各テレビ局が開局し、各家庭にテレビが普及した戦後の昭和時代からこれまで、数多くの名作が生まれてきたテレビ時代劇。
そんなテレビ時代劇が生んだ時代劇ヒーローの代表的な人物が「遠山の金さん」でしょう。
先日はネットニュースなどで、ジャニーズ事務所の人気グループTOKIOのメンバーである松岡昌宏(まつおかまさひろ)さんが、テレビ朝日で放送されるスペシャルドラマで遠山金四郎を演じることが発表されました。時代劇衰退が叫ばれて久しい昨今にあって、時代劇ファンには嬉しいニュースでした。
そこでここでは、過去にテレビの連続ドラマで遠山の金さんを演じられた俳優さんたちやその作品情報などをご紹介していきたいと思います。
南町(北町)奉行・遠山金四郎による勧善懲悪の人気時代劇、「遠山の金さん」とは?
遠山の金さんといえば基本的には、北町奉行(或いは南町奉行)の遠山金四郎が遊び人の金さんに扮して江戸の町で色々な事件に出くわし、その際に悪人に見せた刺青を、お白州で見せることで白を切る悪人たちを地獄の底へと突き落とし、成敗するという物語です。
いわゆる時代劇にありがちな勧善懲悪ストーリーなのですが、この遠山の金さんの物語は、歌舞伎での演目や講談師などによって庶民の間に広がり、戦後に時代小説家の陣出達朗(じんでたつろう)氏の小説「遠山の金さんシリーズ」で広く世間に知られるようにとなったのです。
テレビドラマでレギュラー放送される前の映像作品としては、何といってもあの戦前から戦後をまたいで映画やテレビで活躍した時代劇スターの片岡千恵蔵さんの映画、東映時代劇シリーズが有名ですね。これで一躍庶民の人気者となった遠山の金さんが、テレビの普及とともにテレビ時代劇でもヒーローになっていき、数々の金さん主演のシリーズものが作られていったという事です。
ちなみに、遠山の金さんが実在の人物か否かなど、実際の遠山金四郎景元という人物像などについてはこちらの記事もご参照ください。
坂東好太郎、夏目俊二、坂東鶴之助によるテレビ黎明期の30分ドラマ
「遠山の金さん」のテレビドラマにおける歴史ですが、ますはテレビ黎明期といってもいい昭和30年代にまで遡ります。この時代に以下の3作品が30分ドラマとして制作されました。
ドラマ名 | 俳優名 | 放送局 | 放送年 | 全話数 |
---|---|---|---|---|
金四郎江戸桜 | 坂東好太郎 | NHK | 1957年~1958年 | 全29話 |
遠山の金さん捕物帳 | 夏目俊二 | フジテレビ | 1960年 | 全12話 |
講談ドラマ 遠山の金さん | 四代目坂東鶴之助 | NHK | 1962年 | 全4話 |
戦前・戦後の映画スターとして晩年に歌舞伎界へと戻った坂東好太郎(ばんどうこうたろう)さんのNHKでの作品が記念すべきテレビにおける遠山の金さん史の始まりでした。
その終了から約2年後には民法のフジテレビで「遠山の金さん捕物帳」が放送開始。民法初の金さんものでした。主演は俳優であり、演出家でもあった名優・夏目俊二(なつめしゅんじ)さん。そしてさらにその2年後には四代目坂東鶴之助(ばんどうつるのすけ/五代目中村富十郎)さん主演で再びNHKが連ドラを制作・放送しました。
連続ドラマといえば1時間という時代に育ったわたしのような世代には逆に30分の時代劇ってどんなだっただろうと凄く興味を惹かれますね。
1967年(昭和42年) “遠山の金さん” 主演:六代目市川新之助(十二代目市川團十郎)
そして1967年(昭和42年)になって、ようやく60分物の「遠山の金さん」の連ドラが始まりました。その記念すべき作品がこれです。
作 品 名:遠山の金さん
ジャンル :時代劇
放送期間 :1967年6月8日~10月5日
放送時間 :毎週木曜日20:00~20:56
放送回数 :全11話
制 作 局:日本テレビ
原 作:山手樹一郎
脚 本:渡辺邦男
主 演:六代目市川新之助(いちかわしんのすけ)
主演は六代目市川新之助(いちかわしんのすけ)さん。2013年に惜しまれながら66歳という年齢で肺炎によりお亡くなりになった、後の十二代目市川團十郎(いちかわだんじゅうろう)さん、つまり十一代目市川海老蔵さんのお父さんでありその息子の勸玄(かんげん)くんのにとってはお爺さんにあたる方ですね。
この市川新之助さん主演の「遠山の金さん」は、わたしたちがよく知っている南町奉行の遠山金四郎ではなく、まだ出世する前の若き日の遠山金四郎を描いた青春劇という側面が強いです。青年期の若き遠山金四郎の一介の町人としての活躍などを描いた物語となっています。
市川團十郎さんがまだ市川新之助という名前の頃、この後に海老蔵、團十郎と襲名していくわけですが、そんな若かりし頃に遠山の金さんを連ドラで演じていたというのはあまり知られていません。この時團十郎さん実に21歳の若者でした。
1970年(昭和45年) “遠山の金さん捕物帳” 主演:四代目中村梅之助
そして1970年に放送開始されたのが、今でもオールドファンには非常になじみの深い金さんです。
作 品 名:遠山の金さん捕物帳
ジャンル :時代劇
放送期間 :1970年7月12日~1973年9月30日
放送時間 :毎週日曜日20:00~20:56
放送回数 :全169話
制 作 局:NET(現:テレビ朝日)
原 作:陣出達朗
音 楽:小川寛興
主 演:四代目中村梅之助(なかむらうめのすけ)
遠山の金さんといえばこれでしょ!という方も多いのではないでしょうか。特に年配の方にとっては、放送から40年以上を経た今でも、このドラマこそ金さんの決定版だという人も未だに多い傑作です。
気前が良くて二枚目で、ちょいとヤクザな、遠山桜~♪
でお馴染みの名作曲家・小川寛興さん作曲、名村宏さん作詞、フォークトリオバンドの「親分&子分ズ」が歌う名エンディング曲で毎週幕を閉じるこのドラマ。この曲「遠山の金さん」は後にとんねるずの「みなおか」で石橋貴明さんが生み出した番組屈指の人気キャラクターが主役の「保毛太郎侍(ほもたろうざむらい)」でパロられた曲の原曲です。よってこのドラマを見ていないとんねるずの番組で育った40代の人間もこのテーマ曲はよく知っている人が多いでしょう。
しかし主演の中村梅之助(なかむらうめのすけ)さんという役者さんは本当に凄いです。不世出の名優さんといっていいでしょう。
遠山金四郎、伝七親分(伝七捕物帳)、徳川家康(真田太平記)、大村益次郎(花神)はこの俳優さん以外にあり得ないという人も多いでしょう。私も同感です。しかもどのキャラも全く違った魅力を持った人物たち。それを一人でこれだけ演じ分けられるのは凄いというより神業といってもいいでしょう。本当に尊敬すべき偉大なる役者さんでしたね。ちなみに金さんと同じく梅之助さんの代名詞ともいえる「伝七捕物帳」でも梅之助さんは伝七役との二役で遠山左衛門尉(とおやまさえもんのじょう・遠山金四郎景元)を演じていらっしゃいます。
梅之助さんの金さんの啖呵は大げさすぎず、しかしそれでいて粋で歯切れの良さが持ち味でしたね。やっぱ凄いです、梅之助さんは。
1973年(昭和48年) “ご存知遠山の金さん” 主演:四代目市川段四郎
中村梅之助さんが「舞台に専念したい」との理由で「遠山の金さん捕物帳」を降板し、その後枠で始まったのがこの金さんドラマです。
作 品 名:ご存知遠山の金さん
ジャンル :時代劇
放送期間 :1973年10月7日~1974年9月22日
放送時間 :毎週日曜日20:00~20:56
放送回数 :全51話
制 作 局:NET(現:テレビ朝日)、東映
原 作:陣出達朗
音 楽:小川寛興
主 演:四代目市川段四郎(いちかわだんしろう)
このドラマで金さんを演じられたのが、四代目市川段四郎(いちかわだんしろう)さん。二代目市川猿翁(三代目市川猿之助)さんの弟であり、息子は四代目市川猿之助さん、甥には香川照之さんなどがいる歌舞伎界の名門の出であり、貴公子と呼んでもいい役者さんです。
中村梅之助さんの金さんに比べれば現在では知名度は低いといわざるを得ない本作ですが、段四郎さんの金さんも梅之助さんの遠山金四郎とは違った味があって好きでしたね。さすがは実力者といった感じです。タイトル曲などは梅之助さん時代の捕物帳と同じ曲が使用されていますね。
1974年(昭和49年) “ご存知金さん捕物帳” 主演:橋幸夫
市川段四郎さん主演の「ご存知遠山の金さん」終了後、同枠で翌週から始まったのがこの金さんドラマです。
作 品 名:ご存知金さん捕物帳
ジャンル :時代劇
放送期間 :1974年9月29日~1975年3月30日
放送時間 :毎週日曜日20:00~20:56
放送回数 :全27話
制 作 局:NET(現:テレビ朝日)、東映
原 作:陣出達朗
音 楽:小川寛興
主 演:橋幸夫(はしゆきお)
中村梅之助さん、市川段四郎さんときたNET系列日曜夜8時放送の遠山の金さんシリーズ最終作となったのがこの橋幸夫さん主演の「ご存知遠山の金さん」です。
原作・陣出達朗で音楽も小川寛興、放送時間も同じという事で、中村梅之助版、市川段四郎版路線を踏襲している本作ですが、主題歌だけは橋幸夫さんが歌う新曲が使用されています。それはそうでしょう、元祖御三家と呼ばれた大人気歌手が主演するのですから当然ですよね。
わたしたちの世代からすれば、大物歌手としての印象が強い橋幸夫さんだけに、このドラマを見ているとその演技力にはさすがスターだと感心させられます。昔のスターは歌も演技も当たり前にこなされますよね。今よりもボーダーがなかった時代の凄味を感じますね。
橋さん以外にも山村聰さんや大友柳太郎さんといった超大御所が脇を固める豪華さも必見です。梅之助版金さんが好きだった人には、南町奉行所の岡っ引き・“かなぶん”こと要町の文三役で出演していた柳沢真一さんが再びレギュラー出演なさっているのも嬉しいところです。
1975年(昭和50年) “遠山の金さん” 主演:杉良太郎
中村梅之助、市川段四郎、橋幸夫と続いたテレビ朝日系列日曜夜8時の遠山の金さんシリーズの終了から半年後に同じくテレ朝系列で始まったのがこのドラマです。
作 品 名:遠山の金さん
ジャンル :時代劇
放送期間 :1975年10月2日~1977年9月29日(第1シリーズ)
放送期間 :1979年2月15日~1979年10月18日(第2シリーズ)
放送時間 :毎週木曜日20:00~
放送回数 :第1S(101話)、第2S(30話)
制 作 局:テレビ朝日
原 作:陣出達朗
音 楽:菊池俊輔
主 演:杉良太郎(すぎりょうたろう)
個人的にわたしの金さんといえばこの金さんでしょうか。子ども時分にうちの死んだお爺ちゃんとお婆ちゃんがテレビにかじりついて見てたのを今でもよく覚えています。特におばあちゃんは杉良太郎の大ファンで、まるで乙女のように見てたのが今思うと微笑ましい限りです(笑)。
水戸黄門の初代助さん役、大江戸捜査網の主人公・十文字小弥太役、そして右門捕物帳の近藤右門役で一気に時代劇を担う若手大スターへと駆け上がった杉良太郎さんがその地位を決定的なものにしたのこそ、この「遠山の金さん」といってもいいのではないでしょうか。それ程までに杉良の金さんはカッコよかったです。そりゃあうちのばあちゃんみたいな当時のマダムはみんなやられまさーね(笑)。
このドラマの音楽はあの菊池俊輔先生が手掛けられました。
そしてこのドラマを語るうえで外せないのが主題歌。杉良太郎さん最大のヒット曲となった「すきま風」。子供の頃聞いたこの曲を今でもわたしがカラオケで歌えてしまうという程の名曲です。作曲は国民栄誉賞を受賞された遠藤実先生の手によるものです。
杉良太郎さん主演「遠山の金さん」以降の金さんドラマについては以下の記事から続きをご覧ください。
コメント
豊臣西軍 参上!
リーダー・石田三成!
「きゃ〜三成様〜」
石田「うむ」
真田信繁!
「きゃ〜源次郎様ーー」
真田「我こそは!真田左衛門佐信繁!」
大谷吉継!
「うおおおーーいいぞオッサン!!」
大谷「おい」