人気小説家・柴田錬三郎作「眠狂四郎」。キリスト教宣教師の血を引く混血でニヒルかつダンディでミステリアスな美男子であり、円月殺法の使い手という稀代の二枚目剣士を主役としたこの作品は、テレビや映画でこれまでに幾多も映像化されており、様々なシリーズが製作されてきました。そしてその度に日本を代表する二枚目俳優たちが演じる事となった主人公・眠狂四郎。
ここでは、美男子の代名詞ともいわれた眠狂四郎をこれまでにテレビドラマで演じた歴代の二枚目俳優たちをご紹介したいと思います。
日本テレビ版「眠狂四郎(無頼控)」演:江見俊太郎(えみしゅんたろう)
押しも押されもせぬ映画界のスーパースターであった鶴田浩二さんが眠狂四郎を演じて好評を博した劇場版第1作目の公開の翌年、テレビ時代劇における眠狂四郎シリーズの先駆けともいえるドラマで主人公を演じたのがこの俳優さん。
名 前:江見俊太郎(えみしゅんたろう)
旧芸名 :江見渉(えみわたる)
本 名:黒川輝郎(くろかわてるお)
生年月日:1923年(大正12年)9月16日
没年月日:2003年(平成15年)11月17日(満80歳没)
出 身:東京府豊多摩郡中野町(現:東京都中野区)
個人的には非常に意外でした。わたしの江見俊太郎さんのイメージといえば、時代劇での悪代官役だったからです。眠狂四郎役というのは結びつきませんでした。
ただ、よくよく考えてみれば、昔は二枚目俳優だったといわれれば容易に想像できるくらいに整った顔立ちでしたから、悪代官のイメージを捨てきれれば納得という感じでしょうか。にしても、水戸黄門ではかげろうお銀の色仕掛けに鼻の下を伸ばして甲高い声で興奮するあのどこか憎めないエロ代官があのニヒリズムの極致ともいえる「眠狂四郎」役だったとは…何度も言いますが意外でしたね。
あ、でも眠狂四郎もキャラとしてはかなりエロいですよね(というより女に対してかなりドSな性癖というべきか)。そういう意味では共通点あるかも…って感じでしょうか(笑)
ドラマタイトル | 放送期間 | 製作・放映局 | 主な共演者 |
---|---|---|---|
眠狂四郎無頼控 | 1957年(昭和32年)7/3~9/25 | 日本テレビ | 池内淳子 他 |
眠狂四郎 | 1961年(昭和36年)7/6~11/28 | 日本テレビ | 稲垣美穂子 東恵美子 他 |
もう半世紀以上前の作品という事で、マスターテープも残っておらず、というわけで当然ながらソフト化もされていない幻のテレビ時代劇という事で詳細は謎に包まれています。1957年放送の「眠狂四郎無頼控」は当時は当たり前だった生放送によるテレビ時代劇だったといいます。
詳細はわかっていませんが、江見さん主演で2作品が作られたという事は結構人気があったという事は推測できます。見れないと思えば見てみたいのが人情というものですが…当時のテープは大変高価だったが故に上書きして使いまわしていたというのは致し方ない部分もあるとはいえ、現代に残っていないというのは本当に残念な事です。
フジテレビ版「眠狂四郎」演:平幹二朗(ひらみきじろう)
江見俊太郎さんがテレビ時代劇というジャンルに「眠狂四郎」を切り開いた後、フジテレビで眠狂四郎を演じたのがこの俳優さんです。
名 前:平幹二朗(ひらみきじろう)
本 名:同じ
生年月日:1933年(昭和8年)11月21日
没年月日:2016年(平成28年)10月22日(満82歳没)
出 身:広島県広島市中区小網町
2016年に惜しまれながらも急逝された平幹二朗さん。舞台に映画、テレビにと、そして現代劇から時代劇、西洋劇に至るまで幅広く活躍された、日本を代表する実力派の大物俳優です。
そんな名優・平幹二朗さんの演じたドラマがこちら。
ドラマタイトル | 放送期間(放送回数) | 製作・放映局 | 主な共演者 |
---|---|---|---|
眠狂四郎 | 1967年(昭和42年)4/3~9/25(全26話) | フジテレビ | 姫ゆり子 藤岡琢也 川地民夫 他 |
平さんといえば、大河ドラマで主人公として演じた「樅木は残った」での原田甲斐役や「国盗り物語」での斉藤道三など、ダークヒーロー的な役を演じたら日本でもピカイチだと思うのですが、クセのあるこの眠狂四郎という役もまた他の作品とは全く違った眠狂四郎像を作り上げていらっしゃいます。
このドラマシリーズのプロデューサー兼監督はあの五社英雄(ごしゃひでお)監督。そりゃあ素晴らしい作品に決まっていますよね。
個人的な要望を言わせてもらうのであれば、いつかは平さんの息子、平岳大さんの眠狂四郎も見てみたいです。時代劇俳優が絶滅寸前となっている中、平岳大さんのような時代劇で映える俳優さんというのは非常に貴重な存在だからです。いやあ、どこか企画してくれませんかね(涙)
フジ・テレ朝版「眠狂四郎」演:田村正和(たむらまさかず)
名 前:田村正和(たむらまさかず)
本 名:同じ
生年月日:1943年(昭和18年)8月1日
年 齢:74歳
出 身:京都府京都市右京区
やっと出ましたね(笑)。テレビドラマにおける眠狂四郎作品としては最も長い期間において出演している田村正和さん。原作者の柴田錬三郎さんが絶賛し、ご自身も3度にわたってゲスト出演するほど思い入れの深かった田村正和版眠狂四郎です。これこそが眠狂四郎の決定版と断言するファンも多い傑作です。
まず連続ドラマとして全26話が製作されました。これがそのTVシリーズです。
ドラマタイトル | 放送期間(放送回数) | 製作・放映局 | 主な共演者 |
---|---|---|---|
眠狂四郎 | 1972年10/3~1973年3/27(全26話) | 製作:関西テレビ・東映 放映:フジテレビ |
山本陽子 野川由美子 山城新伍 他 |
このドラマ、まだ思春期の頃に再放送していたのを見た記憶があるのですが…とにかくエロいです。まずその印象が…まあ年頃だったんでお許しを(苦笑)
後はやはり田村正和さんがカッコよすぎです。さすがは日本を代表する美男子、二枚目俳優です。ニヒルにして妖艶、とにかくこれは男も女も惚れます(笑)。
そしてゲストがとにかく豪華です。毎回のように超大物ゲストが複数出演しています。中でも特筆すべきは第6話「夜陰に女を裂く」。正和さんの兄・田村高廣さんと弟・田村亮さんが出演していらっしゃいます。田村三兄弟が揃い踏みという非常にレアかつ豪華絢爛な回なのです。見てない人は是非ご覧ください。
そして田村さんのフジテレビ版の連ドラが終了後、今度はテレビ朝日が田村正和さん主演の眠狂四郎作品をスペシャルドラマとして4作品制作・放送しました。以下がその作品です。
ドラマタイトル | 放送日 | 放映局 | 主な共演者 |
---|---|---|---|
眠狂四郎 | 1989年(平成元年)6/22 | テレビ朝日 | 多岐川裕美 篠田三郎 山村聰 他 |
眠狂四郎Ⅱ | 1993年(平成五年)9/30 | テレビ朝日 | 竹下景子 池上季実子 綿引勝彦 他 |
眠狂四郎Ⅲ | 1996年(平成八年)9/19 | テレビ朝日 | 南野陽子 宅麻伸 中尾彬 他 |
眠狂四郎Ⅳ | 1998年(平成十年)12/28 | テレビ朝日 | 黒木瞳 池上季実子 阿部寛 他 |
期間にして約9年半の間で4作が作られたテレビ朝日のスペシャル版。しかしこの眠狂四郎Ⅳを最後に眠狂四郎作品は長い間潰えることとなりました。
そしてテレ朝の最後のスペシャル版放送から約19年後となる2018年、田村正和さんによる眠狂四郎ドラマが復活しました。
ドラマタイトル | 放送日 | 放映局 | 主な共演者 |
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眠狂四郎 The Final | 2018年(平成三十年)2/17 | フジテレビ | 名取裕子 八嶋智人 椎名桔平 吉岡里帆 津川雅彦 |
その名も「眠狂四郎 The Final」。その名の通り、田村正和さんの最後の眠狂四郎という事となる作品です。御年74歳となる日本屈指の二枚目俳優の演じる眠狂四郎の姿、その目に焼き付けましょう。
テレビ東京版「眠狂四郎シリーズ」演:片岡孝夫(かたおかたかお/現:片岡仁左衛門)
現時点(2018年現在)において、最後の連続テレビドラマとなっているのがこの歌舞伎役者さんの主演したシリーズです。
名 前:十五代目 片岡仁左衛門(かたおかにざえもん)
本 名:片岡孝夫(旧芸名)
生年月日:1944年(昭和19年)3月14日
年 齢:73歳
出 身:大阪市
歌舞伎界屈指の二枚目俳優、まさに色気と魅力を備えた十五代目片岡仁左衛門さんです。眠狂四郎を演じた時には本名の片岡孝夫という名前でした。
実をいうとわたしが初めて見た狂四郎はこの片岡孝夫版でした。うちの時代劇好きな祖父が見ていたので一緒に見ていたという記憶です。とにかく片岡孝夫さんがカッコいいのです。ニヒルでダンディ、そしてストイックさが上手く現れていた眠狂四郎だったと思います。テレビの田村正和版やや映画の市川雷蔵版がクローズアップされることの多い眠狂四郎作品ですが、この片岡孝夫さんの連ドラは隠れた名作という名にふさわしい佳作です。見てない人は必見です。
ドラマタイトル | 放送期間(放送回数) | 放映局 | 主な共演者 |
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眠狂四郎円月殺法 | 1982年11/24~1983年3/30(全19話) | テレビ東京 | 松尾嘉代 火野正平 小松方正 他 |
眠狂四郎無頼控 | 1983年(昭和58年)4/6~8/31(全22話) | テレビ東京 | 松尾嘉代 火野正平 小松方正 他 |
以上がテレビ版の「眠狂四郎」の各シリーズなのですが、映画版眠狂四郎については以下の記事をご参照ください。
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