いよいよ日本時間の8月12日から始まるオリンピックの花形ともいえる陸上競技。
男子4×100mリレーや男子やり投げ、女子マラソンなどがメダル候補と言われているリオオリンピック陸上日本代表選手団ですが、いきなり陸上初日から始まる男子競歩20km、20日に行われる男子競歩50kmも大いにメダルが期待できる種目と言われています。
そこで、リオオリンピックのテレビ観戦の参考資料として、競歩特有のルールを知っておきましょう。これらを知っているのと知らないのでは面白さが全く違うと言ってもいいかもしれません。
競歩における「正しい歩き方」の定義
競歩という競技は、その名のとおり歩く速さを競う競技です。走る速さを競うマラソンの「徒歩」版といってもいいかもしれません。しかし、「走る」という事に関しての走り方に制約のないマラソンとは違い、競歩の場合はその「歩く」という定義が明確に定められています。
その定義が下記のとおりです。
・左右どちらかの足が常に地面に接していなければならない
(走る時のように両方の足が宙に浮いている状態が一瞬たりともあってはならない)
・前足は地面に着く瞬間から足が地面と垂直になるように膝を伸ばさなければならない
(前足は地面にある間は常に伸ばし続け、折り曲げてはならない)
競歩特有のあのカクカクとした選手のフォームは、このような定義を守るための物なのです。
競歩のレースに失格者が多い原因とは?
競歩のレースを見ているとよく見かけるのが、選手が失格となってしまう場面です。
選手が失格となるほとんどの原因は、上に述べた競歩の「歩き方の定義」に違反してしまうからです。競歩のこの歩き方というのは選手にとっては負担の大きな、非常に過酷なものであり、マラソンなどよりもはるかに完歩(マラソンで言う完走)が難しいと言われています。
そして、レースに参加した選手たちにこの定義違反が無いかどうかを判定する審判員が6人から9人つきます(トラックレースの場合は6人)。この特殊性故に、この競歩は陸上競技の中で唯一の判定種目であるという一面も持っています。他の選手や記録といったものとの戦いと同時に、ルールとの戦いでもあるのです。
“ロス・オブ・コンタクト”と“ベント・ニー”、二つの反則の意味と違い
それでは具体的に競歩のルールについて説明しましょう。
まず、左右どちらかの足が常に地面に接していなければならないという定義に違反する事を、「ロス・オブ・コンタクト」と呼びます。左右の足が同時に地面から離れてしまうという反則ですね。
そして、前足が地面につく時から足を垂直に伸ばさなければならないという定義に違反する事を「ベント・ニー」と呼びます。前足が曲がってしまっているという反則です。
この反則をレース参加者が犯していないかという事をコースに配置された審判たちが常に監視します。
そしてその審判たちは赤色と黄色のカードを持っており、そのうち黄色のカードは波の形が描かれたカードとくの字が描かれたカードに分かれています。
波の形が描かれたカードは「ロス・オブ・コンタクト」を意味し、くの字が描かれたカードは「ベント・ニー」を意味します。
「ロス・オブ・コンタクト」の違反の疑いのある選手には波型のカードが出され、「ベント・ニー」違反者が疑われる選手にはくの字のカードが示されるという事です。
黄色カードは「注意」、赤色カードは「警告」 失格対象となるのは赤色カード
では、黄色カードと赤色カードの違いは何でしょう。
簡単に言うと、黄色は注意で、赤色は警告です。
黄色カードはあくまで注意です。二つの定義に違反している恐れがあると判断した場合、黄色カードを選手に提示します。「ロス・オブ・コンタクト」の場合には波型のカード、「ベント・ニー」の場合にはくの字のカードが示されるという事です。
対して、明らかに定義に違反していると審判員が判断した場合には、警告である赤カードがその違反した選手に出されます。
注意である黄色カードは何度出されても大丈夫ですが、赤カードは3枚出されるか、あるいは3人の審判から出されるとレース失格となってしまいます。競歩のレースで選手が失格になる場面のほとんどはこの赤カードの累積警告によるものなのです。つまり定義違反を犯してしまったと3回あるいは3人の審判がジャッジしたという事ですね。
ただし、あまりに酷い歩行違反と認められた場合には赤カード一回あるいは一人だけの審判員のジャッジでの一発失格も有り得ます。非常にタフでシビアな競技なのです。
競歩種目の失格ルールのまとめ
どうでしょうか。過酷な競技ですよね。ライバル、記録、そして審判という3つの敵と戦わなければならない競歩という競技の特殊性と過酷さが少しはお分かりいただけたでしょうか。
それでは簡単にまとめておきます。
- 定義➀左右どちらかの足が常に地面に接していなければならない
- 定義➁前足は地面に着く瞬間から足が地面と垂直になるように膝を伸ばさなければならない
- 定義①に違反する事を“ロス・オブ・コンタクト”という
- 定義➁に違反する事を“ベント・ニー”という
- 定義➀➁の違反の恐れがある場合、黄色カードが違反の恐れのある選手に提示される
- 黄色カードは原則何度提示されても失格にはならない
- 定義➀➁に明らかに違反している場合には赤色カードが当該選手に提示される
- 赤色カードは3回あるいは3人の審判から出された時点で当該選手はレース失格となる
- 審判があまりにも酷い違反と判断した場合には1度で失格処分となる場合もある
このことを頭に置きながらレースを見れば、競歩という種目の奥深さを知る事が出来るとともに、楽しみ方もまた一味違ったものとなる事は間違いないと思います。レースしている選手は本当に大変でしょうけどね(苦笑)。
コメント