第19回「恋路」視聴感想 前回に続き今回も後々への重要な伏線が続々と
大坂編に入って視聴率も上昇気味で好調維持のNHK大河ドラマ「真田丸」。
前回第18回「上洛」の視聴感想で伏線と回収という事について述べましたが、今回も真田源次郎信繁(堺雅人)の、というよりもこのドラマの最大にして最後のクライマックスである「大坂の陣」に向けての大いなる伏線が張られていましたね。
場面は茶々(竹内結子)が豊臣秀吉(小日向文世)の側室になる事を決心した後信繁と話しているシーン。茶々の側用人から秀吉の側近へと持ち場が変わる信繁に対して、
「そなたはまた必ず戻ってくる。・・・そしてそなたとわらわは同じ日に死ぬのじゃ。」
これはまさに大坂の陣の事ですよね。この場面を見て31年前の「真田太平記」を思い出した時代劇ファンの方は多いのではないでしょうか。
若き日の真田源次郎(草刈正雄)は、身の回りの世話をしていた真田家臣・向井佐平次(木之元亮)に対して、「そなたとは同じ日に死ぬる気がするのう・・」と話します。そして実際に源次郎と佐平次は同じ日、同じ時、同じ場所で相果てる事となりました。真田太平記の名シーンとして語り継がれている名場面です。
三谷幸喜は多分真田太平記のこのシーンからインスパイアされて茶々のセリフを考えたのではと思います。茶々と信繁の運命を暗示するために。
豊臣家にかかる暗雲と三成の不安・・そして信幸にも転機が
ラストシーンでは仲睦まじい秀吉・茶々の2ショットとともに、有働由美子アナの「これが秀吉政権崩壊への始まりだとはまだ豊臣家の誰も気づいていなかった・・」というナレーションで幕を閉じます。
三谷幸喜の中では茶々が秀吉の側室となったことが豊臣家滅亡へのプロローグであったと考えているようですね。
しかしこれは大多数の歴史好きの間では常識ともいえる見方ですね。わたしもそう思います。茶々自身が云々というよりも、茶々が秀吉の子を産んだ事で豊臣家の崩壊が始まったと思います。そういう意味では豊臣家の終わりの始まりは茶々が秀吉の側室となった事なんですね。
石田治部少輔三成(山本耕史)が秀吉の側室となった茶々を見て思わず
「殿下(秀吉)はどこに向かっているのか・・」
と呟くシーンがありましたが、これも豊臣家の行く末の暗示と三成の先見性を現していましたね。
作中で豊臣秀次(新納慎也)がさらっといったセリフの中で、「秀長様(豊臣秀長・演:千葉哲也)は病に伏せっておられる」と言いましたが、豊臣家にとってはこれも痛かったですね。豊臣家の大黒柱として、そして兄・秀吉のストッパーとして人望篤かった秀長の不在は。これも豊臣家崩壊の大きな原因であると思います。
一方で真田本家にも大きな動きがありましたね。秀吉の命で徳川家康(内野聖陽)の配下に組み込まれた真田安房守昌幸(草刈正雄)に対して、家康は縁組を持ちかけます。真田家嫡男・真田源三郎信幸(大泉洋)と、徳川家臣・本多平八郎忠勝(藤岡弘、)の娘・稲姫(吉田羊)の結婚です。
この縁談も、後々源三郎と源次郎が別々の道を歩むこととなる大きな要因となる重要な話ですね。良妻賢母のお手本のような女性として語り継がれる事の多い稲(小松殿)がこの結婚でどのように変わっていくのか非常に楽しみです。
「恋路」のMVP
次々とダメ出しされていくコメディパートで笑わせてもらった信繁、相変わらず人懐っこさと狂気が共存する秀吉も良かったですけど、今回のMVPは茶々に一票を。
最後、信繁に押し花を渡して「下がりなさい」といった瞬間に天真爛漫な茶々は豊臣家と運命を共にする淀殿へと変貌を遂げましたね。茶々の中の何かが180度変わった瞬間であったような気がします。秀吉も狂気を感じさせますが、この真田丸の茶々にも同じような物を感じますね。きり(長澤まさみ)が茶々の事を「あの人怖い・・」と言っていたように、この真田丸の茶々はよくドラマなどで描かれているヒステリックでわがままな女性というよりも、エキセントリックさを感じさせるキャラですね。心の闇を抱えているという。竹内結子さんは見事な演技だと思います。正直これほど上手い女優さんだとは知りませんでした。素晴らしいです。
相変わらず平野長泰(近藤芳正)はやさぐれた小物感全開ですね(笑)。賤ヶ岳七本槍の中で唯一大名になれなかったのも納得の小物ぶりです。近藤芳正さんもいい味出してますね(笑)。対照的に片桐且元(小林隆)が気の毒すぎる男なのも相変わらずです。大谷刑部少輔吉継(片岡愛之助)の豊臣家の良心ぶりも相変わらず。三成のツンデレも加藤清正(新井浩文)の猪突猛進ぶりも秀次の女好きの気のいいあんちゃんっぷりも相変わらず(笑)。うーん、やっぱり豊臣家の面々はキャラが立ってますな。
一部ネットを中心に「うざい」「邪魔」などと悪評飛び交っているきりやお松(木村佳乃)もいい感じで絡んでましたし、個人的には箸休め的な感じで良かったですね。非常にバランスの良い回だったと感じた第19話でした。
第20回「前兆」のストーリー
豊臣秀吉の側室となった茶々は秀吉の子を身ごもる。茶々の懐妊を知った秀吉は子どものように喜ぶのであった。
そんな中ちょっとした事件が起きる。
大坂の城下で心無い人間によって茶々懐妊を揶揄する落書きが発見されたのである。これを聞いた秀吉は激怒。怒りに任せて何をするかわからない秀吉の暴走を抑えようと、豊臣家重臣の石田治部と大谷刑部、さらに秀吉の側衆である真田信繁が知恵を絞って策を巡らす。しかし落書きの首謀者は見つからず、しびれを切らした秀吉は関係の無い町人たちを処刑すると伝える。
茶々と我が子可愛さゆえに狂気に走る天下人・秀吉に対して秀吉の正室・寧(鈴木京香)は秀吉に対して重い口を開く・・寧の言葉を秀吉はどう受け止めるのか?
そして信州・上田城では真田家嫡男の信幸と徳川四天王・本多平八郎の娘・稲との婚儀が進められていた。正室として迎えられる稲が来ることを妻・おこう(長野里美)に詫びる信幸。おこうは自分の運命を悟り、この現実を受け入れるのであった・・
「前兆」史実から見たネタバレ予想
次週「前兆」は秀吉を揶揄する落書きを巡る回になるようですね。これは恐らく、史実でも実際にあった「落首事件」を描くものと思われます。
落首事件とは、聚楽第に秀吉の側室・茶々の懐妊を揶揄する落書きがされ、これに激怒した秀吉によってまずは警備を担当していた門番など十数人が鼻・耳を削がれた上に磔にされて処刑されました。そして容疑者と言われた(実際に犯人だったかどうかは諸説あり)尾藤休道なる人物とそれを匿った本願寺の僧が本願寺によって処刑され、さらに二人を匿ったとして無実の罪の者を含む六十人以上の親類・町民らが処刑されたという痛ましい事件です。秀吉の蛮行を現す事柄として例に出される事も多い有名な事件ですね。
この事件は秀吉の我が子可愛さからの愚行の代表例としても挙げられているように、豊臣家のその後の凋落を暗示する事件として考えられています。恐らく次回第20話のタイトル「前兆」とは、豊臣家滅亡への前兆という意味なのでしょうね。
史実に照らし合わせれば、三成、吉継、そして信繁が知恵を絞ったが秀吉の狂気は止められなかったという展開になるのでしょうか。
前回「恋路」のラストでの有働アナの意味深なナレーションは早速次の週の落首事件に繋がっていたという事ですね。
稲の嫁入りで信幸の妻・おこうはどうなる?
もうひとつ気になるのが、徳川家との縁談によって信幸の妻・おこうがどうなってしまうのかという事ですね。
このおこうという人物は実在の人物であり、真田昌幸の兄・信綱の娘で昌幸にとっては姪、信幸にとっては従兄妹の関係になります。長篠の戦いで戦死した猛将・真田信綱の忘れ形見ということですね。
しかしこの信幸の妻であり、昌幸の姪でもあるおこうという人物については詳しい事は全く分かっていません。おこうという名もはっきりと分からず、資料に残るのは清音院という名のみです。ですので、この縁談によっておこう(清音院)がどうなるのかは分かりません。
先週の昌幸の発言によれば、おこうは里に帰すといっていましたので、そうなるのかもしれません。しかし、普通に考えれば稲姫を正室に迎えておこうを側室とするというのが常識ですね。別におこうが何かしたとか、おこうの里との関係が悪化したという訳ではないですから里に帰す必要もないと思います。まあ側室に格下げという事にはなるのですが、家の格から考えても本多平八郎の実娘で徳川家康の養女という稲姫の方が上なのは明らかであり、真田家の主筋から来た稲を側室とするわけにもいかないので、おこうが側室になる事は致し方ないといえるでしょう。
ただし、あくまでおこうがどうなるかを史実から読み取れない以上、真田丸におけるおこうの運命は三谷幸喜のさじ加減という事にもなりますね。
真田丸女性陣の中ではネットを中心にトップクラスの人気を誇っている信幸の妻・おこう。ここで退場となってしまうのはいかにももったいないと思うのはわたしだけではないはずです。側室となって正室の稲とガールズトークで話を弾ませるおこうの姿が見てみたいんですけどね。
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