2017年3月に開幕する第4回ワールド・ベースボール・クラシック(通称:WBC)。
国際試合という事もあり、普段のプロ野球ペナントレースとは異なる仕様もいくつかあるWBCですが、その中でも最も特異なルールといえるのが投手の「球数制限」でしょう。
過去のWBCをご覧になった方はある程度理解があるかもしれませんが、ここでは「球数制限」ルールについてご説明しましょう。
投手は消耗品の考え方による所属球団との妥協案として生まれたWBC球数制限ルール
まずは日本プロ野球界やメジャーリーグでは考えられないWBC独自のルールである「球数制限」について簡単に解説しましょう。
普通のプロ野球の試合、例えばNPBの試合にせよMLBの試合にせよ、ピッチャーが何球投げようとそれを阻止するようなルールはありません。投手やベンチの首脳陣の意思があれば何百球でも投げる事が出来るのが普通の野球のルールです。
しかしピッチャーの肩や肘にかかる負担に関しては、「投手の肩・ヒジは消耗品」という考え方が世界的にも主流となっています。当然3月という、大事なレギュラーシーズン開幕前に開催されるワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に関して特に投手にかかる負担は、大会に投手を派遣する各球団の最大の懸案事項となっています。
そこで投手の故障などのリスクを最大限減らすべく設けられたのが、WBC独自ルールである「球数制限」なのです。
純粋にピッチャーの投げられる球数を制限するルール 各ラウンドによって上限が違うのに注意
WBCにおける球数制限とは2つの側面があるのですが、まずはその側面を一つ一つ解説していきましょう。
まずは文字通りの「球数制限」から。その名の通り、これ以上は投げてはいけません!!という意味での球数制限です。以下が2017年の第4回WBCにおける球数制限となります。
第一次ラウンド 65球
第二次ラウンド 80球
準決勝・決勝 95球
となっています。ちなみに、打者と対戦している途中でこの球数制限の投球数に達してしまった場合は、その打者との対戦に決着がつくまでは球数制限以上の投球数となってもいいというルールになっています。従って、この球数制限を1球でもオーバーすれば即ピッチャー交代!!というほど非情なものでもありません(笑)。
準決勝・決勝での95球や第二次ラウンドの80球はまあわかりますが、第一次ラウンドの65球というのはいかにも少なすぎですよね。先発投手だったら下手すると3回くらいでいってしまう球数です。特にコントロールに難のあるフルハウス投手(3ボール2ストライクが多い投手)などは65球なんてすぐですよね。
というわけで、このWBCで重要となるのがコントロールという事になるのです。
投手の投げた球数、連投試合数によって強制的にピッチャーに休養を課す中日制度
WBCにおける球数制限での2つの側面の一つは上に述べたように、1試合で一人の投手が投げる事の出来る投球数の事です。
そしてもう一つの大きな側面、それが連投禁止、中〇日空けなければならないというルールなのです。以下が詳しい取り決めとなっています。
- 50球以上を投げたピッチャーは中4日以上空けなければ登板出来ない
- 30球以上を投げたピッチャーは中1日以上空けなければ登板出来ない
- 30球以下での投数であれば連投することが出来る
- 2試合連投した投手は最低中1日を空けなければ登板できない
かなり厳しいルールといわざるを得ませんね。こうなってくると投手はほぼ総動員という感じになるでしょう。特に球数制限の厳しい1次ラウンドなどは投手フル回転が予想されますね。
第1次ラウンド日本代表のキューバ、オーストラリア、中国戦を例としてシミュレート
それでは、野球日本代表の小久保裕紀監督率いる侍ジャパンを例にとってシミュレーションしてみましょう。
第1次ラウンド
3月7日 キューバ戦
先 発 石川 歩(ロッテ) 53球
2番手 宮西 尚生(日ハム) 15球
3番手 藤浪晋太郎(阪 神) 61球
4番手 松井 裕樹(楽 天) 28球
5番手 千賀 滉大(ソフト) 35球
という投手の使い方をした場合、翌日の3月8日のオーストラリア戦では問答無用で石川歩、藤浪晋太郎、千賀滉大という3人の主力投手は使えなくなってしまいます。どころか、石川、藤浪に至っては50球以上投げたので中4日以上を開けなければなりません。投げられるようになるのは最短でも3月12日の第2次ラウンドの初戦という事になるのです。
3月8日 オーストラリア戦
先 発 菅野 智之(巨 人) 68球
2番手 牧田 和久(西 武) 37球
3番手 宮西 尚生(日ハム) 8球
4番手 秋吉 亮(ヤクルト)21球
5番手 松井 裕樹(楽 天) 24球
先発の菅野智之は問答無用で中4日以上が確定。第二次ラウンドの2戦目以降でないと投げる事が出来ません。2番手の牧田和久も30球以上投げたので中1日以上を義務付けられてしまいます。そして貴重な左のワンポイント、中抑えとして連投した宮西尚生、松井裕樹の両投手も30球は超えていないものの、前日のキューバ戦との連投という事で中1日以上を開けての登板が義務付けられてしまうというわけです。
ラウンド毎に設けられている試合の休養日を上手く利用する事で投手を有効に使う
となると、中1日以上を義務付けられた牧田和久、宮西尚生、松井祐樹の三投手は第1次ラウンドの第三試合である中国戦には出場できないのか・・
と思われがちですが、そうではありません。
侍ジャパン日本代表の1次ラウンド第3戦の中国戦は3月8日のオーストラリア戦から中1日を空けた3月10日に行われるのです。
という事はこういう投手起用も出来るわけです。
3月10日 中国戦
先 発 則本 昂大(楽 天) 66球
2番手 牧田 和久(西 武) 28球
3番手 宮西 尚生(日ハム) 13球
4番手 千賀 滉大(ソフト) 17球
5番手 松井 裕樹(楽 天) 20球
3月8日の試合で30球以上を投げた牧田、連投した松井、宮西も中1日で投げられるという事になるわけです。「中〇試合」ではなく、「中〇日」であるのがポイントだという事ですね。うまく試合のない日を利用することも非常に大事になってくるという事です。こういった先を睨んだ投手起用というのも大きなカギとなってくるのは間違いありませんね。
この辺りはチームを預かる小久保裕紀監督やブルペンを預かる権藤博投手コーチの采配にかかってきます。ベンチ力がいつも以上に重要となるのがこのワールド・ベースボール・クラシックなのです。
まとめ 監督、投手コーチらベンチの采配で試合展開が大きく左右される球数制限ルール
というわけでお分かりいただけましたでしょうか?WBCでの球数制限という特殊ルール。かいつまんで言うと以下の通りです。
- WBCで一人の投手が投げる事の出来る上限の投球数は決まっている。
- WBCで決められた投球数以上の球数を投げた投手は球数によって休養しなければならない
- 連投は投球数に関係なく休養しなければならない。三連投は成立しない。
- 試合のない日は休養日(中〇日)としてカウントされる。
これらを頭においておいてWBC本番を見れば面白さが上る事は間違いありません。お互いのチームのベンチワークなども非常に大きな見どころとなるでしょう。球数を考慮して連投を視野に入れて交代させるのか?休養日挟まなければならない事を承知のうえで続投させるのか??などですね。
その試合だけでなく、次の試合やさらにその次のラウンドなども見越して投手を起用していかなければなりません。投手起用や交代のポイントなど、野球の醍醐味ともいえる細かな采配なども楽しめるという意味ではなかなか野球ファンにとっては味わい深いルールともいえるのかもしれませんね。
ちなみに下の記事でWBCの日程を記していますので、そちらも参考にしながらオリジナルの投手起用をシミュレートしてみてはいかがでしょうか。
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