ワールドカップアジア2次予選のシンガポール戦とカンボジア戦、アウェー2連戦が終わりましたね。
結果はシンガポール戦3-0、カンボジア戦2-0でしたが、まあ勝つのは当たり前として、問われるのは内容というのは衆目一致するところでしょう。
そこでメディアの論調として目立つのが、シンガポール戦で先発、カンボジア戦で後半開始からピッチに立った浦和MF・柏木陽介の評価急上昇です。
上の記事でも書いてある通り、確かに2次予選の東南アジアアウェー2連戦における柏木の働きは特筆ものであったと言えます。3列目の位置から効果的な縦パス、正確なロングフィードを何本も前線に供給していました。特にスコアレスで折り返したカンボジア戦は、柏木が投入された後半から明らかに攻撃が活性化しました。
このシンガポール・カンボジア戦前のW杯予選 試練の(笑)アウェー2連戦。本田のスタメン危機!?理想のスタメン?これっしょ?wの中でも書いた通り、ハリルホジッチ体制になってからの日本の深刻な課題は3列目(いわゆるボランチ)からの展開力不足にある事は明らかです。柏木の起用は、その課題克服に向けたテストであると言え、この2連戦の内容からしてそのテストとしてはとりあえず及第点をあげられる内容だったと思います。
相手のレベル的にどうなのさ?
「とりあえず」及第点と書いたのは、相手のレベルがあまりにも低すぎたためです。
この2戦はどちらのチームも前線に一人残して後は自陣で守備をするというカウンター戦術(4バックと5バックの違いはありますが)で戦っていました。便宜上カウンターと言いますが、実際はほぼ攻撃放棄の0-0のスコアレスドロー狙いの戦術です。
前線の選手はゴール前でスペースがなく難しい状況でしたが、相手がゴール前に密集していた分、柏木の位置には殆ど相手選手からのプレッシャーはなく、ほぼノーマークでボールを持つことが可能でした。
この状況は今回のような圧倒的な実力差がある場合の、ある意味「超格下限定」の試合でこそと言えるでしょう。
相手が格上であれば3列目くらいには普通に相手もプレッシャーをかけてボールを奪おうとしますし、格下であっても時間帯によってはボランチや最終ラインにまでプレスをかけて勝負をしかける事も当然あります。
今回はノープレッシャーでパスを出せた上に、そのパスをカットされても殆どカウンターの脅威が無かったという、リスクゼロの状態でのプレーだったと言えます。
日本とシンガポール・カンボジアの力差を考えたら、厳しいようですがこれくらいは出来て当たり前だと思うのです。
じゃあ、なぜ柏木が入る前のカンボジア戦の前半はあんなに酷かったのかというと、山口蛍と遠藤という守備的なMFを2人並べたからに他なりません。山口蛍と長谷部のコンビでさえボランチからの効果的な攻撃は出来ていなかったのに、長谷部以上に守備的な遠藤を入れればこうなる事はある程度予測できた事です。二人ともゲームメイカーというタイプではないのです。
遠藤は前半だけで交代を命じられましたが、これは遠藤の責任ではなく2人の守備的MFを並べたハリルホジッチ監督の責任であると声を大にして言いたいですね。
どちらにせよ、柏木と遠藤では同じポジションでも全く正反対の特性を持った選手である以上、この結果だけを見て柏木>遠藤と短絡的に決めつける事が出来ないのがサッカーの奥深さであり、面白さなんですけどね。
ハリルさんは何が試したかったのさ?
この2連戦を見て思ったのは、ハリルホジッチ監督の度胸の良さですね。
アジア2次予選というワールドカップをかけた公式戦で、いかに超格下とはいえ、なかなかテストメンバーで臨むことは出来ません。そんな事をしてもし負けたり引き分けたりしようものなら、世間の大バッシングを浴びるであろうことは間違いないからです。
しかしこの2連戦のメンバーを見ると、明らかにハリルホジッチは選手や戦術のテストを兼ねてやっていましたね。
カンボジア戦のテレビ解説者は「これで簡単に勝てるほどアジアの戦いは甘くない」とかなかなかハリルに対して辛辣な事も言ってましたけど、ハッキリ言ってカンボジアなんていかにワールドカップ予選であろうと、「試したいことを試しながら勝つ」事など当たり前に求められる相手です。ただこれまでの監督は万が一のリスクを考えてか、なかなかそれが出来ていませんでした。
そういう意味では、大事な最終予選前にテストしながら勝利するというミッションに挑んだハリルホジッチには個人的に拍手を送りたいと思います。
ただ、カンボジア戦のボランチ山口・遠藤起用に見るように、何が試したかったのかがイマイチ見えてこないのが厄介なところなんですよね。
まあ、シンガポール戦では香川抜きの布陣でどうなるか、清武トップ下とその後ろ柏木での攻撃面での連携を見るなどなんとなくわかるんですが、カンボジア戦はわかりましぇん(笑)
敢えて言うならカンボジアクラスの相手であれば、守備的ボランチ2人の組み合わせでもいけると思ったとか、世界ランク上位クラスであればボール奪取と守備優先でこの2人を使う事も頭にあってのシミュレーションだったのか・・・まあよくわかりましぇん(爆汗)
ひとつだけ言えるのは、最終予選までに使える選手と使えない選手とをしっかり見極めるための実践テストであったことは間違いないだろうという事でしょうか。
ワールドカップ出場までの課題
柏木の出来が光ったこの東南アジア2連戦でしたが、相手プレッシャーが激しさを増す最終予選や、さらにその先のW杯本戦で同じようなプレーが出来るかどうかは未知数と言わざるを得ません。
相手に主導権を握られるようなチーム相手であれば、カンボジア戦の前半に使った山口蛍と遠藤のコンビの方が機能する可能性もかなりあると思います。
こんな事を言ってしまっては身も蓋もありませんが、最終予選以降の戦いは、あまりこの2次予選の結果や内容は意味をなさないと個人的には思います(レベル的にはシリアは辛うじて参考になるかも)。
最終予選までにどんな相手と親善試合が組めるかがポイントでしょう。ある程度の力のある相手と戦った時に柏木のあのパスがどれくらい通るのか?相手からのプレッシャーがあってもあの精度が維持できるのか?を見なければ評価の仕様がないのが正直なところです。
とはいえ、次の試験には間違いなく使ってもらえるだけの結果は見せたので、前任者・アギーレが探し出す事の出来なかった遠藤保仁の後継者として期待したいですね。
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