NHK【武蔵坊弁慶】全話DVD発売記念!中村吉右衛門の「立往生」「安宅の関」「勧進帳」で号泣必至の名作時代劇

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時代劇
武蔵坊弁慶像

先日二夜連続のスペシャルドラマでその長い歴史に終わりを告げた、池波正太郎原作・中村吉右衛門主演の「鬼平犯科帳」。

今や歌舞伎俳優・二代目中村吉右衛門の代名詞となった鬼平犯科帳の「鬼の平蔵」こと長谷川平蔵ですが、個人的にはこの鬼平以上に中村吉右衛門という俳優の凄さを垣間見せてくれるドラマがあります。

ここでは中村吉右衛門という俳優の凄さを鬼平とは別のベクトルで見る事の出来る、NHK新大型時代劇「武蔵坊弁慶」についてご紹介したいと思います。

ちなみに、長年の悲願だったこの名作の全話収録の完全版DVD全二巻が発売される事がようやく決定しました。発売日は12月22日。個人的には最高のクリスマスプレゼントですね。もちろん速攻で予約済みです(笑)。

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NHKの「新大型時代劇」とは?

ここでご紹介したいNHKの新大型時代劇とは、毎週水曜夜8時から放送されていた時代劇の事です。

大河ドラマと同じく1年スパンで1作が作られ、1984年「宮本武蔵」、1985年「真田太平記」、1986年「武蔵坊弁慶」の三作が制作されました。

こう見てみると、当時をリアルタイムで知らない人々は、「大河ドラマがあるのになんで?」と思われるかもしれません。しかし、この新大型時代劇が放送された1984年~1986年の大河ドラマというのは、近現代大河ドラマと呼ばれている、「山河燃ゆ」「春の波濤」「いのち」が放送されている時期でした。これら3作品はどれも明治・大正・昭和を舞台としたドラマであり、従来の戦国時代やそれ以前の源平時代を描いた作品を渇望する視聴者のために作られたのがこちらの「新大型時代劇」だったというわけです。

こういった経緯で作られた新大型時代劇は、便宜上は大河ドラマの作品の中に含まれていませんが、実質は大河ドラマと同等の扱いであり、準大河ドラマとしてくくられる事もあります。

個人的には完全に大河ドラマ作品の中に含めても構わないと思います。というか入れてほしいですね。大河ドラマの中に入れても遜色ないどころか、完全にこれまでの大河ドラマ作品群の中でも名作の部類に入る大傑作揃いです。

そんな大傑作の中の一つが、新大型時代劇最後のドラマとなったこの「武蔵坊弁慶」なのです。

9か月全32話という変則放映となったその理由はあの名作大河?

ジャンル:時代劇
放送期間:1986年4月9日~12月3日
放送時間:毎週水曜日20:00~20:45
ドラマ枠:新大型時代劇
放送回数:全32話
制作局 :日本放送協会(NHK)
OP音楽:芥川也寸志
音  楽:毛利蔵人
原  作:富田常雄
脚  本:杉山義法、下川博、松島としあき
主  演:中村吉右衛門

他の新大型時代劇作品、「宮本武蔵」と「真田太平記」は1年間の放映期間で全45話だったのですが、この「武蔵坊弁慶」については、1987年1月から大河ドラマ「独眼竜政宗」放送開始によって大河枠が近代史から従来のものへと戻るという事で、9か月間全32話という変則的なものとなっています。

主演は中村吉右衛門さんで当時41歳。まさに役者として脂が乗りに乗っていた時期ですね。

荘厳で華麗な芥川也寸志のオープニング曲

武蔵坊弁慶像

武蔵坊弁慶像

えーっと、何から書きましょうか(笑)。とにかく大好きな作品過ぎて何から書いたらいいか迷ってしまいますね(汗)。

オープニングはあの芥川龍之介の三男・芥川也寸志。この大作曲家の晩年の作品がこの「武蔵坊弁慶」なのです。

芥川也寸志とNHKといえば誰もが思い出すのが大河ドラマ「赤穂浪士」のオープニング曲でしょう。あれは紛れもない名曲です。「忠臣蔵」といえば今でもあの曲ですよね。

しかしこの「武蔵坊弁慶」も「赤穂浪士」に全くひけをとっていません。いやむしろ個人的にはこの「武蔵坊弁慶」の方が好きなくらいです。とにかく曲は徹頭徹尾芥川也寸志節ともいえるものであり、この荘厳で風流な、しかしそれでいて力強いオープニング曲は何度聴いても身震いを覚えます。

伝説の荒法師・武蔵坊弁慶をこれほど見事に表現した曲もないでしょう。

これぞまさに様式美!ってな感じです。このオープニングだけで個人的には飯何杯でもいけちゃうって感じですかね(笑)。よくわかりませんが、それだけ最高だという事ですよ(汗)。

主演の中村吉右衛門の実力ありきの名時代劇

この「武蔵坊弁慶」のキモとなるのは、何といっても主役の武蔵坊弁慶を演じる主演・中村吉右衛門さんの演技です。

失礼ながら、わたしは中学生の時にこの「武蔵坊弁慶」を見るまで中村吉右衛門という役者さんを知りませんでした。なので、武蔵坊弁慶の主演が中村吉右衛門さんと知っても「誰それ?有名な人?」状態だったのです。

両親が見ていたので見始めましたが、そうでなければ見ていなかったでしょうね。今にして思えば親には感謝感謝です。こんなドラマを知る事なく人生を終えていたら、それこそ生涯の大きな損失だったと思いますね。

とにかく第1回の「恋の荒法師」(DVD完全版第壱集収録)。これを見て完全にノックアウトされてしまいました。まだ一介の荒法師に過ぎなかった若き日の武蔵坊を演じた吉右衛門さんの演技はもうそれは別格中の別格でした。衝撃といってもいいかもしれません。当時ひねくれた厨房だったわたしは当然のように武蔵坊弁慶を楽しみに見るようになりました(汗)。

このドラマでの武蔵坊弁慶は、従来の怪力無双の忠臣という人物像に加え、頭もキレて人望もあるというスーパースターとして描かれています。主君・源義経を武でも智でも支えるという、まさに大黒柱ですね。

CGなど無かった時代ですから、武蔵坊の怪力を現すシーンなどは今見れば荒唐無稽でショボいと思う場面もありますが、そこは中村吉右衛門さんの名演がしっかりとカバーしてくれています。吉右衛門さんの名演によって、弁慶という浮世離れした超人然としたキャラもしっかりと地に足のついた人物として見られてしまうんですよね。恐らく他の俳優だったら寒い結果になっていたでしょう。

児玉清さん演じる富樫家経との緊張感溢れる勧進帳

武蔵坊弁慶といえば、中村吉右衛門さんの歌舞伎での十八番としても有名です。だからこそこのNHKの弁慶役もはまり役なのですが、その真価をまざまざと見せつけられたのが、第29話「安宅の関」です。

この回を見ずして「武蔵坊弁慶」を語るなかれ!といってもいいほどの伝説の回ですね(DVD完全版第弐集収録)。

兄・源頼朝に追われ、山伏に変装して奥州へ落ち延びる弁慶ら源義経主従。安宅の関では、義経主従であるという疑いを晴らすための弁慶と、安宅の関の関守・冨樫家経との丁々発止のやり取りが描かれます。歌舞伎の演目・「勧進帳」として余りに有名なエピソードですよね。

ここで中村吉右衛門演じる武蔵坊弁慶が、疑いを晴らすために富樫家経の前で白紙の巻物を勧進帳として読み上げる場面はさすがという他有りません。もう何の説明もいりません。そしてそれを読み上げたうえで、疑いの晴れない冨樫家経に白紙の巻物を見せる場面はまさに圧巻ですね。

冨樫家経を演じた児玉清さんの演技も凄いんです。特に弁慶との緊張感あふれるやり取りと、白紙の勧進帳を弁慶に突き付けられて全てを悟った場面。そして弁慶たちを通し、最後に弁慶に言葉をかける場面。まさに身震いするほどの緊迫感と感動に溢れるシーンです。

弁慶と家経のやり取りをこれ以上の迫力で出来る俳優さんは今いないでしょうね。

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義経と弁慶、そして仲間たちの絆と友情・・号泣必至の神回「安宅の関」

29話「安宅の関」では中村吉右衛門さんと児玉清さんの演技だけで終わりじゃないんですね。もう一つのハイライトがあります。それは、別の関所でも疑いをかけられる事となる場面です。これを晴らすため、弁慶は主君である義経を心で泣きながら棒で打ち付けるという、これまた歌舞伎などで有名な場面ですね。

義経は門番・関口義忠に源義経であるという疑いをかけられ、連行されようとします。そこで弁慶は機転を利かせて義経を持っていた棒で思いっきり打ち付けます。何度も何度も義経を全力で打ち付ける姿をみて疑惑を晴らし、危機を乗り切るという場面なのですが・・

ハイ、もう号泣しました、ハイ(笑)。涙目とかじゃありません、号泣です(笑)。

関を通り抜けた後、弁慶が義経に涙しながら詫びる場面。そんな弁慶を慰め、そして感謝の言葉を述べる義経。弁慶を励ます義経主従たち。そして一人誰もいない場所に行って子供のように号泣する弁慶・・

これはみんな泣きますよ。うちの親も号泣してましたからね。親子そろって号泣ですわ(笑)。

とにかく凄いんですよ、吉右衛門さんの迫真の演技が。そして弁慶に感謝する義経役の川野太郎さんの演技、さらに弁慶を勇気づける伊勢三郎や片岡兄弟、喜三太らもいいんだな、これが。

ああ・・もう一回見たいなあ。

弁慶伝説の立往生 「衣川立往生」のあらすじ

そして「安宅の関」と同じく絶対に外せないのが最終回の「衣川立往生」ですね(DVD完全版第弐集収録)。

義経たちの良き理解者であり庇護者でもあった奥州藤原家の三代目・藤原秀衡が亡くなり、義経や弁慶は頼朝の義経引き渡しの要求に屈した藤原泰衡の大軍に追われる事となった壮絶な最終回です。

この最終回のタイトル、「衣川立往生(ころもがわたちおうじょう)」とは、いうまでもなく弁慶の壮絶な最後である「弁慶の立ち往生」の事です。

主君・義経を守るために衣川の館で藤原氏の大軍を相手に奮闘し、数限りない矢を受け、最後は立ったまま絶命したという武蔵坊弁慶の名シーンです。

史実では、押し寄せる藤原氏の大軍を前に義経の居館であった衣川の館で義経主従は戦い、義経は自害したといわれていますが、この「武蔵坊弁慶」ではあくまで弁慶や義経は北を目指して藤原家から逃れるという風に描いています。以下が簡単なストーリーです。

迫りくる藤原の大軍の前に一人、また一人と倒れていく苦楽を共にした義経主従の仲間たち。

そんな中、弁慶は義経を守るために奮戦します。最後に小さなお堂に追い詰められた時には、義経主従は義経とその側室・若の前、そして武蔵坊弁慶だけとなっていました。

自害を覚悟した義経に対して、弁慶は義経に生きる事を説きます。そして自らが敵を防いでいる間に逃げて生き延びるよう諭し、たった一人で藤原泰衡の大軍の前に躍り出るのです。

押し寄せる大軍を前に義経の籠るお堂前に仁王立ちとなって一歩も敵兵を寄せ付けない弁慶。

お堂から火が上がったのを見、義経が脱出したと歓喜した瞬間、弁慶の体に一本の矢が突き刺さります。

それを見て襲い掛かる藤原勢。しかし弁慶は矢をものともせずに薙刀を振り回して義経の時間を稼ごうとします。しかし藤原勢は矢を雨あられの如く弁慶に打ち込みます。体に無数の矢が刺さった弁慶。それでもその眼光は鋭く、藤原勢は一歩たりとも近づく事は出来ません。

徐々に呼吸が荒くなる弁慶。遠のく意識の中で、弁慶を心配して奥州に弁慶を追ってきた妻・玉虫と一人娘・小玉虫の声を聞きながら弁慶はやがてゆっくりとその呼吸を止めます。

武蔵坊弁慶は死しても、なお藤原勢はその姿に一歩も動けず、辺りには風の吹きすさぶ音だけが聞こえていたのです・・


主君、仲間、そして愛する家族のために戦った武蔵坊弁慶圧巻の最期

とにかく壮絶な最終回です。

そして、これも号泣です。大号泣です。

壮絶な立往生を演じた吉右衛門さんの演技は圧巻です。特に最後、荒かった息がどんどん弱くなり、そして最後大きく息を吐いて絶命するシーン。顔が鬼の形相からゆっくりと変化していく場面は鳥肌ものです。凄いとしか形容できません。

過去、幾多の名優が映画やドラマでこの弁慶の立往生の場面を演じて来ましたが、とてもこの吉右衛門弁慶と比較することは出来ません。それほどずば抜けています。凄すぎるんです。ものが違います。

そして義経との最後の別れの場面。

義経が皆の希望だと諭し、生きねばならぬと励ます場面、そして後で必ず合流すると笑顔で約束する場面。

届く事の無かった妻・玉虫への手紙の朗読をバックに、遠い空を見上げて最愛の妻と娘を想う場面。

陳腐な表現で申し訳ないのですが、もう「最高」「素晴らしい」としかいいようがありません。他の形容詞がないんだから仕方がないですよ(単にボキャブラリーが少ないだけなのかも涙)。

鬼平犯科帳の吉右衛門さんが好きで、まだこの「武蔵坊弁慶」を見たことが無いという方は絶対に見るべきです。さらに、大河ドラマファンも絶対に見ておくべき作品です。生粋の大河ファンだったら絶対に損はしません。そこはわたしが保証します。

ああ・・中村吉右衛門さんの事だけでこんな長文に(汗)。まだまだ他の俳優さんにも触れなければいけないのに・・

続きは別の記事で書きます。まだまだ書かねばならぬことが満載なので。とても1記事では書ききれませんよ、この作品は。

この記事の続きはこちらです。

NHK【武蔵坊弁慶】➁よろきん、佐藤浩市、菅原文太、ジョニー大倉・・見事すぎるキャスト配役こそ名作の証

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