最近の一日の締めは、午前0:00から時代劇専門チャンネルで放送している「必殺アワー」を見る事です。これを見てから眠りにつくのがここ最近のパターンです。
この必殺アワー、かつての人気時代劇の必殺シリーズを放送している枠なのですが、11月26日現在では新必殺仕置人が放送されています。藤田まこと主演で、他にも山崎努、中村嘉葎雄、火野正平など、名優がズラリの必殺シリーズ屈指の人気作です。
もうこれが面白いのなんの。
必殺シリーズは1972年に朝日放送(現ABC)制作で第1作「必殺仕掛人」がスタート。以降、レギュラー放送31作を数える日本時代劇史に残る人気シリーズに。スペシャルドラマや映画も数多く作られており、特に藤田まこと演じる中村主水は必殺シリーズの顔と言っていいくらい、必殺ファン以外にも知名度が浸透しています。
2015年11月29日にスペシャルドラマ「必殺仕事人2015」が放送される予定で、それが必殺シリーズの最新作となっています。必殺仕事人2015については以下の記事に詳しく書いています。
必殺仕事人2015放送決定 現在の必殺から失われたもの 期待しているからこそあえて言わせてもらう!
必殺とはなんぞや?
必殺シリーズとは簡単に言ってしまえば、江戸時代において、依頼人からお金をもらい、法でさばけぬ悪を殺す殺し屋(以下、仕事人とする)たちの物語です(一部、例外も含む)。
依頼人は晴らせぬ恨みを代わりに晴らしてもらう見返りにお金を払います。仕事人たちは基本的にドライな人たちが多く、必要以上に依頼人に肩入れする事はありません。若い仕事人は血気盛んだったり、情が深い人間が多く、必要以上に依頼人に肩入れしたりしてしまう事もありますが、仕事人は基本的に自分たちはただの殺し屋だと思っています。お金をもらって仕事として人を殺すのであり、お金抜きで仕事をすることは殺す相手と同じ、ただの人殺しかそれ以下であるという信念を持っています。死んでも極楽には行けるるはずもないという無常観に溢れており、その無常観こそが必殺全体に漂う一種独特の空気感を作っているのです。
この必殺シリーズ、大雑把な基本的な流れを言うと、まず依頼人に様々な悲劇が降りかかります。依頼人の周りの人間や依頼人本人が殺されてしまう事が殆どです。依頼人は自分の代わりに自分の恨みを晴らしてもらうために仕事人たちにお金を払い、殺しを依頼します。そして、依頼を受けた仕事人たちは依頼人に代わって悪を成敗する、といったストーリーです。
これだけ見ると、
「なんだ、水戸黄門みたいなもんか」
とお思いでしょうが、自分に言わせると全然違います。確かに水戸黄門の印籠のように一定のひな型はあります。しかし、必殺シリーズの、特に前期(前期・後期の区切りについては後ほど詳しく)作品においてはこのひな形を思いっきりぶち破ってくれる回もたくさんあり、意図的に視聴者を飽きさせないようにしてあったりします。予定調和もあり、しかし裏をかいたりもありで、まさに脚本陣のグッジョブ感は半端ないです(笑)
シリーズ毎に仕事人たちは入れ替わりますが、それぞれがそれぞれ独自の殺し方をしており、さらに同じ殺し方でも様々なバリエーションがあり、そういう意味でもマンネリを防ごうという努力が垣間見えます。
殺しのバリエーションという意味では、これまた前期の作品の方が圧倒的に工夫がなされていると思います。
さらに悪役も、水戸黄門に出てくる悪代官とは比べ物にならないくらいの悪です。必殺の悪は、救いようのない絶対悪です。「こいつらだけは許せねぇ。死を以て償え!!」と思えるような悪です。だからこそ、最後の仕事の場面での視聴者のカタルシスはMAXに達する事が出来るのです。
必殺の魅力はどれだけ書いても書ききれるものではありませんが、当時としては斬新な発想や脚本・映像美で必殺シリーズはみるみるうちに人気時代劇の仲間入りをし、数々のシリーズや人気キャラを産み出す事となるのです。
必殺の歴史
必殺シリーズは1972年に記念すべき第1作「必殺仕掛人」でスタートしました。
林与一、緒形拳、山村聰、中村玉緒といった大御所俳優を揃えたこの仕掛人は大ヒットし、山崎努、藤田まこと、沖雅也らを配した2作目「必殺仕置人」もこれまた大ヒット。必殺の人気を不動のものとします。ところが、この仕置人放送時にちょっとした事件が起きます。
「必殺仕置人殺人事件」とも呼ばれるこの事件は、必殺仕置人を見ている時に殺人事件を犯した被告の犯行と、犯行時に見ていた必殺仕置人の関係性が疑われ、番組は打ち切りの危機に直面します。しかし、裁判の過程において殺人事件と必殺仕置人の関係は否定され、当時大人気でもあった番組の存続を願うスポンサーの意向もあって、必殺シリーズは内容をよりソフトにする事などを条件に存続が決定します。
その影響で、第3作「助け人走る」と第4作「暗闇仕留人」からは「必殺」の文字が外れることになるのです。しかし、続く第5作「必殺必中仕事屋稼業」において必殺の冠も復活。安定期に入りますが、シリーズ第14作の「翔べ!必殺うらごろし」が必殺シリーズ最低視聴率を記録し、必殺シリーズの存続危機が訪れます。
原点回帰の意味で作られた、シリーズ存続をかけた次作「必殺仕事人」はファン層を拡大する事に成功。三田村邦彦演じる飾り職人の秀は女性ファン層の支持を得、さらに次の「新必殺仕事人」では秀と同じく美形キャラの中条きよし演じる三味線屋の勇次が登場。この二人に中村主水、大御所・山田五十鈴演じるおりくを加えたメンバーで第2期黄金期を迎えます。そして、必殺シリーズは1987年の第29作「必殺剣劇人」でレギュラー放送をいったん終了。1991年から「必殺仕事人・激突」で復活しますが、1992年に終了後は東山紀之主演の「必殺仕事人2009」までレギュラー復活は17年の時を要します。この「必殺仕事人2009」が現時点ではレギュラー放送最後の作品という事になります。
前期と後期、どちらが好きかは好み次第
一般的に必殺ファンの間では「翔べ!必殺うらごろし」までを前期、「必殺仕事人」以降を後期と呼んでいます。
前期の作品は実験的な作品が多く、全体的に殺伐としており、出てくる仕事人たちも男臭くてアクが強く、女好きだったりお金にがめつかったりで欲望を隠そうとしないワイルドさが魅力です。かと思えば、人情に厚い正義感溢れる仕事人もおり、仕事人仲間での対立や葛藤と言った、殺しを生業にしている者の持つ業のようなものもうまく描いてあったりします。
脚本や演出もかなりハードであり、今のテレビでは無理だろうなというような表現も多々あります。そういった過激な部分も「必殺仕置人殺人事件」で叩かれる要因にもなったと言われています。
対する後期では、かなり様式が定着した感があります。依頼人に不幸が降りかかる→仕事人が依頼を受けて依頼人が絶命→仕事人出動シーン→仕事・・・といったパターンがほぼ守られるようになりました。いわゆるお約束が増えたという事ですね(笑)
仕事人たちもクールな美男子系が多くなり、アクの強さが無くなった分、女性ファンや一般の時代劇ファン以外の視聴者を取り込むことに成功しました。演出も前期に比べて映像美の部分に徹底的にこだわっている気がします。
さらに、その時々に世間を賑わせている時事ネタを取り込むことで視聴者層を飽きさせないという工夫も後期の特色の一つと言えるでしょう。例えば、CMでエリマキトカゲが人気の時には「加代 エリマキトカゲを目撃する」という回が作られ、ハレー彗星の75年ぶりの接近が話題になると「江戸の空にハレー彗星が飛ぶ」という回を放送する、といった感じです。
これらの作風や視聴者層の違いから、ハードな前期、ソフトな後期に分かれて語られる事が多く、必殺ファンも前期派と後期派に分かれています。
え?わたくし?
わたくしはバリバリの前期派です。もはや前期原理主義者と言ってもいいくらいのw
とにかくカッコイイんです。華麗な殺しもありますが、苦戦して泥臭く仕留める事も多いです。人相はあまり良くない人が多いです。絵面はあまり良くありません。女にだらしないです。お金大好きです。
でも、カッコイイんです。
そのうち、別記事でおススメの必殺シリーズや大好きな殺し屋たちも書いてみたいと思いますので、気長に(笑)お待ちください。
後期が悪いのかというと、そういう意味ではありません。
自分的には後期はキレイすぎるのです。カッコよすぎるのです。欲望を抑えるストイックさが際立っていますが、欲望に素直な人間臭い前期の方がわたしは好きです。共感できますw
「必殺仕事人2015」は範疇としては、明らかに後期の部類に属します。2015を見て必殺に興味を持たれた方は、是非前期の人気シリーズも見てみてはいかがでしょうか?気に入るか気に入らないかは保証しません、もちろん(汗)
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