1968年の「竜馬がゆく」以来42年振りとなる坂本龍馬を主人公として描いた2010年のNHK大河ドラマ「龍馬伝」。平均視聴率は18.7%を記録し、ここ10年の大河ドラマの中ではトップ3に入る高視聴率をたたき出し、日本国中に龍馬ブームを巻き起こしたのは記憶に新しいところでしょう。
そんな「龍馬伝」の特徴の一つとして個人的に思うのが、そのキャスティングの巧みさ。主人公の坂本龍馬を演じた福山雅治さん以外にもこのドラマからはとても多くのはまり役が生み出されたと思っています。そこで、わたしが特に素晴らしかったと思う竜馬以外のキャストをご紹介しましょう。
武市半平太(たけちはんぺいた/瑞山) 演:大森南朋(おおもりなお)
坂本龍馬を主人公とした物語では外す事の出来ない人物の一人がこの武市半平太(後に武市瑞山“ずいざん”と名乗る)でしょう。
竜馬や岡田以蔵、中岡慎太郎と同じ土佐の郷士という低い身分でありながら、尊王攘夷を掲げて「土佐勤皇党」を結成し、朝廷や各藩の志士との交流を行って土佐藩を薩摩・長州と並ぶほどの勢力へと押し上げた幕末偉人の一人です。
武市半平太という人物は演じるうえですごく難しい人物だと思います。物語により多少違いはありますが、大概は土佐勤皇党結成以前や結成当初は爽やかで聡明な志士であり、京都で活躍するようになると以蔵を使って様々な人物を暗殺したりといったブラックな部分も出て来ます。
この龍馬伝における大森南朋さんの武市半平太もそのような人物に描かれたのですが、演じ分けが素晴らしかったですね。根底にある土佐藩主・山内容堂への忠義を感じさせながらも純粋な志士から腹黒い策謀化へと変貌していくさまは見事でした。
そして壮絶な牢獄での闘争と最期の三文字腹での切腹。ここに関しては説明も不要でしょう。生々しい描写、特に切腹場面や処刑シーンなどはお茶を濁すどころかその場面をナレーションだけで済ます事が多い昨今、武市半平太のあの覚悟と意地を見せつけた三文字の切腹をリアルに描いたNHKも凄かった。リアルであるからこそ武市半平太という男の想いも視聴者に伝わりました。NHKの覚悟を見ましたね。それに応えた大森南朋の迫真の演技も鳥肌ものです。
紛れもなく龍馬伝前半の主役でしたね。
岡田以蔵(おかだいぞう) 演:佐藤健(さとうたける)
田中新兵衛、中村半次郎(後の桐野利秋)、河上彦斎と並んで「幕末の四大人斬り」と呼ばれた岡田以蔵も龍馬を主人公で描く場合はとても重要な役です。
ハッキリ言って最初に以蔵役が佐藤健さんだと知った時は「ん?」となりました。個人的な以蔵のイメージとして、ちょっと小汚くてワイルドで武骨という印象があったからです。そういう意味では佐藤健さんではハッキリ言って岡田以蔵は「カッコよすぎる」という印象でした。
しかし見終わった今ではこの龍馬伝の以蔵は佐藤健さんで本当に良かったと思っています。龍馬を時には兄のように、時には無二の友として慕うピュアな青年が「人斬り」となっていく悲しみを見事に演じていましたね。佐藤さんは新たな岡田以蔵像をこのドラマで誕生させたと思います。この若さ(撮影時20歳~21歳)で本当に素晴らしいと改めて感心させられました。今の大活躍は当然といっていいでしょう。
最後、切腹を許されて見事に「武士」として果てた武市半平太とは対照的な、拷問によってあざだらけとなった顔で「罪人」として切腹すら許されず斬首される事となった岡田以蔵の悲哀。最後の佐藤健さんの涙の笑顔が全てを物語っていました。あの最期の以蔵の表情には号泣しました。つーか、今も書いててうるうるきてます(苦笑)。
近藤長次郎(こんどうちょうじろう/饅頭屋長次郎) 演:大泉洋(おおいずみよう)
龍馬や以蔵、武市半平太らは上士ではないものの、郷士という一応武士の身分だったのですが、この近藤長次郎は饅頭屋を営んでいた商人の出であり、武士でさえないという身分でしたね。
先ほど岡田以蔵の項でも書いたように、岡田以蔵は武士でありながら武士としての最後である「切腹」を許されませんでした。しかしこの長次郎は元々の身分は武士でなかったものの、最後は武士として切腹して果てました。この辺りの対比もまた龍馬伝の面白いところですよね。
そんな饅頭屋長次郎を演じたのが大泉洋さん。意外なことにこの「龍馬伝」での長次郎役が初の大河ドラマ出演となりました。この大泉さんの演技がまたね・・いいんです。近藤長次郎という人間の真面目さと、それが故の悲劇。個人的には最初から長次郎の運命を知っていたのですが、大泉洋さんの演技によって最後の切腹の回にはこれまた泣かされました(爆汗)。
2016年の大河ドラマ「真田丸」では準主役といってもいい真田信之を演じた大泉洋さん。長次郎といい信之といい本当にハマってましたよね。次はもう大河主人公しかないでしょう。いやマジで。
コメント
旧(時代劇)・三大薄幸女優
○岩本多代【クイーン:殿堂入り】
○服部妙子
○八木昌子【要審議】上村香子も捨てがたい
※時代劇は”不幸”が似合う人多すぎて3人選ぶのはムリ⁉︎
新・三大薄幸女優
○木村多江【クイーン:殿堂入り】
○奥貫薫
○西田尚美【要審議】
※敬称略
奥貫さん、儚げで健気で半平太の妻役にぴったりでしたよね。個人的には”上品な儚げ系美人”という枠で上村香子さんとかぶっています。笑
奥貫さんと言えば某巨大掲示板でも目にする”薄幸の女優さん”ですよね。
上のものはそれを基にした個人的なランキングですが…
時代劇の造詣の深いりぞっとさんのご意見を是非伺いたいものです。
薄幸女優さんですか…個人的に現在だと奥貫薫さんが断トツナンバーワンだと思いますね。
過去に遡れば…岩本多代さんは確かに薄幸女優の代表格ですよね。80年代の大映ドラマで育った世代的にも彼女は欠かせません(笑)
個人的に時代劇の薄幸女優に挙げたいのが野口ふみえさんでしょうか。特に時代劇で輝く女優さんでしたね。
野口ふみえさん…画像を検索すると、あぁ〜!ってなりました。
確かにこの方が出てきてハッピーエンドは見た事がありません。(失礼⁈)
確率的にも”重慶さんがいい人だった”以下ですね!笑
時代劇に出てくるこの手の女優さんは殆ど名前を存じ上げないんですよね。
とても納得できました。有難うございます。
木村多江さんは”薄幸”というより、やや”不幸”よりという印象です。
同じ薄幸(不幸?)女優でも奥貫さんとはタイプが違って、私としてはこのお二人が双璧です。
間違いないのはお二人とも抜群に演技の上手い女優さんですよね。
>>重慶さんがいい人だった
言い得て妙ですね 笑。重慶さんのところを伸旺さんや貫太郎さんに置き換えても成立する、最高の例えです。思わず吹き出しましたよ(笑)
幸の薄そうな女優さんって皆さん、確かな演技力のある方ばかりですよね。台詞回しや所作、表情だけでなく、先天的に併せ持つオーラというか雰囲気も纏わなければならない、かなりハードルの高いジャンル(?)ですよね。