2016年大会では鹿島アントラーズが決勝進出を果たし、あのレアル・マドリードと決勝戦で延長に突入するという大激戦で準優勝に輝いたクラブ・ワールドカップ(CWC)。
そのクラブワールドカップへの出場権、そしてアジアのクラブチームチャンピオンという名誉を賭けてアジアのクラブチームが戦うアジア最高峰の戦いこそがAFCチャンピオンズリーグ(ACL)。
毎年熱い戦いでサッカーファンを沸かせてくれる、このACLというビッグイベントについてここではご説明しましょう。
アジアで一番強いクラブを決めるAFCチャンピオンズリーグ
ACLの事をアジア・チャンピオンズリーグといっているメディアをたまに見かけますが、正しくはAFCチャンピオンズリーグです。AFCとはアジアサッカー連盟の略であり、まあ意味合い的にはアジアチャンピオンズリーグでも構わないような気もしますが(苦笑)、とにかく正式名称はAFCチャンピオンズリーグといいます。
世界最高峰の戦いともいわれているヨーロッパのクラブ王者を決めるUEFAチャンピオンズリーグのアジア版といえば分かりやすいかもしれませんね。UEFAとはヨーロッパサッカー連盟の略称です。或いは国別代表が4年に1度アジア最強の座をかけて戦うAFCアジアカップのクラブチーム版と考えてもいいかもしれません。
ACLの前身は1967年に第1回大会が行われたアジアチャンピオンクラブトーナメント。1972年からは開催が中止され、1985-1986シーズンで14年振りに開催された時には大会名をアジアクラブ選手権へと変更しました。
そして2002-2003シーズンにはAFCチャンピオンズリーグと名称を改め、開催方式なども大幅に変えて現在のACLへと繋がる事となったのです。
日本、韓国、中国、豪州などの東地区と中東諸国などの西地区に分ける意味
このアジア最強のクラブチームを決めるACLですが、アジアといってもその範囲は広大です。ヨーロッパやアフリカにほど近い中東地域もアジアならば、我らが極東に位置する日本もアジアです。さらに、南半球のオーストラリアもAFC加盟国ですから、オーストラリアもACLに参加してきます。
というわけで、基本的に決勝戦まではこの広い広いアジア地域を二つに分けて、東アジア地区(東アジア、東南アジア、南アジア、オーストラリアなど)と西アジア地区(中東諸国やウズベキスタンなど)に分けてそれぞれの地域同士が対戦しないようになっています。東アジアのチームと西アジアのチームが戦うのは、ACL決勝戦だけという事になります。各地区から決勝へ進めるのは1チームだけという事ですね。
まず、東アジア地区と西アジア地区それぞれ16チームづつがACLに参加することができます。この16チームの内訳は、各国の代表世界ランキングやクラブランキングなどで決められており、例を挙げれば、昨年の東アジア地区の参加チームの国別は以下の通りとなっています。
日本 4チーム
韓国 4チーム
中国 4チーム
オーストラリア 2チーム
ベトナム 1チーム
タイ 1チーム
これはあくまで本戦に進出することが出来たチームだけであり、実際にはプレーオフを勝ち抜いてきたチームも含まれています(日本1、韓国1、中国2)。
この16チームを4チームづつ4グループに分けてそれぞれホームアンドアウェー方式でリーグ戦を行い、それぞれの組の上位2チーム、総計8チームが決勝トーナメントに進むことになるのです。
グループリーグ1位通過の重要性 全ての試合はホームアンドアウェー方式で
決勝トーナメントの組み合わせは抽選によって決められますが、各組の1位と2位が必ず対戦するように振り分けられます。
各グループ1位チームと2位チームとがホームアンドアウエーで戦うのですが、例えば2戦合計のスコアがタイスコア(例えば2-2や1-1)となった場合は、自動的にグループを1位で通過したチームの勝利となります。
2016シーズンの大会では、グループリーグ2位通過だった浦和レッズとFC東京がどちらも2戦合計でタイスコアだったのにこの方式によって決勝トーナメント1回戦で姿を消したので記憶に新しいところかもしれません。特に浦和レッズに関しては2戦合計3-3でしたが、アウェーゴール数で勝っていたため通常の方式であれば勝ち上がりだったので悔しい敗戦でしたよね。
というわけで、グループリーグは1位通過を果たした方が絶対有利となるのは間違いありません。
この決勝トーナメント1回戦を勝ち上がれば、いよいよ東アジア地区は4チームに絞られます(同時開催されている西アジア地区も4チームのこっているため、実質のベスト8となる)。
そしてこの先は全ての戦いがホームアンドアウェーで行われ、2戦合計がタイスコアであればアウェーゴール数の多い方が勝ち上がりとなり、アウェーゴール数も同数であれば延長戦へと突入。延長戦でも決着が付かない場合はPK戦へと進んで勝敗を明らかにします。
この方式で東アジア地区と西アジア地区を1チームに絞っていき、東西アジアで残った勝者で決勝戦を戦い、ホーム&アウエー方式でアジア王者を決するというわけです。
ACLで圧倒的強さを誇る東アジア勢 ここ11年で西アジア地区の優勝は1度だけ
それではここで現在の方式となり名前をAFCチャンピオンズリーグとした2002年から現在までの歴代王者をご紹介しましょう。
シーズン 優勝チーム 国 名
2003 アル・アインFC UAE
2004 アル・イテハド サウジアラビア
2005 アル・イテハド サウジアラビア
2006 全北現代モータース 韓 国
2007 浦和レッズ 日 本
2008 ガンバ大阪 日 本
2009 浦項スティーラース 韓 国
2010 城南一和天馬 韓 国
2011 アル・サッド カタール
2012 蔚山現代FC 韓 国
2013 広州恒大 中 国
2014 ウエスタン・シドニー オーストラリア
2015 広州恒大 中 国
2016 全北現代モータース 韓 国
最初の3年間こそ西地区のチームが勝っていますが、その後の11年間では東アジア地区が10度優勝を果たしています。西アジア地区のチームが優勝したのは2011年のアル・サッドが最後となっており、現在5年連続で東アジア地区のチームが優勝しているという現状です。
西地区に対して優位に立っている日本が所属する東地区ですが、その日本は近年苦戦を強いられています。優勝は2008年のガンバ大阪以来無く、2009年以降は決勝戦にさえ進んでいないのです。
その一番の理由は何といっても東アジアの各クラブチームのレベルアップでしょう。オーストラリアがオセアニア地区から加わってレベルが一気に上がったのに加えて、ここ数年は中国のクラブチームがその潤沢で驚異的な資金力を背景に海外の超一流選手を獲得するなどして、アジアを席巻する存在となっています。さらにタイやベトナムなどの東南アジアの各チームも年々レベルアップを果たしており、一気に層が厚くなってきています。Jリーグのチームのレベルが他国のリーグと比べて決定的に劣っているとは全く思いませんが、だからといって簡単に勝ち抜けるほど甘い大会でももちろんないのです。
CWC日本開催が無くなる今こそ、アジア王者としてクラブワールドカップへ
FIFAクラブワールドカップ2016で準優勝した鹿島アントラーズは、残念ながらアジア王者として出場したチームではありませんでした。CWC2016は日本開催だったという事もあって、開催国枠で出場したチームだったのです。
2017年と2018年のクラブワールドカップはアラブ首長国連邦(UAE)で開催することがすでに決定しています。2019年以降の開催についてはまだ未定ですが、巷の噂では中国開催となる事が濃厚であるとの話が一般的です。つまり、これまで定期的に開催されていた日本でのCWC開催はほぼ不可能ではないかという意見が大勢を占めています。
というわけで、もしもこれからのCWCで日本開催が無いという事になると、日本のJクラブが世界の超一流のクラブたちと対戦できるクラブワールドカップに出るためにはACLで優勝してアジア優勝チームとして出場する以外に道はありません。
中国のクラブチームや中東のクラブチームなどは日本のクラブチームとは資金力が桁違いです。故に日本では信じられないようなビッグネームを獲得したり、場合によっては日本で活躍する助っ人Jリーガーを引き抜かれたりという事も珍しくはありません。
しかしだからこそJファン的には燃えるのもまた事実なのではないでしょうか。資金力では劣ってもそこを選手の育成やチーム戦術などでカバーして戦う。そして金満クラブを打倒した時のカタルシスというのは堪えられないものですよね。
そんなアジアのクラブ事情も加味してACLを観戦すれば、また楽しみは一層広がるのかもしれません。
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