1963年(昭和38年)の記念すべき第1作「花の生涯」から始まり、2017年の「おんな城主直虎」が56作目となる、半世紀以上の歴史を誇る国民的人気ドラマ、大河ドラマ。
そんな歴史ある大河ドラマの中で数多くの名優たちが演じてきたのが、戦国時代一の出世を遂げたサクセスストーリーの持ち主であり、織田信長、徳川家康とともに「戦国三傑」と謳われる英雄・豊臣秀吉。織田信長の後を受け継ぎ戦国の世を統一した日本史の英雄を大河ドラマで演じてきた俳優さんとその作品の一覧をご紹介したいと思います。
3作目 太閤記 (1965年/昭和40年) 演:緒形拳
記念すべき大河ドラマでの豊臣秀吉の初登場がこの大河ドラマ3作目となる「太閤記」。豊臣秀吉を主人公として描いた大河ドラマであり、ここで秀吉を演じたのがまだ28歳で駆け出しの俳優だった緒形拳さん。前年の「源義経」では武蔵坊弁慶役に大抜擢されて飛躍しましたが、翌年には一気に主役の座を射止めたシンデレラストーリーですね。ちなみに、緒形さんが主役の秀吉役に選ばれたのは、顔がいわゆる「サル顔」だったという理由だったからだとか(苦笑)。しかしキャスティングしたスタッフは素晴らしい眼力としか言いようがありません。後の大スターを発掘してくれたのですからね。
この作品で現存しているのは第42話「本能寺」のみなのだそうです。今は亡き名優・緒形拳さんの素晴らしい生き生きとした秀吉をフルで見てみたいと思うのはわたしだけではないはずです。本当に残念至極としかいいようがありません・・
ちなみにこの数年後、再び緒形さんは秀吉を大河で演じる事となりますが、それはまた後でご紹介しましょう。
7作目 天と地と (1969年/昭和44年) 演:浜田光夫
海音寺潮五郎原作の「天と地と」。越後の龍・上杉謙信と甲斐の虎・武田信玄のライバル関係を中心に描いたこのドラマで豊臣秀吉を演じたのが、浜田光夫さん。当時の年齢は26歳。
浜田光夫さんといえば、若き日の日活映画での吉永小百合さんとの純愛映画があまりにも有名ですよね。「吉永小百合の相手役」というイメージで語られる事も多い浜田さんですが、俳優として様々な役を演じていらっしゃいます。ちなみに大河ドラマではこの作品の他にも「徳川家康」で宇喜多秀家を演じていらっしゃいます。
この作品の秀吉は出番がさほど多くはありませんが、杉良太郎さん演じる信長とのコンビはなかなか絵になりそうですよね。
9作目 春の坂道 (1971年/昭和46年) 演:中村芝鶴(しかく)
将軍家の剣術指南役、柳生新陰流でお馴染みの柳生宗矩の生涯を描いた春の坂道。このドラマにも秀吉は登場しています。演じたのは歌舞伎役者の二代目中村芝鶴(しかく)さん。演じられた当時の年齢は71歳。天下人となってからの秀吉の晩年を演じられました。
ちなみに芝鶴さんの71歳での豊臣秀吉役というのは、現在に至るまで大河ドラマの最年長秀吉記録となっています。
11作目 国盗り物語 (1973年/昭和48年) 演:火野正平
司馬遼太郎の小説をドラマ化した国盗り物語は、斉藤道三、織田信長、明智光秀のトリプル主演というドラマですが、信長の下で出世し、信長を本能寺で討った光秀を倒した羽柴秀吉も当然重要人物として登場します。ここで秀吉を演じたのが、今や「にっぽん縦断こころ旅」ですっかり自転車好きの気のいいおじさんとなった、かつてのプレーボーイ火野正平さんです。
個人的には、若き日の火野さんと、信長の下で立身出世を果たしていった木下藤吉郎~羽柴秀吉の時代の秀吉ってイメージがピッタリ合致します。ぶっちゃけ、これだけのはまり役はないのでは?とさえ思います。残念なのはそのわたしの想いを確かめようにもほとんど当時のフィルムが残っていないという事です・・。本当に残念です。
16作目 黄金の日日 (1978年/昭和53年) 演:緒形拳
大河ドラマ3作目の「太閤記」で織田信長を演じ、大人気を得て一躍人気俳優の仲間入りを果たした緒形拳さん。その緒形さんが41歳となって大河ドラマで再び太閤秀吉を演じたのがこの「黄金の日日」なのです。
この黄金の日日では、太閤記と同じく織田信長役を高橋幸治さんが演じ、高橋幸治&緒形拳の信長・秀吉コンビが復活したと大河ファンを感涙させたのだそうです。それだけ太閤記での緒形秀吉、高橋信長が強烈なインパクトだったんでしょうね。そしてそれを再現しようとして実現させた当時のスタッフにも感謝感謝です。
太閤記の秀吉と、この黄金の日日の秀吉は似て非なるものといっていいかもしれません。特にこの黄金の日日での天下人となってからの秀吉には狂気さえ感じます。得体のしれない恐ろしさがありますね。さすが大俳優・緒形拳といった名演技です。このドラマは全話現存しており、完全版DVDも発売されています。大河ファンならば必見すべき傑作大河ドラマであることは保証します。杉谷善住坊(川谷拓三)のノコギリ引きでの処刑シーンだけはトラウマものですが・・(爆汗)
19作目 おんな太閤記 (1981年/昭和56年) 演:西田敏行
大河ドラマといえば西田敏行、西田敏行といえば大河ドラマ。そういう方程式が成立してしまう程に大河ドラマには欠かせない名優・西田敏行さん。そんな西田さんの大河出演4作目にして、主人公ねねの夫の豊臣秀吉役という、準主役に抜擢されたのがこのドラマです。時に西田敏行34歳。
橋田寿賀子さんの作品で、これまでの大河ドラマに比べるとホームドラマ風な雰囲気も漂わせるこの当時の異色作で、西田さんは素晴らしい秀吉を演じました。皆がよく知る陽気な秀吉に加えて権力者にのし上がった後の腹黒い秀吉も。さすがはミスター大河ドラマとうならせる演技を見せてくれています。
21作目 徳川家康 (1983年/昭和58年) 演:武田鉄矢
滝田栄さんの従来のイメージを覆す新たな徳川家康像、血気盛んで触れれば切れそうな役所広司さんの織田信長像、素晴らしい若手俳優の共演となった名作大河ドラマ「徳川家康」。信長、家康とくれば秀吉を忘れちゃいけません。このドラマで秀吉を演じたのが、海援隊の武田鉄矢さん。この頃は既に金八つぁんのイメージが定着していましたね。
滝田家康も役所信長も凄かったこのドラマですが、何が何が、この武田鉄矢の豊臣秀吉もまたいいんです。二人に全くひけを取っていません。やっぱりこの人は俳優としても凄い人だと再認識させられますね。
ちなみにこのドラマの脚本、「3年B組金八先生」の脚本家、小山内美江子さんなんです。なるほど武田鉄矢さんがハマるわけですね。 見事なキャスティング、そしてそれに応えた武田鉄矢さん。どちらも凄いですね。
25作目 独眼竜政宗 (1987年/昭和62年) 演:勝新太郎
半世紀以上の歴史を誇るNHK大河ドラマの中でも堂々の平均視聴率第1位を誇っているのが「独眼竜政宗」。そしてそんなモンスター大河で天下人・秀吉を演じたのがあの「勝新」こと勝新太郎さん。泣く子も黙る当時の超大物俳優です。
あの勝新太郎が大河ドラマに豊臣秀吉役で出演する!!これは当時かなり話題になりましたよね。「あの」勝新が??って感じでした。これだけの超大物ですが(だからこそと言うべき?)、大河ドラマの出演はこの独眼竜政宗の1作のみ。まさにプレミアなのです。
ちなみに、この独眼竜政宗の豊臣秀吉。どの秀吉にもないオリジナル秀吉に仕上がりました。まさに勝新ワールドといったところでしょうか。後の大俳優・渡辺謙とこの時代の超大御所・勝新太郎の出会いの場面は今見れば歴史的といってもいいかもしれません。それにしても・・勝新のオーラ凄すぎです(笑)。全部持ってっちゃってますから。
27作目 春日局 (1989年/平成元年) 演:藤岡琢也
橋田寿賀子さんが「おんな太閤記」、「いのち」に続いて脚本を務めた大河ドラマ「春日局」。三代将軍徳川家光の乳母である春日局の物語という事で、一見すると関係ないと思える豊臣秀吉ですが、しっかりとこのドラマには登場してきます。ここで太閤殿下を演じたのが、橋田ファミリーとして橋田ドラマには欠かす事の出来ないベテラン俳優、藤岡琢也さんでした。当時の藤岡さんの年齢は59歳。
さすがに橋田さんとは息がピッタリですね。これまでになかった、豊臣秀吉の新機軸を打ち出してくれています。それでいて安心して見ていられるという安定感はさすがという他ないですね。
この続き、大河ドラマ豊臣秀吉俳優の後半戦はこちらの記事でご覧ください。
コメント