いよいよ開幕までカウントダウン状態に入ったスポーツの祭典、リオデジャネイロオリンピック。
数々の競技で日本のメダル獲得が期待されていますが、卓球もメダルが期待される有望種目の一つ。
前回ロンドン五輪では女子団体チームが銀メダルを獲得し、日本卓球界初のメダルをもたらしました。
ロンドンでは惜しくもメダルを逃した男子も、ロンドンでの女子に続けとばかりに勢いに乗っています。
今回はそんな卓球日本男子のパワードライバーをご紹介します。
リオ五輪卓球競技の概要
まずは簡単に卓球男子のチーム編成をご紹介します。
オリンピックの男子卓球競技は2種目のみ。団体とシングルスです。
日本代表の出場選手枠は団体戦3選手、シングルス2選手となっています。
ただし、シングルスに出場する2選手は必ず団体戦にも出場しなければなりません。となると、シングルスの2選手プラス団体戦枠で残り1選手という事になります。
つまり、団体戦の3選手プラスシングルス2選手の5選手が派遣できるという事ではなく、1ヶ国当たりの選手が3選手しか選べないのです。
中国に次いで選手層の厚い日本卓球界にとってはなんとも悩ましい選手枠の少なさですが、同時に日本以上の圧倒的な層の厚さを誇る中国勢以外にもチャンスが増えるという事にもなります。日本にとっては痛しかゆしと言った感じですが、中国選手の数が制限されるメリットの方が日本にとっては大きいと思います。
それでは、リオオリンピック卓球男子団体代表となった吉村真晴選手をご紹介したいと思います。
吉村真晴(よしむらまはる) 卓球男子団体戦出場
生年月日 :1993年8月3日生まれの22歳
出 身 地:茨城県那珂郡(なかぐん)東海村
身 長:177cm
体 重:63kg
効 き 腕:右
出 身 校:愛知学院大学
グリップ :シェークハンド
タ イ プ:ドライブ攻撃型
世界ランク:22位(2016年7月時点)
2012年1月の全日本卓球選手権男子シングルスで、当時5連覇中だった無敵の大エース・水谷準を破り、日本王者に輝いたのが高校三年生の時。
日本人選手らしからぬフィジカルの強さを生かしたパワードライブで水谷選手を打ち破った姿を見た時には本当に驚きました。日本にもヨーロッパ選手に負けない卓球が出来る選手が現れたと思ったものです。そしてようやく吉村真晴選手が五輪の舞台に立つ日がやってきました。
不動のエース水谷準、そして水谷が王者に君臨して以来、全日本卓球選手権で勝って日本王者になったただ二人の男、丹羽孝希と吉村真晴。個の最強メンバーで挑むリオの男子団体。これはもう期待するしかありません。
吉村真晴選手のプレースタイル、特徴、得意なタイプ、苦手なタイプ
吉村真晴の代名詞、世界一のアップダウンサーブとは?
吉村真晴選手はフォア面、バック面とも裏ソフトラバーを使用しているシェークハンドです。タイプ的には前陣から中陣での強烈なドライブで相手を打ち破る攻撃型ドライブ選手です。
この吉村選手の代名詞といえば、アップダウンサーブです。
アップダウンサーブとは、全く真逆の上回転と下回転を同じフォームから打ち分けるサーブの事です。インパクトの瞬間、ラケットを振り下ろすときにボールを当てれば下回転、振り上げる時に当てれば上回転となります。ラケットを上下に動かすのでどちらの回転なのか非常に分かりにくいサーブです。
世界のトップ選手でも何人かこのアップダウンサーブを使う選手はいますが、どちらの回転なのか分かりにくいという点で、間違いなく吉村選手のアップダウンサーブは世界一です。
上回転を下回転だと思って返球すれば打球はオーバーしてしまいますし、下回転を上回転だと思って返球すれば打球は落ちてネットにかかってしまいます。卓球は回転のスポーツです。その意味で、180度真逆の回転のサーブを同じフォームで、しかも世界一流の選手でさえも読み切れない精度で繰り出す吉村真晴のアップダウンサーブは、正に回転の王者と呼べるほどなのです。
中国や欧州選手に負けないドライブ威力の持ち主 課題はメンタルか?
世界一のアップダウンサーブでのサーブポイント、あるいは甘くなったレシーブを三球目攻撃、というのも勿論吉村選手の大きな得点源なのですが、当然それだけではありません。
高速チキータやフリックなどのレシーブ技術も多彩で、しかも相手の意表をつくので効果は増大します。ここでチキータ行くか??って場面でレシーブエース奪ってしまうシーンなどはよく見かけますね。
ドライブに関しては日本一でしょう。恵まれた体格、そしてフィジカルの強さから繰り出す両ハンドドライブは中国やヨーロッパの選手にも全く引けをとりません。中陣でのドライブ合戦はもちろんの事、先手を取られて台から下げられても一発でカウンターを返せるだけのパワードライブの持ち主です。
とにかくスケールの大きさが持ち味ですね。
水谷選手や丹羽選手に比べてカットマンを苦にしないのも非常に頼もしいですね。韓国の世界ナンバーワンカットマンの朱世赫(チュ・セヒョク)を破った昨年のジャパンオープンなどは、正にカットマン攻略のお手本のような試合でした。やはりカットマンと対戦するのにパワーは大事だなと改めて感じましたね。
敢えて課題を挙げるとすれば、大舞台での精神面でしょうか。メンタルを強化出来れば日本史上最強の選手になれる逸材だと思いますね。
【団体戦展望】事前準備は万端な丹羽孝希とのダブルスで必勝を期す!
シングルス4試合、ダブルス1試合で行われるオリンピックの卓球団体戦ですが、エース水谷がシングルス2試合を戦う事になると思われますので、自然と吉村選手と丹羽選手がダブルスを組み、シングルスを1試合づつ戦うというのが日本男子チームの既定路線となっています。
実際にオリンピック本番での吉村・丹羽ペアの布石として、国際大会では二人がダブルスを組んで出場しています。
丹羽選手が左効き、吉村選手が右利きという事で、卓球ダブルスとしては理想的と言われている左右コンビとなるのは大きなアドバンテージです。逆に言うと、水谷・丹羽ペアですと左左になってしまいます。左右のコンビに拘るのであれば、余程の事がない限り唯一の右利きプレイヤーである吉村選手はダブルス確定でしょう。
気になる丹羽・吉村ペアですが、前途したようにITTFワールドツアーでは既にダブルスを組んで出場し、オリンピックへ着々と準備を進めています。カタールオープンでは男子団体の中国代表である馬龍・許昕ペアを破るなど、中国勢にも互角の勝負を繰り広げています。実際に中国の団体戦も世界ランク1位の馬龍(まりゅう)と3位の許昕(きょきん)を軸として編成されると思います。4位の張継科(ちょうけいか)がシングルス2戦という格好ですね。日本と同じように、中国も五輪本番のダブルス候補であるペアを出場させて慣れさせているという事です。
ITTFツアーでの戦いぶりを見る限り、吉村と丹羽のペアにはかなり期待が出来るでしょう。全5試合で行われる団体戦の中で、ちょうど真ん中の3試合目に行われるダブルスゲームは非常に大きな意味を持ちます。ただの1勝、1敗という数字以上の重みです。ここがしっかり計算できるというのはチームに大きな安定感と安心感をもたらしてくれるでしょう。
そしてもう1試合のシングルスは本来の吉村選手のスケールの大きな卓球を見せてくれればいいと思います。世界に通用するという事は、主力メンバーとして後半はシングルス2試合に起用された世界卓球2016を見ても分かる通りです。とにかく吉村選手の魅力はアップダウンサーブだけではありません。レシーブ技術やドライブでのラリーなど、すでに世界のトップレベルです。その事実は実は日本よりも世界の方が知っているのかもしれませんね。
吉村真晴、丹羽孝希、大島祐哉が引っ張る近未来の卓球界
高校三年生で当時全日本男子シングルスで5年連続の優勝を飾っていた日本王者・水谷準を破って日本中をあっといわせてから早くも4年半。その後多少伸び悩んだ時期もありましたが、ようやく吉村真晴選手の秘められた能力が覚醒してきました。
「してきました」と書いたのは、もちろん吉村真晴という選手の能力がまだまだ全て発揮されたわけではない、覚醒途中だという意味からです。
この先の日本卓球界を引っ張っていくのは間違いなくこの吉村真晴選手、丹羽孝希選手、そして惜しくもオリンピック代表は逃したものの世界ではその名が轟いている早稲田大学の大島祐哉選手、この三人が中心となっていくでしょう。もちろん現エースの水谷準選手もやすやすと若手にその座を譲る気は毛頭ないでしょう。さらに下の世代からは怪物の異名をとる中学1年生・張本智和選手も押し上げてきていますね。
とにかく卓球界は女子だけでなく男子にもとてつもなく明るい未来が開けています。吉村選手にはそのことを卓球ファンだけでなく、一般の国民にも知らしめてほしいものです。そしてその場がオリンピックである事を信じて期待しましょう。
コメント