今年2月から3月にかけて行われた卓球世界選手権で男女ともに銀メダルを獲得した日本卓球界。
リオオリンピック卓球日本代表も順当に決まり、リオに向けてのカウントダウンが始まっています。
そんな中、6月15日に開幕した卓球のワールドツアーの一つ、ラオックス卓球ジャパンオープン荻村杯(おぎむらはい)。実はこの大会はリオ五輪に向けた非常に重要な戦いであると位置づけられている大会です。その理由などを説明していきたいと思います。
卓球ジャパンオープン荻村杯とは?ITTFワールドツアーとは?
卓球ジャパンオープン荻村杯を説明する前に、ITTFワールドツアーについてご説明しましょう。
ITTFとは世界卓球連盟の略称です。そして世界卓球連盟主催の国際公式大会がITTFワールドツアーです。
ITTFワールドツアーとは、世界各地で開催される国際オープン大会の事で、1年間で約20の大会が開催されます。ワールドツアーの成績によって選手にはポイントが付与され、そのポイントによって世界ランキングが決定されます。開催試合数の多さから、このワールドツアーが世界ランクを決めるうえで最も大きな影響を及ぼしています。
さらにこのワールドツアーの中でも、特にポイントの高い大会、「スーパーシリーズ」が6つあります。その中の一つがこのジャパンオープン荻村杯なのです。ワールドツアーの中でも最高峰に位置する大会のうちの一つと言えます。
獲得ポイント数が大きいという事は、世界ランキングに大きく影響する大会であるという事です。ポイント付与が大きいという事で、世界中のトップレベルの選手が集まる大会でもあります。
リオ五輪前に有力選手がほぼ出揃う大会という意味で、五輪前哨戦の意味合いも込めて非常に重要な大会と位置付けられているのはそれらの理由からなのです。
中国選手との対戦を準決勝まで回避できる五輪シングルス第4シード入りの重要さ
リオオリンピック前の貴重な前哨戦、調整、シミュレーションという意味合いの他にもう一つこの大会が重要な理由が、このラオックス卓球ジャパンオープン荻村杯が大事な理由が、この大会によって世界ランキングが変動する可能性が大きいからです。
世界ランキングで上位に入るという事はもちろん大切な事ですが、オリンピックイヤーである年のこの時期のワールドツアー、特に加算ポイントの大きなスーパーシリーズというのは特に大きな意味を持つこととなります。
それは、ランキングによってオリンピックでのシード権が決まるからです。
ご存知のように、卓球では中国勢が他の国を寄せ付けない別次元の強さを誇っています。恐らく男女シングルスの第1~第2シードは中国勢が独占すると見られています(中国の卓球シングルス出場枠は2)。となると、第4シードまでの残り2つの枠を確保する事が非常に大事になってきます。
何故かというと、第4シードまでに入れば、同じく第4シードまでの選手とは少なくとも準決勝まで対戦する事がないからです。各国の選手ともこの恩恵の大きさを知っているからこそ、五輪までに何とかランクを上げて第4シード以内に入りたいと強く思っているのです。
特に日本男子のエース・水谷準と女子の福原愛、石川佳純は第4シードまでに入る可能性があるだけに、大量のポイント獲得が期待できるこのジャパンオープンでの好成績を狙っているという訳ですね。
この大会の大きな見どころは、熾烈なシングルスの上位シード権争いなのです。
リオオリンピック卓球日本代表選手たち
既に卓球のオリンピック日本代表メンバーは全て決定しています。
男子シングルス 水谷 準(世界ランク6位)
丹羽孝希(世界ランク18位)
女子シングルス 福原 愛(世界ランク7位)
石川佳純(世界ランク4位)
男 子 団 体 水谷 準
丹羽孝希
吉村真晴(世界ランク19位)
女 子 団 体 福原 愛
石川佳純
伊藤美誠(世界ランク10位)
このようになっています。男女ともに三名づつ、吉村真晴と伊藤美誠は団体戦のみの出場となります。
各選手のプロフィールなどはこちらの記事をご参照ください。
【世界卓球2016】全日本男子チームの見どころ・日程・放送予定・選手紹介
【世界卓球2016】全日本女子チームの見どころ・日程・放送予定・選手紹介
実際のリオ出場選手のシード権を賭けたオリンピックランキング
ちなみに、上記のそれぞれの世界ランキングですが、実際には上位にはリオ五輪のシングルスには出場しない中国選手が何人かいるため、実際に五輪のシード争いではどの選手ももう少しランキングが高くなります。五輪出場しない中国選手を除いたランキングがこちらです(実質上の五輪シード争いランキングという事です)。
男子シングルス 水谷 準(五輪シード入りランク4位)
丹羽孝希(五輪シード入りランク14位)
女子シングルス 福原 愛(五輪シード入りランク5位)
石川佳純(五輪シード入りランク3位)
水谷選手と石川選手は現在のシードを守れば、オリンピックでの第4シード以内入りを果たす事が出来ますし、福原選手はあと一人、中国以外の選手をランキングで上回れば第4シード入りを果たす事となります。残念ながら、丹羽選手の第4シード入りは非常に厳しいと言わざるを得ません。
日本人選手でシングルスに出場する男女4選手のうち、3選手はベスト4まで中国選手との対戦を避ける事が出来るランキング上位に付けているのです。これはメダルを争ううえで非常に大きな意味合いを持ちます。それほどまでに、卓球界で中国選手の実力は突出しているとも言えます。何せ、女子卓球世界ランキング1位の女王・劉詩雯(りゅうしぶん)がシングルスに出場できないのです。何と贅沢な選手選考でしょうか(苦笑)。
ジャパンオープンでの日本人有力選手の組み合わせ、見どころなど
リオオリンピックでの上位シード権に大きな影響を及ぼすこのジャパンオープン荻村杯ですが、シングルスで上位シードを争う選手たちの組み合わせはどうなっているのでしょうか。
まずは五輪ランク4位につけている男子卓球界の絶対エース・水谷準。水谷は順当にいけば、2回戦で卓球団体戦メンバーの同僚となる吉村真晴と対戦する予定となっています。うーん、2回戦での日本人対決・・組合せとは言え、もっと後で見たかったですよね(涙)。まあ組み合わせなので仕方ありません。吉村との日本人対決を制したと仮定すると、続く準々決勝で現世界ランキング1位の中国・馬龍(まりゅう)と対戦する可能性が大です。うーん・・水谷にとっては厳しいブロックに入ってしまいましたね。何とか地元の利を生かして勝利をもぎ取って欲しいものです。水谷が実力通りの出来であれば、好勝負になる事は間違いありません。奮起に期待しましょう。
続いては女子。五輪ランク3位につけている石川佳純は、順当にいけば2回戦でランキング11位の鄭怡静(チャイニーズタイペイ)と対戦、これに勝つと準々決勝で世界ランク6位の馮天薇(シンガポール)と対戦する事が濃厚です。馮天薇は五輪ランク4位で上位シード争いを繰り広げるライバルという選手であるうえに、ロンドン五輪のメダルを賭けた3位決定戦で石川佳純を敗った因縁の相手でもあります。なんとかこのシード争いの直接対決を制して、ロンドンの借りを返してほしいですね。そして石川が馮天薇に勝つことで、福原愛の第4シード入りをアシストできるという一石二鳥でもあります。是非とも頑張って欲しいですね。
五輪ランク5位で、何とかこの大会で上位進出を果たしたい福原愛は順当にいけば2回戦で世界ランキング11位の田志希(韓国)と対戦する事となります。実力のある選手ですが、福原愛の得意とするタイプの前陣速攻型の選手です。ここは突破できると思います。
問題は次の準々決勝です。世界ランク1位ながらリオ五輪シングルス出場を逃した女王・劉詩雯。福原の親友としても有名な選手ですね。非常に厳しい戦いになりますが、何とかここを突破して一つでも上に行かなければなりません。中国選手には日本で一番の実績を残している福原愛。その地力を信じましょう。
とにかく各選手とも気合が入っているのは間違いありません。上位シード権を争う他国のライバルたちも日本人選手と同じでしょう。リオでのシングルスメダル獲得のためにも、各選手是非とも良い成績を残してもらいたいものですね。
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