上田城では信繁(堺雅人)が祝言の場でお梅(黒木華)のために泣いてくれたことをきり(長澤まさみ)に感謝する。
羽柴秀吉(小日向文世)と対立していた徳川家康(内野聖陽)は、天正十二年4月の小牧長久手の戦いで勝利した。
家康はまだまだ余力を残す秀吉、沼田領の扱いに手を焼く同盟国の北条氏、さらに真田と上杉・・周辺勢力との調整に苦労していた。家康が最も恐れていたのは上杉と真田が手を結ぶことであった。
越後の上杉景勝(遠藤憲一)の元には家康の心配通り、真田昌幸(草刈正雄)から服属したいとの書状が届いていた。そんな昌幸に景勝は一つの条件を出す。次男である信繁を人質として差し出すよう二との条件である。
人質の話を父・昌幸から聞いた信繁は快諾。矢沢三十郎(迫田孝也)を伴って越後へと向かった。
越後・春日山城に着いた信繁たちは景勝に直訴する漁民たちの姿を見る。漁場の権利を巡って対立する北浜の治兵衛と南浜の又吉という漁師の長だ。景勝は二人の意見を聞き、吟味したうえで結論を出すと伝え、二人は感謝して春日山城を後にする。
その後景勝と対面した信繁は、「義」に生きた先代・上杉謙信を尊敬する景勝の姿に心を打たれる。
信繁が人質として景勝の元を訪れた数か月後、上田城の昌幸の元に上杉家重臣・直江兼続(村上新悟)から一通の書状が届く。内容は上野・沼田城を上杉に引き渡してほしいというもの。沼田を守りたくて上杉に臣従した以上、この条件は真田家にとっては呑めるはずがないのは兼続も百も承知のはず。何か裏があると読んだ昌幸は、人質として越後にある信繁にその解決を託すのであった。
昌幸から沼田の件を伝え聞いた信繁は、兼続ではなく景勝にその真意を問いただす。しかし景勝は沼田の件を何も知らない。兼続の独断で送った書状の様だ。景勝は信繁に対して兼続に掛け合って真意を確かめてやると約束したのであった。
数日後、漁民の治兵衛と又吉が城へやってきて、漁場の訴えの解決を催促しているのを信繁は目撃する。解決策を示されぬまま城から追いやられる二人。二人が去った後、城の上杉家家臣から景勝が何でも安請け合いしたまま解決を先送りしていることを聞いていると、そこに景勝と兼続が現れる。景勝は心苦しさからか兼続に事を押し付けてその場を去ってしまう。景勝を見やりながら兼続が呟く。
「困っているものを見るとまず先に力になると約束されてしまう・・」
そうこうしているうちに景勝が帰ってきて話し始めた。
「今のわしには話を聞いてやる事しかできぬ・・これが本当のわしじゃ・・」
信繁は人間臭さを隠そうとしない景勝に信頼感を抱く。が、同時にある事に気づいた。
「ひょっとして、沼田の件も・・?」
沼田城の一件は案の定、景勝から兼続に取り成しをしてなかった。真田が沼田を譲る気がない事を知った兼続は、真田と手を組まぬと態度を硬化させてしまうのであった。
信繁は景勝とともに春日山城から越後の港・直江津港を見ていた。そして城を出て海へと向かう。その途中で漁民同士の騒ぎを目撃。信繁、三十郎、景勝は騒ぎの現場の神社へと向かう。
騒ぎは治兵衛と又吉であった。漁場を巡る二人の意見、どちらが正しいか「鉄火起請(てっかぎしょう)」という熱せられた鉄の棒を握ってどちらが先に落とすかという危険な儀式である。勝った方の訴えは聞き入れられるが、負ければ訴えを退けられた上に処刑されるという過酷な儀式でもある。この儀式によってもめ事を解決しようとしていた斉木という奉行に対して信繁はやめるよう促すが、斉木は聞く耳を持たない。
そこで信繁は提案する。鉄火起請で裁定を下すかどうかを斉木と信繁が鉄火起請で決めようというのだ。熱せられて煌々と赤く輝く鉄棒の前で精神集中する信繁。信繁が鉄棒を持とうとしたその直前に斉木は臆してしまい、結局鉄火起請で裁定を下す必要はないと漁民に言い渡し、漁民たちを混乱させてしまう。
そこで景勝が笠と頭巾を取り、素性を明かして漁民たちに謝る。突然のことに驚き平伏する漁民たち。その訴えを聞いていた信繁は一つの案を提案し、その信繁の解決案にヒントを得た景勝は、漁場の浅瀬と深瀬を潮の変わり目で南浜と北浜で交代して漁をするよう提案。漁民たちは得心し、争いは解決を見る事となった。
城への帰路で景勝は信繁にこう漏らす。
「お主のような子が欲しかった」
信繁は景勝の想いに胸を熱くするのであった。
まもなくして、信繁にうれしい知らせが届く。上田にいた妻の梅が無事女児を出産。「すえ」と名付けられた。喜ぶ信繁。
兼続の元へ赴いた信繁に対して、兼続はそろそろ真田を許してやれという景勝の口利きがあったと漏らす。兼続いわく、沼田を引き渡すよう言ったのは真田の出方を伺っていたのだという。すんなり沼田を引き渡すようであれば、また何か魂胆があっての事だろうと疑念を抱くところであったと。景勝の言葉を伝える兼続。
「徳川と北条に譲らぬ真田の覚悟、此度はまことと認めよう。上杉は再び真田と手を結ぶ!」
兼続は景勝の起請文を信繁に見せ、真田家を庇護し、戦の際には援軍を送り、沼田、小県が真田家の領地であると認める事を正式に約束する。
起請文を受け取った昌幸は徳川家康に手切れの書状を送り、正式に徳川家の元を離れる事を宣言。
まんまと煮え湯を飲まされた家康は真田の処遇に悩む。そこに側室の阿茶局(斉藤由貴)が家康に平然と言う。
「お潰しになられれば?」
家康は徳川の重臣・鳥居元忠を大将として、信濃国衆も加えた7000の兵で上田城攻めに向かわせる。
上田城では軍議が開かれ、野戦、籠城など策が定まらないが、昌幸は籠城するつもりはないらしい。戦に貴重な駒となる信繁の不在を嘆く昌幸。
春日山城では苦しい兵力をやり繰りして何とか上田に援軍を出す事を兼続が段取りする。そして信繁は景勝に直訴してその軍に加えてもらう事を許された。信繁も加わった「第一次上田合戦」がまさに幕を開けようとしていた・・
「人質」の視聴感想
うーん、いよいよ始まりますね、上田合戦。
ここは「真田丸」前半のハイライト中のハイライトと言ってもいいでしょう。
その前哨戦ともいえるこの上杉景勝への臣従と信繁の人質のくだりは必ずしっかりと描いておかねばならないシーンでもあります。そういう意味では1話丸々この話に割いてくれたのは非常に有り難かったですね。
上杉家の苦しい事情もしっかりと伝わっていましたね。上杉家は織田信長が本能寺で討たれなければ、間違いなく武田家と同じように攻め滅ぼされていたでしょう。それほど追い詰められていたのです。周囲にはまだ敵対勢力がおり、領国にも反乱分子がいました。とてもではないですが、他国に援軍を割ける状態ではなかったのです。
そんな中で上杉景勝は、亡き上杉謙信の貫いた「義」を何とか守り抜こうとしていた、その思いが痛いほど伝わってきましたね。景勝だけではなく、北条氏政(高嶋政伸)も、武田勝頼(平岳大)も、真田信幸(大泉洋)も、みな偉大過ぎる父の影と戦うという運命を背負って生きています。先代をどう超えるか?というのはこの「真田丸」に隠されたマスクテーマといってもいいのかもしれませんね。そういう意味では非常に興味深い回となりました。
第12話の最優秀キャラ(MVP)
いきなり発表します。今回のMVPは・・・
真田信繁です!!
鉄火起請で勝負する時の肝の据わり方や知恵者ぶりは、後に大坂の陣で「真田日本一の兵(つわもの)」とまで称された稀代の名将の片鱗を伺わせるに十分なものでしたね。景勝、兼続とのカラミも素晴らしかったです。非常に息の合った演技でしたね。
主人公でありながら第12話にして初のMVP(笑)。しかし仕方ないですよね、ここまでは実質昌幸が主人公みたいなものでしたから(苦笑)。今回は文句なしだと個人的には思います。
次点は直江兼続を推したいですね。
以前から好きだった兼続のツンデレぶりが全開の回でした。個人的には凄く嬉しいですね(笑)。理想に生きる主君に諦めに近い感情を抱きながらも支え続ける・・カッコいいじゃないですか。まさに組織に生きる男の鏡です。特に景勝から真田への援軍を懇願された時の対応はまさに「神対応」でしたよね(笑)。これまで冷静な一面しか描いてこなかったのはこのシーンのためだったのですね。さすが三谷幸喜。
景勝も良かったのですが、少し軟弱すぎかなという感は否めませんでしたね、個人的には。まあああいう景勝像もありっちゃあありなのかもしれませんが、個人的にはもう少し硬骨漢として描いてもらいたかった気はします。まあこの後に期待しましょう。景勝もまだ謙信の後を継いで数年しかたっていません。信繁や家康がこの後大変貌を遂げるように、景勝も後の豊臣政権五大老に相応しい人物になっていくと思います。
薫(高畑淳子)お母さんのツンデレぶりもなかなかでしたね。孫が可愛くないわけないですよね。素直に可愛がってあげればいいのにね(笑)。女性パートは特にネットで賛否両論巻き起こしていますが、わたしは個人的にそんなに気になりませんね。むしろ箸休めとしては非常に効果的だと思っています。緩急の緩の部分ですね。やはりその辺りのさじ加減が三谷幸喜は絶妙だなと感心させられます。
次週はいよいよ上田合戦。何度も言いますが、真田家のハイライトの一つである大戦です。非常に楽しみですね。
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