「必殺シリーズ歴代殉職メンバー一覧①」及び「必殺シリーズ歴代殉職メンバー一覧②」では、必殺シリーズ初の殉職者となった「助け人走る」から「新・必殺仕置人」までの各シリーズの殉職メンバーをご紹介しました。
この記事ではその続き、「新必殺からくり人」で散ったメンバーからご紹介していきましょう。
この記事の前の記事についてはこちらからどうぞ。
- 噺家塩八(三代目古今亭志ん朝) 新必殺からくり人第7回「東海道五十三次殺し旅 荒井」(1977年)
- 新次(梅宮辰夫) 必殺商売人第26回(最終回)「毒牙に噛まれた商売人」(1978年)
- おばさん(市原悦子) 翔べ!必殺うらごろし第23回(最終回)「悪用した催眠術! 先生勝てるか」(1979年)
- 半吉(山田隆夫) 必殺仕事人第26話「半吉は女の愛で立ち直れるか?」(1980年)
- 西順之助(ひかる一平) 必殺仕事人・旋風編第14話(最終話)「主水、大奥の鳩を食べて失業する」(1987年)
- 夜鶴の銀平(出門英) 必殺仕事人・旋風編第14話(最終話)「主水、大奥の鳩を食べて失業する」(1987年)
- からくり屋の源太(大倉忠義/関ジャニ∞) 必殺仕事人2009第11話「仕事人、死す!」(2009年)
- ハードボイルド路線の必殺前期に比べてソフト路線の後期はメンバーの殉職数が減少
噺家塩八(三代目古今亭志ん朝) 新必殺からくり人第7回「東海道五十三次殺し旅 荒井」(1977年)
必殺シリーズのにおける個性豊かな殺し屋たちの中でも、この名落語家・古今亭志ん朝さん演じる噺家塩八というキャラは一際特異なキャラクターといえるでしょう。
その名からわかる通り、旅芸人一座の落語家として笑いを取るムードメーカ―の塩八の殺し技はなんと、催眠術。その巧みな話術で相手を惑わして催眠術をかけ、屋根の上から飛び降りさせて命を絶つというものです。殺しの実行部隊として以外に、諜報活動も担っていた重要なからくり人メンバーでした。
そんな塩八ですが、第7話で銃弾を体に受けて致命傷を負いながらも泣き節お艶一座の高座に上がって、最後には万座の聴衆の大歓声を受ける幻覚を見ながら息を引き取りました。からくり人としてではなく、落語家としての最期。大勢の拍手万来の中で死ねたのは塩八にとってはこの上ない最期だったのかもしれません。
余談ですが昔週刊少年ジャンプで連載していた、現代版必殺仕事人の異名を取った「ブラック・エンジェルズ」のシスター亜里沙の殺し技って塩八と一緒ですよね(笑)。
新次(梅宮辰夫) 必殺商売人第26回(最終回)「毒牙に噛まれた商売人」(1978年)
新仕置の衝撃的な最終回で仕置人チームは解散しましたが、うち主水と正八は江戸に残って、おせい(草笛光子)・新次(梅宮辰夫)と組んで商売人を始めていました。
そんな商売人でしたが、最終回では主水の仲間でありながらライバルとして緊張感溢れる火花を散らしていた新次が殉職します。おせいと逃げる事も出来た新次は、敢えて敵一味の乗った屋形船に襲撃をかけ、最後は同心が放った弓矢を首に受けて絶命します。なぜおせいと江戸を去らなかったのか?なぜたった一人で戦いに挑んだのか?残念ながらその辺りの説明や描写が不足していた感がありありで、個人的にはその死に対してあまり感情移入が出来なかったというのも正直なところでしたね。
最終回ではむしろ、新次よりも主水の妻、りつ(白木万理)の生まれたばかりの赤ちゃんが亡くなったというインパクトの方が強すぎました。恐らく必殺シリーズ中でも最も重く切ないラストでしょう。殺し屋であるが故の因果応報・・というにはあまりにも切ない回でしたね。
おばさん(市原悦子) 翔べ!必殺うらごろし第23回(最終回)「悪用した催眠術! 先生勝てるか」(1979年)
必殺シリーズ中でも最も視聴率が低迷して、必殺シリーズ自体が打ち切りとなる危機だったといわれるのがこの「翔べ!必殺うらごろし」の頃だったというのは必殺ファンの間では有名な話です。確かにオカルトを題材にしたストーリー、お金を受け取らずに恨みを晴らす展開、先生(中村敦夫)、おばさん(市原悦子)、若(和田アキ子)といった本名も不明な殺し屋たち・・かなり実験色の濃い意欲作でしたが、それが裏目に出たというところでしょうか。
しかしわたしは個人的に凄く好きなシリーズでした。脚本も素晴らしいし、何よりも市原悦子さんをはじめとする俳優さんの演技が本当に凄いのです。市原さんは世間話で相手の気をそらせた隙に匕首で一突き・・というシンプルな殺し技でしたが、最後の捨て台詞があまりに鬼気迫っていて本当に恐ろしかったです(笑)。でもそれは見ている者にこの上ないカタルシスをもたらしてくれました。
そんなおばさんですが、記憶喪失でしたが最終回で記憶を取り戻し、一人息子の義理の親の危機を救うために悪人たちに致命傷を負わされます。
最期のおばさんの魂の叫び、「せぇんせええええぇぇっ!!!!!」と、瀕死のおばさんをおぶった正十(火野正平)が先生に言った「先生・・おばさん、もう・・だめだ・・」の場面は涙なしでは見られません。
この「翔べ!必殺うらごろし」、もっともっと再評価がなされていい名作だと思いますがいかがでしょうか。
半吉(山田隆夫) 必殺仕事人第26話「半吉は女の愛で立ち直れるか?」(1980年)
必殺シリーズはこの「必殺仕事人」以降を後期、それより前を前期と呼ぶ場合があります。それ程までにシリーズにとって重要な分岐点となった作品こそがこの「必殺仕事人」です。この後2、3、4、5・・とシリーズが次々と繋がっていったことからもその人気が分かるというものですね。
中村主水(藤田まこと)、畷左門(伊吹吾郎)、飾り職人の秀(三田村邦彦)の三人の仕事人の活躍を描いた本作は、必殺シリーズ中最長となる全84話、放送期間は1年半という超ロングランでした。仕事人の実行部隊である三人は最初から最後まで変わらなかったものの(左門の職業と殺し技が変わりましたが)、元締めや密偵は途中で何回か交代しています。
そんなロングランの中での殉職者はたったの一人で、初代密偵を務めた半吉(山田隆夫)です。元ずうとるびのメンバーであり、現在では「笑点」の座布団運びの“山田君”としてお馴染みですよね。
密偵として探索や頼み人からの仕事の請負、さらには元締めとの橋渡し等務めていた半吉でしたが、23話で両思いだった茶屋のおふくが死んでからは元気がありませんでした。しかし、幼馴染のお袖と再会して元気を取り戻した矢先、そのお袖に出世のために利用された挙句に用済みとばかりに殺されてしまいます。その功名なお袖のからくりを察知した仕事人たちは、仲間である秀が頼み人となって半吉の仇を討ちました。この後、密偵は長年にわたって仕事人シリーズの名密偵となる加代(鮎川いずみ)らが務める事となりました。
かなり殉職メンバーの中では影の薄い半吉でしたが、この半吉殉職回は素晴らしいどんでん返しの連続の推理ミステリードラマです。脚本が素晴らしいので殉職回云々抜きで必見の名作回だと思いますね。
西順之助(ひかる一平) 必殺仕事人・旋風編第14話(最終話)「主水、大奥の鳩を食べて失業する」(1987年)
必殺仕事人Ⅲで初登場以来、必殺仕事人Ⅴで長崎留学のために仕事人メンバーを抜けるまで、何でも屋のお加代とともに密偵を務めた西順之助が、必殺仕事人・旋風編では仕事の実行部隊として仕事人メンバーに復帰してきました。
竹製の大砲のような大鉄砲を敵に食らわせ、銃弾を貫通させて仕留めるという豪快な殺し技の西順之助でしたが、最終回では無事に仕事を終えた後、船の上で竹製鉄砲に使う火薬に火が引火してしまい、大爆発を起こしてそのまま川へと消えてしまいました。というわけで、正確には行方不明・・というべきなのかもしれませんが、あの爆発で生きているという可能性はほぼ無いと思われますので、殉職扱いとさせていただきます。
ハッキリ言いましょう。必殺シリーズ殉職者の中でも最も間抜けな最期であることは間違いありません。必殺仕事人Ⅲ、Ⅳ、Ⅴという、必殺シリーズ黄金期レギュラーの順之助をあのような形で殉職させる必要があったのかどうか・・。80年代後半の必殺シリーズ迷走の象徴のような殉職だと思うのはわたしだけでしょうか。
夜鶴の銀平(出門英) 必殺仕事人・旋風編第14話(最終話)「主水、大奥の鳩を食べて失業する」(1987年)
前述した西順之助の火薬誤引火による爆発によって巻き込まれ被害に遭った夜鶴の銀平もまた殉職という形となりました。というよりも、西順之助と同じく生死不明というべきでしょうか。
ただし、爆発後に一切の消息がわからずじまいの順之助と違い、銀平の場合は重傷を負って川を流されていく場面がありましたので、殉職の可能性はより高いのかと思われます。それにしても、ラストで川を流されていく場面で何故敢えて仲間である政の助けを敢えて無視して水中に消えていったのか・・謎なのです。
ミスによる自爆という前代未聞の殉職、それに巻き込まれた銀平・・ある意味最も気の毒な殉職メンバーといえるのかもしれません。
からくり屋の源太(大倉忠義/関ジャニ∞) 必殺仕事人2009第11話「仕事人、死す!」(2009年)
レギュラードラマとしては「必殺仕事人・激突!!」以来約17年ぶりの復活となった「必殺仕事人2009」。渡辺小五郎(わたなべしょうごろう/東山紀之)、経師屋の涼次(きょうじやのりょうじ/松岡昌宏)、からくり屋の源太(大倉忠義)というジャニーズ事務所の三人に加えて、ミスター必殺の中村主水(藤田まこと)を加えた4人の実行部隊、そして元締め&密偵を兼ねたお菊(和久井映見)というメンバー構成でしたが、そのうちの源太も途中で殉職してしまいました。
源太の生き別れた母と名乗るお富という女に気を許した源太は、一瞬の隙を突かれてお富から致命傷となる胸への刺し傷を受けてしまいます。最期は瀕死の中、お富を仕留めてそのまま息絶えました。
主水や小五郎に比べると結局最後まで甘さの抜けなかった源太、そして最後はそれが命取りになった格好でしたが、力を振り絞っての最期の仕事は最高にカッコよかったです。必殺ファンには必見の名シーンだと思いますよ。
ハードボイルド路線の必殺前期に比べてソフト路線の後期はメンバーの殉職数が減少
というわけでいかがでしたでしょうか、3編に分けての必殺シリーズ殉職メンバーの紹介。
これだけの歴史があったら致し方ないのでしょうが、当然ながら最高にカッコイイ殉職シーンもあれば、「???」な殉職シーン(爆汗)もあるという明暗がはっきりと分かれますよね。当然個人個人の好き嫌いにもよるのでしょうが・・
必殺初期作品の大好きなわたし的にはやはりハードボイルド路線だった前期作品群での殉職に思い入れが深かったですね。というよりもライトな作風へとシフトしていった後期には殉職自体がほとんどなくなってしまったというのも勿論大きいですが。
ともかく、やはり殉職回は名作回が多いというのは衆目の一致するところなのではないでしょうか。
必殺劇場版(映画)での殉職者についてはこちらの記事をご覧ください。
コメント