1980年代の前半は、ビルボードなどのアメリカのヒットチャートをイギリスの若きバンドたちが席巻した時代でした。
イギリスのアーティストがアメリカヒットチャートを独占するその様は、「第2次ブリティッシュ・インヴェイジョン(第二次英国侵攻)」と呼ばれました。そんな「英国侵攻」勢の中心となったのが、ニューロマンティックと呼ばれた当時大隆盛を誇ったアーティストたちだったのです。
ここでは1980年代の第二次ブリティッシュ・インヴェージョンで世界を席巻したニューロマンティックバンドたちをご紹介したいと思います。
NR生みの親?のスティーヴ・ストレンジが率いたヒューマン・リーグ
当の本人たちはニューロマンティックにカテゴライズされることを極端に嫌っているようなのですが(まあミュージシャンの多くはカテゴライズ自体を嫌うのですが汗)、そのビジュアル面や雰囲気、さらに時代背景からはやはりニューロマンティックに分類されるべきグループだろうと思うのがこのヒューマン・リーグです。
1979年にデビューした女性2人を含むヒューマン・リーグが1981年に発表した初の全米ナンバーワンソングがこの1981年発売のアルバム「デアー(Dare!)」に収録されている「Don’t You Want Me(邦題:愛の残り火)」です。この曲のサビのメロディは超有名ですよね。
一度は解散して後に再結成というパターンが多いベテランバンドの中で、このヒューマン・リーグはずっと活動している数少ないバンドです。特に主要メンバーである3人のヴォーカリストは一貫して変わっていません。フィリップ・オーキーと女性メンバーの二人、スーザン・アン・サリーとジョアン・キャサロールですね。
ニューロマンティックのアーティストたちの中では最も安定した成功を収めたバンドのうちの一つですね。さらに特筆すべきなのは、キャリア中で2曲もの全米1位ヒットソングを持っている事。これはニューロマ勢の中でもヒューマン・リーグとデュラン・デュランだけです。ではそのもう1曲の全米ナンバーワンソング、1986年発売のアルバム「クラッシュ(Crash)」からシングルカットされた「ヒューマン(Human)」をどうぞ。
全米アルバム1位のデペッシュ・モードはNR一番の勝ち組?
全米ナンバーワンアルバムを送り出すなど、このデペッシュ・モードも素晴らしい成功をおさめ、現在でも現役としてバリバリの活動を続けているバンドです。
彼らは早くから本国のイギリスをはじめとするヨーロッパでは人気が高かったのですが、アメリカでブレイクしたのはニューロマンティックブーム最終盤期ともいえる1980年代中盤以降の話です。
というわけで、ここではまだデペッシュ・モードがニューロマンティックスと呼ばれていたころの曲をご紹介しましょう。
デビューアルバムとなった「ニュー・ライフ(Speak & Spell)」に収録されている「ジャスト・キャント・ゲット・イナフ(Just Can’t Get Enough)」です。80年代前半を感じさせるちょいチープな感じ(誉め言葉です笑)のシンセサイザーが心地よいポップソングですね。いかにもって感じのメロディも懐かしいですな。
デペッシュ・モード最大の売り上げを記録したヒットアルバムとなった1990年発売の7thアルバム「ヴァイオレーター(Violator)」収録の「エンジョイ・ザ・サイレンス(Enjoy the Silence)」です。この頃にはデペッシュ・モードをニューロマンティックスと呼ぶ人は誰もいませんでした。押しも押されもせぬ社会派のロックバンドとして認知されていました。やっぱり曲カッコいいですよね。
断じてアイドルバンドじゃないデュラン・デュラン!だがジョン・テイラーは死ぬほどかっこいい(笑)
ニューロマンティックブームが生み出した最大の超有名バンドこそがデュラン・デュランでしょう。少なくとも日本においては他のニューロマ勢を大きく凌駕して周回遅れくらいの差をつけるほどの圧倒的な人気を誇っています。
デペッシュ・モードやヒューマン・リーグと同じく、もうすでにニューロマだったことも忘れてしまうほどの大御所バンドとなった超大物ですね。しかしわたしたちの世代的にはバリバリのニューロマイメージを未だに鮮烈に持っている人も多いのではないでしょうか。
その理由はやはりそのビジュアルでしょう。とにかく妖艶で中性的なカッコいい王子様的なキャラクターは、当時中学生だったわたしのクラスの同級生や先輩女子たちのハートをがっちり鷲掴み状態でしたね。一時期はジャニーズアイドル以上の人気を誇っていた記憶がありますね。
そんなデュラン・デュランの1stアルバムからのシングルから1曲ご紹介しましょう。デビューシングルとなった「プラネット・アース(Planet Earth)」です。
ヒラヒラの貴族チックな衣装やヘアスタイル、メイクなどがいかにもニューロマンティックって感じですよね。てかみんな若いっす(笑)。でも女子人気断トツ一番だった(自分の周りではね苦笑)ジョン・テイラー(ベース)はやっぱこの頃からカッコいいですなあ。
そして次に2ndアルバム「リオ(RIO)」からもご紹介しましょう。数々あるシングルヒット曲の中から個人的にはリオの中で一番好きな曲を(汗)。
この憂いと影のあるマイナー調でポップだが明るくなりきれないメロディ、素晴らしいですね。ただのアイドルバンドとは決定的に違う非常に高い実力を持ったバンドだと改めて思いますね。デュラン・デュランのアルバムを聴けばその卓越したメロディセンスを嫌という程感じることが出来ますね。だからこそデュラン・デュランをアイドルバンド扱いする一部の人たちには腹が立ちました。お前らちゃんとアルバム聞いてんの?って感じでしたね。
そして最後にシングルカットされた「ザ・リフレックス(The Reflex)」が全米1位となって名実ともに天下を取った3rdアルバム「セヴン&ザ・ラグド・タイガー(Seven and the Ragged Tiger)」からのこの曲をご紹介しましょう。これも大好きな曲です。シンセサイザーが大胆にフィーチャーされており、セヴン~の中では最も初期のデュランのイメージを残している曲ではないでしょうか。
2ndシングルとしてシングルカットされた「ニュー・ムーン・オン・マンデイ(New Moon On Monday)」です。
うーん、何度も言ってますけどもう一回言わせてください。カッコいいっすなあ。
売れるべくして売れたヒューマン・リーグ、デペッシュ・モード、デュラン・デュラン
ここでご紹介した、ヒューマン・リーグやデペッシュ・モード、そしてデュラン・デュランという3つのバンドは、デビュー当時にニューロマンティックスのバンドとして認知されて、その後はワールドワイドな成功をおさめ、そして今日に至るまで一度も解散することなく一線級でのキャリアを保ち続けている稀有なバンドたちです。
ハッキリ言って、ニューロマンティックスというムーヴメントの中から現れてきたバンドの中には、話題性のみで実力が追い付いていないようなミュージシャンも見受けられたのは事実ですし、ニューロマに限らず、ムーヴメントの波に乗って出てきたアーティストの中にはそういった存在がいるのも致し方ありません。
しかし彼らはそのキャリアが示す通り、ニューロマンティックスのムーブメントがあろうとなかろうと出てくるべくして出てきて、売れるべくして売れ、残るべくして残っている人たちだといえるでしょうね。分相応の実力を備えていた選ばれし人たちだという事ですね。
ちなみに、その他のニューロマンティックス系バンドたちの記事もご参照ください。
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