必殺シリーズといえば、1972年(昭和47年)に記念すべき第1作目である「必殺仕掛人」が放映されて以来、45年の歴史となる現在でもスペシャル番組が放送されるほどの人気時代劇。
その人気の秘密の一つが、様々な殺し技を駆使して仕事を完遂する個性豊かな殺し屋たち。そしてそんな殺し屋たちの中には劇中で殉職していった名キャラクターたちがたくさんいます。
ここではそんな必殺シリーズで殉職した歴代の殺し屋たちを歴史の古い順にご紹介していきたいと思います。
- 為吉(住吉正博) 助け人走る第24話「悲痛大解散」(1974年)
- 島帰りの龍(宮内洋) 助け人走る第36話(最終話)「解散大始末」(1974年)
- 糸井貢(石坂浩二) 暗闇仕留人第27話(最終回)「別れて候」(1974年)
- 侍くずれの政吉(林隆三) 必殺必中仕事屋稼業第26話(最終話)「どたんば勝負」
- 利助(岡本信人) 必殺必中仕事屋稼業第26話(最終話)「どたんば勝負」
- 印玄(新克利) 必殺仕置屋稼業第28回(最終回)「一筆啓上崩壊が見えた」(1976年)
- おこう(中村玉緒) 必殺仕置屋稼業第28回(最終回)「一筆啓上崩壊が見えた」(1976年)
- 赤井剣之介(中村敦夫) 必殺仕業人第28回(最終回)「あんたこの結末をどう思う」(1976年)
- お歌(中尾ミエ) 必殺仕業人第28回(最終回)「あんたこの結末をどう思う」(1976年)
為吉(住吉正博) 助け人走る第24話「悲痛大解散」(1974年)
記念すべき(?)必殺シリーズにおける殉職第1号となったのが、必殺シリーズ第3作「助け人走る」で密偵を務めていた為吉です。
為吉の殉職回となった助け人走るの第24回「悲痛大解散」については、リンク先に詳細がありますので参照していただくとして、とにかく衝撃的な回でした。
仲間を、家族を守るために壮絶な拷問に耐えて耐え抜いて一人で死んでいった為吉の壮絶な死。そしてその死を境に助け人たちの境遇は180度変わってそれによってドラマの作風も大きく変わることとなりました。
闇の世界に生きる男たちの過酷な運命、そして祖の過酷なまでの覚悟を、生きざまを見せてくれた為吉。普段は地味な男が見せた壮絶な死は余計に感動を呼びましたね。
島帰りの龍(宮内洋) 助け人走る第36話(最終話)「解散大始末」(1974年)
助け人走るでは、中山文十郎(田村高廣)と辻平内(中谷一郎)のコンビとともに実働部隊を務めた島帰りの龍。打撃技、プロレス技を使った体術で悪人を葬ってきた凄腕の助け人です。
実はこの龍に関しては正確に言うと“生死不明”というべきなのでしょう。ハッキリと死亡したという描写がなかっただけにここに加えていいかどうか迷いました。でも、最終回であれだけの太刀を受けて流血し、そのまま川に敵を道連れにして飛び込んで姿を消したという状況的には、やはりあのまま・・と考えるのが自然と考えて殉職メンバーに加えることとします。
元々一匹狼の殺し屋として清兵衛たち助け人を始末するために現れた龍。その龍が最後は清兵衛や文十郎、平内ら仲間を捕り方から逃がすために自らが囮になって命を散らす・・最高にカッコいい最期でしたね(涙)
龍に関してはこちらの必殺最強候補記事にも詳しいのでよければご覧ください。
糸井貢(石坂浩二) 暗闇仕留人第27話(最終回)「別れて候」(1974年)
必殺シリーズ初の主人公の殉職者がこの糸井貢です。
この糸井貢という人物は、必殺シリーズの歴代の主役の中でもかなり異質といえる存在なのではないでしょうか。
元々が蘭学者という出自もあって、お金をもらって命を奪うという稼業に対する疑問を抱き、心の葛藤を抱えながら仕留人として仕事をこなしていくという、非常に繊細な人物なのです。必殺シリーズが生んだモンスターであり「暗闇仕留人」でも一緒になった中村主水とは正反対といってもいい人物なのです(まあその対比こそが面白かったのですが)。
最後はそんな貢の心の葛藤がまさに命取りとなり、ターゲットを仕留めるのを一瞬ためらったがために斬られて命を落とし、その亡骸は主水らによって海へと流されます。
にしても・・・村雨の大吉(近藤洋介)の心臓マッサージで一瞬だけ蘇生したのは必殺シリーズ史上最大のぬか喜びでしたな・・(涙)
侍くずれの政吉(林隆三) 必殺必中仕事屋稼業第26話(最終話)「どたんば勝負」
知らぬ顔の半兵衛(緒形拳)とともに博打好きの名コンビを組んでいた侍くずれの政吉ですが、最終話では火付盗賊改方によって捕えられて裏稼業を吐かせるための苛烈な拷問を受け、仲間たちを役人に売らず、一瞬の隙を見て奪い取った役人の懐刀で拷問中に自害するという最期を遂げました。
自害して壮絶な最期を遂げた時にその場にいた嶋屋おせい(草笛光子)は政吉の裏稼業の元締めであり、実の母親でもありました。政吉の自害は実の母を守るための自害でもあったのです。
利助(岡本信人) 必殺必中仕事屋稼業第26話(最終話)「どたんば勝負」
仕事屋稼業の元締め・おせいの表の顔、飛脚問屋嶋屋の番頭を務め、裏稼業でもおせいの手足となって密偵の仕事の一切を背負ったのがこの利助。地味だが非常に有能な、歴代の必殺シリーズの密偵の中でも素晴らしい密偵でしたね。
利助もおせいに全てを捧げたその人生を投影したような最後でした。おせいの命を狙って放たれた刺客の凶刃からおせいを庇ってその命を散らしました。
半兵衛と政吉、おせいの影に隠れた存在でしたが、その死もまたおせいたちのための日陰の死であり、だからこそ切ないものでしたね。
印玄(新克利) 必殺仕置屋稼業第28回(最終回)「一筆啓上崩壊が見えた」(1976年)
必殺シリーズ第6作目の「必殺仕置屋稼業」。その中で中村主水(藤田まこと)、市松(沖雅也)とともに仕置屋メンバーだった破戒僧の印玄も最終回で壮絶な最期を遂げました。
印玄と仕置屋稼業最終回についてはこちらの記事に詳しく記述してありますのでご覧下さい。
必殺仕置屋稼業最終回 シリーズ屈指の神回!中村主水の運命を決めたおこうの名セリフや壮絶な殉職シーン等
あのクールな市松をして「見事な最期だったよ・・」と言わしめた破戒僧・印玄の壮絶な最期は間違いなく必殺史に残るものでしょう。普段の殺し技がかなりコミカルチックだっただけにまたそのラストとのコントラストが映えるんですよねえ・・
おこう(中村玉緒) 必殺仕置屋稼業第28回(最終回)「一筆啓上崩壊が見えた」(1976年)
このおこうの死についても詳細はこちらの記事をご覧ください。
必殺仕置屋稼業最終回 シリーズ屈指の神回!中村主水の運命を決めたおこうの名セリフや壮絶な殉職シーン等
必殺シリーズの殉職の中でもこのおこうの死は特別な意味を持っています。わたしは、おこうの死の間際に中村主水に遺した言葉こそが、必殺シリーズの顔ともいえる中村主水という怪物を生んだのだと思っています。
「中村はん、この仕事辞めたらあきまへんで・・一生続けとくんなはれや・・」
主水を愛した一人のがめつい女髪結いの遺言・・いやはや泣かせますなぁ・・
赤井剣之介(中村敦夫) 必殺仕業人第28回(最終回)「あんたこの結末をどう思う」(1976年)
赤井剣之介が殉職した必殺仕業人の最終回も壮絶な展開となった伝説の回といえるでしょう。仲間のやいと屋又右衛門のミスから奉行所の探索が仕業人たちに及び、剣之介は妻のお歌とともに捕えられて拷問にさらされます。一瞬の隙をついて逃げ出したものの、捕り方によってどぶ川の中で斬殺されるという無残な最期を遂げました。
仲間を守って死んだとかというようなカッコいい最期ではないこの剣之介の、言葉は悪いですが「無駄死に」もまた中村主水の死生観、裏稼業観に与えた影響は限りなく大きいです。
又右衛門が「恐ろしい男だ・・」と呟いた最終回のラストシーンとなった土屋小十郎(浜畑賢吉)との果し合いは、まさに殺し屋としてもう一皮むけて完全体に近づいた中村主水の姿といっていいと思いますね。それを考えれば剣之介の死も必殺シリーズ的には無駄死にではなく、必然であったのです。
お歌(中尾ミエ) 必殺仕業人第28回(最終回)「あんたこの結末をどう思う」(1976年)
上記した赤井剣之介の妻であり、剣之介の裏稼業をサポートする役割でもあったお歌。
最終回では拷問を受けて瀕死の剣之介を助け出しますが、土屋小十郎(浜畑賢吉)率いる追っ手に追いつかれ、夫の剣之介とともに斬殺されてしまいます。
川の中を必死に逃げる剣之介とお歌。斬られて川の中で息絶え絶えの二人、最期は手を伸ばすも届かず絶命・・そしてBGMには西崎みどりの名曲「さざ波」。何度見ても泣ける、必殺屈指の名場面です。
この続き、「必殺からくり人」以降のシリーズ殉職者については以下の記事からご覧ください。
必殺劇場版(映画)での殉職者についてはこちらの記事で。
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