今や世界ランキングのトップ5に入り、念願のトップ3入りやグランドスラム制覇も視野に入ってきたプロテニス選手・錦織圭。
日本人テニスプレーヤーの歴史を次々と書き換え続ける錦織という選手を、テニス界屈指のレジェンド、ロジャー・フェデラーとラファエル・ナダルの二人はどう見ていたのか。過去のコメントから紐解いてみたいと思います。
ラファエル・ナダル(スペイン) 世界ランキング9位
「砂の王者」「砂魔神」などとも言われている、フェデラーと共に二強時代をけん引したレジェンドがこのラファエル・ナダルです。アンドレ・アガシ(アメリカ)と並ぶ男子プロテニス史上2人目となるゴールデンスラム達成者(4大大会とオリンピック優勝者)という、とてつもない記録を達成した選手でもあります。
錦織との対戦成績は錦織の2勝9敗。2015年のマスターズ1000カナダ大会で勝利するまで、錦織はこのナダルに7戦して一度も勝てませんでした。しかしナダルは錦織がまだランキング下位にいる頃から錦織を高く評価していたという話はとても有名です。早くから錦織の才能を見抜いて世界のトップ入りを果たすと予言していた選手のうちの一人です。その眼力もまた世界最高レベルですね。
「明日、またもう一度ここで!」
2006年の全仏オープンの練習パートナーに当時ジュニアでまだ無名の錦織圭を抜擢。練習後には錦織の才能にほれ込んで次の日の練習パートナーを錦織に頼んだ時の言葉。
「将来的に彼は間違いなく世界のトップ10選手となる。いや、トップ5だ。わたしはそう確信している、100%ね」
2008年クイーンズクラブでの対戦後のコメント。この時の錦織圭はまだ世界ランキング100位にやっと入ったばかりの選手だった。
「圭はコートの内側に入り込んで打球の方向を変えることが出来るんだ。テニスの中で最も難しい技術をいとも簡単にやってのけている」
「わたしは圭のテニスが大好きなんだよ。尊敬している。この試合に危機感を持っていたので勝てて本当に嬉しいんだ」
2012年のマスターズマイアミオープンで錦織圭を破った試合後のコメント。
「圭のプレーは凄く速い。彼は凄く早いタイミングで打球しているが、簡単に見えてそれはテニスでは最も難易度の高いプレー。もう少しだけ安定感を増す事が唯一の課題だね。彼は既にテニス選手に必要なすべてを揃えているよ」
2013年全仏オープンでの試合後のコメント
「彼(錦織圭)は今年のATPワールドツアーファイナルに出場するだろうね。間違いないよ」
2014年5月時点でのコメント。この時点で錦織圭はまだ一度もファイナル進出を果たしたことはなく、この年11月に行われたツアーファイナルにナダルの予言通り初出場を果たした。
「錦織のプレーは完璧だったよ。わたしは持っている実力は出したが体力の限界だった。もし自分の状態が100%であったとしても、錦織に勝つことは難しい。だから4位という結果には満足しているよ」
2016年リオ五輪3位決定戦で錦織に敗れた試合後のコメント
ナダルのコメントを見ていて思うのは、やはり「名選手は名選手を知る」という事なのだなあという事ですね。無名のジュニア選手であった錦織の才能にほれ込んで練習パートナーに指名したり、まだトップ100入りしたばかりの錦織選手の将来のトップ5入りを予言したりしてました。世界で最も早く錦織の実力を見抜いていた選手だと思いますね。奇しくもナダルの予言通り、今では世界のトップの舞台で争うライバルへと成長しました。まさにナダルの眼力恐るべし!ですよね。
ロジャー・フェデラー(スイス) 世界ランキング17位
言うまでもなく、現在の現役選手の中では最高の実績を誇るテニス界のレジェンド。フェデラーこそがテニス界最強の選手だと評価する声も数多くあります。間違いなく生ける伝説です。
現代テニス界が生んだ最高傑作とも呼ばれるほどの完璧なオールラウンドテニスプレーヤーでありながら、その人格面の素晴らしさにおいても多くのファンや選手たちの尊敬を集める人格者、それこそがロジャー・フェデラーという男の凄さでもあります。
スーパースラム(4大大会全てとツアーファイナルで優勝すること)を達成し、さらに歴代1位となるグランドスラム通算17勝を挙げているこの大選手も、ラファエル・ナダルと並んで錦織の実力を早くから評価していた選手でもあります。
「今ここにスター(準優勝した錦織の事)が誕生しました」
「5年前に圭をヒッティングパートナーに選んで打ち合った時に強くなると確信していたんだが、その通りに成長して帰ってきてくれたことを本当に嬉しく思うよ」
「圭が将来素晴らしい選手になる事に疑いの余地はない。世界ランキングのトップ10、トップ5に入れるかどうかはその時次第だが、圭にはそれだけの才能がある」
2011年のスイスインドアの決勝戦で錦織を破った試合後のコメント。この試合からさかのぼる事5年前(錦織はまだジュニア選手であった)にまだ無名の錦織を練習パートナーに指名した時の事を回想しながら。
「予言しておくよ。圭は近いうちに世界のトップ10入りを果たすと」
2014年のソニーオープン5回戦で錦織圭に敗れたフェデラーのコメント。予言通りこの約2か月後に錦織は自身初の世界ランキング10位以内入りを果たした。
「わたしが錦織の試合を見に来たのは、ただ単にいいテニスの試合が見たかったからだよ」
2015年の全仏オープン2回戦終了後に錦織圭の試合を見に来ていたフェデラーのコメント。ちなみに錦織とフェデラーの対戦は準決勝までない組合せであった。
「個人的な意見なのだが、錦織という選手は見ていて最もワクワクする選手のうちの一人だよ」
2015年のATPツアーファイナルズ開幕前のコメント。
これらのフェデラーのコメントを見ていると、フェデラーは単純に錦織圭というテニスプレーヤーの試合に魅せられているという事がよくわかりますよね。フェデラーが一選手についてここまで饒舌に語る事はあまり記憶にありません。
人格者ゆえに多分に相手に対するリップサービスも含まれているのでは?という意見もあるかもしれませんが、フェデラーが錦織のプレースタイルや試合のファンである事だけはまず間違いないと思いますね。
名選手は優れた人格者・・そんな格言を思い出すフェデラーとナダルのコメント
何度も書きますが、ロジャー・フェデラーとラファエル・ナダルといえば、後世のテニス史に残るほどの偉大なプレーヤーたちです。
そんな彼ら二人は、二人そろってまだ無名のジュニア時代の錦織圭を練習パートナーに指名したという過去があります。まさに名選手ゆえの慧眼の鋭さというやつです。彼らがまだ無名のこの日本人選手に何かを感じていたことは間違いありません。
そして、この二人の錦織評もまた興味深いですね。特にその歴史を時系列として追っていくとますます面白いです。二人が早くから錦織のトップ選手への仲間入りを確信していたことが伺えます。
この歴史的な名選手二人にこのようなコメントを残してもらえるだけで、当時の錦織にとってどれだけ自信になったかは想像に難くありません。
名選手はやはり優れた人格でなければ大きな名声は得られません。この二人のコメントはそんな人間としての懐の深さを感じてしまいますよね。
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