50年以上の歴史を誇るNHK大河ドラマ。数々の名作を世に送り出してきた、まさに日本の国民的ドラマといっても過言ではないドラマ枠です。
数多くの名優たちが日本史を彩った英雄達を演じてきたNHK大河ドラマの歴史。ここでは、そんな大河ドラマの中で、明治維新に多大なる貢献をした維新三傑と呼ばれる薩摩藩の西郷隆盛と大久保利通、長州藩の木戸孝允(桂小五郎)という三人の偉人を演じた俳優さんたちをご紹介したいと思います。
NHK大河ドラマ第5作 三姉妹 1967年(昭和42年)キャスト
登場人物名 | 俳優名 |
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西郷隆盛(西郷吉之助) | 観世栄夫 |
大久保利通 | 登場せず |
木戸孝允(桂小五郎→木戸準一郎) | 御木本伸介 |
幕末から明治時代にかけての激動の時代を生きた三人の姉妹(架空の登場人物)を主人公に描いた1967年の「三姉妹」が大河ドラマにおける維新三傑の初出作品となります。主演の三姉妹役(むら・るい・雪)には岡田茉莉子さん、藤村志保さん、栗原小巻さんという三人の大女優が務めました。三傑の初出作品とはいっても、三傑のうち大久保利通は登場せず、西郷隆盛と木戸孝允のみとなっています。
西郷役にはシテ方観世流能楽師の観世栄夫さん。個人的には大好きな必殺シリーズの神回の一つ、「必殺仕置屋稼業」の最終回「一筆啓上崩壊が見えた」でラスボスを演じられたのが印象深いですね。
木戸孝允役にはクールで癖のある二枚目役から悪役までオールマイティにこなした御木本伸介さん。鬼平犯科帳の天野甚蔵役をはじめとして時代劇ではお馴染みの俳優さんでした。大河ドラマもこの作品を含めて8作品に出演された常連さんですね。
NHK大河ドラマ第6作 竜馬がゆく 1968年(昭和43年)キャスト
登場人物名 | 俳優名 |
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西郷吉之助(後の西郷隆盛) | 小林桂樹 |
大久保一蔵(後の大久保利通) | 土屋嘉男 |
桂小五郎(後の木戸孝允) | 高橋昌也 |
前年の三姉妹に続いて二年連続の幕末物となった1968年の「竜馬がゆく」。昭和の文豪、司馬遼太郎の大人気小説であり、日本人の描く坂本龍馬像に大きな影響を与えた作品でもあります。
視聴率的には振るわず、1994年の「花の乱」が更新するまでは長らく大河ドラマのワースト視聴率という不名誉な記録を持っていた本作品ですが、作品自体の一般的評価は決して低いものではありません。
主演の北大路欣也さんをはじめとして超豪華キャストを誇る本作ですが、作品のハイライトともなる薩長同盟の当事者たる維新三傑も大物俳優が演じています。
西郷役には数々の作品で主演を務めた名優・小林桂樹さん。大久保役には黒澤明作品でもお馴染み、初期のウルトラシリーズにも出演されていた土屋嘉男さん。そして桂小五郎役には演出家としても活躍された高橋昌也さん。わたしらの世代的には80年代の大映ドラマに出演されていたイメージも強いですね。
なんでこのドラマがこんな低視聴率だったのだろうと考えれば考える程不思議ですよね。
NHK大河ドラマ第12作 勝海舟 1974年(昭和49年)キャスト
登場人物名 | 俳優名 |
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西郷吉之助(後の西郷隆盛) | 中村富十郎(5代目) |
大久保一蔵(後の大久保利通) | 西沢利明 |
桂小五郎(後の木戸孝允) | 和崎俊哉 |
勝海舟役で主演を務めた渡哲也さんが胸膜炎で松方弘樹さんへ主役交代となったり、脚本を務めた倉本聰さんが演出スタッフとの衝突によって降板し、東京を去ったり・・と、トラブルが相次いだ作品・・という印象のある大河ドラマ12作目の「勝海舟」。江戸城無血開城に導いた幕末の幕臣・勝海舟の生涯を描いた作品ですから、ここでも維新の三傑が登場します。
このドラマで勝海舟との会談によって江戸城を無血開城として江戸を戦火から救ったもう一方の雄・西郷隆盛を演じたのが歌舞伎俳優の五代目中村富十郎さん。過去に幾度となくドラマで西郷隆盛役を演じられている役者さんですね。実を言うと、この作品以外の大河ドラマでも西郷役を・・まあそのうち出ていらっしゃいますのでお楽しみに(笑)。
大久保役はニヒルな悪役として時代劇を中心に活躍された西沢利明さん、長州の桂小五郎役にはこれまた時代劇ではお馴染み、善玉から敵役まで幅広く演じられた和崎俊哉さんが起用されました。
NHK大河ドラマ第15作 花神 1977年(昭和52年)キャスト
登場人物名 | 俳優名 |
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西郷吉之助(後の西郷隆盛) | 花柳喜章 |
大久保一蔵(後の大久保利通) | 高橋長英 |
桂小五郎(後の木戸孝允) | 米倉斉加年 |
未だにオールドファンからは非常に高い評価を受けている大河ドラマがこの「花神」です。原作はあの司馬遼太郎さんで、人気脚本家の三谷幸喜氏が好きだった大河ドラマとして挙げている名作ですね。
西郷役にはこの「花神」を含めて大河ドラマ6作に出演した花柳喜章(はなやぎよしあき)さん、大久保一蔵役には現在でも名バイプレーヤーとして活躍する高橋長英(ちょうえい)さん、そして桂小五郎役には惜しまれながら2014年に急逝された名優・米倉斉加年(まさかね)さん。
どの俳優さんも流石という感じですが、特に桂小五郎を演じた米倉さんの理知的な桂役は素晴らしかったですね。前年の「風と雲と虹と」ではくせ者中のくせ者といってもいい興世王役を怪演された次の年のこの180度反対といってもいい役柄ですからね。それをどちらも完璧に演じられました。本当に凄いとしか言いようがありません。
個人的に最も完全版の見てみたい大河ドラマの一つでもある本作・・どこかに眠ってて誰かがNHKさんに寄贈してくれないかなあ(涙)
NHK大河ドラマ第18作 獅子の時代 1980年(昭和55年)キャスト
登場人物名 | 俳優名 |
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西郷隆盛 | 中村富十郎(5代目) |
大久保利通 | 鶴田浩二 |
木戸孝允 | 登場せず |
大人気脚本家の山田太一氏のオリジナル作品であり、主題歌にはバリバリのギターサウンドを響かせるダウンタウン・ファイティング・ブギウギ・バンド(宇崎竜童が率いる)を起用するという新機軸を打ち出した大河ドラマとしても有名なドラマです。余談ですが、このドラマも三谷幸喜氏お気に入りの一作となっております。
この獅子の時代、主人公の平沼銑次(菅原文太)と苅谷嘉顕(加藤剛)は架空の人物ですが、多くの登場人物は幕末から明治初期にかけての実在の人物であり、維新三傑も木戸孝允こそ登場しませんが、薩摩の二人は重要な役柄で登場します。
西郷隆盛役には“ミスター西郷隆盛役”といってもいい五代目中村富十郎さんが「勝海舟」に続いて二度目の西郷隆盛役となりました。そして西郷と袂を分かった大久保利通役にはあの鶴田浩二さん。この大久保がまたカッコよすぎなのです。やっぱ鶴田浩二さんは今の俳優には無い独特のオーラがありますね。最高にカッコイイ大久保利通が見れる事うけあいですよ。
NHK大河ドラマ第28作 翔ぶが如く 1990年(平成2年)キャスト
登場人物名 | 俳優名 |
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西郷隆盛(西郷吉之助) | 西田敏行 |
大久保利通(大久保正助→一蔵) | 鹿賀丈史 |
木戸孝允(桂小五郎) | 田中健 |
西郷隆盛と大久保利通を主人公として描いたこの「翔ぶが如く」。司馬遼太郎氏原作の硬派な作品です。
主人公の西郷隆盛と大久保利通役には“ミスター大河ドラマ”西田敏行さんと鹿賀丈史さん。この役のオファーを貰った旧会津藩であった福島県出身の西田さんが、会津戦争の仇敵である薩摩藩の西郷隆盛を演じる事に悩んだという話は有名な話ですよね。さらに、大久保役を演じた鹿賀丈史さんはまさに大久保利通が画面に蘇ったかの如きはまり役でした。まさにキャスティングの時点で勝利していたといってもいいのかもしれません。
この両者の仲間でありライバルでもある三傑の残る一人、木戸孝允には田中健さんが起用されました。
さすがに西郷・大久保の薩摩の両巨頭を主役にしただけあって、その出番は他の大河ドラマ作品を大きく凌駕するものです。司馬遼太郎の原作、小山内美江子さんの脚本、そして演者の熱演・・全てにおいてレベルの高さを感じさせてくれるドラマです。幕末好きにはたまらんドラマです。
長くなりすぎなので、ここでは三姉妹から翔ぶが如くまでのキャストをご紹介しましたが、以降の徳川慶喜から最新の幕末ドラマとなる2018年「西郷どん」までの維新三傑のキャスティングについては以下の記事で続きをご覧下さい。
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