[NHK大河ドラマ]平清盛が歴代視聴率ワースト1位タイの理由 時代背景や日本人の源氏好き、平氏のイメージ等

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平清盛 時代劇

2012年に放送されたNHK大河ドラマ「平清盛」は、個人的には非常に見ごたえがある硬派で骨太、キャスティングも役者の演技、脚本も音楽も大満足で1年間存分に楽しませてくれた大河ドラマでした。

しかしそんな素晴らしい内容とは裏腹に視聴率は序盤から低迷。終わってみれば1年間の平均視聴率では平均12.0%とという最低視聴率を記録してしまいました(その後2015年の「花燃ゆ」も最低タイの平均12.0%を記録)。

視聴率の高い低いとドラマの出来の良し悪しが比例しないというのは当たり前のことですが、この大河ドラマ「平清盛」の低視聴率の原因はどこにあるのでしょうか。個人的に全く納得できなかったので改めて検証してみたいと思います。

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放送開始当初の「画面が汚い」「王家」問題は低視聴率の原因?

最初に言及しておかなければならない事があります。それは、平清盛が放送開始となった当初に噴出した2つの不評でした。

一つは、大河ドラマ「平清盛」の舞台となった兵庫県の井戸敏三知事が、第1話を見終わった感想として会見で「画面が汚い」「もっと華やかで生き生きとした清盛を」といった苦言を呈しました。

さらに、ドラマの中で天皇家の事を「王家」と呼称した事も、ネットを中心として批判的な意見が巻き起こることとなりました。

この2つは第1話から続いた低視聴率という結果と併せて、平清盛の低視聴率の原因であるかのごとく結びつけられて語られることも未だに多いです。

しかし個人的にはこの2つはほとんど低視聴率の原因にはなっていなかったと思います。全くなかったとは言いませんが、ほとんど影響のない範囲だったと思っています。これらの原因よりもはるかに大きかったであろう視聴率低迷の原因をこれから述べていきたいと思います。

保元の乱や平治の乱等、平安時代末期の複雑な時代背景は幕末以上?

個人的に最も大きかったであろう低視聴率の原因は、物語のわかりにくさであったと思います。

これはこの時代特有のものなのですが、例えばこのドラマで大きく取り扱われた歴史的大事件、「保元の乱」と「平治の乱」。この2つを見れば明らかです。

この2つの乱は、朝廷、公家、平氏、源氏、これらの大勢力同士の戦いなのではありません。むしろこの勢力同士の戦いであれば、非常にわかりやすいです。例えば平氏VS源氏、とか公家VS源氏&平氏、といった具合ならば。

しかしこの2つの戦いに関しては、朝廷、公家、平氏、源氏の内部がそれぞれ2つに分かれて争っているのです。

例えば保元の乱での源氏は、源為義と源義朝が親子で争って敗れた為義は処刑されましたし、平氏は平清盛と叔父の平忠正が敵味方に分かれ、敗れた忠正も処刑されました。

昨日の友は今日の敵、というのは古今東西よくある事ですが、この時代はまさにそんな状態でした。保元の乱で味方同士(後白河天皇方)であった平清盛と源義朝は、わずかその4年後の平治の乱では後白河上皇派と二条天皇派に分かれて死闘を演じ、義朝は敗死して源氏は滅亡寸前となり、清盛は勝って「平氏に非ずんば人に非ず」とまで言われるほどの平家政権を築くきっかけとなりました。

大河ドラマで幕末ものが苦戦しがちなのは、幕末の敵味方がコロコロ入れ替わる政治事情等が複雑すぎるのが原因とも言われていますが、清盛が生きた平安末期の複雑さは幕末以上といってもいいでしょう。おまけにこの時代は同じ姓(苗字)が多すぎます(苦笑)。特に“平”姓、“源”姓、“藤原”姓。この多さはより視聴者の頭を大混乱に陥れることは間違いありません。

敵味方が一夜にして入れ替わるほどの権謀術数渦巻いた時代背景と同姓の多さこそが視聴者離れを招いた一番の原因だと思います。

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平清盛は悪役?日本人の源氏贔屓と驕り高ぶる平氏のマイナスイメージ

分かりにくい時代背景に続く低視聴率の大きな原因、これはわたしたち日本人の多くの根底にあるイメージによるものが大きいのだと思います。

そのイメージとは、大河ドラマ「平清盛」に決定というニュースを聞いたわたしの職場の同僚が何気なくぼそっと呟いたある言葉と同じなのだと思いますね。その言葉とは・・・

「平清盛って悪役なんじゃないですか?」

というものでした。

もちろんこの同僚の言葉は誤解が大きいです。平清盛は偉大なる人物であり、れっきとした日本史における英雄の一人です。それは間違いありませんしわたしもそう説明しました。

しかし案外平清盛にこう言ったイメージを抱いている一般の人って多いのではないでしょうか。歴史に詳しい人達は当然平清盛の偉大さや日本史における功績を理解していますが、一般の人はそうでもありません。むしろ、ドラマや映画などで良く取り上げられる源氏の敵役というイメージが強い人が多いでしょう。源頼朝や源義経、武蔵坊弁慶らを主人公として描く場合、平氏は敵として描かれることとなるのですから。そして残念ながら平氏を主人公で描く作品よりも圧倒的に源氏を主人公とした作品が多いのが実情なのです。

それに加えて、平氏政権の世を現したという現代で最も有名な言葉、「平氏に非ずんば人に非ず」(清盛の義弟、平時忠の言葉と伝えられる)という平氏の驕り高ぶりともとれる言葉も印象の悪さに拍車をかけているといえるでしょう。

日本人の源義経や源頼朝人気の反動が平清盛や平氏の不人気、敵役イメージに大きく寄与していることは間違いないといえるでしょうね。

視聴率で評価してほしくない名作大河ドラマ「平清盛」

というわけで、まとめです。

  • 敵味方が頻繁に入れ替わる難解な時代背景
  • 源、平、藤原という同姓の登場人物のあまりの多さ故の人物理解度の難解さ
  • 日本人の多くにある平氏の悪役イメージ
  • 源氏に比べての平氏の不人気(あくまで比較論です)
  • 画面の汚さや王家という呼び名はあまり関係ないのでは?

以上がわたしの思った低視聴率の要因です。何度も言いますが、あくまで「わたしの私見」です(苦笑)。

ハッキリ言ってこの大河ドラマ「平清盛」が、「低視聴率だし面白くないんでしょ?」という理由で見ることなく避けられることがあるのだとすれば非常に悲しいですね。わたし的には素晴らしい大河ドラマであったと思っているからです。脚本と演出はあくまで硬派、そして重厚。オープニングも文句なし。ドラマ全体を覆う雰囲気からは大河ドラマ特有のいい意味での様式美も堪能できますし、主演の松山ケンイチの素晴らしい熱演を始めとしてどの出演者も素晴らしいです。ぶっちゃけ、ここ最近の大河の中では出色の出来といっていいでしょう。

だからこそ個人的にはこれだけの歴史的低視聴率に終わった原因はしっかり考えておきたいと思いました。じゃないと納得できないからです。

とにかくもう一度言わせてください。低視聴率を理由にこのドラマを敬遠している方には、ぜひ一度見ていただきたいですね。じゃないとこの素晴らしい作品が浮かばれないと思うのです。

平清盛のレビュー記事についてはこちらもご覧下さい。

[平清盛]面白いが低評価な名作大河ドラマ 脚本・キャストやOP 源義経や平重盛・藤原頼長役等は誰が?

コメント

  1. 高白斎 より:

    はじまして。今世紀の大河ドラマでは、
    風林火山と平清盛が2トップだと思っている視聴者です。

    物語のわかりにくさについて、記事の内容に非常に共感できました。
    この時代は合戦するにしても、いがみあって対立するのは公達で、
    武力集団(武家)はまた別の思惑を持っている……という二重構造が、
    ややこしさを増していたと思います。

    また、和歌をあしらいながら進む、
    風雅と、退廃と、権謀術数が入り乱れた世界観が
    ゴールデンのお茶の間向きではなかったような気もします。
    (技巧をこらした素晴らしい脚本だったのですが)

    しかし、見れば見るほど面白い。
    中井貴一の大立ち回り、國村隼の絶叫、
    松山ケンイチの老醜、翻弄される三上博史と窪田正孝、
    底なし沼のような壇れいに、井浦大魔王に、雨雲を払う杏の笑顔。
    いまも心に残る名場面が目白押しです。

    個人的に、清盛のクライマックスは鹿ケ谷でした。
    これまでに散りばめられていたエピソードが、
    清盛の怪物化と源氏の再生に収束されていく快感は、他にないものでした。

    マニアックな人気のまま放映終了してしまった清盛ですが、
    再放送やこういう記事を通じて、
    ふたたび評価される時代がきっと来ると思います。

    退廃の文明を破壊し、マンティコアに破れて海に還ってゆくタルカスを、
    清盛のテーマソングに採用したのには驚きました。
    完璧な選曲でしたね。

    • りぞっと より:

      >>見れば見るほど面白い

      そうなんですよね、このドラマはまさにそれなんです。見る度に新たな気付きや解釈の仕方がどんどん出て来ます。「噛めば噛むほど味が出る」じゃないですけど、本当にそんなドラマですね。

      「鹿ヶ谷の陰謀」はわたしも大好きです。というか、個人的には平家が衰退の一途をたどる後半の方が好きなんですが・・。スイーツ云々言われている現在の大河であの回を作ったのは凄いですよね。逆に言えばNHKさんには「やれば出来るんだから毎年やってよ」とも思ってしまいますが・・。
      ともかく、一日も早く再評価がなされて然るべき傑作だと思います。藤本有紀さんには是非もう一度大河ドラマを手掛けていただきたいですね。