いよいよ開幕のリオオリンピック。
メダルラッシュが期待される日本選手団ですが、その中でもメダル量産の期待が高まるのが、日本のお家芸・柔道。
柔道競技2日目である8月7日(日)の柔道競技の日本人選手紹介や見どころ、海外のライバルたちなどをご紹介したいと思います。
男子66kg級・海老沼匡(えびぬままさし)元柔道家・香菜夫人のためにもロンドンの雪辱を!
プロフィール
生年月日:1990年(平成2年)2月15日生まれの26歳
出 身:栃木県小山市
身 長:170cm
階 級:66kg級
出身校 :明治大学
所 属:パーク24
家 族:妻(元柔道選手の阿部香菜選手)
世界柔道3連覇の柔道男子66kg級の絶対王者
海老沼匡選手はロンドンオリンピック銅メダリストであり、今回のリオオリンピックは2大会連続の出場となります。
そのロンドンオリンピックはまさに波乱万丈の大会でした。銅メダルを取ったものの、準々決勝の韓国・曺準好戦では相手のどう見ても反則の脇固めを取ってもらえず、自身の有効技も取り消しにされるなど、結局は判定に。曺準好の勝ちと一度は判定されたものの、ジュリー(審判を監督する審判委員)の指摘によって再判定となり、その結果判定勝ちを収めました。非常に後味の悪い試合でしたね。
海老沼選手はよく耐えたと思いますこの試合後、脇固めの影響かは分かりませんがしきりに腕を気にしていました。解説者はケガをしたのではと言っていましたが、本人はそのことについては一切触れませんでした。それが影響したのかはわかりませんが、次の準決勝で海老沼選手は敗退。しかし敗者復活で銅メダルを獲得したその姿は実に感動的でした。負けの言い訳を一切しないその姿はまさに「侍」といった趣でしたね。
そして今回はそのリベンジを果たすべく燃えています。
海老沼選手の得意技は背負い投げですが、腰車や内股などもキレがあり、綺麗な一本を取れる日本らしい柔道選手です。
海外選手に滅法強く、そういう意味ではオリンピックこそ海老沼選手の真価を発揮する場とも言えます。
弱点は大会ごとの出来にムラがあることだといわれています。コンディションが整わなければあっさり負ける事もあり、そこが不安視されている事は事実です。しかし、逆にトップコンディションで臨めば誰にも負けないポテンシャルを発揮します。
「オリンピックの借りはオリンピックでしか返せない。」
海老沼選手はリオへの意気込みとしてこういっています。間違いなく心身ともに最高の状態に仕上げてくるはず。つまり、最高の海老沼匡の柔道がリオで見られるという事です。そうなると結果はただ一つ。そう、もちろん「金メダル」です。
元柔道選手の香菜夫人が献身的に金メダル獲りをサポート
海老沼匡選手は、2014年の12月に結婚する事を発表しました。
お相手は元柔道選手、しかも世界柔道団体金メダルやグランドスラム3度の金メダルというトップ選手の阿部香菜さん。海老沼選手より1学年上の姉さん女房です。
海老沼選手から香奈さんへのプロポーズはリムジンの中だったそうです。海老沼選手がインターネットなどで調べて自分で段取りをし、リムジンでの東京タワー巡りの時にプロポーズをしたという事です。うーん、海老沼選手、なかなかやりますな(笑)。
夫婦仲は本当にいいようです。海老沼選手曰く、奥様は「気を使わないでいい詞、自分が自然体でいられる人。」だそうです。
厳しい体重管理が避けて通れない柔道の世界で最もきついといわれている「減量」の苦しみも元柔道選手の香菜さんは誰よりもその苦しさを分かち合う事が出来る存在。海老沼選手の減量中は香菜さんも同じ料に食事を制限しているのだそうです。まさに夫唱婦随ですよね。海老沼選手は照れ隠しで「ぼくの減量にかこつけてダイエットしてるだけじゃないですかw」なんて言ってますけど(笑)。
とにもかくにも仲が良さそうで何よりですし、アスリート同士のカップルというのは共感できる事や価値観がたくさんあるのでやはりいいですね。
公私に渡ってサポートしてくれる愛妻のためにもリオでは金メダルを取らなければいけませんね。
海外の強豪ライバルたちに対戦成績で圧倒的強さを誇る海老沼匡
海老沼匡が出場する男子柔道66kg級ですが、ライバルたちはどうなのでしょうか。
まず昨年の世界柔道王者、韓国のアン・バウル。このアンも得意技は背負い投げ。非常に安定している選手であり、格下の選手に不覚を取る事はほとんど無い選手です。ただし海老沼選手との対戦成績は0勝3敗。今年2月のグランドスラムパリでも海老沼選手に敗れています。
次に有力なライバルとなりそうなのが、モンゴルのダワドルジ。モンゴル相撲をルーツに持つだけに、非常に重心が低く相手にとっては崩しにくい選手です。しかしこの選手も海老沼選手とは相性が悪く、通算成績は0勝3敗。本番では対策を練ってくるはずです。
アン、ダワドルジに続くのがウクライナのザンタラヤ。元々はひとつ下の60kg級の選手であり、階級を上げてきた選手です。60kg級では世界柔道の優勝経験もあり、非常に試合巧者でスピードもあります。課題はやはり66kg級のパワー対策。この選手と海老沼選手の対戦はザンタラヤの0勝2敗となっています。
もう一人怖いのが、ロシアのプリャエフ。直近の世界柔道で2年連続準優勝の実力派です。ドーピング問題で出場が危ぶまれましたが、出場が決定。モチベーションも高く、非常に危険な選手です。上記三選手は海老沼選手から勝ち星を挙げられていませんが、この選手は1勝2敗と、一度土をつけています。海老沼選手にとっては最も警戒すべき相手かもしれません。
こう見てみるとわかるように、海老沼選手は海外選手に圧倒的な強さを誇っています。コンディション調整さえうまくいけば金メダルに最も近い存在である事は疑いようがありません。
女子52kg級・中村美里(なかむらみさと)リオでは笑わない中村美里の笑顔が見られるか?
プロフィール
生年月日:1989年(平成元年)4月28日生まれの27歳
出 身:東京都八王子市
身 長:157cm
階 級:52kg級
出身校 :渋谷教育学園渋谷高校
所 属:三井住友海上
好 物:バナナ
趣 味:バナナグッズの収集、お菓子作り
ケガに泣いたロンドン五輪後 復活の中村美里はさらに強く!
中村美里選手は2008年の北京オリンピック銅メダリストであり、北京、ロンドンに続いて3大会連続のオリンピック出場となります。
北京では19歳にして銅メダルを獲得、一躍天才柔道選手として注目されましたが、「金メダル以外は意味がない」と悔しがる姿が印象的でしたね。2大会連続となったロンドンでは初戦でまさかの伏兵、アン・グメ(北朝鮮)に敗れメダル獲得ならず。このリオにかける思いはわたしたちの想像を絶するものがあるはずです。
ロンドン後の中村選手はケガに苦しめられる日々でした。左膝前十字じん帯の手術で長期の欠場を強いられ、その後も後遺症による欠場などで万全の状態ではなく、リオ出場が危ぶまれた時期もありました。
しかしケガが癒えた後の中村美里の復活は凄いものでした。
2014年7月にグランドスラム・チュメリで鮮やかに国際大会優勝を果たし、2015年には世界柔道で優勝して女王の座に返り咲きます。12月のグランドスラム東京でも優勝、今年に入ってからも4月の選抜体重別で優勝、文句なしでリオ代表の座を掴みました。
中村選手の得意技といえば、何といってもその多彩な足技。特に小外刈はまさに中村選手の代名詞ともいえる切れ味を誇ります。その他にも足払い、小内刈、大外刈などで相手を崩していきます。そして足技で倒した後の寝技も得意にしており、相手にとっては脅威となっています。
とにかくケガから復帰後の安定感は抜群。日本女子柔道で未だに金メダルを取っていない階級はこの52kg級のみ。地獄から這い上がった中村美里選手が新たな柔道界の歴史の扉を開ける先駆者となってくれるはずです。
決して笑わない柔道選手・中村美里選手のプライベート、素顔とは?
中村選手といえば、世間のイメージは「決して笑わない」選手というものなのではないでしょうか。
北京で銅メダルを取った時も笑顔ひとつ見せずに悔しがっていた姿が印象的でしたね。
しかし普段の中村選手は全く違います。所属チームの選手の証言では、顔芸などの新ネタを仕込んできてはそれを披露し、チームを盛り上げる役割なのだとか。そして有名なのが大のお笑い好きという一面。好きな芸人はCOWCOW(あたりまえ体操で有名な漫才コンビですね)。お笑い番組のチェックは常に怠らず、その知識は相当なものだそうです。
中村選手の特徴といえば、その低音ボイスも有名ですね。中村選手、実はカラオケも結構歌うらしく、その魅惑の低音を生かして歌う男性の曲は、思わず聞いている女性を「惚れてまうやろ~」状態にさせてしまうほどの美声なのだそうです。
運動神経も抜群であり、ケガのリハビリ中に親しくなったというサッカーなでしこジャパンの岩渕真奈や阪口夢穂とはなでしこリーグ観戦をするほど親しい間柄です。柔道の足技に生かせるかもとやったサッカーのリフティングでは340回を記録(マジすか笑)。とにかくアスリートとしての能力自体が超一流なのです。
とにかく「笑わない柔道選手」というパブリックイメージとは裏腹に、素顔は普通の20代の女子なのです。「笑わない」というのは、中村美里自身の中で、金メダルを取るまでは笑わないと決めているのだそうです。
ただし、中村選手はこうも言っています。
「金メダルを取る事が出来た時、表彰台の上で心の底から笑えるのだと思います」
と。
今回こそ中村選手の本当の笑顔を見てみたいと思うのはわたしだけではないはずです。
コソボのケルメンディとの頂上対決なるか?金メダル争いは中村と二人の争いに
この階級で中村美里選手の最大のライバルになるであろう選手が、コソボのケルメンディ選手。中村選手がケガで欠場していた2013、2014年の世界柔道王者です。
ケルメンディ選手の一番の武器はヨーロッパ選手らしいそのフィジカル。とにかく体が強くて力が強いのです。パワー柔道ですね。実はこのケルメンディ選手と中村美里選手の対戦はまだ一度も実現していません。この階級では頂上対決として実現が期待され、大注目されているカードです。
リオでこの世界女王同士の初対戦が実現するのでしょうか。実現すればまさに夢のカードという事になるでしょうし、勝った方が大きく金メダルに近付くこととなるでしょう。
その他の注目選手は、地元ブラジルのミランダ選手。昨年の世界選手権では残り1秒というところで中村選手に逆転負けを喫しましたが、絶体絶命までに追い詰めた選手です。地元の大声援をバックに受ける今回はさらに手ごわさを増すはずですが、中村選手にとっても手の内は知り尽くしている選手。やりにくさは無いはずです。ちなみに対戦成績は中村選手の7戦全勝となっています。
次にルーマニアのキトゥ。前回、前々回の世界柔道準優勝者です。この選手もヨーロッパ選手らしいパワーを生かしたラフファイターですが、中村選手とは相性が悪く、3戦全敗と未だに勝ち星がありません。
ロシアのクジュティナも要注意人物です。今年に入ってからは南米開催の大会をターゲットに出場しており、明らかに全ての照準を南米リオのオリンピックに合わせてきています。中村選手との対戦成績も2勝5敗と、2度中村選手に勝っている不気味さもあります。
全体的に見ると、やはり対戦成績で中村選手が大きく勝ち越している選手が多いですね。やはり怖いのは初対戦となるケルメンディでしょう。あとは初対戦の伏兵でしょうか。それ以外とは勝負付けが終わっている感もありますね。
まあ中村選手に油断はこれっぽっちもないでしょう。卓越した技術に加えて、ケガという地獄を味わった中村選手は精神的にも非常に強くなって帰ってきました。金メダルを取って中村選手の笑顔を見るのが非常に楽しみですね。
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