いよいよ始まりました、2016シーズンの2つ目のグランドスラム、全仏オープン(ローランギャロス)です。
日本での話題と言えば、何といっても錦織圭。この日本テニス界の歴史を塗り替え続ける天才プレーヤーが果たしてグランドスラムを制する事が出来るのか?日本での焦点はその一点に絞られているといってもいいかもしれません。
初のグランドスラム制覇を目指す錦織のトーナメント組合せや展望、対戦予定のライバルたち、さらに試合日程やテレビ放送予定などをご紹介したいと思います。
幾多の名選手の野望を阻んできたローラン・ギャロスの特殊性
まずはこの全仏オープンについて簡単に説明しましょう。全英(ウインブルドン)・全米・全豪と並ぶ4大大会(グランドスラム)の一つがこの全仏オープンです。別名をローラン・ギャロス・トーナメントとも言います。全仏オープンを含むグランドスラムは3セット先取の5セットマッチで行われます。
この全仏オープンの一番の特徴と言えば、サーフェス(コートの種類)です。4大大会唯一のクレーコートで行われる大会なのです。
クレーコートで行われる唯一の大会という事で、この全仏は多くの名選手にとって大きな壁となってきました。例えばグランドスラム14勝を誇る1990年代の最強選手・ピート・サンプラス(アメリカ)や元祖ビッグサーバーでグランドスラム7度の優勝を誇るボリス・ベッカー(ドイツ)は結局この全仏だけは優勝できずに生涯グランドスラムを達成できずに引退しています。現在でも世界最強のノバク・ジョコビッチ(セルビア)は11度のグランドスラム優勝を数えますが、一度もこの全仏では優勝していません。そしてグランドスラム歴代最多優勝17回を数えるレジェンド、ロジャー・フェデラー(スイス)でさえもこの全仏オープンでの優勝はたったの一度きりです。どれほどこの全仏が特殊なのかが分かりますね。
これは、クレーコートスペシャリストの厚い壁にことごとく阻まれてきた結果です。現在で最高のクレーコートプレーヤーは言うまでもなく、ラファエル・ナダル(スペイン)です。全仏での優勝はなんと歴代最多の9回。そりゃあフェデラーやジョコビッチでもそう簡単に勝てるわけもないですね。
とにかくある意味グランドスラムの中でも一番難しいともいえる全仏オープン。錦織圭にとってはどうなんでしょう。
クレーで安定感を増す錦織圭 今や最も近いグランドスラムは全仏?
よく言われているのが、錦織圭の最も得意なサーフェスはハードコートであるという事です。
アグレッシブなベースライナーである錦織にとって、イレギュラーがほとんど無くて球足の速いハードコートが最も得意なのは普通に考えれば明らかです。しかしここ数年の錦織圭のクレーコートでの活躍は目覚ましいものがあります。むしろハードコート以上の成績をクレーで収めているのです。
それは、錦織圭がクレーで飛躍的にプレーの質が高まるという事ではないと思います。錦織圭はクレーを全く苦にしないという事です。ハードでもクレーでも安定した戦いが出来るため、他のハードやグラス(芝)を得意とする選手がクレーでややパフォーマンスを落とすために相対的に錦織選手の有利に働くという事だと思います。
そういう意味でこの全仏オープンは錦織選手にとって実は最もグランドスラム制覇の可能性の高い大会かもしれません。かつては砂の王者としてクレーコートで絶対的な強さを誇っていたナダルもここ数年はケガや衰えによって以前のような絶対王者ではありません。ジョコビッチやマレーなどもクレーでも安定していますが、ハードやグラスに比べるとややパフォーマンスは落ちます。そういう意味で錦織選手にとってはチャンスなのです。トップ中のトップ選手との差が最も縮まるのがこの全仏オープンと言えるのかもしれません。
1回戦を快勝し、2回戦はクズネツォフ、3回戦はクレー巧者のヴェルダスコか?
それでは錦織圭選手の全仏オープンでのドロー(トーナメント表)を見ながら対戦予定の相手を見ていきましょう。
第5シードに入った錦織選手の1回戦は世界ランキング115位のシモーネ・ボレッリ(イタリア)と対戦して6-1,7-5,6-3の3-0ストレートで降し、2回戦進出を決めました。雨のために試合が次の日に順延されるというアクシデントでしたが、見事な戦いぶりでしたね。コンディション調整やモチベーションの維持が大変だったでしょうが危なげ有りませんでした。
2回戦の相手は世界ランク40位のアンドレイ・クズネツォフ(ロシア)。錦織圭選手との対戦成績は錦織の0勝1敗。しかしこれは6年前の対戦であり、しかも錦織が最も苦手とするグラスコートでの対戦でした。ほぼ初対戦といった方がいいのかもしれません。25歳のクズネツォフは今季これまで19勝10敗と絶好調でこの全仏に乗り込んできました。特別クレーのスペシャリストというわけではありませんが、この勢いは要注意です。錦織選手はしっかり自分自身のプレーを心がければ結果はついてくるでしょう。というかこんなところでは負けられませんよね(笑)。
3回戦ですが、世界ランク77位のイヴァン・ドディグ(クロアチア)と世界ランク52位のフェルナンド・ヴェルダスコ(スペイン)の勝者との戦いとなります。ここはクレーコート巧者のヴェルダスコが勝ち上がってくる可能性が高いと思います。対戦成績は、ドディグとが錦織の4勝1敗(クレーは1勝0敗)、ヴェルダスコとが錦織の1勝2敗(クレーは0勝1敗)となっています。
ヴェルダスコに負けたクレーでの対戦は2012年。まだ錦織がクレーで安定した成績を残せていない時ですね。あの頃と今ではクレーコートでの錦織の戦いぶりは別人であるとさえ言えます。油断は禁物ですが、どちらが来ても必要以上に恐れる事は無いと思われます。第5シードとして自信を持って行ってほしいですね。
4回戦は難敵が揃う 地元フランスのガスケか、若き天才・キリオスか?
4回戦ではいよいよシード選手と対戦する可能性が出てきます。
有力候補は第9シードの地元フランスのリシャール・ガスケ(フランス)と若手ナンバーワン選手の呼び声高い第17シードのニック・キリオス(オーストラリア)。どちらも1回戦はストレート勝ちで勝ち上がってきています。どちらも嫌な相手ですね。
ガスケに対しては今年に入るまでは6戦全敗と、天敵と言ってもいいほど全く勝てない相手だったのですが、今年に入ってから2連勝。しかもどちらもクレーコートでの勝利です。しかも完勝と言ってもいいほどの圧倒的な内容。苦手意識は完全に払しょくできたと言ってもいいでしょう。
とはいえ、気になるのはガスケが地元フランスの選手である事。とにかくこの全仏は観客がフランス贔屓なのです、当たり前ですが(苦笑)。しかしフランス選手の対戦相手に対するブーイングなどが本当に酷いんです。昨年の全仏で錦織圭選手は準々決勝で地元フランスのジョー・ウィルフリード・ツォンガに敗れたのですが、見ているこちらが腹が立つほどでした。とにかく観客のマナーが悪いのなんの。ハッキリ言ってフランスのイメージかなり悪くなりましたね。全仏をあまり見た事ない人は心しておいてくださいね(笑)。
キリオスも厄介な相手です。今年に入って錦織は2戦2勝ですが、こちらはどちらも大激戦。キリオスはビッグサーバーでありながら、ビッグサーバーにありがちなクレーがダメダメな選手ではありません。クレーでも強いです。勢いもあります。正直ガスケの地元補正が無かったら圧倒的にキリオスの方が嫌ですね。
という事で、どちらが来ても難敵だという事です。個人的にはガスケの方がいいかもですね。去年のツォンガ戦の借りを返してローラン・ギャロスの観客を黙らせてやってもらいたいという期待からです。ええ、思いっきり個人的理由です(苦笑)。
準々決勝は安定感抜群のマレーか?クレーではジョコビッチ以上の難敵
4回戦を突破すればいよいよクウォーターファイナル(準々決勝)、ベスト8となります。
ここで錦織よりも上位シードの選手と対戦する可能性が出て来ます。ここでの対戦有力候補は、世界ランク2位で第2シードのアンディ・マレー(英国)。
錦織とマレーの対戦成績は錦織圭の1勝6敗。クレーコートでは0勝1敗です。唯一のクレーでの対戦は昨年のマスターズ1000マドリードオープン。錦織は6-3,6-4のストレート負けを喫しています。このマレーも錦織と同様に最近になってクレーコートでの戦いぶりが非常に安定してきた選手です。元々ハード、グラスに比べるとややクレーでの戦いぶりは不安定な物だったのですが、特に昨年と今年はクレーコートで絶好調。先々週のマスターズ1000イタリア国際ではノバク・ジョコビッチを決勝で破って優勝するなど、クレーでの安定感はジョコビッチ以上かもしれません。
正直言ってこの準々決勝で必ず第4シードまでの誰かと同じブロックに入る事になるのですが、その中でも一番厄介な相手に当たってしまったという印象です。非常にタフな戦いになる事は間違いないでしょう。しかし、勝敗は五分五分だと見ます。それほど今の錦織は充実しているからです。マレーは恐らく錦織の早い展開にあまりつき合おうとせず、スライスなどを多く混ぜながら緩急をつけた攻撃をしてくることが予想されます。如何に粘り強く戦えるかがポイントになると思います。ウイナーを狙いすぎるとマレーの術中にハマってしまうと思いますね。我慢比べです。
ジョコビッチ、ナダルとは決勝まで当たらず 準決勝は順当ならば昨年王者・ワウリンカか?
準決勝以降はもうわかりません。とりあえず対戦する可能性のある上位シード選手は第3シードの昨年の全仏王者、スタン・ワウリンカ(スイス)や第8シードのビッグサーバー、ミロシュ・ラオニッチ(カナダ)、第10シードのマリン・チリッチ(クロアチア)、第16シードのジル・シモン(フランス)あたりでしょうか。ここまで来るともうわかりません。敢えて言うならば有力候補はやはり昨年の全仏優勝者・ワウリンカという事になるでしょう。
絶対王者のジョコビッチと砂魔神・ナダルが反対のブロックに入って決勝まで当たらないというのは錦織にとっては朗報かもしれません。
とにかく準々決勝が山となるでしょう。マレーはここまでの安定ぶりを見る限りは格下相手に不覚を取るという事はあまり考えない方が良さそうです。錦織はそこまでどれだけ体力を温存できるかも重要な要素となるでしょう。なんといっても5セットマッチという長丁場です。錦織のコンディション調整に抜かりはないでしょうが、消耗戦はやはり避けたいところですね。とはいえ、ラリーが長く続くのがクレーコートの特徴でもあります。言葉は悪いですが、抜くところは抜いて、ギアを挙げるべきところで一気に行くという戦い方をすべきでしょう。というよりも、トップ選手はそうやって勝ち上がってきます。錦織もそこまでの選手にすでに到達していると思います。実際にマスターズの戦い方など見ていてもそういった戦い方の巧さは年々際立ってきている感さえあります。日本人だからという贔屓目抜きにして、今大会の錦織は期待大だと断言しておきます。
WOWOWとテレビ東京系で放送予定 NHKの緊急放送はあるか?
2016全仏オープンの放送予定ですが、毎年恒例のWOWOWで完全生中継の予定となっています。
地上波ではテレビ東京系で生中継か生中継に近い形での放送予定です。放送時間がずれる事が多いための苦肉の策といえるかもしれません。やはりテニス中継は地上波にとっては何かと厳しいですよね(苦笑)。
マスターズ1000では総合やBS-1などでテレビ中継してくれていたNHKですが、今のところ全仏オープンの放送予定はありません。しかし、錦織圭選手の勝ち上がりなどの状況によっては急きょの放送もあるやも(?)しれませんね。その場合はまた追って追記します。
錦織選手の2回戦以降の試合予定、テレビ放送予定なども随時追記しますのでお待ちください。
にしても、また眠れぬ日々がやってくるのですね・・まあ錦織選手が勝ち上がってくれるのなら嬉しい寝不足ですけどね(笑)。
5/25追記 2回戦クズネツォフ戦は日本時間18:00開始予定 生中継はWOWOWで
錦織圭選手の全仏オープン2回戦、クズネツォフ戦が日本時間18:00の開始予定と決まりました。
テレビ放送はWOWOWが完全生中継する予定となっています。テレビ東京系は同日21:00より録画中継の予定となっています。
全仏オープン2回戦の錦織圭VSA・クズネツォフ戦は錦織選手が6-3,6-3,6-3のストレート勝ちで3回戦に進出しました。第1セット序盤でサービスゲームをいきなりブレイクされた時はどうなるかと思いましたが、全く慌てませんでしたね。不安になったこっちが恥ずかしかったくらいです(笑)。相変わらず調子は良さそうですね。非常に安定しています。
3回戦ですが、I・ドディグをストレートで破ったスペインのF・ヴェルダスコと対戦する事に決まりました。試合開始予定や放送予定など詳細は決まり次第追記しますが、恐らく1日間が空く事になると思います。しっかりコンディションを整えて、万全の状態で戦ってほしいですね。
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