上杉景勝の男気を見た「直江状」
遂に石田治部少三成(いしだじぶのしょう/山本耕史)が立ちました。豊臣家を守るために。今回の真田丸第34話「挙兵」では、徳川家康(内野聖陽)による上杉景勝(遠藤憲一)の討伐が始まり、蟄居謹慎中で失脚させられていた石田三成が徳川家康に一世一代の大勝負を挑むという場面で終了しました。この後に続くのがご存知「関ヶ原の戦い」です。
石田三成ファンにとっては堪えられない回となったのではないでしょうか。上杉ファンにとっても。いや、わたしがそうだったので(笑)。
個人的に嬉しかったのは、やはり直江兼続(村上新悟)が直江状を読み上げるシーン。あの村上新悟さんの美声で朗読された直江状はまさに溜飲が下がる場面でした。家康が直江状を読んで破り捨てるシーンがありましたが、史実でも徳川家康は激怒したという逸話が残っています。直江状の件は、上杉家の家風と上杉景勝という男の気骨を最もよく表しているエピソードです。天下を私物化しようとする徳川家康に対して敢然と立ち向かうその様は、まさに軍神上杉謙信以来の義を何よりも大切にする気風が感じられますね。
いや、直江状無かったらどうしようと思っていたので本当に嬉しかったですね。
史実と照らし合わせた第34話「挙兵」
史実検証としては、まず石田三成を捕らえようとした七将に対して真田兄弟が窮地を救ったというのはフィクションだと思われます。史実には残っていません。関ヶ原の戦い前に家康が真田信繁(堺雅人)を家臣に誘ったというのも同様です。大阪夏の陣前に徳川につくように誘ったという説はありますが。
家康が上杉景勝(遠藤憲一)を征伐する「会津征伐」に、豊臣秀頼の威光を利用したというのは史実通りですね。真田丸では言葉巧みに茶々(竹内結子)を騙した描写となっていましたが、本当のところはハッキリとはわかっていません。事実としては家康率いる会津征伐軍は豊臣秀頼の軍という事ですね。
つまり、形としては家康の軍は豊臣秀頼の軍であり、景勝は秀頼に対する逆臣であるという構図になります。
どちらが真に豊臣家のためになる人間であったのかは、将来ハッキリするのですが・・全てを己の天下取りに利用してしまう家康の老獪さに対抗できるだけの人物が既にこの時の豊臣政権内にはいなかったという事ですね。
三成が清正に囁いた言葉とは?常に秀頼を気にかけた清正の関ヶ原後
この第34話「挙兵」の中で気になったシーンがありました。三成が蟄居謹慎を命ぜられたとき、虎之助こと加藤清正(新井浩文)に対して囁いた言葉です。ついに最後まで何といったのか明らかにされませんでしたね。この後に明かされるのでしょうが、わたしなりに推理して見ましょう。恐らく三成はこのようなことを清正に伝えたのではないでしょうか。
「自分は決起して家康に戦いを挑むが、お前は家康につけ。もしも自分が敗れて家康の世になった時にはお前が家康から秀頼様をお守りしろ。」
加藤清正の人生を考えた時、三成が言った言葉はこうだとしか考えられません。清正は関ヶ原で家康率いる東軍につきます。しかし関ヶ原後、徳川家康が幕府を開いて徳川の世になった後に誰よりも豊臣秀頼の身を案じ、徳川幕府に睨まれながらも豊臣家第一に行動しました。
加藤清正が築城した天下の名城・熊本城。全てが大戦を想定して作られたと言われているこの築城の名手・加藤清正渾身の城は、万が一徳川と豊臣の戦となった時には秀頼をこの城に入城させ、全国の大名を敵に回しても籠城戦が出来る事を想定して作られたともいわれているほどです。
真田丸ではこの加藤清正の行動原理の理由の一つに、三成の遺言ともいうべき言葉があったという事にするのではないでしょうか。手前味噌ですが、結構この推理は自信があります。外れたら申し訳ないですが(苦笑)。
「挙兵」のMVP
今回は見事にそれぞれの見せ場が用意されており、非常に難しい回ですね。
わたしは真田信繁に一票を投じたいと思います。
理由は徳川家康からの配下に属する事への勧誘を一蹴したシーン。石田三成の義を称え、徳川家康のむき出しの野心を暗に非難する場面です。
誰よりも豊臣家の為を思い、私心を捨てて忠義を尽くしながらも孤立して失脚させられる三成の無念を見事に代弁し、西軍ファンの溜飲を下げてくれましたね。と同時に、関ヶ原にて儚くも散る事となる三成に対する三谷幸喜の心情を吐露していたともわたしは思います。
春(松岡茉優)とのシーンも良かったですね。実は三成が春を評して言っていた「苦労するぞ」という言葉はわたしもずっと気になっていました。その理由が明かされたのですが、ああいう意味だったとは(笑)。確かに面倒くさいですわな(汗)。
次点には片桐且元(小林隆)を挙げたいですね。常に官僚的であり、己が本心を押し殺して豊臣のために働いているいい人が家康に見せた意地。この人も石田三成という男の本質を誤解なく見定めていた数少ない一人だったのですね。三成が秀頼に残した桃の木を信繁たちと気に掛ける場面も素晴らしかったですね。且元のこれからを考えると、まだまだこの人の胃痛が収まることもないのだろうと思うと切なくなってしまいますが・・(涙)
三成と家康も相変わらず素晴らしかったですね。
狸おやじの本領を発揮し、野心を胸に秘め暗躍する家康と、豊臣のためのみを想いながら家康の策に後手を踏み、最後の大勝負に出る三成。
特に三成と信繁の別れのシーンは胸にこみ上げるものがありました。おそらく三成が「今生の別れだ」と言ったように、信繁と三成が顔を合わせることはもうないでしょう。義に生き豊臣家のために生きた三成、そして三成亡き後大坂の陣で三成の遺志を継いだ信繁・・その永遠の別れ。いよいよ関ケ原ですね・・
大坂の陣で重要な役どころとなる後藤又兵衛基次(哀川翔)も初登場しました。まさに戦国きっての猛将と呼ぶにふさわしい豪傑らしい初登場シーンでした。インパクトは十分であり、哀川又兵衛の今後の登場がますます楽しみになりましたね。
第35話「犬伏」のストーリー
徳川家康が軍を率いて西国を留守にしている間に家康討伐の挙兵を決行した石田三成は、旧知の間柄である大谷刑部少輔吉継(おおたにぎょうぶしょうゆうよしつぐ/演:片岡愛之助)に家康討伐軍に加わってくれるよう懇願する。
豊臣家に対する謀反の疑いをかけられた上杉景勝を征伐するために兵を会津へと進める徳川家康率いる会津征伐軍。
会津へと歩を進める大軍の中に真田昌幸(草刈正雄)、真田信幸(大泉洋)、真田信繁の姿もあった。
そんな会津征伐の途中で、石田三成、大谷吉継らが家康打倒の兵を挙げたという知らせが届く。三成から助力嘆願の書状が届き、昌幸、信幸、信繁の三人は下野国・犬伏(現在の栃木県佐野市)で真田家の命運をかけた結論を迫られる議論を戦わせる。
一方、きり(長澤まさみ)は挙兵した三成によって西軍の人質となっていた細川玉(橋本マナミ)を救出すべく行動していた。
史実から見た「犬伏」ネタバレと考察 昌幸、信幸、信繁それぞれの決断の理由とは?
さあ、次週第35話はいよいよ「犬伏の別れ」の回となります。犬伏の別れから「第二次上田合戦」、そして九度山配流という流れは真田家の物語を描くうえで最大の山場であり、クライマックスといってもよいでしょう。
結論から先に言いますと、下野犬伏で三成から決起の書状を受け取った真田家親子三人は、激論を戦わせたと言われています。
そして真田昌幸・信繁は石田三成率いる西軍に、そして真田信幸は徳川家康率いる東軍へ味方する事を決め、ここで親子兄弟が別れる事となるのです。
なぜ昌幸と信繁は三成につき、信幸は家康についたのか?
信繁と信幸に関しては答えは明快です。
信繁の正室は石田三成の盟友であり、西軍の主力武将である大谷刑部の娘。つまり信繁は大谷刑部の娘婿という事になります。
一方、信幸の正室・稲(吉田羊)は東軍の総大将、徳川家康の三河以来の重臣・本多平八郎忠勝(藤岡弘、)の娘。つまり信幸は平八郎の娘婿なのです。
この婚姻関係から言っても真田兄弟の決断は至極自然な流れであり、恐らく理由としても間違いなく合っていると思われます。
では昌幸はどうでしょうか。
昌幸が一か八かの賭けでリターンの多そうな三成に賭けたという説もありますが、わたしは昌幸も婚姻関係が大きく影響していると思っています。
昌幸の妻・山手殿(真田丸では薫/演:高畑淳子)は出自について諸説あるのですが、有力な説に旧武田家臣・宇多頼忠の娘であるという説があります。実は石田三成の正室も宇多頼忠の娘なのです。つまり、山手殿(薫)が宇多頼忠の娘であるという説が本当であれば、三成と昌幸は義理の兄弟という事になるのです。
義理の兄弟であれば、三成に味方するのは当然と言えます。
真田丸では山手殿の出自は、京の公家である菊亭晴季の侍女であるという説をとっていますね。この関係から、真田丸では昌幸の西軍参加の動機を昌幸の野望とするのではないでしょうか。それも諸説あるうちの一つであり、全くおかしいとは思いませんし、ドラマ的にはそちらの方が盛り上がるでしょうね。
石田治部三成と大谷刑部吉継の熱き友情シーンも犬伏に負けない程大きな見どころ
次週第35話「犬伏」はやはり真田家のクライマックスという事もあり、NHKの次週予告もかなり力を入れて制作されていましたね。
悲喜こもごもの人間ドラマが随所で展開される事でしょう。兄弟のキャラクターの違いや考え方の違いという伏線も恐らくここでの決断のためだと思われます。絶対に見逃す事が出来ない回なのは間違いないです。
個人的にはもう一つ凄く楽しみにしているシーンがあります。
それは大谷刑部が石田治部に味方する事を決断するシーンです。
大谷刑部は石田治部とも親しかったのですが、徳川家康とも良好な関係を築いていました。家康の大きさを知っており、三成の短所も熟知していたと言われています。そして三成では家康に勝てないと悟っていたという逸話も残っています。
そんな大谷吉継が親友・石田三成に加勢する事を決める場面。その動機は一体何なのか?三成にどんな言葉をかけるのか?非常に興味深く、非常に重要なシーンとなる事でしょう。
最後の最後まで豊家に忠義を尽くして散っていった二人の男の熱き魂を見届けたいですね。
それにしても、何て濃いドラマなんでしょうか。犬伏の別れと吉継が西軍参加を決断する場面は別々の回で1話づつ取ってもいいほどの名場面です。それを1話で味わえるとは・・
まさに、「絶対に見逃せない真田丸がそこにはある」ってやつですね、テレ朝風に言えば(笑)。
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