今シーズン前にカルロス・バッカやロマニョーリ、ルイス・アドリアーノにベルトラッチなど、総額100億円以上の大補強を敢行したイタリア・セリエAのACミランですが、シーズン序盤からイマイチ調子が上がらず、第15節終了時点で首位インテルから勝ち点11差の7位に甘んじています。
昨シーズン10位だったんだからいいじゃんって思われるかもしれませんが、昨年は補強らしい補強もせずでの成績であり、さらにユヴェントスやローマ、ナポリなどの上位勢が揃って今年以上の戦いぶりを見せていた中での10位です。今年はそれらに代わってインテルが好調ですが、全体的なセリエAのチームのレベル自体は去年より低いと思います。加えて抜け出す程の強さのチームのない優勝を狙うにはもってこいの混戦状態の今シーズンのセリエにおいて、大補強をしてスクデット獲得を目指しているチームとしては落第点でしょう。
そんな「迷えるミラン」の監督交代が噂になっています。
現在のミラン監督はシニシャ・ミハイロビッチです。現役時代はフリーキックの名手として世界に名を轟かせた名選手ですね。最近ではチーム批判をした本田圭佑選手との確執もささやかれている、日本でもある意味旬な(笑)監督です。
ミハイロビッチの監督としての技量ってどうなん?
このミハイロビッチが今冬のウインターブレイク中にも解任されるのではないかという現地紙の報道を基にした記事なのですが、もしこれが事実であるとすれば賛成ですね。というか、ミハイロビッチが監督ではこれ以上の上がり目はないかと思います。本田の出番云々は関係ないですよ、念のためw
ミハイロビッチのサッカーを一言で言うと、一昔前の凡庸なセリエ監督のひな型みたいなサッカーです。
守備に人数を割くことまず第一に考え、攻撃には人数をかけない。その守備にしても各選手のポジショニングに細かな支持を出しているとは思えないほど穴があるので、簡単に攻め込まれる場面も目立ち、攻撃は前線の選手2人ないし3人の個々の能力頼み。その基本も結果が出なければフォーメーション変えたり選手を入れ替えるだけのその場しのぎ。大体、未だに4-3-1-2を基本フォメ(オプションとしてなら有りかもですが)でやってた時点で「いやいや」って感じですね。少なくともヨーロッパサッカーにおけるトレンドについていけてない監督である事は間違いないでしょう。
大体、前線において個で打開できるほどの選手が今のミランにいます?そんな選手いないのにこんな戦術使ってる時点でダメ監督決定です。シーズン開始前に噂されていたPSGのズラタン・イブラヒモビッチが獲得できていれば話は別ですが。
あんな微妙な選手4人(失礼っw)に100億以上使うんなら半分くらいの金を一流監督招聘に使わんかい!ってのが自分の本音です。
自分が海外サッカーに興味を持ち始めた頃、圧倒的な強さを誇っていたミランのこの凋落ぶりはあまりにも寂しいものです。やはりセリエはミランが強くないとって思いは非常に強いです。そんな現在のミランに最も必要なもの、それは「極めて有能な監督」だと思います。
ミハイロビッチの更迭が噂されていますが、このACミランにとっての幸運はこの中途半端な時期にイタリアを代表する名将が2人も空いている事です。
チェーザレ・プランデッリとルチアーノ・スパレッティです。
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イタリア人らしくもありイタリア人らしくもない戦術家・プランデッリ
プランデッリもスパレッティも守備が伝統のイタリアサッカーにおいて異色ともいえる程の攻撃的サッカーを魅せてくれる大好きな監督です。
そういえば、アギーレの後任の日本代表監督候補にも2人とも挙がってましたね。プランデッリに至っては実際日本から打診あったそうですし。結果は二人ともダメでしたけど。まあ二人ともお高いですからね、給料が(笑)
しかし、ミランは大枚をはたいてもこの2人のうちのどちらかを呼ぶべきです。この2人でダメだったらしゃあないって思えるほどの監督です。
プランデッリはフィオレンティーナを躍進させた監督として有名ですね。その後、イタリア代表を率いて素晴らしいサッカーを見せてくれました。日本では中田英寿氏がパルマに在籍していた時の監督として知られています。
このプランデッリは複数のフォーメーション・戦術を駆使し、場合によっては試合中でも相手に合わせて平気でフォーメーションを変えてくる、非常に引き出しの多い監督というイメージです。比較的両サイドが高いポジションを取り、両サイドをワイドに使った攻撃を好む印象があるのですが、これも試合展開や相手の戦術次第で変幻自在に変化させます。戦術の引き出しが多い故に当然チームとしての決まりごとも多くなりますが、攻撃に人数をかけるので非常に見ていて面白い監督です。ただし、リスクも高いサッカーなのでイタリア人はあまり好まないかもしれませんね(苦笑)
ミランに在籍するMFリッカルド・モントリーヴォはフィオレンティーナ時代にこのプランデッリが見出した秘蔵っ子であり、もしプランデッリが監督になったら中心選手として重宝される事になるでしょう。
献身的に守備が出来て戦術理解度の高い選手を好んで使う典型的イタリア人監督としての側面もあるので、守備で走れて戦術理解度に長けている本田選手との相性は良い監督と言えるかもしれません(中田英寿氏とは確執が伝えられましたがw)
革新的戦術、0(ゼロ)トップを生み出した名将・スパレッティ
もう一人の監督候補・スパレッティは現ジュビロ磐田・名波浩監督のベネツィア時代の監督として記憶のある人もいるかもしれませんが、彼のキャリアにおけるハイライトは何といっても2005年から指揮を執ったASローマでの監督時代ではないでしょうか。
このローマ時代にスパレッティの名を一躍有名にしたのが、純粋なフォワードの選手を起用しない0(ゼロ)トップという戦術です。
0トップとは、それまでローマにおいてもイタリア代表においても不動のトップ下を務めてきた大エースのフランチェスコ・トッティを最前線に配置し、このトッティにボールが収まるや2列目・3列目が次々にボールを持ったトッティを追い越して攻撃参加してくるという超攻撃的戦術です。次から次へと後ろから飛び出してくるローマの選手に対して相手はマークを絞り切れず混乱してズタズタに引き裂かれてしまうというこの0トップ、トッティの決定力とキープ力を最大限に生かした戦術と言えるでしょう。
このスパレッティという監督は、与えられたチームの与えられた戦力に最も適した戦い方が出来る監督です。0トップも絶対的なフォワードがいなかった当時のローマのチーム事情からスパレッティが考え出したものです。どう考えても微妙な選手(再び失礼っ!!)しかいない今のミランにはこれ以上ない適任者だと思いますね。
この監督もプランデッリと同じく、前線から守備で汗をかける選手を好みます。その象徴がローマ時代にトッティの真後ろ、トップ下の位置で起用したMFシモーネ・ペッロッタです。トッティのトップ起用ばかりが注目される0トップシステムですが、この選手をトップ下で起用した事こそが0トップの真髄であり、スパレッティの凄さと言ってもいいかもしれません。
このペッロッタはMFの選手としては特にこれと言って飛びぬけた選手ではありませんでした。特に攻撃面でトップ下を任せられるほど傑出した能力はなかったと言ってもいいでしょう。しかしこの選手は守備力に長けており、豊富な運動量と攻撃も守備もマルチにこなせるバランスの良さがありました。スパレッティはこのペッロッタのこの特性を見抜いてトップ下に起用したのです。トップ下の選手に守備力の高い選手を起用する事で高い位置で相手ボールを奪取し、手数をかけずに相手ゴールに迫るためです。そしてこのペッロッタの存在によってトッティは攻撃に専念する事が出来たのです。
0トップはその後、バルセロナなどが採用した偽9番システムの元祖になったシステムでもあり、その意味でもヨーロッパのサッカーにおける戦術の革命といってもいい革新的なものです。トップ下にペッロッタを起用したのも、現在主流であるハイプレスのショートカウンターを先取りしていたとも言えるでしょう。まさに「スパレッティおそるべし」なのです。
さらに戦術家としてだけでなくモチベーターとしても優れており、ローマ時代にはあの“悪童”アントニオ・カッサーノや問題児ダニエレ・デ・ロッシなどのポテンシャルを十分に引き出すのに成功しています。
プランデッリと同様に、このスパレッティも前線の選手に豊富な運動量と守備を求める監督です。そして、個の力ではなく組織的な攻撃で点を取ろうとする監督です。少なくとも現在のミハイロビッチよりは本田選手にとっての相性はいいはずです。というより、今のミハイロビッチとの状況が最悪なだけのような気もしますけど(爆汗)
イタリアサッカーの変化
イタリアのサッカー文化と聞いて思い浮かぶのは守備ですよね。
カテナチオという守備的戦術を生み出した国らしく、この国の最も美しい試合は1-0の試合だと言われるくらいに守備の文化が根付いてきた国です。
しかしここ最近ではイタリアでも攻撃的サッカーを標榜するチームや監督が増えてきています。プランデッリに代表監督を任せたのなどはそのイタリアサッカーの変化を如実に物語っています。
そういう意味においてもやはりミハイロビッチのサッカーは時代遅れだと思います。得点を取るための明確なビジョンの無い監督は現代サッカーでは厳しいかな、と。最後の最後は個の力だとしても、そこに至るまでの攻撃のプロセスを構築できる監督か否かが一流かそうではないかのラインだという気がします。
ミハイロビッチの去就は本田選手の現状も相まって日本のファンには興味深いものとなりそうですね(アンチ本田圭佑の人にもねw)
にしても「サカつく」でのスパレッティの低評価は何とかならんもんなのかね、使えないよ、あれじゃあ(怒)
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