源氏と平氏が相争い、公家の支配する社会から武士の世へと大転換の激動期となった、戦国時代と並ぶ日本史を代表する内乱期といえる「源平内乱時代」。古代と中世の間ともいわれるこの時代、古来より多くの舞台や小説、映画、ドラマの題材となってきました。
現在におけるテレビ時代劇を代表するNHK大河ドラマにおいても勿論この時代は何度も映像化されています。
ここでは、源平時代を題材にした歴代大河ドラマをご紹介したいと思います。
1966年放送第4作「源義経」主演:尾上菊五郎(7代目/おのえきくごろう)
まずは、日本史上最大の英雄にして人気者といってもいい源義経の活躍を描いたこの作品から。
放送期間 :1966年1月2日~12月25日
放送回数 :全52話
音 楽:武満徹
原作・脚本:村上元三
主 演:四代目尾上菊之助(後の七代目尾上菊五郎)
主 人 公:源義経(みなもとのよしつね)
平均視聴率:23.5%
日本人の中における源平時代の最大のヒーローといえばやっぱり源義経ではないでしょうか。日本史を代表する悲劇の英雄の一生を描いたこの作品こそ、個人的には大河における源平ドラマの歴史の1ページ目として最も相応しいと思います。
義経を主人公としたドラマでは不動のヒロイン役といってもいいのが静御前(しずかごぜん)。このドラマにおける静役には後に主人公・義経を演じた四代目尾上菊之助さんと結婚する事となった藤純子さん(現:富司純子)。この大河ドラマでの共演が結婚のきっかけであり、この共演から約6年後に晴れて結婚という事となりました。
とにかく凄い面々です。滝沢修さんに芥川比呂志さん、辰巳柳太郎さんに大友柳太朗さん、山田五十鈴さん、東千代之介さん、十七代目中村勘三郎さんといった大御所クラスがズラリと並んでいます。まさに超ど級のキャスティングであり、大河ドラマの凄さをまざまざと見せつけてくれています。
尚、武蔵坊弁慶役の緒形拳さんは前年の大河ドラマ「太閤記」では主役を演じたばかりで翌年には準主役級での2年連続出演。現在ではちょっと考えられないですが、それも時代の流れを感じさせてくれますよね。
1972年放送第10作「新・平家物語」主演:仲代達矢(なかだいたつや)
続いては、武士の世の礎を作った英雄・平清盛の生涯を描いたこの作品です。
放送期間 :1972年1月2日~12月24日
放送回数 :全52話
音 楽:冨田勲
原 作:吉川英治
脚 本:平岩弓枝
主 演:仲代達矢
主 人 公:平清盛(たいらのきよもり)
平均視聴率:21.4%
平安絵巻を思わせる華麗な衣装に豪華キャスト、豪華セットはこれまた「The 大河ドラマ」といえるものです。これまたやっぱり凄いです(笑)
吉川英治原作を平岩弓枝さんの脚本と冨田勲さんの音楽で見られるというのもこれまた時代劇ファンには贅沢の極みといってもいいものでしょう。リアルタイムではまだ乳飲み子(笑)だったので見ていませんが、総集編は見ました。総集編だけでもその凄さはビンビンに伝わってきましたね。
ちなみに、日本における二枚目俳優、美男子の代名詞ともいえる田村正和さん。わたしの世代には「田村正和=大河ドラマ」というイメージは皆無なのですが、実は田村正和さん、これまでの俳優キャリアの中で7作の大河出演作があります。意外ですよね?それもそのはず、この「新・平家物語」での崇徳天皇役が現時点(2017年)での最後の出演作なのです。しかし考えてみてください。この新・平家物語が大河ドラマ10作目で、田村さん7作目の出演ってことは・・。ここまでは物凄いペースで出演されてたという事です。また大河ドラマに帰ってきてほしいですよね。
1979年放送第17作「草燃える」主演:石坂浩二&岩下志麻(いしざかこうじ&いわしたしま)
続いては、日本史上最も有名な夫婦といってもいい二人をW主人公として描いたこのドラマです。
放送期間 :1979年1月7日~12月23日
放送回数 :全51話
音 楽:湯浅譲二
原 作:永井路子
脚 本:中島丈博
主 演:石坂浩二・岩下志麻
主 人 公:源頼朝・北条政子(みなもとのよりとも・ほうじょうまさこ)
平均視聴率:26.3%
日本史を語るうえで絶対に欠かせない偉人でありながら弟の源義経に人気面では大きく差をつけられている感がある鎌倉幕府初代将軍の源頼朝と、尼将軍と呼ばれ、頼朝死後も絶大な権力を誇った妻・北条政子を主人公としたのがこの「草燃える」です。
主人公は大河ドラマ史上2位となる3度の主人公を務めた石坂浩二さんと(1位は4度主演の西田敏行さん)、大女優・岩下志麻さんです。
この「草燃える」が他の多くの源平時代ドラマ作品と大きく異なるのが、頼朝死後の二代将軍・頼家、三代将軍・実朝、さらにその後の二代執権の北条義時の治世まで描かれているところです。最終回は後鳥羽上皇と幕府軍との「承久の乱」で幕を閉じますが、この時代(二代執権義時時代)を描いた大河ドラマは後にも先にもこの作品だけです。その意味で非常にレアだし、個人的には非常に大好きな作品ですね。
ちなみに、このドラマの北条義時(松平健)の三男が北条重時で五男が北条政村です。2001年の大河ドラマ「北条時宗」ではそれぞれ平幹二朗さんと伊東四朗さんが演じられた役です。主人公・北条時宗の父・北条時頼(渡辺謙)は義時のひ孫という事になります。こういう実際の歴史と大河ドラマ作品のつながりは非常に面白いですよね。
1993年~94年放送第32作「炎立つ(ほむらたつ)」主演:渡辺謙&村上弘明(わたなべけん&むらかみひろあき)
奥州の覇者と呼ばれ、平安時代末期に東北地方に一大王国を築いた藤原家。その始祖・経清から初代・清衡、四代・泰衡までの興亡を描いた「炎立つ」も源平内乱時代が絡んでくるドラマです。
放送期間 :1993年7月4日~1994年3月13日
放送回数 :全35話
音 楽:菅野由弘
原 作:高橋克彦
脚 本:中島丈博
主 演:渡辺謙(1&3部)・村上弘明(2部)
主 人 公:藤原経清・清衡・泰衡(ふじわらのつねきよ・きよひら・やすひら)
平均視聴率:17.7%
現時点で1976年の「風と雲と虹と」(加藤剛主演)に次いで古い時代設定の大河ドラマがこの「炎立つ」です。3部構成で1部の主人公を藤原経清(渡辺謙)、2部が藤原清衡(村上弘明)、3部が藤原泰衡(渡辺謙・二役)が演じ、約130年にわたる奥州藤原氏の歴史を描いた、壮大なスケールのドラマです。
7月スタートの翌年3月終了という変則スケジュールの理由やドラマの詳細等については以下の記事をご参照ください。
このドラマの中でいわゆる源平時代が描かれるのが第三部「黄金楽土」。奥州藤原家の三代・秀衡(渡瀬恒彦)と四代・泰衡(渡辺謙)を描いた時代です。ここに源義経、頼朝などが絡んで奥州藤原家は滅亡への道を辿っていく・・という物語です。
勇壮で血沸き肉躍る名オープニングといい、硬派で壮大な脚本といい、大河ドラマの素晴らしさを存分に味わえる良作です。まだ見てない人には絶対のおススメ作です。
2005年放送第44作「義経」主演:滝沢秀明(たきざわひであき)
1966年の「源義経」以来、39年ぶり二度目となる源九郎義経主人公作品がこの「義経」です。
放送期間 :2005年1月9日~12月11日
放送回数 :全49話
音 楽:岩代太郎
原 作:宮尾登美子
脚 本:金子成人・川上英幸
主 演:滝沢秀明
主 人 公:源義経(みなもとのよしつね)
平均視聴率:19.4%
ジャニーズ事務所の人気アイドル、“タッキー”こと滝沢秀明さんが源義経を演じたこの「義経」ですが、放送開始時22歳で主演したタッキーはこのドラマで大河主演最年少記録を更新しました。それまでの記録保持者が同じく源義経役で主演した当時23歳の尾上菊之助さんだったというのもまた運命を感じますね。
石原さとみさんや上戸彩さんなどの人気者や、渡哲也さん、中井貴一さんといった大河主役経験者である大物俳優とをバランスよく配したキャストでしたね。タッキー&翼で主人公の滝沢さんと人気ユニットを組んでいた今井翼さんも那須与一役で出演して話題になりました。
源頼朝&義経の兄弟役は中井貴一さんと滝沢秀明さんだったのですが、特筆すべきはその子役。源頼朝の少年時代は池松壮亮さんで源義経役は神木隆之介さんでした。少年時代も成年期も凄い兄弟ですよね(笑)
尚、義経の子役だった神木さんはこの7年後、源義経の青年期以降を演じたのであります。
2012年放送第51作「平清盛」主演:松山ケンイチ(まつやまけんいち)
義経で源義経の子役を演じた神木君が成長した義経を熱演したのがこのドラマ、「平清盛」です。2017年現在における源平作品の最新作でもあります。
放送期間 :2012年1月8日~12月23日
放送回数 :全50話
音 楽:吉松隆
脚 本:藤本有紀
主 演:松山ケンイチ
主 人 公:平清盛(たいらのきよもり)
平均視聴率:12.0%
松山ケンイチさん主演で平清盛の生涯を描いた、「新・平家物語」以来40年ぶりとなる清盛主人公作品です。平均視聴率12.0%という数字は、2015年の「花燃ゆ」と並ぶ歴代大河ドラマ最低記録という不名誉な面が強調されがちな本作ですが、わたし的には近年の大河ドラマの中では出色の出来を誇る名作だと自信を持って断言します。
この平清盛に関しては、以下の記事において詳しく語っていますので是非ご覧ください。
[平清盛]面白いが低評価な名作大河ドラマ 脚本・キャストやOP
とにかく、このドラマを見れば視聴率の良し悪しとドラマの出来の良し悪しは何の関係もないという事を再認識できると思いますね。必ず将来的に再評価される作品です。
番外編:1986年放送新大型時代劇「武蔵坊弁慶」主演:中村吉右衛門(2代目/なかむらきちえもん)
1984年から3年間に渡ってNHKで放送された新大型時代劇、準大河ドラマと位置付けられているこの中にも源平物がありました。それが「武蔵坊弁慶」です。
放送期間 :1986年4月9日~12月3日
放送回数 :全32話
テーマ音楽:芥川也寸志
音 楽:毛利蔵人
原 作:富田常雄
脚 本:杉山義法、下川博、松島としあき
主 演:二代目中村吉右衛門
主 人 公:武蔵坊弁慶(むさしぼうべんけい)
とにかく、歴代の名作大河ドラマとそん色ない名作を誇る新大型時代劇の三作品。そのトリを飾ったのがこの「武蔵坊弁慶」です。
この作品についてもこちらの記事で散々語っていますので(笑)、良かったら見ていってください。
NHK新大型時代劇武蔵坊弁慶 よろきん、佐藤浩市、菅原文太、ジョニー大倉・・見事すぎるキャスト配役
NHK【武蔵坊弁慶】全話DVD発売記念!中村吉右衛門の「立往生」「安宅の関」「勧進帳」で号泣必至の名作時代劇
さらに、新大型時代劇についてはこちらの記事もご覧ください。
2019年は【NHK新大型時代劇】復活を【BS時代劇】か【土曜時代劇】枠で!“真田太平記”“宮本武蔵”“武蔵坊弁慶”の興奮を再び!
このドラマ、正式な大河ドラマの作品でないという事もあって一般的な知名度は今一つなのですが、素晴らしい作品であることは保証します。とにかく中村吉右衛門さんの勧進帳や立往生の場面は震えがくるほど素晴らしいです。同時に、涙なしでは見られない感動巨編ともなっています。とにかく見ましょう、見てみましょう。
なお、源平争乱期大河ドラマの歴代源氏方キャストについてはこちらの記事を、
大河ドラマの源頼朝・義経兄弟や武蔵坊弁慶、静御前、木曾義仲等の歴代俳優一覧
源平争乱期大河ドラマの歴代平氏や藤原氏、朝廷勢力のキャストについてはこちらの記事をご覧ください。
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