2018ロシアワールドカップのアジア最終予選を戦っている日本代表は、4試合消化の10月時点で勝ち点7の3位という結果となっています。
仮にこのままの順位で最終予選を終えると、グループAの3位チーム(現時点では韓国w)とプレーオフを行い、それに勝てば今度は北中米・カリブ地区予選の4位チームとのホームアンドアウェー戦を戦い、それに勝つ事でようやくワールドカップ出場が決まるという、非常に厳しい道のりに挑まなければなりません。
というわけで、ワールドカップ出場はなんとしてもアジア最終予選で決めたいところであり、そのためにも何とか2位以内でフィニッシュする必要がありますが、試合内容などからもかなり不安視する声が出ており、ハリルホジッチ監督の手腕を疑問視する声もかなり上がってきているのが現状です。
日本サッカー協会が技術委員会を招集。ハリル解任への序章が始まった?
まず、最終予選の順位表や今後の展望などについてはこちらの記事をご覧ください。
アジア最終予選日本3位・サウジ首位は最悪の展開?今後の展望・残り試合は中東アウェー満載の地獄絵図
今後も非常に厳しい戦いが予想される日本代表ですが、もう一つ気になるニュースが注目されています。
日本サッカー協会が今月中にも技術委員会を招集してハリルホジッチの手腕も含めた検証を行うというものです。
まあ恐らく、この技術委員会でハリルホジッチ解任となる事は99%無いと思っています。協会としては、クギを刺しておこうという意味合いが強いのだと思いますね。次やっちまったら「クビ」ですよと。だからしっかりやってくださいねという事でしょう。今回でイエローカードを出しておいて、次は累積2枚でレッドカード退場(解任)です、という警告ですね。
協会的にもさすがにここまでの戦い方で「ヤバい」と思ったのでしょうね。メディアからもファンからも不満が噴出していますし。とにかく、11月15日のサウジ戦でもし負けようものなら、ほぼ確実にハリルホジッチは解任でしょう。後任監督はこれもほぼ間違いなく手倉森誠コーチでしょう。そこは協会内では既定路線だと思いますね。
内容的にあまりに衝撃的だったイラク戦とオージー戦
ハリルホジッチは監督としてどうなのか??
メディアでは擁護論もありますが、やはり批判的な論調がほとんどを占めていますね。
最終予選初戦のUAE戦のまさかの敗戦、2戦目のタイ戦は危なげなく勝ったものの、決めきれない消化不良感の残る試合。3戦目のイラク戦はホームでまさかのあわや引き分けかのギリギリ勝利、オーストラリア戦は防戦一方の引きこもり引き分け。
結果以上に内容が悪すぎますね。
特にオーストラリア戦とイラク戦は日本代表を追いかけてきたファンにとっては衝撃的な試合だったのではないでしょうか。イラク戦はカウンターから決定的なチャンスを何度も許して内容的には全くの互角、オーストラリア戦に至っては、最初から引き分け狙いかと思うほどにポゼッションを放棄していました。アジア相手にこのような戦い方はここ10年以上お目にかかっていませんね。
オーストラリア戦に関しては肯定的に見れば、イラク戦の課題を克服したとみる事も出来ます。グループ最強の呼び声高いオーストラリアとのアウェー戦に対してまずはしっかり守ってスペースを与えないというチームとしての決めごとは遵守されていたと言えます。最低限勝ち点1を持ち帰るというミッションですね。
結果的に見ればそのミッションは果たしたとはいえます。その意味ではハリル的にはある程度満足だったのでしょう。現実的な戦い方ともいえますね。志が低すぎるという批判も当然あるでしょうが。
ブラジルW杯で露呈した日本式ポゼッションサッカーの限界
アジア相手にポゼッションサッカーを展開してゲームを支配し、相手にほとんどチャンスを作らせずに勝つ。これがザッケローニ以来のこれまでの日本代表の戦い方でした。
しかし、アジア相手には無双状態でもあった日本代表のポゼッションサッカーが世界の強豪相手に通用しないという残酷な現実も、2014ブラジルワールドカップで露呈する事となりました。
アジアで勝ち抜くには日本のポゼッションサッカーはベストともいえる選択ですが、世界の強豪は日本がポゼッションでゲームを支配できるほど甘くはありません。世界で戦うためにはしっかり守備から入って少ないチャンスを確実にものにするというサッカーの必要性を感じたファンも少なくなかったでしょう。
守備からのショートカウンターを志向するアギーレ監督が就任したもののわずか1年で退任。そこで就任したのが、同じ方向性を持つサッカーの体現者であるハリルホジッチです。ブラジルワールドカップでアルジェリアを率いたハリルホジッチは、ほぼノーマークであったアルジェリアをベスト16に導き、圧倒的な力で優勝したドイツを最も苦しめたチームとして世界中の称賛を浴びました。
守備をしっかり固めて運動量で相手を圧倒し、奪ったら縦に早く、少ない手数でゴールに迫るというサッカーは、ある意味ディエゴ・シメオネ監督率いるアトレティコ・マドリードなどで成功している近年のサッカー界の成功モデルのひとつでもあります。近年のサッカー界ではトレンドとなりつつあるサッカーですね。
デュエルは世界基準で勝ち抜くための必須条件?
就任早々にハリルホジッチが打ち出したチームコンセプトが、「デュエル」。フランス語ですが、これを直訳すると「決闘」。つまり、「激しい闘志とフィジカルでボールを奪う、相手を抜き去る、などとにかく一対一の球際の争いに勝つ」事を目指せという訳です。
世界で戦うにはデュエルに勝つことが必要だという事ですね。この見立ては正論です。
日本は個の脆弱さを技術で補おうとしてポゼッションサッカーを志向しました。世界的には劣るフィジカルをカバーするために数的優位や足元の技術などを駆使して対抗しようとしたというわけです。しかし、日本の技術ではアジアでは勝ち抜けても世界では通用しませんでした。
そこでハリルホジッチは個の戦いに勝つことを最大目標に掲げたのです。個人での戦いに勝てるようになれば、日本の技術の高さはより生かせるという考え方です。これも至極正論で何も間違ってはいません。ハリルホジッチが代表選手の体脂肪率などに細かな注文を出すのも、デュエルに勝つためのフィジカル強化の一環です。
つまりハリルホジッチが目指すサッカーは、アジアで無双出来るサッカーではなく、世界で通用するサッカーという事なのです。
敢えて日本の優位を捨ててアジアの土俵で戦うハリルの無言のメッセージ
世界では通用しなかった日本の高い技術ですが、アジアでは他を圧倒するほどの存在でした。アジアのチームはフィジカルの強いチームは多いのですが、テクニックに関しては日本が圧倒的に上回る事が出来ていたのです。
日本がザッケローニ時代のアジア予選で全く危なげなくワールドカップ出場を決められたのは、自分たちがアジアで最も優れている武器を有効に生かしたサッカーをしていたからに他なりません。
しかしハリルホジッチはその武器をかなぐり捨てて、敢えてアジアの中では日本が他国に対して優位を保つことが出来ないデュエルを重視するサッカーへと舵を切りました。アジアではフィジカルや球際の強さで日本を上回るチームや個人はかなりあります。個人の強さ(巧さではない)で日本を上回るイラクやオーストラリアに大苦戦したのはその典型ですね。
つまり日本はハリルホジッチになって以降、自分の得意な土俵ではなく、相手の土俵で勝負しているといってもいいのです。
しかし世界と互角に戦うという目標を達成するのであれば、これは避けては通れない道とも言えます。個人同士の戦いでアジアを勝ち抜けなければ世界に出たって戦えるわけがない、というハリルからのメッセージでもあるとわたしは受け止めています。
非常に難しい問題です。アジアを確実に勝ち抜くのであればザックジャパンのサッカーを踏襲するのが一番無難ですが、世界で戦う事を念頭に置くのであればハリルの嗜好するサッカーが必須であるという事です。
日本は世界で戦うためのサッカーを創造するための産みの苦しみを味わっているというべきなのかもしれません。
アジアで勝つためのポゼッションか世界で勝つためのデュエルか?
本来であれば、ザック時代のポゼッションサッカーも現在のようなショートカウンターサッカーもどちらも使い分けられるチームを作るのがいいのですが、年間の招集日がごくわずかな代表では非常に難しいのが実情です。チームとしての練習が限られており、しかもほぼ全く別のチームの選手たちが招集される代表委おいて、チームコンセプトの徹底や連携強化などにおいて2つの全く異なる戦術を完璧に遂行させるというのは、どんな名監督であっても困難なミッションといえるでしょう。フォーメーションを変えるだけでも一苦労するのが現実です。
わたしはワールドカップで日本がベスト16、いやそれ以上上に行くためにはハリルホジッチが目指すサッカーは間違っていないと思います。ある程度引いてスペースを消してくるアジアの国と違い、世界の強豪は日本に対して前がかりになってきますのでスペースは出来やすく、手数をかけずにゴールに迫るという今のコンセプトは機能する可能性が高いでしょう。
ただし、世界でそれを披露するためにはアジアで勝ち抜かなければなりません。
アジアを勝ち抜くために以前のポゼッションサッカーに舵を切りなおすのか、それともこのままの路線で活路を開くのか。それとも監督を代えて第三の道を求めるのか。
日本代表が大きな決断を迫られている事は間違いないと思いますね。
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