サッカー日本代表は前半戦の正念場ともいえる10月のアジア最終予選の2連戦を1勝1分で終えました。
この結果によって2戦終了時勝ち点3が、4戦終了時点で勝ち点7となり、グループBでの日本の順位は3位と変わらず。
この10月のイラク戦、豪戦の振り返りと今後の展望、そして次戦への課題などを見ていきましょう。
ボール支配すらままならなかったイラク戦、オーストラリア戦
まず簡単に10月2連戦を振り返りましょう。
まずはホームのイラク戦。山口蛍の劇的なロスタイムゴールで勝ちましたが、実質引き分けの試合だったでしょう。イラクはアウェーでありながらラインを高く保って前掛かりとなっていました。ディフェンスも非常に統率が取れており、ショートカウンターも少ない手数でゴールに迫って、日本にとって何度も危ないシーンを演出しましたね。内容では五分五分。引き分けが順当な試合で日本にとってはラッキーだったと言わざるを得ません。
アウェーのオーストラリア戦ですが、これは内容的には完敗と言っていい内容でしょう。オーストラリアに中盤を支配されて押されまくりました。ポゼッションで優位に立っていたザック時代の面影がどこにもない試合でしたね。
オーストラリアもラインが非常に高く、裏に抜け出せる選手も裏に出せる選手もいない日本の攻撃陣はカウンター時以外はほとんどオーストラリア守備陣の脅威にはなっていませんでした。裏をつかれる心配がないので、オーストラリアディフェンスは安心してラインを高く保てましたね。中盤の底に長谷部、山口蛍という守備的MFを2枚並べた事で中盤での主導権を握られたのもポゼッションできなかった大きな要因でしょう。
この2試合を見ていて痛感したのは、やはりポゼッションは守備での大きな武器であったという事ですね。当たり前の事ですが、相手にボールを渡さなければゴールされる心配はないのですから・・
日本代表はすでにアジア相手に試合を支配するチームですらないという残酷な現実が示された2試合だったと思いますね。ハリルの目指すサッカーは世界基準なのかもしれませんが、少なくともアジアを相手に戦い抜くにはザッケローニのサッカーの方が親和性は高かったと言わざるを得ません。
日程の4割を消化して、日本は首位と勝ち点3差の3位。何とかプレーオフ圏内にとどまる
10月11日の試合をもって、アジア最終予選グループBの全チームが4試合を戦い終えました。全試合のうちの4/10、つまり4割が終了したという事になります。4試合終了時点での成績がこちらです。
順位 国 名 勝点 勝 負 分 得失点差
1 サウジアラビア 10 3 0 1 +5
2 オーストラリア 8 2 0 2 +3
3 日 本 7 2 1 1 +2
4 UAE 6 2 2 0 -1
5 イラク 3 1 3 0 0
6 タ イ 0 0 4 0 -9
相変わらず厳しい状況が続いていますね。
日本は9月の2連戦を終えた時点での3位から変わらず。グループ2位までが無条件のワールドカップ進出、3位でプレーオフなのですが、プレーオフ圏内にとどまってはいます。
オーストラリアは戦い方が非常に安定していますね。フィジカルゴリ押しサッカーからポゼッションを高めてパスをつなぐサッカーへの転換がようやく実を結んで、アジア相手であれば試合を支配できるほどに進化を遂げています。
首位に立っているサウジアラビアはオーストラリアにホームで引き分ける事が出来たのが大きかったですね。ホームではUAEをきっちりと3-0で倒しましたが、UAEの守備の酷さに助けられた印象です。あの守備陣から1点しか取れなかった日本は本当に何なのかと・・(苦笑
成績ほどの強さはサウジにはないと思っていますので、日本は11月のホームではきっちり勝たなければいけません。
イラクはさすがでしたね。ここは少なくともUAEと同レベルの強さがありますね。サッカーの質がいいです。後半戦は台風の目になる可能性すらあります。
タイは完全に脱落ですね。この中では明らかに力が一枚落ちるという印象です。
首位サウジが走る展開は考え得る最悪のシナリオ
日本はこの後、11月15日(火)にホームの埼玉スタジアムでグループ2位のサウジアラビアとの試合が控えています。これが10試合中5試合目という、ちょうど折り返し地点の試合となります。
これを終えると、次は来年3月まで約4か月間最終予選の間隔が空くこととなります。ホームという事もあり、絶対に勝たなければならない試合となります。負けはもちろんの事、引き分けも許されません。
負けか引き分けだとハリルホジッチ監督の進退問題が浮上する事となるでしょう。もし解任という事にでもなれば、コーチの手倉森誠新監督という事になるはずです。もちろんそんな緊急事態にならない事を望むのみなのですが・・
とにかくサウジアラビアが首位に立つという展開は最悪の展開と言っていいかもしれません。このままサウジが首位を走れば、2位をグループ最強のオーストラリアと争わなければならないからです。この展開が考えられる最悪のシナリオであり、今はその最悪のシナリオ通りに進んでいるという事ですね。
とにかく日本は残り試合が厳しいんです。サウジ、UAE、イラクという中東勢とのアウェー3試合が残っており(イラク戦は中立地)、ホームも勝ちを確実に計算できないオーストラリア戦が残っていますから。
というわけで、首位サウジとのホームでの11月15日の試合は絶対に勝たなければならないのです。
香川、岡崎、本田から失われた輝き。ザックジャパンエースたちの落日の時・・
日本代表は結果もさることながら、非常にここまでの戦いぶりの内容が悪いのが気になりますね。前述したように、ボールを支配する事が出来なくなってしまっています。相手にボールを持たせているというよりも、ボールを支配出来ていないという内容であることが深刻なのです。敢えて戦術としてポゼッションを放棄しているわけではなく、ボールを回せないという事が深刻さを物語っています。
縦に早くというハリルの信条は、前でボールを収められるフォワードや独力で決められるストライカーがいない現在の日本では無用なリスクを招く要因にしかなっていません。いたずらにボールロストを繰り返して相手に攻められる時間を多くして、結果守備に奔走して疲労してしまうという悪循環です。これならば、少なくともピンチを招く事の少ないポゼッションサッカーの方がリスク軽減される分大分マシですね。
香川真司、本田圭佑、岡崎慎司という、ザックジャパンの中核を担っていた中心選手たちはこれほどかと思うほどに輝きを失ってしまっています。
元々岡崎慎司が得点を量産できたのは右サイドを主戦場としていた時です。ワントップで機能している試合はほとんど見たことがありません。セカンドストライカータイプの岡崎慎司はワントップで輝けないという事をいい加減に気付くべきでしょう。
香川真司も全く同じです。香川真司のトップ下も同じく日本代表で機能しないことはザックジャパンの時に既に証明済みです。特にデュエル(一対一での強さ)を求める現在のハリルジャパンのサッカーに最も適合しにくいプレースタイルともいえるでしょう。香川真司というプレーヤーは狭いスペースでのパス交換や微妙なポジション取りによって相手を崩していくタイプであり、少なくとも日本代表では決定的なパスを出したり自力でゴールを奪っていくような選手ではないのです。
本田圭佑も全盛期のようなキープ力がないという事が、オーストラリア戦で証明されました。個人的には期待しましたが、オーストラリア戦を見る限りワントップは正直もうきついでしょう。トップ下も相手プレッシャーに耐えられないと思います。右サイドが主戦場となるでしょうが、本田の場合は決定力があり、さらに高さやヘディングの強さもあるので、相手セットプレー時の守備などを考えると外せないかもしれません。しかし確実に力は落ちていますね。
長く日本代表の顔として侍ブルーを背負ってきた三人ですが、落日は確実に迫っているといっていいでしょう。
清武をトップ下、大迫を1トップに固定 ボランチには中村憲剛、青山敏弘招集を!
ではどうすればいいのか?
ずばり、トップ下は清武弘嗣固定の一択ですね。彼の展開力や視野の広さは試合中で必ず決定的なチャンスを数回作ってくれます。さらにプレースキッカーとしても今の日本代表の中では図抜けた存在であり、セットプレーからの得点力は飛躍的に向上するでしょう。清武の出ていない試合のセットプレーには正直得点の匂いすら感じられません。
トップにはケルンの大迫勇也を招集すべきです。彼は現在の日本代表ではワントップを任せるのに最も適した選手です。11月の2連戦で彼を招集しなかったのは謎すぎて訳が分からないくらいですね。大迫勇也に関してはこちらの記事もご覧ください。
大迫勇也ワントップでハリルジャパンの得点力不足解消?日本代表のセンターフォワードに一番求められるものとは?
相手が疲れた後半ではスピードのある浅野拓磨を投入。これで得点力は今よりは上がるはずです。
左サイドは原口元気、右サイドは本田圭佑を基本線にして岡崎慎司や武藤嘉紀、斎藤学らで。
そしてボランチは長谷部誠はさすがに外せません。もう一人が難しいのですが、山口蛍は試合展開によっての守備固めとして使い、スタメンは是非とも中村憲剛を呼んでほしいですね。彼なら縦に速いパスもボールを散らす事も出来ます。少なくとも中盤を支配してポゼッションを高める事が出来るはずで、ピンチの場面はかなり減るでしょう。
守備が不安だという意見もあるでしょうが、CMFに展開力とゲームメイク能力に秀でた選手を入れなければ、ボールを支配する事もままならないという事はこれまでのハリルジャパンで散々見てきた事実です。
ボールを支配されて自陣のゴール前に迫られて数多くの危機を招くよりも、ポゼッション率を高める方が結果的に失点は少なくなるとわたしは思いますね。
守備と攻撃力を高いレベルで兼ね備えているという意味では、サンフレッチェ広島の青山敏弘でもいいでしょう。とにかく、このポジションが現在の日本代表の一番の弱点となっているところです。このポジションの選手選考は是非とも再考してほしい部分ですね。
ハリルの縦に早く!は崩してからでなければ意味がない
とにかく、この2連戦での課題を次こそは生かしてほしいですね。この内容で1勝1分で終われたという事は、まだ日本は持っているのだと考えて。
これまでは得点力不足だなんだといわれながらも、アジア相手にはボールを保持して回しながら試合を支配し続けてきた日本代表を見てきたわたしたちにとって、オーストラリアに主導権を握られ続けた試合はかなりショッキングなものでした。
イラクも日本を相手にディフェンスラインを下げることなく前がかりになってきていましたね。これまでならラインベタ引きのドン引きカウンター狙いのサッカーだったでしょう。
まさかオージー相手に日本がドン引き引き分け狙いの中東戦法をしてのけるとはね・・(苦笑
ハッキリ言って軽い絶望感が支配しているというのが正直なところなのですが、それでもやはりワールドカップには出場しなければなりません。そのためにも大迫勇也と中村憲剛は絶対に招集してほしいですね。
光明を見出すとすれば、オーストラリア戦での吉田麻也と森重正人でしょうか。オーストラリアの決定的な攻撃をファウルなしで何度も跳ね返していましたね。オージーの攻撃を防いだのですから自信は回復できたはずです。
あとは攻撃陣です。
カギは、「攻撃は最大の防御」という事。ボールを簡単にロストしない事によってピンチを未然に防ぐという事です。崩しもなしに縦に早くといっても相手にボールを献上する事になるのはここまででさすがにわかったでしょう。縦に早くと言うのは、相手守備が整っていないカウンター時には有効ですが、ブロックを敷いた相手には崩してからでなくてはさほど意味を持ちません。
ボールを回して選手も動き、裏を狙ったりサイドチェンジして駆引きしながらラインのギャップを作り、そこから縦に!でなければきっちりラインを敷いている相手は崩せません。
次のサウジ戦は戦い方自体を代えなければやられると思いますね。
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