第1話「船出」の詳細ネタバレ&あらすじ
大坂夏の陣において徳川家康を追い詰めた一人の武将がいた。「日の本一の兵(つわもの)」とうたわれた真田源次郎信繁(幸村)である。
大坂の陣からさかのぼる事33年。大名たちが生き残りをかけて争いを繰り広げていた戦国時代の真っただ中で、真田信繁はまだ好奇心旺盛な16歳の若武者であった。
武田信玄(林邦史郎)の死後、甲斐の名門武田家の当主は信玄の息子・勝頼(平岳大)であった。勝頼は東に北条、西に織田、南に徳川、北に上杉と有力大名に周りを囲まれながら勢力挽回の機会をうかがっていた。
そんな1582年1月、勝頼の義弟・木曾義昌(石井愃一)が織田に寝返ったとの知らせが甲府の勝頼へと届く。この義昌の裏切りは、武田領の西側、つまり織田に対する備えが無くなったことを意味する。勝頼の甲斐は直接織田軍の脅威にさらされる事となるのである。
武田領へと侵攻を始めた織田軍に対して、信濃の諏訪・上原城にて軍議を開く勝頼。御一門衆の筆頭・穴山梅雪(榎木孝明)、譜代家臣の小山田信茂(温水洋一)、筆頭家老の跡部勝資(稲荷卓央)らに交じって信州・上田を治める真田昌幸(草刈正雄)の姿もそこにはあった。
軍議の結果、勝頼は一旦甲斐の新府城へと帰り、体勢を立て直す事と決まった。
新府に帰った昌幸は、武田家の人質として甲府で暮らす妻の薫(高畑淳子)と母のとり(草笛光子)が住む真田屋敷へと立ち寄る。その日はちょうど、昌幸の娘・松(木村佳乃)と松の夫・小山田茂誠(高木渉)も真田屋敷を訪れていた。薫やとりと同じく甲斐で武田の人質生活を送っていた木曾義昌の家族は義昌の謀反の見せしめのために処刑されたという。それを不安に思った薫は武田と真田の行く末を昌幸に問いただすが、昌幸は「武田家は滅びぬ」と言い、不安視する薫らを安心させる。
しかしその後自室へ呼んだ長男・信幸(大泉洋)と次男・信繁(堺雅人)に対して昌幸は「武田は滅びるぞ」と武田家が迫りくる織田の脅威に対抗できる状態ではないことを示唆する。昌幸は未完成の新府城を捨てる事を二人に告げ、この先の苦難を乗り越える事を心に刻むように告げる。
そんな矢先、何と武田家の一門衆であり、勝頼とは血縁関係にもある重臣・穴山梅雪が織田に寝返る。寝返るだけではなく、織田家と同盟関係にある南の徳川勢を手引きする念の入りようである。この裏切りによって南からの脅威にもさらされた上に、武田家の兵力・内情が全て敵方に漏らされてしまう事になった。
再び軍議を開いた勝頼に対して、新府城での籠城を主張する跡部勝資と一か八かの決戦を主張する小山田信茂。紛糾する軍議の中で昌幸が口を開く。
「御屋形様、わが岩櫃城へとお越しください」
完成途上の新府城では持ちこたえられず、決戦も無謀だとする昌幸は堅固な岩櫃で再起を図るのが上策だと訴え、勝頼もその案を承知して岩櫃へ移る決意を固める。
勝頼を迎えるため岩櫃城に向かって一足先に新府を出た昌幸。だがそのころ、勝頼に詰め寄る跡部と小山田の姿があった。新参者の真田を頼る事の危うさと信玄以来の武田の領地・甲斐を捨てる事の愚を勝頼に説く跡部と小山田。最終的に二人の意見に押し切られた勝頼は小山田の居城である甲斐の岩殿城へ赴く事を決意する。
その夜、真田屋敷の信幸と信繁の元へ一人の男が訪れる。
武田勝頼である。
勝頼は昌幸の待つ岩櫃ではなく、岩殿へと移る事を二人に告げる。と同時に真田家の信幸、薫、とりの人質生活を解く事、小山田信誠の妻である松を岩櫃へ連れていくこと、護衛のために兵100人をつける事を伝える。岩殿へ移る事を危惧した信繁は思わず勝頼に進言するが、勝頼はすでに覚悟を決めた様子で心は動かない。信幸はせめて100人の兵を勝頼に返す事を告げる。御屋形様あっての真田である、兵は勝頼の身を守るために使ってほしい、我々は何とかなります、と。
そんな信幸と信繁を見て勝頼は一言言い残して真田屋敷を去る。
「真田・・よき一族じゃ」
人質としての生活の終わりと岩櫃への帰還を薫ととりに伝えた信幸は真田に仕える忍び・佐助(藤井隆)を呼び、事の顛末を岩櫃の昌幸に知らせるよう下知する。
翌日、新府城に火を放つため、岩櫃への準備を進める真田屋敷の者たち。それに先立ち、勝頼も跡部・小山田らの重臣を従えて岩殿城へと立った。
そして真田家も炎が燃え立つ新府城を見ながら岩櫃城へと急ぐ。
岩殿城へと急ぐ勝頼の軍は兵の脱走が相次ぎ、新府を立つときには600いた軍勢がわずか100人余りに減ってしまっていた。岩殿城を目前にして、勝頼を迎える準備のために一足先に小山田信茂が岩殿城へと入る。そして勝頼が岩殿に到着したその時、小山田信茂の命によって岩殿城の門が閉じられる。
門の前で立ち往生する勝頼一行に対して門上から現れた松の夫・小山田茂誠が告げる。
「故あってわれらは織田に加勢する事となりました。御館様をお通しするわけには参りませぬ!」
涙を流しながら勝頼に告げる茂誠をみた勝頼は憤慨する跡部らに対して、一言
「・・もう、よい・・」
と言い残し、馬印を返して引き返す。まさに戦国の雄・武田家は滅亡の時を迎えようとしていた・・
そして野盗の群れに襲われながら父昌幸の元へと急ぐ信繁ら真田の一党。
今まさに戦国の世という大海にに真田丸という一艘の小さな船が船出する・・
第1話の感想とMVP
期待にたがわぬ第1話でしたね。
この第1話を見ての感想は、やはり栄枯盛衰といいますか、武田家の没落と当主・勝頼の苦悩が良く描かれていると思いました。全体を覆う戦国時代ならではの虚無感と緊張感。しかし、その中を明るく前向きに生きようとする真田家の人々。そして、やはり切れ者であり只者ではないオーラをこれでもかと発散させる昌幸。
信幸と信繁のキャラを際立たせるための将棋のくだりが興味深かったですね。定石を重んじる兄・信幸と常識にとらわれない自由人・信繁。この先の二人の人生を象徴するようなシーンでした。
信幸と信繁という二人の違いはこの第1話で早くも印象付けられましたし、昌幸の表裏ある人物像やその比類なき先見性も印象的でした。
あえてこの第1話のMVPを選ぶとするなら、わたしは武田勝頼(平岳大)をあげます。
やはりこの俳優さんは時代劇がとても似合う俳優さんです。それを再認識しました。この勝頼役も素晴らしい。馬上でのシーンなども実に綺麗な身のこなしで、まさに名門・武田家の当主たる威厳に満ちていましたね。今まさに命運尽きようとしている武田家の当主としての悲哀や寂寥感、偉大すぎる父・信玄の息子であるがゆえのジレンマなどが見事に出ていました。
次点には昌幸の妻・薫ですかね。全体的に重苦しい雰囲気を和ませる役目を見事に果たしましたね。やはりこういう役をやらせると高畑淳子さんははまり役です。浅間山が噴火した時の昌幸の表情や、舌の根も乾かぬうちに「武田は滅びる」と父に告げられた時の信幸のリアクションも捨てがたかったのですがね(笑)
とにかく、第1話にして昌幸、信幸、信繁という真田丸の中心人物のキャラを見事に立てる事に成功しているなと感じた第1話でしたね。
さすがは三谷幸喜です。第2話まで待ちきれませんわ、ホントに(涙)
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