信繁の小田原城潜入について 関係者が端折られているのが残念
6月12日放送のNHK大河ドラマ「真田丸」の第23話「攻略」の視聴率が18.9%であったと発表されました。
うーん、高いですね。「小田原征伐」という事で久々の合戦であった事も大きかったかもしれませんね。ですが壮大な合戦シーンはなし(苦笑)。まあ確かにほとんど合戦らしい合戦の無い戦でしたから史実通りといえば史実通りですが(笑)。
小田原征伐に参加している真田源次郎信繁(堺雅人)が、徳川家康(内野聖陽)、大谷刑部(片岡愛之助)、さらに敵方・北条家の5代当主・北条氏直(細田善彦)と板部岡江雪斎(山西惇)からの要請により、頑なに降伏を拒む北条家4代当主にして隠居の北条氏政(高嶋政伸)の説得のために小田原城へ単身乗り込むというお話でした。
思いっきり予想が外れました。個人的には信繁が参加したと言われている「忍城の戦い」の話がメインとなり、そこで信繁が活躍するという事だろうと思っていました。まさか信繁が小田原城で籠城している氏政の説得にあたるとは・・
信繁による氏政説得というのは史実にはありません。史実によると氏政説得に動いたのは、織田信雄と徳川家康、さらに黒田官兵衛などと言われています。しかし家康はもちろんいますが、信雄や官兵衛はこのお話に全く出てきていません。信繁を絡ませるのであれば、せめて官兵衛や信雄を登場させたうえで、彼らの意を受けて信繁が動いたという事にしてもらいたかったですね。個人的には今回の信繁の小田原城潜入はあまりにも飛躍しすぎの感が否めませんでしたね。
史実とフィクションとの兼ね合いというのは、大河ドラマでついて回る永遠のテーマのようなものですが、あくまでバランスが大切だと個人的には思っています。そういう意味では今回は少しフィクションに寄りすぎなのかなと思いましたね。
日本史に重要なのは歴史的事実だけではなくその背景や至った経緯
「のぼうの城」で一躍有名になった「忍城の戦い」に期待していたわたしには少し期待外れでしたが、ドラマが面白い事には変わりありません。何度も言いますが、やはり本と役者が良ければドラマは面白いんですよね、当たり前ですが(笑)。
独眼竜・伊達政宗(長谷川朝晴)が初登場するという事でそちらも楽しみにしていたのですが、白装束で参上したシーンだけでまさかのセリフ無し(笑)。まあ来週以降に期待という事ですかね。
個人的には上杉景勝(遠藤憲一)と直江兼続(村上新悟)の再登場が嬉しかったですね。特に景勝と真田安房守昌幸(草刈正雄)が戦陣で同席していたというシーンに感無量でしたね。もっと二人が絡むところを見たかったと思ったのはきっとわたしだけではないはずです。ここ(小田原征伐)で二人が絡まなければ、もう安房守と景勝のツーショットは無さげですね、残念ながら(涙)。
とはいえ、物語的には戦国時代の先駆者と言われた北条早雲を初代とする名門・関東北条家が何故滅んだのか?そして豊臣秀吉(小日向文世)が北条攻めを決めた背景には何があったのか?こういった歴史的背景が戦国時代に詳しくない人たちにも非常に分かりやすく作られていたことは評価すべきですね。歴史的事実だけを羅列するのであれば、日本史の参考書を見るだけで十分です。そこに至った背景や狙いがわかるから大河ドラマはいいんですよね。大谷吉継がこの後の大陸出兵(文禄・慶長の役)を示唆していたのなどはその最たるものだと思います。歴史を点ではなく線で捉えるという事ですね。
このような大河ドラマが増えてくれば、間違いなく日本史に興味を持つ人が増えてくると思います。三谷幸喜独自の歴史解釈にしても、日本史に詳しい人が増えてくれればそれについての是非が議論されたりして活性化しますし、今後の大河ドラマのためにも大変有意義だと思います。そういう意味でもこの「真田丸」はやはり優れているとわたしは思います。
「攻略」のMVP 大谷吉継と三成、家康の関係性を描くことに意味がある?
うーん、毎回言っているような気がしますが(苦笑)、今回も難しい。ちなみに一緒に見ていたうちの妻は、「大谷吉継でしょ、どう考えても」と言って大谷吉継の事を色々聞いてきましたね。また一人大谷刑部ファンが増えたという事で刑部ファンのわたしにとっては非常に嬉しい限りです(笑)。
ということで、わたしも大谷刑部少輔吉継です(どういうことだ?笑)。
妻の一言があったのはあんまり関係ないですよ、もちろん。他に候補が何人かいて迷いはしましたが。今回の大谷吉継は彼がやはりひとかどの人物であった事を裏付ける回となりました。そして史実云々は別として、親友である石田三成(山本耕史)のために氏政説得を試みる、というのがいいんです。真田丸中盤の個人的一番の見どころは、石田治部少輔と大谷刑部少輔との友情だと思っています。それが関ヶ原の前に見れるとは思いませんでした。関ヶ原の戦いを一層際立たせるためにもここで三成と吉継のエピソードを入れておこうという意図を感じましたね(外れてたらスミマセン)。
もう一つ、吉継と家康との良好な関係性が垣間見られた事も嬉しかったですね。関ヶ原では敵味方に分かれた吉継と家康ですが、二人の関係は良好であったと言われています。そこをここでしっかりと描いてくれたのもこの先を考えると意味のある事ですね。
大谷吉継と迷ったのが徳川家康。
小田原攻めの総大将に選ばれなかったばかりか与力である真田家を配下から外され、そのうえ実り豊かな三河・駿河・遠江を召し上げられ、まだ未開の地であった関東への移封を言い渡される気の毒さ(涙)。巷で言われている家康のキャラクター、「鳴かぬなら鳴くまで待とうホトトギス」を地で行くがごとき忍耐の日日ですよね。権力者・秀吉とじっと耐える家康。この対比が見事でした。そしてこの時点ではやはり秀吉の方が家康よりも一枚も二枚もくせ者であったという事も出ていましたね。これは正にその通りであったと思います。
板部岡江雪斎も良かったですね。北条氏政も。氏直も。みなさん北条家の悲哀と苦悩を余すところなく伝えてくれる熱演でした。特にこれまであまりスポットライトの当たる事の少なかった北条家の外交僧・板部岡江雪斎を演じた山西惇さんには脱帽です。同時にこれだけの出番を江雪斎に与えてくれた三谷幸喜さんも流石ですね。一躍江雪斎の知名度が上がる事となりました。信長の野望(戦国シミュレーションゲーム)の次シリーズでは江雪斎の各パラメータが飛躍的に上昇する事間違いなしですな(笑)。
第24回「滅亡」のストーリー
徳川家康、大谷吉継の命を受け、本多正信(近藤正臣)の案内で小田原城へ侵入した真田信繁は、城内の板部岡江雪斎の手引きで北条氏政に降伏を促す。
無用の死傷者を出さぬよう、関東北条家の当主として降伏開城を説く信繁に対して、秀吉の下につくことを良しとしない氏政は容易に同意しようとはしない。
なかなか降伏の決断を下さない氏政を説得するため、かつては信濃を巡って天正壬午の乱で争った徳川家康、父の代から上野を巡って抗争を繰り広げた越後の上杉景勝、そして沼田を巡ってしのぎを削った真田昌幸の三人が小田原城の氏政の元を訪れる。
かつてはお互いの領国を巡って相争い、現在は豊臣秀吉の配下となった東国のライバルたちは、関東の名門の呪縛に縛られる氏政に秀吉に降って臣下となり生き延びるよう説得する。
かつてしのぎを削った強敵であり、同じ境遇にあったライバルたちの助言に対して氏政の決断の時が迫る・・
史実から見た「滅亡」ネタバレと考察
次週はタイトル「滅亡」から推測される通り、関東の雄・北条家の滅亡をメインとして描く回となりそうです。
史実で見てみますと、北条家は3か月の籠城の末、小田原城を開城して秀吉に降伏します。ただしこの降伏は無条件降伏ではなく、和睦にも近い内容でした。だからこそ氏政は降伏したと言われています。降伏の条件とは・・
- 北条家当主・北条氏直の上洛
- 北条家の領地のうち、武蔵、相模、伊豆を安堵する
という条件であったと言われています。これだけの戦端を開いておきながら、実に寛容な条件です。特に関東三カ国の安堵というのは非常に魅力的な条件でしょう。敗色濃厚であった北条家に対して出すには破格の降伏条件です。これでは秀吉に逆らったらただでは済まないという抑止力には到底なり得ません。
逆に言うと、だからこそ秀吉は最初からこの条件を守るつもりなど無かったのだと思えます。実際に小田原開城後、秀吉はこの条件を反故にし、隠居の氏政には切腹を申し付け、当主の氏直には高野山で謹慎を命じます。当然領土は全て没収、徳川家康に与えてしまいます。つまり北条家は取りつぶしとなるのです。ここに関東の名門・北条家は滅亡しました。
豊臣政権に対する最大の抵抗勢力であった北条氏が滅亡し、奥州の伊達政宗も秀吉に謁見し臣従を誓った事で、名実ともに豊臣秀吉の天下統一は完成したのです。
片倉小十郎初見参!そして家康、景勝、昌幸のスリーショットに大期待
次週は北条家の滅亡が描かれるでしょうが、その後には伊達政宗ら、東北の諸大名の領土などを秀吉が定めた「奥州仕置」という出来事もあります。奥州仕置は果たして真田丸で描かれるのでしょうか。個人的には是非とも描いてほしいですね。真田家とはあまり関係の無い話なのでそう長く話を割くとは思えませんが、関ヶ原での上杉と伊達にも大きく関わる出来事なので、是非とも触れてほしいです。
次週「滅亡」での新登場は、伊達家の軍師・片倉小十郎景綱(ヨシダ朝)。名実ともに伊達家のナンバー2である切れ者です。どんな人物に描かれるのか非常に楽しみであると同時に、小十郎が出るという事は伊達政宗も恐らく出番があるという事。これも楽しみですね。
今週「攻略」のラストシーンで信繁と運命の最下位を果たした松(木村佳乃)の夫・小山田茂誠(高木渉)にも注目です。松が生きていた事は恐らくまだ知らないのだと思われます。それにしてもまさか北条家に仕官していたとは(笑)。この先に注目ですね。
そして個人的最大の見どころは、氏政を説得するために徳川家康、上杉景勝、真田昌幸が小田原城を訪れるという場面。史実としてはこの三名が氏政を説得したという事実はないのですが、このスリーショットは非常に興味深いものがありますね。後の関ヶ原での三者の関係やその後の運命を考えると尚更です。非常に濃いスリーショットになる事でしょう(笑)。それがいいんですけどね。
物語は北条の滅亡から秀吉の天下統一、そして秀吉による大陸出兵へと続いていくものと思われます。
そしてその先に待ち受けるのは、北条家と同じく豊臣家の滅亡へのカウントダウン・・その過程で様々な悲劇が起こる事でしょう。そのような時代の急激な流れの中で、真田家は、信繁はどのように立ち回っていくのでしょう。既に歴史の結論は分かっているのですが、その過程を大いに楽しみたいものですね。
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