神回誕生の「軍議」 大坂城牢人五人衆は完全にキャラ立ちに成功
先週は視聴率が13.0%と、過去最低の視聴率だったことが話題となった真田丸。
しかしそんなものはドラマの面白さには何の関係もないという事は、この真田丸の視聴者の皆さんはご存知の事でしょう。
そして今回第43話「軍議」の視聴率がどれほどだったのかは明日になればわかる事ですが、その視聴率がどうであろうとも、真田丸第43話「軍議」が神回であるという事実を揺るがす事は出来ないでしょう。それほどまでに今週の真田丸は素晴らしかったですね。まさに神回でした。
神回となる要素は「軍議」というタイトルが示す通り、大坂城内の軍議を題材に取り扱う時点ですでにある程度予想は出来ていました。こういった密室劇での三谷幸喜というのは、素晴らしい作品をこれまでに何本も世に送り出しており、まさに三谷幸喜が最も力を発揮できるシチュエーションであるからです。
バラバラであった大坂城五人衆を始めとする大坂城内の武将・牢人衆たち。各人の思惑が入り乱れる中で、野戦を進言して最初は孤立無援であった真田信繁(堺雅人)は、その弁舌によって次々と賛同者を増やしていって五人衆をまとめ上げ、ついには大坂城譜代の家臣でもある大野修理治長(今井朋彦)、木村長門守重成(白石準也)の心までをも揺り動かし、籠城戦で固まりかけた大坂城を野戦にまとめ上げてしまいました。
その過程で後藤又兵衛(哀川翔)、毛利勝永(岡本健一)、明石全登(小林顕作)、長宗我部盛親(阿南健治)のこれまでの人生や思想を始めとするバックボーン、さらには置かれた境遇や目指すものを視聴者に提示してキャラクターを立ててしまいました。これで五人衆に対する感情移入は完璧といったところでしょう。この辺りが非常に素晴らしいですね。
大河ドラマに限らず、ドラマを見るうえで非常に重要なのが、登場人物に感情移入できるかどうかだと思います。登場人物に感情移入できなければ、そのドラマに対する熱はどうやったって上って来ません。最近のドラマは登場人物のキャラを立たせて感情移入させるという当たり前の作業を放棄しているドラマがあまりにも多いと思います。
その意味ではこの真田丸は非常に秀逸なドラマですね。これまで数々の名キャラクターが生まれ、「○○ロス」という言葉が出るほどに惜しまれながら去っていっているのは、各キャラが丹念にキャラ立ちしているので、視聴者が感情移入しているのが一番の理由でしょう。
とにかく今回の第43話「軍議」、個人的にはこれまでで一番の神回でしたね。
大阪五人衆対大坂城の女性たち 豊臣家の悲劇は秀頼よりも強い権限を女性が持ったこと?
今回の「軍議」で、大坂城内の人間関係がはっきりとしてきましたね。
大坂城牢人五人衆対茶々(竹内結子)、大蔵卿局(峯村リエ)、織田有楽斎(井上順)という構図です。そして両者の板挟みとなる当主の豊臣秀頼(中川大志)、大野修理、木村重成の豊臣家譜代の家臣という図式ですね。
個人的に凄くうれしかったのは、大野修理と木村重成の二人を豊臣家のためを真に思う忠臣として牢人衆に理解を示す人物として描いてくれたことです。
作品によっては、大野修理や木村重成は淀殿や大蔵卿らとともに大坂城内の獅子身中の虫(しししんちゅうのむし/組織内でその組織に害をもたらすものという意味)として描かれる事も多い人物です。しかし、この先の二人の働きはまさに豊臣家にとって忠臣といえるものです。五人衆にも劣らぬほどの働きをし、豊臣家のために奮戦していきます。だからこそ今回の「軍議」は本当にうれしかったですね。
豊臣秀頼も暗愚な人物であったという評価のある一方、徳川家康(内野聖陽)が恐れる程の器量の持ち主であったという評価もある人物ですが、真田丸では聡明な若者として描かれています。これも非常に嬉しいですね。
やはり豊臣家の悲劇は、淀殿、大蔵卿といった、戦を知らない女性たちの意向があまりにも大きく反映され過ぎた結果だと言わざるを得ないでしょう。
幸村が軍議で提言したように、援軍の見込みのない豊臣家が徳川軍に勝つためには野戦で連勝を重ねるか、徳川家康の首を取る事以外に無かったのです。そうすれば豊臣に寝返る大名家も出てきていたでしょう。しかしそれを実戦経験のない大坂城の女性たちに理解することは出来ませんでした。全てはそこに帰結してしまうと思いますね、残念な事ですが・・
徳川軍の先鋒として豊臣と戦った片桐且元、そして真田信吉、信政兄弟
今回は片桐且元(小林隆)が久々に登場しました。大坂城を追われる事となった且元は、史実では徳川家康によって最前線で豊臣と戦わされる事となります。どこまでも気の毒な人物であったと言わざるを得ませんね。
真田信之(大泉洋)の息子、真田信吉(広田亮平)と真田信政(大山真志)に対して、信之が幸村と戦わぬよう松(木村佳乃)を大阪に遣わすという場面も出て来ましたね。信之の意向としては、二人の兄弟に戦に参加せぬようという意向でしたが、二人の兄弟は実際には豊臣軍の先鋒隊と戦って敗走しています。この辺りの動きや経緯をこれからどう描くのかもすごく気になる部分ではありますね。
個人的に最も気になったのは織田有楽斎の動きです。
彼がこの先どうなっていくのかというのを詳細に書くことはここでは控えますが、正直言ってこの人物はかなり疑惑の多い人物です。徳川家に通じていた徳川のスパイであったという説も根強く囁かれる人物です。
史実としての確証はありませんが、わたしも状況証拠から見て織田有楽斎は徳川家康と通じていた可能性が高いと思っています。今日の真田丸を見る限りでは、この織田有楽斎が徳川のスパイであったという説を採用していくような気がしますね。
これから最終回まであと7話。いずれにしても一話たりとも見逃せない週が続いていく事でしょう。楽しみであると同時に寂しくもありますよね・・(涙)
「軍議」のMVP まさかの2週連続のあの人が?
個人的には神回ともいえる今回の第43話「軍議」。
当然のことながらMVP候補が多すぎて迷ってしまいます。皆さん素晴らしい演技を見せてくれました。
そんな中この神回のMVPに選んだのは、まさかまさかの二週連続、大野修理治長!!(笑)
いやいや、一緒に見ていた妻も同意見でしたし(笑)。とにかく素晴らしかった。先週のこのコーナーでは「小物界の大物」などと書いてしまいましたが、申し訳ございません!!今回はカッコよすぎでした。今井朋彦さんの大野修理をこう描いてくるとは、三谷幸喜さんにしてやられた感満載です。でもメチャクチャ嬉しくもあります。今井さんすごく好きなので。大野修理もすごく好きなので(笑)。
とにかく見事な演技でした。確かに石田治部(山本耕史)や大谷刑部(片岡愛之助)のような才覚や力量は大野修理には無かったかもしれません。しかしわたしは大野修理という人物は、豊臣家を思う気持ちは三成や吉継にも負けていなかったと思っています。
三成や吉継のようなスケールがないからこそ、大野修理という人物はいいのです。そこがいいのです。そして、そんな大野修理にピッタリな俳優こそ、やはり今井朋彦さんだと今回はハッキリ確信しました。さすがは小物界の大・・(以下略笑)。
とにかく文句なしの2週連続MVPです。
他も良かったですね。特に大坂城五人衆と木村重成。どの武将も実に味があっていいですね。
いかにも豪傑といった感の哀川又兵衛。クールでありながら只者ではないオーラを漂わせる牢人衆最強の男・オカケン勝永。神経質そうな中に芯を感じさせるオフロスキー全登(笑)。四国の覇者の悲哀と信念を見せる阿南盛親。そして大坂城の若き貴公子・白石重成。
どの武将も今回でハッキリとその立ち位置がわかりましたね。
対立する大蔵卿局と織田有楽斎もさすが。峯村さんと井上順さんの演技あってこその牢人衆や重成、修理のキャラ立ちともいえるでしょう。とにかくここで何回も言っているように、配役が絶妙なんですよね。
神回に相応しく、とにかく全員にMVPを差し上げたいほどでしたね。
第44話「築城」のストーリー 遂に真田丸が登場!幸村伝説の序章が幕を開ける・・
幸村渾身の奇策である野戦策は大坂城の重鎮たちによって退けられ、豊臣家は徳川軍に対して大坂城での籠城戦と決した。
策の練り直しを迫られた真田幸村であったが、大坂城の最大の弱点と思われた城の南側に出城を築くことを思いつく。しかし大坂城内で幸村の他にただ一人、城の南に砦を築くことを考えている男がいた・・
豊臣家を籠城戦へと決することとさせた大坂城の実力者、織田有楽斎と大蔵卿局は五人衆を始めとする牢人衆たちを信用せず、重要な仕事を任せないどころか裏切りさえも勘ぐる。この態度に嫌気のさした後藤又兵衛と毛利勝永は大坂城を退去すると言い出してしまう。
そんなバラバラになりかけていた浪人衆たちに対して豊臣家の当主である秀頼がある行動に出るのであった。
一方、信吉、信政に対する命を信幸より受けた松は、急ぎ大坂へと向かっていた。
戦国の世に真田幸村という名を轟かせた大坂冬の陣、「真田丸の戦い」がいよいよ始まろうとしていた・・
史実から見た「築城」ネタバレと考察 真田丸は防御用?攻撃用?
いよいよこのドラマのタイトルにもなっている「真田丸」が登場します。
真田丸とは、大坂城に籠城した豊臣軍が徳川の大軍と戦った「大坂冬の陣」において、真田幸村が大坂城の外部に築いた出丸(砦、出城)の事です。
古来より、真田幸村が真田丸を築いたのは、淀川、大和川、平野川、東横堀川などの天然の河川や堀などに守られた大坂城の東・西・北側に対して、南側だけは空堀があるだけであり、大坂城の最弱点部であると言われていたためだと言われています。この大坂城唯一の弱点を補うために真田丸を築き、ここで攻め寄せてくる徳川軍を迎撃する考えだったというのが通説となっていました。
しかし近年での研究では、この大坂城の弱点を補強するための砦であるという説のほかに、真田丸の西から大坂城に攻めかかる敵に対して側面攻撃を行うための砦であったという説や、守るためではなく、徳川軍を敢えて引き付けて打撃を与える積極的攻撃策のための砦だったという説もあります。
ここに関しては未だにはっきりとしたことは分かってはいません。三谷幸喜氏がどの説を採用するのか非常に興味のあるところですね。
個人的には、籠城戦と決する前には野戦に討って出て徳川軍を打ち破るという策を唱えていた幸村ですから、徳川軍にダメージを与えるための出丸であったという説に一票を投じたいですね。しかし本当のところは全く分かりません。こればかりは三谷氏の胸三寸というところでしょう。
真田丸築城で勃発したある疑惑・・真田幸村は徳川家の内通者?
今回の「軍議」の中でも描かれていたように、大坂の陣の時の大坂城内の人間関係というのはとにかく複雑なものであり、非常に繊細な力関係の元に成り立っていました。
豊臣家のためを思うものがほとんどであったのですが、「豊臣家のため」という解釈がその人間の立場によって様々だったのです。
徳川と本気で事を構えず、折を見て和睦しようとしていた者もいれば、豊臣のためには家康の首を取る他なしと考えるものもいました。どちらも一理あるというしかありませんが、徳川家康は自分の目の黒いうちに豊臣家を完全に滅ぼそうと考えていたとわたしは思っていますので、和睦は意味を為さなかったと個人的には思っていますが・・。
豊臣家の為に戦うという者がほとんどでしたが、中には徳川と通じていた武将もいました。有名なのが伯耆国羽衣石城の元城主で、関ヶ原の戦いで浪人の身となって大坂城に入城した南条元忠です。元忠は大坂城内にあって徳川と内通していた武将で、それが露見して大坂冬の陣の時に切腹させられています。
先述したように、織田有楽斎も恐らくは徳川家の内通者であったとわたしは考えていますし、元忠以外にも大勢の内通者がいたと考えるのが自然です。
というわけで、城の外側に出城を築くという幸村の策は、大坂城内で反発もあったと言われています。そう、幸村が徳川に寝返るのではないかという疑いです。
この辺りの真田丸築城に関する駆け引きも次週は描かれるのでしょうか。となると、本当に真田幸村の苦労は絶えないですね(苦笑)。しかしそんな苦難を乗り越えたうえでのあの奮戦だからこそ、後世にまで語り継がれる武将になったのでしょうが・・
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