日テレクラブワールドカップの中継・ニュースのロナウド連呼に見る“スターシステム”の功罪とは

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鹿島アントラーズが日本勢として、アジア勢として初の決勝進出を果たし、スター軍団、レアル・マドリードも順当に勝ち進んで決勝進出を決め、日本チームと銀河系軍団が決勝で対戦するという盛り上がりを見せているクラブワールドカップ。

しかし、毎年のこととはいえ、クラブワールドカップを独占放送している日本テレビの中継にはフラストレーションが溜まってしまいます。本当にうんざりしてしまうほどに・・

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サッカーファンではないうちの母のレアル戦前の何気ない一言

今日のレアル戦の中継が始まる前、夕食を一緒に食べていた母が一言、

「あ、そういえば今日はロナウドの試合があるんでしょ?あの人、凄いねえ」

わたしは思わず

「クリスティアーノ・ロナウドは当然凄いけど、チームとしても凄いんだよ。ロナウド以外も凄い選手がいっぱいいるし」

と答えました。

この光景、昨年も確か同じような光景だったような気がします。

昨年のクラブワールドカップ時の母は、「メッシいつ出るの?」だったと記憶しています(笑)。

まあサッカーにほとんど興味のない母が知っているほどに凄い選手なのは間違いないんですけど、その他のバルサやレアルの選手はほとんど知らないんですよね。これってわたしが思うにメディアの責任によるものが大きいんだと思います。

実況もニュースも「クリスティアーノ・ロナウド」一色

今日(12月15日)は、2016クラブワールドカップ準決勝が行われました。レアル・マドリードが登場するという事で、日本テレビが夜7時から生放送したのですが、予想していたこととはいえ、もう見るのも嫌になってしまうものでした。

とにかく最初から最後までクリスティアーノ・ロナウド一色。試合前もクリスティアーノ・ロナウド抜きのカットの多いこと、多いこと(笑)。

試合中もクリスティアーノ・ロナウドがボールを持つとひときわ大きな声で「そしてクリスティアーノ・ロナウド!!」とか「ロナウドにボールが渡った!!」「ロナウドのシューーーートッ!!」

ロナウドがボールを持つとテンションが2段階くらい上がってましたね。

試合後の日本テレビ「ニュースZERO」のスポーツコーナーでのこの試合のダイジェストも、クリスティアーノ・ロナウドの場面がほとんど。試合のダイジェストというよりも、さながらクリスティアーノ・ロナウドのボールタッチ集といわれてもいいほどでした。ベンゼマのゴールシーンもおまけみたいな扱いですし、その他の選手、モドリッチやクロース、バスケス

とにかく試合中も試合前も試合後も「ロナウド、ロナウド、ロナウド・・」。「お前はロナウド教の教祖か?」って思わず関西風のツッコミを入れたくなっちゃいましたよ(笑)。

これだけロナウド押せば、サッカーにあまり詳しくないうちの母みたいな人は頭に「ロナウド」って刷り込まれちゃうんでしょうね。しかし逆にそれ以外の選手は知らない・・って感じでね。

レアルの凄さはロナウドだけではない モドリッチもクロースもみんな凄いんだよ

ハッキリ言って、レアルのクリスティアーノ・ロナウドは凄い選手です。サッカー界の歴史に残るレジェンド選手なのは間違いありません。

しかしレアルには他に凄い選手がたくさんいます。

今日得点を決めたベンゼマは得点を取るだけではなく、ディフェンダーを引き付ける動きでスペースを作ってロナウドの得点のおぜん立てをする選手ですし、クロースやモドリッチはその技術の高さや視野の広さを生かして前線のベンゼマやロナウドに決定機を作り出すパスを出します。右ウイングのバスケスは、サイドで何度もスプリントを繰り返し、豊富な運動量でサイド攻撃の機転の役割を果たしていました。

ロナウドの得点の多くは、これらの選手の凄さがあってこその得点なのです。レアル・マドリードというチームの凄さは決してクリスティアーノ・ロナウド個人の力ではないのです。

もちろんロナウドの能力はこのスーパースター軍団の中でも一番なのかもしれません。しかしロナウドと他の選手との能力差は、少なくとも日本テレビの中継やニュースなどにおけるCロナと他選手との露出ほどの差はありません。

それは恐らくサッカーファンの人であればよく知っている事実でしょう。

しかしこれほど1選手に偏った放送をしていれば、余りサッカーに詳しくない視聴者などは間違ったイメージを持ってしまうのではないでしょうか。

わたしは是非ともこの一連の日テレのサッカー中継やスポーツニュースをレアル・マドリードの選手に見せてほしいですね。もちろんオール通訳付きで。

選手たちはどう思うでしょうか?恐らく当のクリスティアーノ・ロナウド自身が「やめてくれ」と思うのではないでしょうか。

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メッシ、Cロナ、トーレス・・CWCで目立つ特定の選手に偏ったスターシステム

日本テレビのこういったスターシステムは何も今年に限った話ではありません。

過去のCWCでも似たようなものです。

例えば、バルセロナがヨーロッパ代表として出場した2015年は「メッシ、メッシ、メッシ」でした。記憶に新しい人もいるでしょう(まあ去年はネイマールもかなり押してましたが笑)。

一昨年2014年はレアル・マドリードだったので今年と同じように「ロナウド、ロナウド、ロナウド」でしたね。

2012年のCWCはあまり日本になじみのあるスター選手がいなかったチェルシーでしたが、既に下り坂だったフェルナンド・トーレスを推していた記憶がありますね。ルックスいいしスター性はありますもんね(笑)。日本でも人気あったしね。実力的には当時のチェルシーにももっとすごい選手いっぱいいたんですけどね。

とにかく日本で知名度のある選手、ルックスの良い選手、話題性のある選手がいると全力で推しますよね。んで実力以上のスターへと祭り上げます。日本のメディアの大好きな「スターシステム」というやつです。

こうなると、一人の選手に注目が集まりすぎてサッカーの試合本来の面白さという、サッカーの本質がぼやけてしまうように感じます。

例えば、メッシやクリスティアーノの影でチームを支えている選手たちの凄さやチームとしての戦術性の高さ、監督の個性や試合自体のレベルなどなど・・こんなサッカーの本来の醍醐味を視聴者に伝えるという事を放棄してしまっているとさえ感じてしまいます。

一選手の活躍だけに注目して見てもらったとしても、サッカーというスポーツの面白さを伝える事が出来なければ、見てくれた人たちのほとんどは一過性の視聴者で終わってしまうでしょう。サッカーにあまり興味のない視聴者にサッカーファンになってもらう。これが一番大事だと思うのですが。「C・ロナウドファン」や「メッシファン」ではなく、「サッカーファン」にね。

1選手への興味ではなく、「サッカーというスポーツ」への興味となるような放送を

もちろん、中には1スター選手への興味から入って、最終的にはコアなサッカーファンになる人もいるでしょう。そういう意味では「スターシステム」は悪い事ばかりともいえない事は十分承知しています。

しかしやはりもっとサッカーの奥深さや本質といった事にも言及してほしいのです。ロナウドが得点したという事実だけではなく、そこに至るまでの経緯や他の選手の貢献、そして欲を言えば戦術的なサッカーの面白さなどを。攻撃的選手ばかりピックアップするのではなく、守備の中心となっている選手の凄さなども視聴者には伝えてほしいんです。

海外のサッカーのメディアや掲示板などを覗いていると、そのサッカーに対する見識の深さに驚かされます。

「ああ、こんな見方もあるんだ?」と驚かされますね。しかもほとんどのファンは物凄い深いところまで見ています。まさにサッカーという「スポーツ」を楽しんでいるのがありありとわかります。

もちろん、日本はサッカーがプロ化されてまだ20年ちょっとという歴史というのも大いに関係はあるのでしょう。

しかし、日本にサッカーというスポーツを文化として根付かせていくためには、メディアの働きも重要です。特に普段はサッカー中継を滅多に見ない人たちがサッカーに触れる機会となる地上波のテレビ中継はサッカーの本当の魅力を伝える絶好の機会なのです。

大手のメディアにはサッカーを中継する以上は、少しでもサッカー本来の魅力が伝わるような報道の仕方を心がけてほしいですよね。

うちの母が「ロナウド出るんだって?」じゃなくて、「レアルの試合があるんでしょ?」と言うようになったら嬉しいですね。

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