関ヶ原の戦いといえば、歴史ファンならずともほとんどの日本人が学校の授業などで習って知っている、日本史上に残る「天下分け目の戦い」です。
これまでテレビドラマなどで徳川家康や石田三成を取り上げる作品だけでなく、同時代を扱った物語にはほぼ必ずと言っていいほど登場する戦でもあります。
そんな日本史史上最大の戦いが、ついに劇場で公開される事が決定しました。
意外?一度も映画化されていない司馬遼太郎の関ヶ原
映画「関ヶ原」の原作は、日本を代表する歴史小説家・司馬遼太郎の大ベストセラー小説「関ヶ原」。
「関ヶ原」は昭和39年(1964年)に「週刊サンケイ」で連載開始された長編小説であり、昭和41年(1966年)に新潮社から文庫本が発売されました。これまでの累計発行部数は580万部を売り上げており、司馬遼太郎の数ある作品の中でも人気の大ヒット小説です。
「梟の城」、「御法度」(原作は“新選組血風録”収録のエピソード)、「尻啖え孫市(しりくわえまごいち)」、「燃えよ剣」など、これまで数多くの司馬作品が映画化されて来ましたが、意外なことにこの「関ヶ原」は初の映画化となります。
大河ドラマや時代劇、さらには映画と数々の映像化が成されてきた司馬作品ですが、実は司馬遼太郎の作品の中でも高い人気を誇るこの「関ヶ原」に関しては、意外なほどに映像化されていないというのが実情なのです。
主演は加藤剛、脇を森繁久彌、三船敏郎、杉村春子ら超大物で固めたTBS関ヶ原
テレビドラマ版ではこれまでに一度だけ映像化されています。1981年の正月に3夜連続で放送された、TBS開局30年を記念したスペシャルドラマ「関ヶ原」がそれです。
このTBS版「関ヶ原」は今でも時代劇ファンから高い評価を受けているドラマであり、未だに語り継がれる名作として有名な作品ですね。
その豪華さはキャストを見ても明らかです。
主演の石田三成役には当時人気絶頂のトップ俳優・加藤剛。最大のライバルである徳川家康役には演劇界の重鎮・森繁久彌。さらに三成の腹心である猛将・島左近役に「世界のミフネ」こと三船敏郎。
これだけでも十分凄すぎる面子なのですが、その他も凄いんです。
丹波哲郎、三国連太郎、宇野重吉、笠智衆、大友柳太郎、辰巳柳太郎、芦田伸介らの超大物俳優たち、さらに若き日の三浦友和や藤岡弘、田中健、角野卓三らの男優陣。
そして泣く子も黙る大御所・杉村春子を筆頭として、沢村貞子、京塚昌子、そして若き日の栗原小巻、松坂慶子、三田佳子らの女優陣。
いやはや、この時代の日本の演劇界を代表する人たちをすべて集めたと言っても過言ではない、まさに奇跡のキャストなのです。
さらに合戦でのエキストラは3500人を動員。これはNHK大河ドラマなどとは比べ物にならない程の規模であり、予算も惜しみなく使って作られています。
色々な意味で規格外のドラマなのです。
主人公・石田三成を聖人君子として描かない司馬遼太郎の善悪両面併記の人物評価
この司馬遼太郎の「関ヶ原」の主役は一応は石田三成という事で良いとは思うのですが、その他にも三成家臣の島左近、そして三成と関ヶ原の戦いで争う後の天下人・徳川家康、さらにその腹心である本多正信、そして会津の大名・上杉景勝とその片腕・直江兼続、他にも島津家、毛利家、長宗我部家、真田家など、全国各地の大名をそれぞれに描いた群像劇という側面も非常に強い作品です。
従って、どこを切り取るかによって色々な人物を主人公に設定することも可能な作品ともいえるでしょう。
関ヶ原の戦い本戦がもちろんメインとなるのですが、その関ヶ原に至るまでのプロセスも非常に丹念に描かれており、物語は時の太閤・豊臣秀吉の死から始まります。関ヶ原の戦いの約2年前の事ですね。
この秀吉の死によって時代は再び動き始めます。徳川家康の野望、それを阻止せんとする三成を軸にしながら、全国の大大名家たちの思惑や動き、さらには関ヶ原に至るまでの経緯や各将の心情なども細かに描写されているので、歴史好きならばすぐに引き込まれてしまうことは間違いありません。
そして、物語の主人公となる石田三成は決して美化される事なく、その長所も短所も非常に客観的に描かれており、なぜ三成率いる西軍が関ヶ原で家康に苦杯をなめる事となったのかの説得力は他の作品の追随を許さないと断言します。
もちろんこの「関ヶ原」は歴史小説ですので、司馬遼太郎独自の解釈による創作部分も多いのですが、それでも個人的には歴史的事実をしっかり踏まえたうえでの傑作であると思っています。
この司馬遼太郎の解釈に対して共感できるか否かは別として、関ヶ原の戦いに興味のある人にとっては一度は読んでおいて損はない小説であることは間違いないと思いますね。
映画公開前に小説やTBSドラマで予習しておくと楽しみ倍増
映画の公開は2017年としか発表されていませんが(2016年秋現在)、この映画を楽しむためにも司馬遼太郎原作の小説はぜひ一度読んでおくことをお薦めします。
わたしは20代前半の頃に原作小説を読んだのですが、決して読むのが早いとは言えないわたしでもあっという間に読了してしまったのを覚えています。とにかく無条件に面白いです。
そして先にも述べたTBS制作の豪華ドラマ版「関ヶ原」も見ておくとなお良いと思います。
TBS版の「関ヶ原」は全二巻でDVD化されており、レンタルなどで視聴可能となっています。さらにはTBSオンデマンドでも視聴可能な作品であり、CSなどでもたまに再放送が行われている名作です。
小説にも興味あるけど、活字はどうにも苦手・・という人はこれらの方法で予備知識としてTBS版関ヶ原で予習しておくというのもいいかもしれません。
とにかく色々な意味で楽しみが満載の映画「関ヶ原」。今後の情報を注視していきたい作品ですね。
主要キャストや監督などの情報についてはこちらの記事も参考にご覧ください。
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