サッカー日本代表ハリルジャパンは発足当初から深刻な得点力不足に悩まされています。
アジア二次予選でも初戦のホームでのシンガポール戦でまさかまさかのスコアレスドローに終わって大波乱を起こしたのは記憶に新しいところでしょう。
最終予選でも初戦のUAE戦で不可解な判定はあったものの、決定的なチャンスを決められずに敗戦の憂き目を見ましたね。続くアウェーのタイ戦でも圧倒的に試合を支配する展開の中、ゴールはたったの2得点に終わって課題解消とはなりませんでした。
まあこの日本代表の得点力不足をハリルホジッチの責任と見るのはいささかハリルホジッチに気の毒な気もします。それほどまでに日本代表の得点力不足は日本サッカーの「永遠の課題」とも言われている不治の病の様なものなのですから・・
岡崎慎司はワントップ向きの選手ではない 浅野拓磨は日本代表では途中出場が最も効果的
ハリルホジッチや前監督のザッケローニがここ数年の日本代表の基本システムとしているのが、4-2-3-1というシステムです。4バックに2ボランチ、2列目に3人の攻撃的選手を並べて、最前線にワントップという形です。
そしてそんな4-2-3-1のワントップとして君臨してきたのが岡崎慎司(レスター)だったわけですが、タイ戦では岡崎慎司は出番なしに終わってワントップは快速フォワードの浅野拓磨(シュトゥットガルド)が務め、見事に結果も残しました。
このサイトで何度も言っているように、岡崎慎司という選手は特性上、ワントップ向きの選手ではありません。彼は基本的にシャドーストライカー、セカンドトップでこそ生きる選手だと思っています。二列目のサイドでもいいでしょう。しかしワントップの選手ではありません。
では浅野拓磨でいいのか?浅野はスピードばかりが注目されますが、シュート力もあり、トラップも巧く、裏に抜ける動き以外にサイドに流れてチャンスメイクをしたり、前線からの守備もしっかり出来るのでワントップとしても機能するとは思います。
しかし、浅野の良さを最大限に生かせるのはやはりスペースが広大にある場合です。相手が前がかりになって攻め込んでいる時や相手がディフェンスラインを高く保ってポゼッションを高めている場合、相手が疲労して最終ラインと前線との間が間延びしてスペースが出来ている場合です。
なので、現時点での浅野拓磨のベストの使い方は後半からのジョーカー的な役割であると思っています。
ではワントップの布陣で臨む場合に日本代表として最も適任者は誰なのか?その答えがようやく出つつあります。
ケルン3年目にしてようやく本職のセンターフォワード起用で開花した大迫勇也の才能
日本の長年の課題であるセンターフォワード。この積年の課題を解消してくれる特効薬ともいえる存在が、ドイツブンデスリーガのケルンに所属する大迫勇也です。
ケルンに移籍して3年目となる大迫が、ブンデスリーガでようやく本領を発揮し始めています。
昨季まではトップ下やサイドなど2列目での起用が多く、慣れないポジションで得点を挙げられませんでしたが、今季はようやく本職のフォワードとして起用されており、完全に監督の信頼を勝ち得て結果を残しています。
ケルンのサポーターは非常に厳しい事で知られており、前線の選手が得点を取れなければ容赦ないブーイングにさらされます。
大迫勇也は昨年コンスタントに試合に起用されましたが、2列目での起用が多かったことも影響してリーグ戦ではわずかに1得点に終わりました。当然フォワード登録の選手としての1得点に対して、ケルンのファンは大迫に激しいブーイングを浴びせ続けましたが、それでも監督は大迫を起用し続けましたね。ここに大迫の有用性が見て取れます。
今季は初めてといってもいいケルンでのツートップでのセンターフォワード起用。ようやく大迫が最も真価を発揮できる状態が整っての大爆発。とはいってももともとこれくらいの結果は残せる選手であり、条件が整っただけなんだと思いますね。
二列目の攻撃力を生かす事が出来る大迫のポストプレーの上手さ
大迫勇也がなぜワントップで輝けるのか?
その秘密は大迫のプレースタイルにあります。
大迫勇也ほど、現在のワントップに必要な要素を兼ね備えている日本人選手はいません。
182cm、73kgという体格からは線が細いという印象ですが、大迫のフィジカルは日本人選手の中でもトップクラスを誇ります。特に特筆すべきは体の入れ方や手の使い方のうまさであり、これらによって最前線でうまくボールを収める事が出来るのです。
最前線の位置でボールを収める事によって時間を作る事が出来、二列目以降の選手の攻撃参加を促す事が出来るという訳です。
現在の日本代表の一番の長所は、二列目の選手に得点力を秘めた選手が沢山いるという事でしょう。
本田圭佑、香川真司、清武弘嗣、原口元気、宇佐美貴史、小林悠ら、二列目の選手には起用を誰にするのか迷うほど層が厚く質量ともに充実しています。
現在の日本代表におけるワントップは、ワントップの選手自身が得点を取る事はもちろん大事なのですが、同じように大事なのが二列目の選手の攻撃力をどう生かすか?という事であると思います。
その意味では相手ディフェンダーのプレッシャーを受けながらボールをキープして2列目3列目の攻撃参加の時間を作る事が出来る大迫勇也はそれだけでハリルジャパンの求めるワントップ像の条件を満たしていると思いますね。
理想は独力でゴールを取れるセンターフォワード。しかし現実的に考える事が重要
最前線でボールを収めるだけでなく、そこからの展開力も大迫の大きな武器です。
ケルンでトップ下やサイドを任された事からもわかるように、正確なパス能力や視野の広さも大迫の大きな武器です。
周りの選手を使う事にも長けているため、アシストも出来る選手なのです。加えて運動量も豊富で、前線からの守備も怠らない献身性も兼ね備えています。
そんな器用なプレースタイル故に大迫勇也はしばしば得点力が無いという批判にさらされてきました。
しかし、元々日本代表でワントップの位置に入ってガンガン点を取れる選手なんていません。イブラヒモビッチやスアレスのような選手は日本にはいないのです。というか、アジアの国全体を見渡したってどこにもいません。
ですから、センターフォワードとしてポストプレーに長けて周りを生かせる大迫勇也という選手は、現在の日本代表における現実的な選択肢としてはベストであると思うのです。
強引なシュートやエゴイストを褒める日本のサッカー界への疑問
ひとつだけ大迫勇也のウイークポイントを挙げるとすれば、シュートが消極的な面でしょうか。
要するに得点に対してあまりガツガツしていないという点ですね。
シュート技術やトラップ、そしてトラップしてからのシュート体勢に至るまでの速さや正確性は完全にワールドクラスです。
しかし、打てるのになあという場面でパスを選択する場面もしばしば見られ、その辺りがケルンサポーターのブーイングを受ける要素の一つでもあるのだと思いますね。確かに自身のゴールに関して執着心が無いと感じる時はあります。
しかし、個人的にはどんな場面でも自分自身で絶対に決めてやろうというタイプは正直あまり好きではありません。
よく周りに完全フリーな選手がいる場面でも自身でシュートを打っていくような選手がいます。確率的に考えれば、絶対にパスした方が得点の可能性が高いと言える場面でも自分でシュートを打っていく選手。
日本のサッカー中継を見ていると、解説者などはこのような選手を褒めたたえる傾向がありますね。素晴らしい積極性だとかゴールへの執念だとか言って。
しかしわたしはそんな風潮には少し疑問を抱いてしまいます。
素晴らしい選手とは、その局面で最もゴールできる可能性の高いプレーを選択できる選手だと思います。自身で打つよりもパスした方が得点できる可能性が高いと思えば、瞬時にパスを出せる選手。この判断が出来る選手がチームにとっては最も優れた選手でしょう。
その意味でも、現在の日本代表のセンターフォワードは大迫勇也で行くべきだとわたしは思いますね。異論は受け付けます(笑)。
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