放送終了から7年以上を経た今もネットなどでは賛否両論が渦巻く2009年大河ドラマの妻夫木聡主演「天地人」。
平均視聴率は21.2%と20%を超えており、現時点(2017年現在)では平均20%を超えた最後の大河ドラマとなっています。視聴率的には完全に成功したドラマといってもいい大河ドラマともいえるでしょう。
世間的にも大河ドラマファンや歴史ファンなどを中心に批判も多くて、個人的にも申し上げたい事は山ほど(爆汗)あるのですが、ここでは批判ではなくポジティブな意見をあえて述べてみたいと思います。決して悪い面ばかりではないドラマだったとも思いますので。
勇壮でキャッチーな名オープニングテーマ曲は大島ミチル作曲
まずは何といってもオープニングでしょう。
このOPテーマ曲は本当に素晴らしいです。過去に幾多の名曲を輩出してきた大河ドラマの歴代オープニング曲と比べても全くそん色ないどころか、間違いなく上位に入るだけの素晴らしい音楽です。
勇壮なイントロが始まっただけで身の毛もよだつ程のアドレナリンが噴出してきます。少し古いですが、「つかみはOK」ってやつです。つーか、つかみの時点で完全にKOされてるってレベルです。
そしてつかみで持ってかれたら、後はそのまま怒涛の如く押し寄せるメロディの波に飲み込まれたまま一気に持っていかれます。まさにその波に身をゆだねた3分弱は恍惚と至高の時といっていいでしょう。「これぞ大河ドラマのオープニングぞ!!」と日本国民全員に高らかに宣言したいほどの名曲です。
勇壮でありながらキャッチーで覚えやすいメロディ、戦国時代の騎馬隊を思わせる太鼓を中心としたリズム隊の絶妙なバランス、それらが3分弱の間に「起承転結」として素晴らしいドラマを聴かせてくれます。
作曲を担当したのは大島ミチルさん。豪快さと繊細さが同居しながらダイナミックに展開するこの天地人のOPは、まさに大島ミチルさんの真骨頂といってもいい曲ともいえます。とにかく素晴らしいとしか言いようがないです。残念ながら天地人以降は大河ドラマは担当していらっしゃいません。もう一度是非大河ドラマを担当してほしい方です。ていうか、NHKは絶対にオファー出さないといけませんよね。
大河ドラマのオープニングについては以下の記事もご参照ください。
NHK大河ドラマオープニング曲 独断と偏見で選んだ大河OPベスト10
序盤の主役は「越後の龍」上杉謙信!演じたのは“阿部ちゃん”阿部寛
続いては、素晴らしい演技を見せてくれた俳優さんたちの熱演についても触れておきましょう。
個人的に素晴らしかったのは、序盤の出番の身だった「越後の龍」こと上杉謙信を演じた“阿部ちゃん”こと阿部寛さん。
1995年の「八代将軍吉宗」を皮切りに、1999年の「元禄繚乱」での堀部安兵衛役、2003年「武蔵MUSASHI」での祇園藤次役、2005年「義経」での平知盛役に続いて大河ドラマは5作目の出演でしたね。
ハッキリ言って、阿部寛さんがまだ大河ドラマの主人公を一度も演じていないというのは個人的に驚くべき事実です。もう完全に大河主人公クラスのレベルの俳優なのは間違いないでしょう。堀部安兵衛とか平知盛などは本当に印象的な役でした。
案の定というべきか、予想通りというべきか、序盤は完全にこの阿部寛演じる上杉謙信が「天地人」の主役といってもいい存在でした。
武田信玄と互角に渡り合い、織田信長を恐怖させたともいわれるそのカリスマ性を存分に示してくれるだけの説得力を持った謙信公でしたね。この天地人以降は大河出演のない阿部寛さんですが、もう大河主演はないのでしょうか?個人的にはまだすごく主演を期待しているのですが・・
織田信長は吉川晃司(きっかわこうじ)、豊臣秀吉は笹野高史(ささのたかし)
続いては、戦国三傑と呼ばれた織田信長と豊臣秀吉。この二人も素晴らしかったです。
まず織田信長は俳優でミュージシャンの吉川晃司(きっかわこうじ)さん。この天地人が大河初出演で、この後は2013年の「八重の桜」で西郷隆盛役をされています。
過去に様々な名優が演じてきた織田信長役。その中でもしっかりと印象に残る織田信長役でしたね。とにかく存在感とオーラが圧倒的な信長でしたね。カリスマ性という点では過去の信長の中でも屈指だったと思います。なんというか・・「異質のオーラ」という表現が最もピッタリくるかもしれません。とにかくこの信長は吉川晃司という存在無くしては誕生しなかった信長でしたね。
その信長の後を継いで天下人となった豊臣秀吉も素晴らしかった。演じたのは笹野高史さん。「毛利元就」、「新選組!」、「風林火山」など過去に6作に出演し、この豊臣秀吉役が7作目となる大河ドラマ常連俳優さんです。
主君の織田信長役の吉川さんより実年齢で17歳年上(実際は信長の方が秀吉より3歳年上)なのはまあご愛敬です(笑)。そんな矛盾は感じられないほどこの信長と秀吉は素晴らしいですから。
笹野さんの秀吉は何が素晴らしいかといえば、一介の織田家臣に過ぎなかったエネルギッシュな秀吉と、天下人となって迷走し始める秀吉、この秀吉の持つ二面性を見事に演じられたことですね。相反する両面をしっかりと演じられたのでやはり凄いなあと思いましたね。
織田信長と豊臣秀吉。上杉家にとって大きな影響を及ぼすこの二大英傑は素晴らしい演技でした。
直江兼続の幼少期(樋口与六)を演じた“子供店長”加藤清史郎君
そして、阿部寛演じる上杉謙信とともに「天地人」の序盤で光った、スタートダッシュの原因ともなったのが子役の加藤清史郎(かとうせいしろう)君でしょう。
今では名子役として子役界ではレジェンドともいえる存在の清史郎君ですが、その人気に火を付けたのは間違いなくこの天地人での主人公・直江兼続(樋口与六)の幼少期役でしょう。いわば加藤清史郎君の出世作という事です。
その証拠に、清史郎君の健気で心を打つ演技にNHKには清史郎君に関する問い合わせが殺到。その凄い反響は結果的に加藤清史郎君が後半に兼続の子供の役としてドラマに再登場する結果となりました(直江景明/竹松役)。
そしてこの天地人での大ブレイク後しばらくしてあの有名なトヨタ自動車のCMが流れることとなります。そう、加藤清史郎君の別名ともいえる「こども店長」のコマーシャルです。その後の大活躍はもう説明の必要もないでしょう。
この天地人以降は大河ドラマ出演のない加藤清史郎君。今や高校生となった新たな加藤清史郎君を大河ドラマで再び見たいと思っている視聴者は多いのではないでしょうか。
俳優がいくら素晴らしい演技をしても脚本や演出がダメならどうしようもない?
とにかく、好評な大河ドラマでも不評な大河ドラマでも、いいところばかりのドラマや悪いところばかりのドラマなんてそうそうないとわたしは思っています。
この「天地人」も個人的にはマイナス評価の勝っている大河なのですが、上で述べたように見るべき部分も当然あるのです。これだけのビッグネームの俳優さんが揃っているドラマなのですから当然といえば当然なんですけどね。
書いていて改めて思ったのは、脚本や原作、演出的な事、それ以外の諸要因に問題があって評価の低くなってしまったドラマとはいえ、出演している俳優さんには罪はない場合がやっぱり多いんだという事ですね。
この天地人も、俳優さんに批判の矛先が向かっているのをよく見かけましたが、俳優さんがどんなに良い演技をしてもやはり本や演出が破城しているとどうしようもないと思うんですけどね。
あくまで個人的な見解なのですが、わたしがこの天地人がどうしても受け入れられないのは、やはり史実から乖離しすぎで矛盾点も多い脚本と、ホームドラマ風味を前面に押し出しすぎている演出です。
というわけで、俳優さんをたたく気にはどうしてもなれないのでした。
ちなみに天地人の問題点だけを取り上げた記事に関してはこちらをどうぞ。
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