第16話「表裏」視聴感想
まさにタイトル「表裏」のとおりの第16話でしたね。
真田昌幸(草刈正雄)を評する言葉として現代でも有名な「表裏比興(ひょうりひきょう)の者」という形容詞ですが、今回第16回「表裏」においては、昌幸ではなく豊臣秀吉(小日向文世)の人間性を現すという意味合いが強かったですね。さらにその秀吉と対立する徳川家康(内野聖陽)との虚々実々の駆け引き、そしてそれら大勢力の思惑の中で翻弄される弱小勢力・真田家の悲哀というのが存分に示されていたと思います。
と同時に、前回の第15話「秀吉」に続いて、今回も秀吉を初めとした豊臣家の人物たちの人間性や関係性を丹念に描写する事に力を割いた回であったという印象も強いですね。秀吉が秀次に対してムキになった、寧(鈴木京香)に帯を贈ったくだりはこの先の秀吉と秀次の対立への布石となる演出であったでしょうし、石田三成(山本耕史)と大谷吉継(片岡愛之助)の書庫でのやり取りは来たるべき千利休(桂文枝)切腹への前ふりでしょう。加藤清正(新井浩文)は剛直で一途な猪武者であるという印象を強く描きましたし、大蔵卿局(おおくらきょうのつぼね)(峯村リエ)がポロッと漏らした、茶々(竹内結子)が「悲しむことをやめてしまった」というのは、茶々の壮絶な半生を現すに十分な一言でしたね。
極めつけは秀吉の弟の立場にあって豊臣家きっての切れ者であり人望を集めていた名将・羽柴秀長(千葉哲也)の信繁に語った豊臣家(羽柴家)の内情です。あの秀長の独白によって、羽柴家の生い立ちや現在置かれている立場、そしてこれからの運命を示唆する事に成功しています。と同時に秀長の人物像を印象付けるのにも十分な役割を果たしましたね。何度も言っている事なのですが、三谷幸喜という脚本家の凄いところは、こうやって少ない出番でもしっかり各キャラを立たせてしまうところにあります。と同時にこの先の伏線を何本も何本も貼っているのです。もちろんその伏線は全て回収されます。
およそ2話まるまるかけて秀吉の底知れない人物像を植え付け、豊臣家中の人たちの天下人との関係性を描き、それぞれのキャラを確立させ、更にこの先訪れる未来への伏線を何本も貼ってしまっています。45分という短い時間の中でおよそできる事は最大限にやってしまっているという感じですね。
個人的には真田丸のこの「豊臣家パート」は非常に見ごたえがあって面白いです。もう数このテイストでやってもらってもいいくらいですね(笑)。
「表裏」のMVP
いきなり行きます、今回のMVPは大和大納言・羽柴秀長で!
やはり大坂城内での信繁とのやり取りで全てを持ってかれましたね。さすが羽柴家の良心、羽柴家の裏の要って感じでした。同時に世間でよく言われている、「秀長が家康くらい長寿であったなら豊臣家の滅亡はなかった」というのを裏付けるに十分すぎるほどの好人物でしたね。千葉哲也さんはお見事という他ない名演でした。あの少ない登場時間で羽柴秀長という男をこれでもかって程印象付けてしまいました。この先ももっともっと出番を増やしてもらいたいと切に願います。ていうか、秀長大好きなんですよ、本当に(涙)。大坂贔屓、豊臣贔屓の人ならわかってもらえると思います(笑)。
秀長と迷ったのが、秀長と対照的な暗黒面全開の兄・秀吉。秀吉のダークサイドは病みつきになりそうな魅力で溢れていますね。と同時にとても恐ろしい。この秀吉は小日向文世でなければ出せない秀吉でしょうね。そして実際の秀吉に最も近い秀吉とも言えると思います。
石田治部少三成も良かったですね。超合理的な思考回路と、豊臣家のためには鬼にもなれる冷徹さがよく出ていました。利休の事について大谷吉継と語るシーンを見る限り、真田丸においては利休切腹の原因を石田三成の謀略とする説にしそうですね。楽しみです。
気のいいあんちゃん(笑)、羽柴秀次(新納慎也)も相変わらず良かった。寧に嘘を見抜かれてそれをあっさり認める人の良さは秀次が決して「殺生関白」と呼ばれるような人間でなかったことを物語っています。と同時にそんな秀次に声を荒げる秀吉。正直この時の秀吉が最も恐ろしい秀吉でしたね。後の秀次の運命を示唆するような一場面でした。
初登場の稲(吉田羊)はやはり気の強い、芯の通った女性という感じでしたね。まあ世間のイメージ通りです。何より娘を溺愛する本多平八郎忠勝(藤岡弘、)の可愛い事(笑)。あのシーンがずっと見たかったんで満足です(笑)。
寧と茶々もしっかりキャラが立ってましたね。
そして忘れてならないのが賤ヶ岳七本槍の片桐且元(小林隆)と平野長泰(近藤芳正)。「いい人」片桐且元と「やさぐれ者」の平野長泰。これも二人のこの先の運命を暗示するような回でしたね。大坂の陣の前に豊臣と徳川の板挟みとなって苦悩する且元と、七本槍の中で唯一大名に出世できなかった長泰。
まあとにかく役者さん全員素晴らしいですね。何度も言いますが、しっかりキャラ立ちしてますわ。
第17回「再会」のストーリー
大坂城の羽柴秀吉に対して、信州・上田の真田家討伐を願い出た徳川家康。そして真田家討伐を許可した秀吉。
その事実を知った真田信繁(堺雅人)は、徳川軍による真田討伐を取り消すよう秀吉に懇願する。しかし秀吉は信繁の懇願に耳を傾けようとしない。
徳川の大軍が上田に攻め込むという情報を知った真田昌幸は、真に恐ろしきは徳川家康ではなく羽柴秀吉という男なのだと考える。
生家である真田家の危機に気が気でない信繁であったが、信繁は城内で茶々の身辺で働く事となり、自由奔放で天真爛漫な茶々に翻弄される日々を送る。
未だ上洛要請を受諾せずのらりくらりとかわしている家康に対して秀吉は策を講ずる。そしてその秀吉の策は信繁も巻き込んで家康と虚々実々の駆け引きを繰り広げる事となる。
そんなある日、秀吉に連れられて大坂城内での踊り見物に行った信繁。そこで見たのは意外な人物であった・・
「再会」史実から見たネタバレ予想
次回「再会」においても、今回の「表裏」、前回の「秀吉」と同じく史実における大きな展開はあまりなさそうな雰囲気です。
秀吉と家康の腹の探り合いと駆引き、それに利用される真田家・・という構図が再び続きそうですね。史実的に見ると、徳川家康は真田攻めを諦めます。秀吉の仲裁によるものです。そして秀吉は天下を取るうえで最も大きな障害となる徳川家康の懐柔策へと乗り出します。
その一つが政略結婚です。秀吉は家康懐柔策として、実の妹である旭姫(朝日姫とも)を徳川家康の妻とするのです。しかも既に他家へ嫁いでいた旭を離縁させてまで。家康は渋々承知します。これによって形としては秀吉と家康は義兄弟という事になります。しかし秀吉がこれだけの事をしてもまだ家康は上洛しようとはしません。上洛して秀吉に謁見するという事、それはつまり正式に秀吉の家臣になったという事です。何としても上洛させたい秀吉と、上洛したくない家康。
そして秀吉は最終兵器を出します(笑)。なんと実母・なか(大政所)を人質として徳川家康の元へと送るのです。このなりふり構わぬ懐柔策によってようやく家康が折れ、上洛して秀吉の軍門に降る事になったのです。
この一連の秀吉と家康の駆け引きは、二人の天下人の腹の探り合いとして有名なものです。そしてここを丹念に描くというところが非常に嬉しいですね。秀吉や家康が主役ではないドラマではかなり端折られる部分ですので。ここは両者のキャラクターを引き立たせる見せ場だと思います。こういう所に面白さを見いだせる所が三谷幸喜らしいですよね。
行方不明になっていた信繁・信幸の姉・松が登場?
次週「再会」のあらすじでは信繁が思わぬ人間と出会うとなっていますが、これは恐らく信繁の姉・松(木村佳乃)の事でしょう。だって次週予告映像で思いっきり出てましたし(笑)。
史実においても、真田昌幸の娘・村松殿(真田松)は安土城で人質として取られた後に行方不明となり、2年後に桑名で発見されたと記してあるものがあります。三谷幸喜は恐らくこの説を採用しているものと思われます。そうなると松が行方不明になったのが天正十年(1582年)ですから第17話時点の天正十四年(1586年)時点で既に4年も経ってしまっていますね。この辺りはまあ、大人の事情的な感じなのでしょう(汗)。
松がびわ湖付近で行方不明になった直後に、地元の領民に保護されているくだりがほんの僅かですがありましたので、松の再登場で間違いないと思われます。という事は、夫の小山田茂誠(高木渉)の再登場も近いという事でしょうか。
次週の初登場人物は二人。
なかの娘であり、秀吉・秀長の姉であり、家康の妻となる旭姫(清水ミチコ)と、歌舞伎の元祖とも言われる伝説の踊り子・出雲阿国(いずものおくに)(演:シルビア・グラブ)です。
旭姫は出てくるだろうなとは思いましたが、いやあまさか清水のミッちゃんだったとは(笑)。個人的に大好きな女芸人さんなので、まあ楽しみかな(笑)。
出雲阿国は出てくるとは思いませんでしたね。凛とした強い女性という印象の強い阿国ですが、北条氏政を演じる高嶋政伸さんの義姉・シルビアさんの舞いも楽しみですね。
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