団体メンバーに一度も勝ったことがありません。圧倒的なまでの差ですね。
しかしこの戦績ほどに両者の実力差は無いとわたしは思っています。
実際にリオ五輪男子シングルス準決勝で世界王者の馬龍(まりゅう/マロン)と対戦した水谷準選手は2セットを奪って馬龍を慌てさせました。エンジンがかかるのがもう少し早ければもしかして・・と思わせる試合でしたね。
さらに同じくシングルスに出場し、準々決勝で張継科(ちょうけいか/ジャンジイカ)と対戦した丹羽孝希選手は第1ゲームを先取し、可能性を感じさせてくれました。この成績ほどに圧倒的な差は無いとわたしは思っています。
ダブルス張継科・許昕組よりも吉村真晴・丹羽孝希組の方が有利!
中国のオーダーは、世界王者で今回のリオ男子シングルス金メダリスト・馬龍がシングルス2点起用で来るでしょう。これは間違いありません。張継科と許昕(きょきん/シュシン)がダブルスを組み、シングルスとダブルス1試合づつというオーダーです。
日本はシングルス銅メダリストのエース・水谷準をシングルス2試合に起用。吉村真晴と丹羽孝希がダブルス、シングルス1試合づつというオーダーです。これも間違いないでしょう。
最大のポイントは第3試合のダブルス、吉村真晴・丹羽孝希ペア対張継科・許昕ペアの試合です。
実は吉村丹羽コンビは今年3月の国際大会で馬龍・許昕コンビに勝っています。ハッキリ言って馬龍・許昕ペアの方が張継科・許昕ペアより断然手ごわいです。馬龍と許昕のフォアハンドは世界のナンバーワンとナンバーツーです。この二人が交互に繰り出す強烈なフォアハンドを封じて勝った吉村・丹羽からしてみれば張と許のコンビに怖さは感じないでしょう。
実際にここまでの張・許組は団体戦で圧倒的な強さを誇っているとは言えません。ゲームも落としています。ここは日本ペアの方が有利と見ています。
力の衰えたロンドン金メダリスト・張継科からシングルスで1勝を!
ダブルスに続いて日本にとってねらい目なのが、張継科のシングルス戦です。
張継科は強烈なバックハンドドライブとチキータやフリックなどの台上技術で世界を制した名選手です。ロンドン金メダリストであり、世界選手権王者、ワールドカップ王者でもあり、この主要国際大会3つ全てを制する、いわゆる「大満貫(だいまんがん)」を達成した卓球界のレジェンドでもあります。
しかし近年は確実に力が衰えてきています。ワールドツアーでは中国以外の選手に負ける事も目立ってきており、今回のリオのシングルスでも決勝の馬龍には手も足も出ずにストレート負け。準決勝のサムソノフ戦でも4-1で勝ったものの、どのゲームも僅差のクロスゲームであり、一つ間違えば負けていても全く不思議ではありませんでした。団体準決勝の韓国戦での鄭栄植(チョン・ユンシク)にも逆転勝ちを収めたものの、あわやストレート負けかというような大苦戦でした。
この張継科と誰が対戦するのかが非常に重要となってくるかもしれません。
個人的にはエースの水谷準と対戦してほしいと思っています。ここまでの対戦成績は水谷の0勝6敗ですが、この対戦成績は度外視してもいいでしょう。それほどまでに今大会の水谷準は絶好調であり、しかも超攻撃的スキルと鉄壁の守備力を持った無敵のオールラウンダーへとモデルチェンジを果たしています。実際にここまで対戦成績1勝15敗と歯が立たなかったドイツのティモ・ボルを準決勝では3-0のストレートで寄せ付けませんでした。完全に別人へと覚醒したと言ってもいいでしょう。
全盛期の力の無い張継科であれば、互角の勝負となるのは間違いありません。倉嶋監督のオーダーで水谷対張継科を引き当てられるかどうか?この対戦が実現すればジャイアントキリングに大きく近づくことが出来るでしょう。
中国キラー丹羽孝希のシングルス対戦相手は誰か?馬龍との打撃戦が見たい!
そして仕上げは日本の誇るスピードスター、中国キラーの丹羽孝希の登場です。
馬龍、許昕からそれぞれ勝ちを挙げている丹羽孝希は世界でも有数の中国人キラーです。中国人選手が中国以外の選手に負ける事は年間を通しても殆どありません。それほど中国選手は強いのです。そんな中国選手、しかも現在全盛期を迎えている世界1位の馬龍と世界3位の許昕から金星を挙げている丹羽孝希は世界でも極めて珍しい存在なのです。
この丹羽孝希がシングルスで一体誰と当たるのか?馬龍か?許昕か?それともシングルス準々決勝の再現で張継科なのか?ベストは馬龍でしょう。
馬龍は精神的プレッシャーに弱いと言われており、特に国の威信がかかったこの団体戦では重圧から崩れる事も珍しくありません。丹羽のスピードで攪乱すれば、必ず馬龍はミスをし始めるはずです。そのためには第1ゲームが非常に重要です。序盤からフルスロットルで仕掛けていき、第1ゲームに全てをかけるくらいの勢いで行ってほしいですね。
敢えて馬龍が絶対的自身を持つフォアを攻めるという捨て身の作戦も有りだと思います。丹羽選手のスピードであれば、馬龍のフォアハンドをカウンターではじき返す事も可能です。最も得意な武器を潰す事で馬龍のプレッシャーはMAXに達するでしょう。
勝ち負けに関わらず、とにかくいち卓球ファンとして是非とも見てみたい対戦でもあります。なんとか実現してほしいですね。
日本史上最強チームで歴史に残るジャイアントキリングを!
これらの見どころの他にも、中国が最も警戒していると言われている世界でも最も威力があると言われている、吉村真晴のアップダウンサーブを中国がどう攻略するのか?など見どころは山ほどあります。
水谷準と馬龍のあのシングルス準決勝のしびれるような打撃戦をもう一度見たいというファンも多いでしょう。
とにかくこの決勝戦は日本男子卓球界にとっては歴史的な一戦となるはずです。
余りにも高くて分厚い中国の壁ですが、エース水谷準が覚醒し、未完の大器吉村真晴と天才・丹羽孝希が加わった史上最強の日本男子チームであれば、中国に一泡吹かせられる可能性は十分にあると思います。
日本が卓球界の歴史を塗り替える事となるジャイアントキリングを成し遂げる事が出来るのか?卓球ファンならずとも目が離せない戦いとなるのは間違いありません。
リオ卓球決勝戦・日本対中国戦の試合日程とテレビ放送予定
卓球男子団体決勝戦 日本対中国
8月18日(木) 07:30~
テレビ放送予定
8月18日(木) 07:15~ NHKEテレ
なお、放送予定は予告なく変更になる場合がありますので、番組表などでご確認ください。
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