いよいよ9月から始まるサッカー2018ロシアワールドカップへのチケットをかけたアジア最終予選。
ハリルホジッチが監督になって1年以上が経過し、ハリルの目指すサッカーや求める選手像なども徐々にではありますが見えてきましたね。
そして試合ごとに招集される代表の選手選考には毎回大きな関心が寄せられています。
そんな中、ハリルジャパン入りし、ロシアワールドカップに執念を燃やすJ1歴代最多得点を更新し続けるJリーグ屈指のストライカーがいます。
川崎フロンターレ所属の大久保嘉人選手です。
大久保嘉人選手のプロフィール
生年月日 :1982年6月9日生まれの34歳
出 身 地:福岡県京都郡苅田町
身 長:170cm
体 重:73kg
血 液 型:A型
効 き 足:右足
出 身 校:国見高校
所属チーム:川崎フロンターレ(J1)
ポジション:フォワード、ミッドフィールダー
2013シーズンから3年連続でJ1得点王に輝く、日本を代表する点取り屋です。3年連続得点王はJリーグでは史上初となる快挙であり、今年は前人未到の4年連続得点王がかかったシーズンを戦っている大久保選手。2016シーズンもここまで(2016.7.14現在)12得点を挙げ、サンフレッチェ広島のピーター・ウタカ選手に続く得点ランキング2位につけています。
大久保嘉人のクラブチームでの略歴
高校サッカー界の名伯楽・小嶺忠敏監督率いる名門・国見高校では高校三冠を達成し、インターハイと高校サッカー選手権両方で得点王に輝くなど、高校サッカー界のほぼすべてのタイトルを総なめにして注目を集めた大久保選手は、J各球団の熾烈な争奪戦の末に、セレッソ大阪入団を決めます。
入団初年度からトップチームに定着し、初ゴールを挙げるなど活躍しましたが、セレッソは残念ながらJ2降格となってしまいます。しかし大久保は残留を決意し、J2で得点ランク2位に輝く大活躍で1年でJ1へと戻ってきます。
そしてU23アテネ五輪代表として迎えたアテネオリンピックで大久保選手は2ゴールを挙げる活躍を見せ、世界の各クラブから注目を集める存在となり、アテネ五輪後にスペイン・リーガエスパニョーラのマジョルカへの期限付き移籍が決定。初試合でいきなり1ゴール1アシストという鮮烈なデビューを飾りますが、その後は試合に出られない期間が続き、降格争いをしていた最終盤に連続ゴールを挙げるなどの活躍を見せ、マジョルカのリーガ残留に大きく貢献しました。
この活躍で移籍期間の延長を勝ち取りましたが、2年目のシーズンは思うようにゴールが挙げられず、結局完全移籍には至らず2006年6月にセレッソに復帰します。ところがシーズン途中だったセレッソはこの年大不振で、結局またもJ2降格となり、大久保選手はヴィッセル神戸へと移籍します。
そして2009年1月にはドイツ・ブンデスリーガの古豪・ヴォルフスブルグに移籍。日本代表の同僚、長谷部誠とともにドイツカップで優勝を果たす等、タイトルを獲得したが、出場機会を得られず、5か月後に再びヴィッセル神戸へと移籍。神戸では中盤での起用が多くなり、ケガも重なって不本意なシーズンが続いた。2012シーズン後には川崎フロンターレへと移籍。
川崎ではフォワードに固定され、移籍初年度の2013年に26点を挙げ、いきなり得点王に輝きます。2014年には18ゴール、2015年には23ゴールで3年連続得点王を獲得し、史上初のJ13年連続得点王という称号を手にしたのです。
大久保嘉人の代表歴
大久保選手の日本代表の通算キャップは60試合。得点は6得点です。初招集は2003年。代表デビューは2003年5月の韓国との親善試合。ジーコ監督の時ですね。
ワールドカップには2010南アフリカ大会と2014ブラジル大会の二度出場。アンダーカテゴリーではU23としてアテネオリンピックにも出場しています。
ジーコジャパンの時には途中から招集されなくなり、結局2006ドイツW杯には出場できませんでしたね。オシムジャパンでは当初は招集されませんでしたが、オシム就任から1年後に初招集され、以降は代表に定着、途中でオシムが病魔に倒れ、岡田ジャパンになった後も中心メンバーとして呼ばれ続けました。
南アフリカW杯後に就任したザッケローニジャパンでも当初は招集されましたが、2012年のアイスランド戦以降はメンバー外となり、結局アジア最終予選でも全くお呼びがかからない状態でした。
しかしブラジルワールドカップ直前の本戦メンバー発表でサプライズ選出。Jでの活躍によって、フル代表の得点力不足を解消する切り札的存在としての代表入りでした。
しかしブラジルワールドカップで日本代表は1分2敗で1勝もできずにグループリーグ敗退。
2015年に源監督のハリルホジッチが監督になって以降は一度も招集されていないというのが現状です。
日本代表永遠の課題、得点力不足。切り札として待望論が渦巻く大久保招集
サッカー日本代表の永遠のテーマとされているのが、「決定力不足」。特に試合を決めきれる決定力のあるフォワードの不在というのはどの監督の時代にも言われている事です。
現監督のハリルホジッチもそうです。アジア二次予選の初戦、格下のシンガポール相手にまさかの引き分けで終わった時には深刻な得点力不足を心配する声がメディアを中心に叫ばれました。
そしてそんな時に必ず挙がるのが、この男の名前です。
3年連続J得点王であり生粋のストライカー、大久保嘉人。
Jリーグ一美しいと言われている川崎フロンターレのポゼッションサッカー。そんな川崎の中でまさにストライカーとしてゴールを量産している大久保嘉人待望論が湧き上がるのは当たり前といえば当たり前です。それだけの実績も結果も残しているのですから。
「大久保は代表に必要か、それとも不要か?」そんな議論が最高潮に達したのが、6月に行われたキリンカップの代表選手発表の時です。代表メンバー発表の場でハリルホジッチは敢えて大久保選手に対して具体的に言及したのです。
大久保選手はキリンカップメンバーには選出されていませんでしたが、選出外の選手に対して具体的に触れるという事は異例中の異例の事であり、そういう意味でもやはり大久保選手の影響力はやはり凄まじいものがあるのだと再認識させられました。
キリンカップ代表発表でのハリル発言と大久保のコメント
ハリルホジッチの大久保招集外に対するコメントは要約すると以下のようなものです。
「一番良いゴールゲッターです。かつてA代表で活躍していた時の映像も見た。ただ年齢も考えなければならない。そして、何故A代表で多くの結果を残していないのかということも。彼には特徴があり、ペナルティーエリア付近でしか動きが見られない。天性の得点感覚があるが、A代表では組み立てに参加しながら、守備にも戻らないといけない。これまで大久保だけを見た試合もあるが、A代表で生きるイメージがどうしても浮かびませんでした。正直に言うと、これまで何十回も選出を躊躇してきました。」
とても誠実なコメントだと思いますね。世間の大久保嘉人待望論に対しての具体的且つ論理的な説明だと思います。もちろん、大久保選手がチームにフィットするかどうか、そして大久保選手のプレースタイルの特徴など、異論がある人も多いでしょうが、そこはそことして、実に丁寧な理由です。
実際にA代表復帰を熱望してきた大久保選手もこのコメントに対して、
「自分の名前が出るのはありがたいことだし自分はプラスに受け取っている。代表に入りたい気持ちはあるし、そのためにもJリーグで結果を出し続けなければ。そうじゃないと『大久保』の名前も出てこないわけだし」
と非常にポジティブなコメントを残しています。
川崎Fの完成度の高いサッカーが逆に大久保選手の評価を狂わせた?
ハリルホジッチのコメントを見れば、彼は大久保嘉人のイメージを、ゴール前で最終的な働き(得点を挙げる事)をする選手だと見ている事が伺えますね。
組み立ての参加と守備に不安があるとも受け取れる発言もあります。
確かに川崎に移籍してから大久保選手のプレースタイルは大きく変わりました。川崎のベースは試合を支配するポゼッションサッカー。中盤には日本を代表するパサーである中村憲剛がおり、その他にも大島など技術と想像力溢れる選手がたくさんいます。
つまり、大久保選手はストライカーとしての役割に徹する事が出来る環境にいるのです。下がってボールをもらわなくても中盤から素晴らしいパスが出てくるのですから。チームに合わせたスタイルに変化して、結果としてそれが3年連続得点王になったという事です。
試合を支配するタイプの川崎では当然守備の時間は少なくなりますし、組み立ててくれる中盤はいるので、フィニッシャーとしての動き出しや相手ディフェンダーとの駆け引きに集中できるのです。
川崎フロンターレというチームに移った事によりストライカーとして開花した大久保選手ですが、結果としてそんな素晴らしいチームにいる事で逆にハリルホジッチにはフィニッシャー専門というイメージがついてしまっているのではないでしょうか。皮肉なものですね。
大久保はA代表で輝けない?いやいや南アフリカW杯では裏MVPの働きでしたよ
ハリルホジッチも語っていますが、大久保選手がA代表であまり結果を残していないというのはネットなどでもよく見られる意見ですね。
本番直前にサプライズ招集されたブラジルワールドカップでは思うような結果を残せず、口さがないファンたちには大久保選手を戦犯の一人として名前を挙げる人もいます。
しかしこれに関しては異論大ありですね。
大久保選手は確かにブラジルW杯でチームにフィットしているとは思えませんでしたし、貪欲にゴールを狙う姿勢が空回りしていると感じる事もありました。
しかしブラジルでの招集で監督であったザッケローニが大久保に期待したのは、J得点王ストライカーとして得点を挙げる事。得点力不足の解消のためだったのです。大久保選手がひたすらゴールに拘ったのは当然だと思います。
チームとの連携が取れておらず、孤立しがちだったのは致し方のない事です。本番直前での招集ですから。これに関しては大久保選手にも周りの選手にも非はありません。敢えて言うのであれば、直前に読んでおいて、本番までに成熟させられなかった監督の責任だと思いますね。
それにブラジルの結果だけで語られがちな大久保選手の代表歴ですが、岡田ジャパン時の南アフリカ大会での活躍を見ればその貢献度は明らかです。
アンカーを置いた守備的4-5-1の左サイドハーフでスタメンフル出場を果たした大久保選手は、岡田武史監督の守備的戦術もあって、左サイドの守備に追われる時間が長く、得点を奪うことは出来ませんでした。しかし献身的に前からボールを追いかけ守備をしながら、マイボールになると前線へ駆けあがって攻撃参加をしていました。ああいう泥臭い仕事も厭わないチームへの献身性こそが南アフリカワールドカップでのベスト16の原動力だったとわたしは思っています。
大久保嘉人は決してゴールに貪欲なだけなエゴイストではないのです。
迷うならば招集して試合で試してみるべきでは?
結論から言いますと、大久保選手を監督がどう見ているかという事になるんだと思います。
ハリルホジッチは大久保選手の本質をゴール前で決定的な働きをするフィニッシャーであるという考え方の様です。一方で連携や守備での適応に不安を持っており、年齢的な事を考慮して、今は招集を躊躇している・・と。
確かにここ数年の大久保選手は優れたフィニッシャーとして活躍しています。ただし、トップ以外も勿論出来ますし、周りを生かす動きも出来る選手です。
ハリルホジッチ監督は悩んでいるのであれば、いっそ大久保選手を呼んで試合で試してみてはと思うのですがどうでしょう。
それを見たうえで、監督の求めるタスクが実行できるかどうか見てみればいいと思いますね。
それによってお眼鏡にかなわなければ仕方ないですし、フィットするようであれば切り札が一枚増えるという事ですし、何よりどっちだったとしても招集に関する論争も落ち着くと思いますしね。
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