セパ両リーグの格差の原因はドラフト戦略?中村剛也と柳田悠岐に見るパ・リーグの獲得と育成の信念

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2005年から始まって今年で12年目を迎える日本プロ野球セパ交流戦。

開始当初は物珍しさも相まって異様なまでの盛り上がりを見せていたものですが、さすがに12年目ともなると落ち着いて完全にペナントレースの一部として定着した感さえあります。

そして年を追うごとに顕著な傾向も見られ始めました。

そう、「セ・リーグとパ・リーグの力差」というやつです。

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過去12年の交流戦でセ・リーグの勝ち越しは2009年のわずか1度だけ

過去12年間のセ・リーグ球団とパ・リーグ球団との通算対戦成績は、865勝774敗53引き分けと、パシフィックリーグが大きく勝ち越す結果となっています。

年度ごとに見ても、セ・リーグがパ・リーグに勝ち越したのは2009年のたった一度だけ。12年でわずか1度しかセントラルはパシフィックに勝ち越していないのです。

セパ交流戦はその期間中の成績によって優勝チームを決めますが、これもセントラルリーグで優勝したのは2012年、2014年の読売ジャイアンツのみ。12年で2度だけです。しかも巨人以外の5球団は一度も交流戦優勝がないのです。

これは偶然でしょうか。わずか数年の結果であれば、統計学による誤差の範囲とも言えるかもしれませんが、12年経てばそうとばかりも言ってはいられません。特に昨年などはセ・リーグで勝ち越したのは唯一阪神タイガースのみ。後の5球団は負け越しという結果でした。しかも、その阪神にしても交流戦の順位は6位。上位5球団は全てパ・リーグという結果に終わりました。さらにそこから5年遡った2010年は、なんと上位6位をパリーグの6球団が独占するという事態もありました。

昨年は2010年に続くパシフィックの上位独占というあまりにも偏った結果によって、セパ両リーグのチーム格差が話題になったほどでした。

格差と呼ばれても致し方の無いほどに、両リーグの力差は歴然だったと言わざるを得ない結果だったのです。

人気のセ・リーグ、実力のパ・リーグと呼ばれたのは昔の話

その昔、わたしがまだ子供だった頃、セ・リーグとパ・リーグを表現する言葉にこんな言葉がよく使われていました。

人気のセ、実力のパ

巨人、阪神といった人気球団を擁し、巨人戦はほぼ毎試合ゴールデンタイムでテレビ中継があったセ・リーグに対して、スタンドは空席が目立ち、日本シリーズ以外はほとんどテレビ中継も無かったパ・リーグですが、実力ではセ・リーグには劣っていないぞ!といった意味合いが強かったですね。

人気で大きくセ・リーグに水を開けられていたパ・リーグの選手たちは、実力では俺たちの方が上だという強烈な自負を持って戦っていたと言います。実際に、日本シリーズなどでのパ・リーグのチームの気迫は凄まじいものがありました。そんな中で歴史的な名勝負も数多く作られてきたものです。

しかし現在ではプロ野球は昔のような、人気が巨人一極集中の時代ではありません。パ・リーグの各球団は福岡、北海道、東北、千葉、埼玉、大阪と全国各地に本拠地を構え、その地に根付いた熱狂的なファンを持つ人気チームとなっています。

一方で巨人戦のテレビ中継はほぼ地上波から消え、セパの人気格差は昔とは比べ物にならないくらいに小さくなっています。

昔であればパ・リーグのこの圧倒的な勝率を「セ・リーグに対する反骨心」と説明する事が出来たのかもしれませんが、現状を考えるとそれが大きな要因とは考えにくいですね。

実力以外にすでに精神的に追い込まれているセ・リーグ

恐らく、多くのプロ野球ファンの皆さんはお気付きの事かと思いますが、あえて言わせてもらいます(苦笑)。

明らかにパ・リーグの選手たちの方がスケールが大きいです。ピッチャーの投げるボールのスピード、キレ。打者のスイングスピード、飛距離、迫力。全てパ・リーグの選手が上回っているとわたしには見えます。セ・リーグの選手たちは、そんなパ・リーグの選手たちに最初から気圧されてしまっているように思えるのは気のせいでしょうか。

セ・リーグの投手はパ・リーグの選手の豪快なスイングを恐れるあまり、コースを狙いすぎてカウントを不利にし、ストライクを取りに行ったところを痛打される。逆にパ・リーグの投手は恐れることなくストライクゾーンにガンガン放り投げてくる・・といった場面をどれだけ見せられたことでしょう。

パ・リーグのパワーヒッターたちを相手にしているパの投手にとってセ・リーグのバッターには安心して投げている感さえあります。逆にセ・リーグの投手たちは、セ・リーグではほとんど見受けられない程フルスイングしてくるパ・リーグのバッターに気圧されているように見えてしまいます。

選手たちの力量差というもの以上に、精神面ですでに負けてしまっているように思えるのです。

戦力差がつきにくいドラフト時代となったにもかかわらず、これだけの成績の差がセ・パ両リーグで生まれるというのは、選手個々の力量だけではない別の部分が大きく働いているという事だと思います。

交流戦を見ていて感じるセパ両リーグの選手のスケールの違い

ピッチャーで言うと、日本ハムの大谷翔平、楽天の則本昂大、松井裕樹、西武の菊池雄星らの真っ向勝負の本格派投手。バッターではソフトバンクの柳田悠岐、松田宣浩、日本ハムの中田翔、西武の中村剛也、浅村栄斗、オリックスの糸井嘉男らの豪快なフルスイングで長打を放つパワーヒッターたち。

セ・リーグよりも魅力的で個性的な選手が多いと思うのは気のせいでしょうか。技術的にはセ・リーグの選手たちも決して負けてはいないと思いますが、スケールの大きさという点では完敗と言ってもいいと思います。

セ・リーグにはいい意味でも悪い意味でもまとまった選手が多いですね。フォームなども教科書通りと言いますか、スマートな選手が多いです。もちろんそれは長所と言えます。しかし、小学生がバッティングフォームやピッチングフォームを真似るような独特の選手はいないというイメージですね。恐らく各球団の指導方法にもよるのだと思います。長所を伸ばすというよりも短所を強制するというイメージですね。

逆にパ・リーグは個性派揃いです。こちらは選手の長所を伸ばそうという意図が感じられますね。中田翔やT-岡田のがに股フォームなんてセ・リーグの球団だと真っ先に直されそうですよね(笑)。でもあのフォームで結果を残しているのですから、正解だったということでしょう。ある意味ギャンブル要素の強い育成方法と言えるかもしれませんね。

どちらが正しいのか正解なんてもちろんないのですが、見ていて面白いのはパ・リーグの方かなと個人的には思いますね。

打力に特化した大阪桐蔭・中村剛也を2位指名した西武ライオンズ

このようにパ・リーグの方が個性的な選手が多い最大の原因は、わたしはドラフトにあると思います。

ドラフトで指名する選手でも、パ・リーグの方がハイリスク・ハイリターンな選手を獲得しているという印象です。

例えば、西武ライオンズの主砲で四番を打つ中村剛也。これまで6度のホームラン王を獲得している日本プロ野球を代表するスラッガーです。この記録は、王貞治、野村克也に次ぐ歴代3位の記録です。この日本プロ野球史に残る長距離打者は、2001年にドラフト2位指名を受けて西武へ入団しました。

高校時代の中村選手は、大阪桐蔭高校で当時高校通算本塁打記録2位となる83本を放ったスラッガーとして、「和製カブレラ」と呼ばれて話題になっていました。しかし、ドラフト前の評価ではほとんど1位予想には上がっていませんでした。その理由はその体型にありました。

175cmで100kgを超える巨漢。打力には定評がありましたが、守備、走塁の評価は低く、打つだけの選手であるという評価です。打てなければ潰しの効かない選手という事ですね。しかも、長距離打者としては極めて珍しい175cmという身長の低さ。これらの事情から各球団のスカウトの評価は実績の割にかなり低く、新聞紙にも1位指名を予想する声はほとんどありませんでした。

ところが、西武ライオンズはこの中村選手を2位で指名しました。この年、西武ライオンズは自由獲得枠の選手を獲得していますので、指名選手としては1番上の獲得選手です。西武ライオンズがハイリスクハイリターンを覚悟のうえで一か八かの賭けに出たのか、それとも間違いなくプロ野球で大成すると確信していたのかはわかりません。わかりませんが、この時の西武の決断が英断であった事は、現在の中村選手が証明していることは確かですね。

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世界の本塁打王に天性の飛距離を見込まれ、土壇場で指名された柳田悠岐

昨年トリプルスリー(3割、30本塁打、30盗塁)を達成したソフトバンクの柳田悠岐選手。188cmの恵まれた体から繰り出す驚異のスイングスピードとフルスイングで球界を代表するスラッガーとなりました。

彼は2010年のドラフト2位でソフトバンクに入団しました。体格にも恵まれ、走攻守の三拍子そろった選手として評価は高かったのですが、レベル的に疑問符が付けられていた広島六大学リーグ所属という事や、スケールは大きいですが、まだ粗削りな面などから1位候補という高評価までは得ていませんでした。

実際に、2010年のドラフトでソフトバンクの2位指名順になった時、ソフトバンクは八戸学院大学の秋山翔吾(現・西武ライオンズ)指名で行くことになっていたそうです(実際には秋山でも大当たりだったんですけどね笑)。しかし直前になってソフトバンク会長の王貞治が、スカウトに

「残っている中で一番(打球を)飛ばせるのは誰だ?」

と聞いたそうです。

スカウトが「広島経済大学の柳田です」

と答えると、王監督は「じゃあ柳田でいこう」と言い、柳田指名に至ったという話です。「世界の王」と呼ばれた男の慧眼恐るべし、という感じですね。

これもハイリスクハイリターンを恐れない勇気が生んだ指名です。一番遠くへ飛ばせるという長所のみで指名する。短所とか関係ない、長所を伸ばせばいいんだという確固たる信念が伺えますね。

セ・リーグはリスクを恐れず果敢なドラフト戦略を

これらの選手以外にも、今や球界ナンバーワン投手と言われる日本ハムの大谷翔平投手は日本ハムの単独指名でした。大リーグ入りを希望していた大谷選手を果敢に指名していったのです。もしもダメだったとすれば、貴重な1位の枠を無駄にすることになる大冒険です。しかしそんなリスクを冒しても指名する価値のある選手だという覚悟が伝わってきます。

日ハムに関して言えば、メジャーで活躍するダルビッシュ有投手も一本釣りでしたね。当時東北高校3年だったダルビッシュ投手に関して言えば、素質は誰もが認める選手でしたが、当時は自由獲得枠という制度があり、それを使うチームが多かったという背景がありました。その他にも彼の周囲の様々な環境などからも指名を敬遠する球団が多かったと当時は言われていました。

その結果が日ハムの単独1位指名の背景にあると言われていますが、結果としてどうだったのかはこれまでのダルビッシュが証明していますね。

その他にも田中将大、菊池雄星、松井裕樹ら、高校生投手の大物はほぼパ・リーグにさらわれているといってもいいのが現状です。近年セ・リーグで獲得できた大型投手といえば、阪神の藤浪晋太郎投手くらいのものではないでしょうか。

ドラフトでの競合選手に関しては、くじ引きなので運次第という側面も強いですが、やはりパ球団は超一流選手には競合覚悟で果敢に指名していっています。セ球団は外れくじを恐れて一本釣りを狙いに行く傾向が強いですね。このようなドラフトでの意識の差がセパ格差の最も大きな根源的部分のような気がします。

今こそセ・リーグの球団は、ドラフト戦略や育成方法を今一度考え直す時期に来ているのではないでしょうか。そうでなければセリーグとパリーグのリーグ間格差は今後ますます広がっていくことになるかもしれません。

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