いよいよ開幕までカウントダウン状態に入ったスポーツの祭典、リオデジャネイロオリンピック。
数々の競技で日本のメダル獲得が期待されていますが、卓球もメダルが期待される有望種目の一つ。
前回ロンドン五輪では女子団体チームが銀メダルを獲得し、日本卓球界初のメダルをもたらしました。
ロンドンでは惜しくもメダルを逃した男子も、ロンドンでの女子に続けとばかりに勢いに乗っています。
今回はそんな卓球日本男子のスピードスターをご紹介します。
リオ五輪卓球競技の概要
まずは簡単に卓球男子のチーム編成をご紹介します。
オリンピックの男子卓球競技は2種目のみ。団体とシングルスです。
日本代表の出場選手枠は団体戦3選手、シングルス2選手となっています。
ただし、シングルスに出場する2選手は必ず団体戦にも出場しなければなりません。となると、シングルスの2選手プラス団体戦枠で残り1選手という事になります。
つまり、団体戦の3選手プラスシングルス2選手の5選手が派遣できるという事ではなく、1ヶ国当たりの選手が3選手しか選べないのです。
中国に次いで選手層の厚い日本卓球界にとってはなんとも悩ましい選手枠の少なさですが、同時に日本以上の圧倒的な層の厚さを誇る中国勢以外にもチャンスが増えるという事にもなります。日本にとっては痛しかゆしと言った感じですが、中国選手の数が制限されるメリットの方が日本にとっては大きいと思います。
それでは、リオオリンピック卓球男子団体・シングルスの代表となった丹羽孝希選手をご紹介したいと思います。
丹羽孝希 団体戦・個人戦(シングルス)出場

出典:wikipedia
生年月日 :1994年10月10日生まれの21歳
出 身 地:北海道苫小牧市
効 き 腕:左
出 身 校:明治大学(在学中)
グリップ :シェークハンド
タ イ プ:前陣ドライブ速攻型
世界ランク:19位(2016年7月時点)
五輪ランク:16位(同上)
全日本の大エース、水谷隼に続く2番手にまで成長した丹羽孝希選手。オリンピック出場は前回ロンドン五輪の団体に続いて二度目となります。台頭してきてトップ選手入りしてから何年も経つのでもう中堅選手なのかと錯覚してしまいますが、まだ大学生の21歳です。東京オリンピックのエース候補ですが、もちろんその前のリオデジャネイロオリンピックでメダルを狙っています。
丹羽孝希選手のプレースタイル、特徴、得意なタイプ、苦手なタイプ
丹羽選手のプレースタイルの持ち味というと、何といってもその速さです。丹羽選手をスピードスターと呼んだのはそのプレイスタイルを形容したものです。
基本的には卓球台の近くでのプレーを信条としていて、その天性の反射神経で相手のエース級の打球もいとも簡単にカウンターで返してエースを奪ってしまいます。速攻型といえば、女子の福原愛選手や伊藤美誠選手のようにラケットのバック面に打球速度の速くなる表ソフトラバーを使用する選手もいるのですが、この丹羽選手はフォア、バック両面とも裏ソフトラバーを使用しています。裏ソフトを使った速いドライブ攻撃が主体なので、もちろん台から下がったドライブ合戦にも対応できるのです。
丹羽選手の特徴で特筆すべきはカウンターの速さと威力。普通カウンターといえば相手のスマッシュや威力のあるドライブなどをラケットに当てて返すのですが、丹羽選手の場合はただラケットでブロックするのではなく、打球を返す際にラケットを振り切るのが特徴です。このため、相手の威力を利用したうえに更に威力を上乗せできるのです。これではどんな選手でもひとたまりもありません。勿論このような技術は誰にでも出来るものではありません。天性の才能だといえるでしょう。
丹羽孝希選手が天才と評されるのはこのような天才的なプレースタイルに起因しているのです。
丹羽選手の課題はカットマン。一時期に比べると世界にも一流のカットマンは少なくなりましたが、それでも韓国の朱世赫(チュ・セヒョク)などのような素晴らしいカットマンが存在しています。カットマンとの対戦ではスタミナと忍耐力、そして回転を見極める力が必要となってきます。世界的にも少なくなってきているカットマンという事で、なかなか実戦で対戦する機会もないのが現状です。経験を積み重ねていけば克服していけるでしょう。
もう一つの課題が、パワーです。前陣では素晴らしい攻撃力を魅せる丹羽選手ですが、中陣から後陣に下がってのドライブ勝負になるとパワー負けしてしまう場面が目立ちます。特にパワードライブを得意とするヨーロッパの選手などとの対戦で顕著ですね。フィジカルを強化してパワードライブ勝負に対応できるようになれば鬼に金棒でしょう。
【団体戦】吉村真晴とのダブルス、そしてシングルス1戦という起用か?
前回のロンドンオリンピックでは団体戦メンバーとして臨みましたが、惜しくも準々決勝の香港戦で敗れメダルを逃した丹羽孝希選手。
リオ五輪では日本男子卓球界悲願の初メダル獲得を目指します。
恐らくエース・水谷隼選手がシングルス2試合を任される事になるでしょうから、丹羽選手はシングルス1試合と、もう一人の団体戦メンバーである吉村真晴選手とのダブルス1試合というフォーメーションになると思われます。
世界卓球2016は団体戦でしたが、日本男子は39年ぶりとなる世界卓球男子団体銀メダルを獲得しました。しかし、水谷選手とともに不動のレギュラーメンバーとして期待された丹羽選手には悔しさも残った大会でした。好不調の波が激しく、シンガポール戦や香港戦で星を落とし、結局準決勝、決勝はスタメンを外されて出番なしに終わりました。
世界卓球でも調子の良い時は、世界トップレベルのフレイタス(ポルトガル)を全く寄せ付けずに勝利するなど、本当に凄まじい戦いぶりを見せるのですが、試合ごとの波の激しさを失くすことが課題として浮き彫りになりましたね。
吉村真晴選手とのダブルスが非常に大きなカギを握りそうですが、左利きの丹羽選手とのコンビは抜群です。丹羽選手の前陣での速い攻撃と吉村選手の中陣でのドライブはまさに世界最強レベルでもあります。後はシングルスでいい時の丹羽孝希を見せるだけです。そうすれば自ずと結果はついてくるでしょう。すでにそのレベルの選手なのです。
【個人戦】準決勝までに必ず対戦するトップ4は馬龍?張継科?オフチャロフ?
前回ロンドン五輪は団体戦のみの出場だったので、シングルスはリオが初めてとなる丹羽孝希選手。
共にシングルスに出場する水谷選手はシングルスの五輪ランキング4位が確定していますので、準決勝まで中国の2選手(馬龍、張継科)との対戦は回避できることが確実となっています。
丹羽選手の五輪ランキングは現在16位なので、残念ながら中国選手との対戦をベスト4まで回避できる第4シード入りには届きません。準決勝までに上位4シード選手と必ず対戦する事となります。上位4シード入りする選手は、中国の馬龍、張継科、日本の水谷隼、ドイツのドミトリ・オフチャロフの4選手です。
水谷選手との日本人対決だけは避けてほしいところですね。どちらの選手にももっと高みに登ってもらわなければ困ります。この中ですと、やはりドイツのオフチャロフが最も戦いやすい相手と言えるかもしれません。もちろん「この4人の中では」です(苦笑)
しかし、丹羽選手はそのプレースタイルの特質上、強い選手が相手になるほど素晴らしい試合を展開します。特に現在世界最強の選手と言われている馬龍(まりゅう)選手はこの丹羽選手と絶対に当たりたくないはずです。強烈な両ハンドのパワードライブと多種多彩なサーブ、キレのあるチキータなど、全く隙の無い馬龍ですが、この丹羽選手は互角の戦いを繰り広げています。馬龍のエース級のパワードライブも、丹羽選手にとっては絶好のカウンタードライブの原料となってしまうからです。
丹羽選手が中国選手も最も警戒している選手の一人と言われているのはそのためです。しかし逆に言うと、下位選手への取りこぼしが怖いという事にもなります。この点においても、やはり安定感を増すという事が課題になるのかもしれません。
しかし、やはり最も夢を見せてくれるのはこの丹羽選手なのかもしれません。それほどにスケールと才能を感じさせる卓球なのです。
実力だけでなく人気でも女子に追いつけ追い越せ!
エース・水谷隼と同じく、団体・個人双方で出場する事となったリオオリンピック。これで名実ともに日本を代表する卓球選手となった丹羽選手ですが、彼にはもう一つの大きな使命があるとわたしは思っています。
それは男子卓球界の人気向上です。
女子は福原愛、石川佳純の両エースに、高校1年生コンビのみうみまペア、伊藤美誠と平野美宇という新星も現れ、人気・実力ともにうなぎ上りとなっています。そんな女子に比べると男子は地味です。もちろん力はあるのですが、人気でも女子に追いついていってほしいと思っています。
エースである水谷と並んで、この丹羽孝希選手が両エースと呼ばれるようになり、吉村真晴選手や大島祐哉選手らと切磋琢磨していけば男子も必ず人気はついてくると思います。男子にも次世代の怪物・張本智和選手という超大物小学生が出て来ました。男子卓球界の未来は非常に明るいと言えます。後は人気だけなのです。
女子に人気も追いつけるかどうかは、次世代のエースである丹羽選手次第といえるのかもしれません。
コメント
水谷隼さんの漢字が準になってます
ご指摘ありがとうございます。訂正しました。