2001年に放送された21世紀初のNHK大河ドラマ「北条時宗」。能楽狂言方和泉流十九世宗家・和泉元秀の子、和泉元彌が主人公の北条時宗を演じた通算40作目の大河ドラマです。能・狂言界からは初となる主役抜擢であり、その意味でも大変大きな話題を集めたドラマでしたね。
21世紀初、能・狂言界から初、さらに鎌倉時代の中期、北条得宗家の全盛時代を描いた作品も初、というまさに初もの尽くしのこの「北条時宗」。ネットなどではこのドラマの代名詞として語られる事の多い「赤マフラー」の意味なども含めて(笑)、色々と見ていきたいと思います。
21世紀初の大河作品にして初の能・狂言界からの主役抜擢、そして初の北条得宗家主人公
それではまずNHK大河ドラマ「北条時宗」の簡単な番組概要をご紹介しましょう。
ジャンル :歴史ドラマ
放送期間 :2001年1月7日~12月9日
放送時間 :毎週日曜日20:00~20:45
ドラマ枠 :大河ドラマ
放送回数 :全49話
制 作 局:日本放送協会(NHK)
音 楽:栗山和樹
原 作:高橋克彦
脚 本:井上由美子
主 演:和泉元彌
主 人 公:北条時宗(ほうじょうときむね)
時 代:鎌倉時代中期
平均視聴率:18.5%
原作は高橋克彦氏。1993年第32作目の大河ドラマ「炎立つ」に続いての原作採用となりました。脚本は初の大河ドラマ執筆となった井上由美子さん。言わずと知れた日本ドラマ界を代表するヒットメイカーです。
このドラマの放映開始時にはまだ高橋克彦氏の原作は完結しておらず、ドラマと並行して原作が書き上げられるという事となり、それが原因かどうかは定かではありませんが、高橋氏の原作と井上由美子氏脚本のドラマでは大きくストーリーが異なっているのも特色です。
原作も読みましたが、個人的に原作の方がスケールが大きくて人間関係的にも原作の方がしっくりくるかなといった感じでしょうか。どちらにせよ、ドラマと原作小説、結構人間関係などにおける違いが大きいのでどちらも見ることをお勧めします。どちらが好みかは人それぞれで分かれると思いますね。尚、時輔の赤マフラー化はドラマと同じです(笑)。
日本に迫る未曽有の危機、元寇を体現した栗山和樹の名オープニング曲
この「北条時宗」は日本史最大の国難と言ってもいい「元寇」が大きなテーマとなっていますが、そんな強大な「元」という史上最強最大の敵を想起させるようなオープニングテーマがまた素晴らしい出来となっています。
いきなり女性のシャウトから入る衝撃的なこのオープニング。女性はモンゴルのノロヴバンサドというモンゴル民謡(オルティンドー)を代表する国民的歌手です。まさにこのノロヴバンサドの発する叫びはまさに異国のそれであり、日本の音楽にはないものです。そしてその冒頭のこの歌声で否応なしに緊張感はMAXとなるのです。まさに異国から日本を支配しに来た強大な敵。そんな危機的状況、いや絶望感さえ感じさせるこのオープニング。起承転結を基本とする他の大河ドラマのオープニングと違い、この曲はイントロからアウトロまで気を休める暇を与えません。まさに一瞬の猶予もない北条時宗が直面した危機を現しているようなOPであり、他の大河ドラマのOPとは一線を画するものです。栗山和樹さん作曲のこのオープニング、本当に素晴らしいです。
そして映像もまた音楽としっかり融合していましたね。
大海原から大草原、果ては地球を飛び出して宇宙にも・・。その壮大なスケールはまさに大河ドラマという枠さえ超えたものとなっています。ある意味大河ドラマのオープニング的には異色といえるこの「北条時宗」ですが、やはり出来は素晴らしいです。本編を見る前にあの混迷と緊張の鎌倉時代に連れて行ってくれるようなオープニングですね。
序盤の主役、圧倒的存在感を誇る時宗の父・北条時頼。演じるは世界の渡辺謙
日本史上最大の国難といってもいい「元寇」。その国難を乗り切った時の実質上の日本の最高権力者である執権こそ北条時宗でした。そんな北条時宗を演じたのが前述したように能・狂言界で活躍していた和泉元彌さんです。しかし、ぶっちゃけるとこの作品における時宗は非常に影が薄いです。序盤は父の北条時頼に、そして中盤以降は兄の北条時輔の影に隠れてしまいます。しかしこれは和泉元彌さんのせいではなく、元寇という国難を乗り越えた北条時宗という偉人を行き当たりばったり、優柔不断な普通の若者として描いてしまった脚本にあるのは間違いないでしょう。仮にも大河ドラマの主人公なのですからもうちょっと・・と思ったのはわたしだけではないはずです。それ程時宗の扱いは・・酷かった(苦笑)。
代わりに序盤の主人公といってもいいほどの存在感を放っていたのが、時宗の父であり鎌倉幕府第五代執権の北条時頼。演じたのがあの「世界のワタナベ」こと渡辺謙。北条得宗家(とくそうけ/初代時政からの北条家直系の家系)の中でも名君といわれる偉人のスケールの大きさを見事に演じました。とにかく素晴らしい存在感でした。時宗にとってこの時頼役を渡辺謙が演じたのもある意味不運だったのかもしれません。
善政を敷きながらも権謀術数に長け、人心掌握に優れた清濁併せ呑む名執権は紛れもなく序盤の主役でした。わたしは時頼が死去した後はしばし「時頼ロス」に陥りました。それほどの圧倒的存在感でしたね。
最期を悟って失明した時頼が後継者の時宗に耳打ちした、あまりに惨く残酷な遺言・・。この場面だけでも渡辺謙という俳優の凄さは十分に伝わると思いますね。あそこは大河ドラマ史上屈指の名場面だと思います。
大河ドラマ「北条時宗」の代名詞、赤マフラーの意味は兄・北条時輔(渡部篤郎)にあり(笑)
さあ、ネットなどでこの「北条時宗」の話題となると必ずといっていいほど出るキーワード、「赤マフラー」。この謎を解くカギは主人公・北条時宗の異母兄・北条時輔にあります。劇中で演じたのは今や名優といってもいい大物、渡部篤郎。
この北条時輔という人物、実際の史実では「二月騒動」という北条家の内紛によって弟の北条時宗の手で殺されています。蒙古襲来の危機に鎌倉が揺れていた時の事です。
しかしこの大河ドラマ「北条時宗」では時輔は生存しており、あちらこちらを放浪し、時には蒙古に渡って日本と元の衝突回避のために敵に加勢するという神出鬼没の活躍ぶり。二月騒動以降の北条時輔は鮮やかな赤色のマフラーを首に巻いていたため、史実では死んだはずの人物が生存して暗躍する様を俗に「赤マフラー」と呼ぶようになったというわけです。例えば、史実では死んだはずなのに生きていたというような場合、この人物の事を「赤マフラー化した」などと形容するというような使い方です。とはいえネットスラングですから厳密な使い方の定義はありません。まあとにかくネット民は愛をこめて「赤マフラー」という単語を使っているような気がしますね。
赤マフラー化した時輔を演じた渡部篤郎さん、この時はまだリアル年齢は30代前半ですがやはりこの俳優も上手い。渡辺謙退場後はこの人が主人公といってもいい存在感でした。この作品を最後に渡部さんの大河ドラマ出演は現時点(2017年)でありません。早く大河に帰ってきて欲しいんですけどね・・(涙)
ちなみにこの時輔の青年期を演じたのは現在人気俳優の当時15歳の崎本大海さん。同じく時宗の青年期を演じたのもすっかり人気俳優となった当時14歳の浅利陽介さんでした。何とも豪華な青年期ですよね。
コメント
大坂の陣 豊臣軍参上!
主君 豊臣秀頼!
「右大臣様ーーー素敵ーーーーーー!」
秀頼「感謝致す」
重臣 木村重成!
「キャーーーーーーー重成様ーーーー!」
重成「木村長門守重成でござる!」
大将 真田幸村!
「うおおおおおサ・ナ・ダッ!サ・ナ・ダッ!オレたちのサ・ナ・ダッ!」
幸村「おい!!」