1970年(昭和45年)に「漫画アクション」で連載が開始された「子連れ狼」。冥府魔道に生きる元公儀介錯人の拝一刀(おがみいっとう)とその子・大五郎(だいごろう)が刺客となり、宿敵・柳生烈堂(やぎゅうれつどう)と対峙する物語です。
1972年には映画化され、翌1973年には萬屋錦之介主演でテレビドラマ化もされて一気に人気に火が付き、幼い大五郎の「ちゃん!!」というセリフとともに日本中に一大ブームを巻き起こしました。
時代劇史に残る人気キャラクターでありテレビドラマ史上最強親子といってもいい拝一刀と大五郎の物語は、先に挙げた映画と時代劇以降も何度となく実写化されています。
そこでここでは過去の「子連れ狼」実写化作品とその映画&テレビドラマで拝一刀親子と一刀の妻であり大五郎の母である拝薊(おがみあざみ)、そしてその宿敵であるラスボス、柳生烈堂を演じた俳優さんたちをご紹介していきたいと思います。
東宝版映画「子連れ狼」主演:若山富三郎
作品名 サブタイトル |
公開年月日 | 監督 | 製作 配給 |
---|---|---|---|
子連れ狼 子を貸し腕貸しつかまつる |
1972年(昭和47年)1月15日 | 三隈研次 | 勝プロダクション 東宝 |
子連れ狼 三途の川の乳母車 |
1972年(昭和47年)4月22日 | 三隈研次 | 勝プロダクション 東宝 |
子連れ狼 死に風に向う乳母車 |
1972年(昭和47年)9月2日 | 三隈研次 | 勝プロダクション 東宝 |
子連れ狼 親の心子の心 |
1972年(昭和47年)12月30日 | 三隈研次 | 勝プロダクション 東宝 |
子連れ狼 冥府魔道 |
1973年(昭和48年)8月11日 | 三隈研次 | 勝プロダクション 東宝 |
子連れ狼 地獄へ行くぞ!大五郎 |
1974年(昭和49年)4月24日 | 黒田義之 | 若山富三郎、真田正典 東宝 |
記念すべき「子連れ狼」の初映像化作品はこの東宝の劇場版でした。
今は時代劇専門チャンネルをはじめとするCSやBSなどで再放送される機会の多いテレビドラマ版のイメージが強い方も多いと思いますが、僅か4年の間に6作品という驚異的ペースからもわかる通り、この若山富三郎さん主演の「子連れ狼」も大ヒット作品としてオールドファンを中心に根強い人気を誇る作品です。
同時代の俳優の中でも最もその殺陣の技術を評価されていた若山富三郎さんの実力は、あの戦前から戦後にかけての往年の剣劇スターである”アラカン”こと嵐寛寿郎さんも「一に萬屋錦之介、二に若山(富三郎と弟・勝新太郎)で以下は無い」と評した程抜けた存在でした。そんな若山さんの素晴らしい殺陣がこれでもかと見られるこのシリーズはそれだけでも一見の価値ありといえるでしょう。
最後に原作の小池一夫氏曰く、
「小池・小島・若山のうち一人でも欠けていたら、これほどまでに『子連れ狼』が評価されることはなかった」
原作者である小池氏のこの言葉だけでこのシリーズの素晴らしさはご理解いただけるのではないでしょうか。未見の時代劇ファンには必見の作品です。
若山富三郎版子連れ狼の拝一刀と大五郎親子、あざみ、柳生烈堂キャスト
登場人物名 | 俳優名 | 備考 |
---|---|---|
拝一刀 | 若山富三郎 | |
拝大五郎 | 富川晶宏 | |
拝薊(あざみ) | 藤田佳子(現:悠木圭子) | |
柳生烈堂 | 伊藤雄之助(子を貸し腕貸しつかまつる) 遠藤辰雄(太津朗/親の心子の心) 大木実(冥府魔道・地獄へ行くぞ!大五郎) |
第2・3作には登場せず |
このシリーズの柳生烈堂役は三人の俳優さんが演じられています。1作目は伊藤雄之助さんで4作目が遠藤辰雄(後に遠藤太津朗に改名)さん。どちらも時代劇史に残る名悪役です。
5作目と6作目が大木実さん。若山富三郎さんを慕う「若山組」の俳優さんで、若山さんとは「兄弟」と呼び合う仲でした。他にもこのシリーズには山城新伍さんや潮健児さん、関山耕司さん等若山組の俳優さんが数多く出演していらっしゃいます。大木さんは2作目の「三途の川の乳母車」では別役で出演されていますね。
あざみ役の藤田佳子(悠木圭子)さんは後に女優から作詞家に転身して日本作詞大賞を受賞し、紅白出場歌手となる田川寿美さんを見出してスター歌手として大成させた人物です。
松竹版映画「子連れ狼 その小さき手に」主演:田村正和
作品名 | 公開年月日 | 監督 | 製作 配給 |
---|---|---|---|
子連れ狼 その小さき手に | 1993年(平成5年)2月6日 | 井上昭 | 小池一夫事務所 松竹 |
若山富三郎版映画の最終作が公開された1974年以来、約19年ぶりにスクリーンに子連れ狼が帰って来たこの作品で拝一刀を演じたのがあの田村正和さん。説明不要の日本を代表する二枚目俳優です。そんな田村さんの13年ぶりとなる映画出演という事でも当時はかなり話題となりました。
田村さんといえば時代劇における代表作に「眠狂四郎」がありますが、この映画公開時は現代劇のテレビドラマが主戦場となっていた時代であり、時代劇スター・田村正和ファンには待望の作品となりました。時代劇の所作や殺陣におけるその流動美と様式美は、形こそ違えどさすがはかつての時代劇六大スターと呼ばれたバンツマ(阪東妻三郎)の血を引く俳優だと思わせてくれますね。
そしてこの作品、製作に「小池一夫プロダクション」とあるように、原作者である小池一夫氏が企画・制作に携わった映画であり、タイトルからもわかる通り「親子愛」に焦点を当てた小池さんの様式美・世界観が反映されており、その点で他の子連れ狼とは一線を画した内容となっています。拝一刀と大五郎といえば「乳母車」ですが、この劇場版における拝一刀親子は乳母車を使っておらず、手を繋いで旅をするという設定となっているのも特徴ですね。
田村正和版子連れ狼の拝一刀と大五郎親子、柳生烈堂、あざみキャスト
登場人物名 | 俳優名 | 備考 |
---|---|---|
拝一刀 | 田村正和 | |
拝大五郎 | 壮田優志 | |
拝薊(あざみ) | 古手川祐子 | |
柳生烈堂 | 仲代達矢 |
13年ぶりとなる田村正和さんの映画主演作、そして原作者の小池一夫さんが企画から製作を指揮した作品とあってとても豪華なキャスティングとなっています。
柳生烈堂役には日本演劇界の重鎮・仲代達矢さんであざみ役には古手川祐子さんがキャスティングされていますが、その他のキャストがまた凄い。田中邦衛さんに岩下志麻さん、藤村志保さん、橋爪功さん、石橋蓮司さん、池上季実子さん、若村麻由美さんと主演級や名脇役の俳優さんがズラリと並んでいます。
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