真田左衛門佐(さなださえもんのすけ)、真田伊豆守(さなだいずのかみ)誕生!!
最初に書いてしまいますが、第27話「不信」、素晴らしい出来でしたね。少々気が高ぶっているのですみません(汗)。
それほど素晴らしい回だったとわたしは思います。
真田信繁(堺雅人)が従五位下・左衛門佐に、真田信幸(大泉洋)が従五位下・伊豆守と、兄弟が晴れて任官するという真田家にとって大きな出来事もありました。これで父・真田昌幸(草刈正雄)の持つ従五位下・安房守(あわのかみ)と同じになり、官位上は父に並んだという訳です。
晴れてこれにて真田左衛門佐(さなださえもんのすけ)、真田伊豆守(さなだいずのかみ)という、真田好きには非常に愛着のある呼び名が出てくるのは嬉しい限りです。
二人の官位叙任に対して、豊臣秀吉(小日向文世)が最初は信繁だけに授けるつもりであったという説は史実にはありません。恐らくフィクションだと思われます。しかし兄弟同時に従五位下(じゅごいのげ)に叙任されたというのは史実通りです。ここをうまくつなげたなぁって感じですね。
結果的に真っすぐで生真面目だが不器用な兄と、要領がよくて広い視野で物事を見る事が出来る弟との対比を描くことに成功しています。
ノンフィクションから推理したフィクションを上手く絡めた描写だったと思いますね。
想いのすれ違いが招いた悲劇。親の心子知らず、そして子の心親知らず・・
真田兄弟が朝廷からの叙任を受けて名将への道を駆け上がる一方で、豊臣秀次(新納慎也)にはもうすぐそこまで悲劇の幕が迫ってきています。
秀次に起きる悲劇、その悲劇の原因には古来より色々な説が囁かれて来ました。謀反説、陰謀説、悪行説、不仲説・・
脚本家の三谷幸喜はどれを採用するのだろうと思っていましたが、今回の「不信」を見てある程度予測はつきました。秀次の秀吉に対する過剰な恐怖心、そしてそこからくる被害妄想。いわゆるちょっとしたボタンの掛け違いで起こった悲劇という説ですね。
秀吉と秀次は叔父と甥の関係です。下級身分から天下人に成り上がった秀吉には、他の大名たちのように譜代の家臣(何代にも渡って仕え続けている家臣たち)がいませんでした。よって秀吉は身内を回りに置き、出世させて譜代の家臣としたのです。当然秀次にも大きな期待をかけていました。結果的に言うと、秀次はそのプレッシャーに押しつぶされてしまったとも言えますね。
秀次の実弟である秀保(秀吉の弟・豊臣秀長の養子)の死に対する叔父である秀吉の冷淡且つ冷酷な対応。これもまた秀次の不信を煽る要素として描いたとともに、秀吉が実子・拾(ひろい・後の豊臣秀頼)を溺愛するあまりに豹変していく様子も同時に示唆されていました。
結論から言いますと、きっかけは些細なお互いの気持ちの行き違いであり、周囲に不信感を抱かせるほどに秀頼を溺愛する秀吉と、天下を治めるにはあまりにも精神が脆弱すぎた秀次という、お互いの人格・性格面も絡んでの悲劇という事ですね。
うーん、三谷幸喜うまくまとめましたな(笑)。
「不信」のMVP 天下人たる秀吉と天下人の器ではなかった秀次・・その対比はお見事!
今週の真田丸第27話「不信」のMVPといきましょう。
今週は(今週も汗)悩みました。悩んだので二人選びます。独断と偏見だからいいんです!
今週のMVPは、恐らく次週の悲劇の主人公となる叔父と甥、太閤と関白である豊臣秀吉と豊臣秀次。
この二人のどちらかを選ぶことが出来ないほど二人とも素晴らしい太閤と関白でした。
偉大過ぎる太閤秀吉と凡庸ではないが天下人の器ではない秀次。この二人ゆえの悲劇を小日向文世と新納慎也が二人とも見事な演技で魅せてくれました。
秀次役の新納さんは優しく思いやりがあり、気のいいあんちゃんって感じの秀次にピッタリですね。そんなどこにでもいるようなキャラクターが上手く強調されているが故に、この悲劇にも説得力が増していますね。
小日向文世は何度もこのサイトで言っている事ですが、明と暗の使い分けが絶妙。畏怖すべき天下人の顔と人たらしと呼ばれるほどのお調子者の顔。そしてそれは秀吉という男の腹の中で巧妙に計算されている・・。そんな得体の知れない天下人を絶品のさじ加減で演じ切っています。いや、本当に真田丸の秀吉は史上最高の秀吉だとわたしは言い切ります。真田丸での秀吉こそがわたしの持つ秀吉のイメージですね。やっと出会えた、そんな気持ちです。
次週はもう見逃せないっしょ、今週見ちゃったら。まあこの記事呼んでくれている人たちは見逃す気なんかさらさらないでしょうけど(笑)。
官位を巡っていざこざのあった真田兄弟も良かったですね。兄弟のキャラクターの違いをここで一押ししてきましたね。この性格の違いが関ヶ原の時の兄弟の決断にも関係してくるんではないでしょうか。その布石だと見るのは考えすぎでしょうか。
何か今週は足りないなぁと思ったら、内府・徳川家康(内野聖陽)とその仲間たち(笑)が今週は出ていなかったんですよね。
これまであまり家康好きではなかったわたしにこう思わせるとは・・うーん、三谷幸喜と内野聖陽恐るべし!ですな(笑)。
第28回「受難」のストーリー
豊臣秀吉に嫡男となる拾(豊臣秀頼)が生まれ、自身の立場の将来的な不安と拾を溺愛する秀吉に対する不信感が頂点に達した関白・豊臣秀次は、突如として聚楽第(じゅらくてい)から姿を消してしまう。
聚楽第から失踪した秀次の姿は、真田家の京屋敷の中にあった。家臣の真田信繁を頼った秀次が身を隠していたのであった。
関白職を放棄して失踪した秀次がまさか真田屋敷に匿われている事など知る由もなかった秀吉は、ある日信繁に対して縁談を持ちかける。
相手は豊臣家の重臣・大谷吉継(片岡愛之助)の娘・春(松岡茉優)であった。
そんな時、叔父である太閤秀吉の怒りを恐れるあまりに秀次は信繁の兄・信幸を伴って高野山へと向かっていた。
一方で信繁も秀次からある依頼を受けていた。
秀次は秀吉の怒りに娘が巻き込まれるのを恐れ、娘の身を守るよう信繁に頼んだのである。
信繁は秀次の娘の命を守るため、ある一人の男の元へ向かった。
信繁が頼った男こそ、海外との交易で財を成した堺の天才商人・呂栄助左衛門(るそんすけざえもん 演:松本幸四郎)その人であった・・
史実から見た「不信」ネタバレと考察
まずは誰もが気になるのが秀次の運命でしょう。
史実的なネタバレをしますと、秀次は高野山で切腹して果てます。そして秀次の妻子・側室・乳母・女中らも全て処刑されてしまいます。
所謂、豊臣家最大の悲劇と言われている「豊臣秀次切腹事件」です。
ただし、なぜ秀次が切腹しなければならなかったのか?というハッキリとした理由は400年以上経った今でも分かっていません。
秀次が謀反を企てたという説、秀次の乱暴狼藉や放蕩癖が過ぎたために粛清されたという説、石田三成の陰謀説、豊臣秀吉との不仲説・・など数多く説はありますが、どれも決定的なものではありません。
まず謀反説は無いでしょう。秀次は切腹させられました。謀反であれば罪人として斬首か磔刑に処せられるはずです。武士として切腹を賜る事など謀反人には有り得ません。
秀次の行いが悪かったという説も後付けであるという考察が有力となっています。
石田三成に嵌められたというのは最も有り得ないと思われます。まずもって証拠となるようなものが一切残っていませんし、第一、五奉行に過ぎなかった三成にそんな権限はありません。
となると、やはり最も信ぴょう性が高いのが秀吉との不仲説です。実際に同時代のポルトガル人宣教師であるルイス・フロイスもそのように書物に記しています。秀頼の誕生によって二人の関係が微妙に変化していったと考えるのは、やはり他の説と比べても最もしっくりくると思いますね。
真田丸でもやはり二人の不仲説に近いですよね。とはいえ、二人の仲が決定的に悪かったという事ではなく、二人の心のすれ違いが結局は取り返しのない事になってしまった・・という感じですね。案外真実に近いところにいるのではないかと個人的には思うのですが、皆さんはいかがですか?
呂栄助左衛門、徳川秀忠、本多正純が登場!松本幸四郎の助左が38年ぶりに帰ってきた!!
とにかく、次週の「受難」はここまでの真田丸の中でも最も重い回になるのではないでしょうか。ここまでの秀次のキャラが立っており、なおかつその人間性に感情移入できるほど素晴らしい脚本と演技だったので尚更ですね。
とにかく一番の見どころは、秀次事件の顛末。あの悲劇がなぜ起こってしまったのか?そこを三谷幸喜がどう帰結するのか?非常に楽しみです。
そして気になるのが秀次の娘・たか(岸井ゆきの)の命運。史実ではたかは信繁の側室となり、秀吉の命令による秀次一家の虐殺からは逃れたと言われています。ここもどういう風に三谷幸喜が解釈するのか楽しみですね。
そして恐らくたかの運命に大きく絡んできそうな人物が初登場します。
大御所・松本幸四郎演じる呂栄助左衛門です。そう、38年前の名作大河「黄金の日日」の主人公、あの助左です。あの助左が再び松本幸四郎さんで帰ってくるんです。オールドファンには涙もの以外の何物でもないでしょう。
秀次の娘で信繁の側室・たか。呂栄助左衛門。そして信繁。この三人をどう絡めて史実とすり合わせるのか?こちらも三谷幸喜のお手並み拝見ですね。
そして助左以外にも新登場人物が・・
徳川家康の息子であり、後の江戸幕府第二代将軍・徳川秀忠(星野源)と、家康の側近・本多正信(近藤正臣)の嫡男・本多正純(伊東孝明)です。
作中随一の腹黒さを誇る家康と正信の息子たち・・果たしてどんなキャラとして描かれるのか?こちらも非常に興味を惹かれますよね。これから大事な役割を果たす人物ですし気になるところですね。
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