ネットを中心としたスラングに「人外」という言葉があります。
人外とは読んで字の通り、人間の領域を超えた存在という意味です。この人外とは誰の事を指すのか?
それは現在のテニス界に君臨する4人のトッププレーヤー、
- ロジャー・フェデラー(スイス)
- ラファエル・ナダル(スペイン)
- アンディ・マレー(イギリス)
- ノバク・ジョコビッチ(セルビア)
の四人の事を言います。今回はそのテニス界4人の「人外」の一人、ノバク・ジョコビッチについてみていきたいと思います。
4強最強の男、ノバク・ジョコビッチのプロフィール
本 名:ノバク・ジョコビッチ
生年月日:1987年5月22日生まれの28歳
出 身:セルビア・ベオグラード
身長体重:188cm 80kg
利き腕 :右
バックハンド:両手打ち
今年の5月で29歳となるジョコビッチは、「人外」と言われる4人の中ではマレーと並んで最年少となります。とはいってもナダルとはたった1歳差ですし、同年代でしのぎを削っているという感じですね(フェデラーは除外w)。
しかし、この4人の「人外」の中では頭一つ抜け出た感のあるのがこのジョコビッチです。現在の世界ランクは堂々の1位。2014年の夏から1度も陥落していません。これは長いテニス界でも歴代5位となる長期政権となっています。2016年3月29日時点でのポイントは16540。これは2位のマレーの8370ポイントの倍近い数字です。怪我でもしない限りはしばらくジョコビッチのランキング1位は揺るぎそうもありません。
人の域を超えた「人外」の中でも飛びぬけた、まさに神の領域にまで近づいているのがこのジョコビッチなのです。
悲願の全仏・オリンピック制覇でスーパースラムを狙う
絶対王者とさえいえる程の圧倒的な強さで現在の男子テニス界のトップを独走している感のあるジョコビッチですが、同じ4強のフェデラー、ナダルと違って、まだ生涯グランドスラムを達成していません。たった一つ残されたグランドスラムが全仏オープン(通称・ローラン・ギャロス・トーナメント)です。
クレーコートで行われる全仏は、過去11年間でナダルが9度の優勝を果たしている、まさに「ナダルの、ナダルによる、ナダルのための」大会と言ってもいいほどナダルが圧倒的強さを誇示している大会です。フェデラーは過去11年で2回しかナダルが取りこぼしていない2009年の全仏を制して生涯グランドスラムを達成しました。そして2回のうちのもう1回が昨年2015年の全仏でした。ここはジョコビッチにとって最大のチャンスだったと言ってもいいでしょう。
全仏における、いや生涯グランドスラムを達成するための最強の敵である「クレーの王者」ラファエル・ナダルを準々決勝で3-0のストレートでいとも簡単に降したジョコビッチ。続く準決勝でも「人外」の一人、アンディ・マレーをフルセットの激闘の末に撃破します。決勝の相手は第8シードのスタン・ワウリンカ(スイス)。実力的には人外の仲間入りをしてもおかしくない程の実力者ですが、彼が人外入り出来ない大きな理由の一つが、安定感の無さ。しかし逆を返せばいい時のワウリンカは手が付けられないほどの選手へと変貌します。人外と呼ばれる4人でさえも軽く凌駕してしまうほどの・・
そんなワウリンカがジョコビッチとの全仏決勝戦では出現してしまいます。悲願の全仏優勝、キャリアグランドスラム達成を目指したジョコビッチは、ワウリンカの前に1-3で敗れ去り、生涯グランドスラムはお預けとなってしまったのです。
しかし現在のジョコビッチの安定感と圧倒的な実力を考えると、生涯グランドスラムは時間の問題と思います。ナダルに一時期のようなクレーでの絶対的強さが見られないのも大きな理由の一つですね。今年の夏にはリオオリンピックも開催されます。全仏と五輪で優勝すれば、過去にアンドレ・アガシしか成し遂げていないスーパースラム(グランドスラム、五輪、ツアーファイナル全てを制する事)を達成する事となります。そうすれば実績においてもナダル、フェデラーを凌駕する存在となるのです。
ジョコビッチの凄さは攻守の切り替えの早さと相手を中に入らせない深いストローク
ジョコビッチの凄さはどこにあるのでしょう。
他の選手たち、例えばフェデラーの場合は強烈なフォアハンドとサービス、とかナダルの場合はトップスピンとメンタル、のような「これ!!」というのがあまりないと言うのが率直な印象です。
ですが、そのどれもが10点満点中9点である!とでも言えばいいのかもしれません。とにかく、サーブ、リターン、ストローク、フットワーク、ボレー、メンタル・・全てのプレーのレベルがとても高く、穴がない選手という印象です。
敢えて言うのであれば、守備がとにかく固いですね。フットワークも素晴らしいのですが、特に凄いのが左右に振られた時の切り返しの速さです。例えば大きくフォアに振られたとしても、追いついて返球した後体制が崩れないのです。大きく体が外に振られる事がないので、すぐに攻撃に移れる体制となっています。ですから、普通であればその後のバックへのストロークでジ・エンドなのですが、ジョコビッチの場合は追いつけてしまうのです。
さらに、ジョコビッチのストロークも超一流です。彼のショットはとにかく深い。ジョコビッチは比較的コートの後方からプレイするタイプであり、なかなか前に入っていくタイプではないのですが、コートの後方からでも相手のベースラインぎりぎりの深いショットを打ち込んで、相手が中へ入って攻撃する隙を許しません。正確無比なショットもジョコビッチの鉄壁の守備の大切な要素と言えますね。アンフォースドエラーも少なく、まさに全てにおいて欠点がなくそれでいて全てのレベルが高い選手なのです。
数年前まではケガをすることも多く、フィジカル的強さに欠けるという指摘もありましたが、ここ最近はそんなスぺランカー体質のそぶりも見せることなく試合に出続けています。唯一の弱点も克服してしまったのです。
今がまさに絶頂期と言ってもいいノバク・ジョコビッチ。2016年は彼が望むものすべてを手に入れる事が出来るシーズンとなるのかもしれませんね。
錦織圭とジョコビッチの対戦成績
錦織圭選手との対戦成績はどうなのでしょうか。
錦織とジョコビッチの対戦といわれて我々日本人が真っ先に思い浮かべるのは、錦織が準優勝した2014全米オープンの準決勝でしょう。この試合で錦織は終始アグレッシブにプレーし、ジョコビッチの完璧な守備を崩して3-1で勝利を収めました。この試合は錦織のキャリアの中でもベストバウトと言ってもいい試合である事は間違いないでしょう。
しかし、錦織がジョコビッチに勝ったのは3月29日時点でこれが最後となっています。2014全米以降は4連敗を喫しています。通算は錦織の2勝6敗となっています。サーフェス別の成績は、ハードコートで錦織2-4(うち錦織の棄権によるジョコビッチ不戦勝が1勝)、クレーコートでは錦織の0-2、グラスコートではまだ対戦がありません。
錦織選手のような、積極的にコートの中に入り、素早いショットで展開を速くして相手を揺さぶるタイプの選手にとって、守備力が高く、深いストロークで後方へと下げてしまうジョコビッチはなかなか厄介な相手といえるかもしれません。特に錦織選手の出来がイマイチで、ジョコビッチ選手の調子の良い時の試合などは絶望的なほどの試合になる事もあります。錦織選手がジョコビッチという高すぎる壁を破るには、やはり彼のあまりに完璧すぎるプレーを目の前にしても決してあきらめない鉄のメンタルが必要なのかもしれませんね。
ともにスポンサーに日本の企業である「ユニクロ」を持つ錦織とジョコビッチ。この「ユニクロ」対決は今後何試合も続くはずです。名勝負数え歌と呼ばれるほどの熱戦を期待したいですね。
モノマネ名人ジョコビッチのプライベートは陽気な青年
ジョコビッチのもう一つの顔、それは「モノマネ」名人としての顔です(笑)。
これはテニスファンの間ではかなり有名なのですが、フェデラーやナダル、シャラポワ、さらに師匠であるボリス・ベッカーのモノマネまで披露しています。コメントもウィットに富んでいて、その辺りは普通の陽気な20代の若者といった感じです。絶対王者としてのジョコビッチとは違ったそんなギャップも彼の人気の理由の一つと言えるでしょう。
ジョコビッチのスポンサーであるユニクロのCMにも一時期出演していましたが、面白いコマーシャルでしたよね?あれが素のジョコビッチです(笑)。
「人外」とか「四強」と呼ばれている男子プロテニス界のトップ4ですが、昨年あたりからこのノバク・ジョコビッチが頭一つ抜け出して独走態勢に入った感さえあるノバク・ジョコビッチ。
テニス界は彼の1強体制に突入するのか?新たな帝王が現れるのか?それとも再び群雄割拠の戦国時代へと突入するのか?
どちらにしても、人外の下の世代の選手たち、錦織圭やミロシュ・ラオニッチ(カナダ)などの台頭がテニス界の盛り上がりにとっては欠かせない要素となります。テニス界のためにも錦織にはこの絶対王者・ジョコビッチをトップの座から引きずり降ろすほどの活躍を見せてほしいものですね。
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