少し古いお話になりますが、2016年11月に早くも2019年の大河ドラマの題材と脚本家がNHKから発表されました。
取り上げる時代は明治末期から昭和時代にかけて。ストックホルムオリンピックから東京オリンピックまでの間の物語で、脚本家は人気作家の宮藤官九郎氏。宮藤さんは大河ドラマ初脚本となります。
主人公やキャストなどはまだ発表されておらず詳細は明らかになっていませんが、初のクドカン大河、そして33年ぶりの近現代大河ドラマとして大きな反響を呼んでいます。
山河燃ゆ、春の波涛、いのちと続いた昭和の近現代大河三部作
NHKからの2019年大河ドラマの制作発表に際して話題となった内容は主に二つ。
一つは今最も人気のある脚本家の一人でもある宮藤官九郎が脚本を務める作品となるという事。そしてもう一つは、2019大河の時代設定が明治から大正・昭和にかけての近現代物であるという事です。
これまでの大河ドラマの定番といえば、戦国時代と幕末でした。たまに源平時代やその他の時代もありましたが、近現代史は極希でした。近年でいえば「花燃ゆ」や「八重の桜」に見られるように、幕末期から明治にかけての物語は多数ありましたが、純粋に明治から始まって昭和39年まで描くというのは本当に珍しい取り組みであり、NHKにとっては冒険作といってもいいものとなるのは間違いないでしょう。
翌2020年には56年振りとなる日本での夏季オリンピック、東京五輪が控えているのを見据えてのオリンピックを絡めた近現代大河ドラマという側面もあるのでしょうが、クドカン作品であることも相まって、久々にインパクトの大きな大河ドラマ制作発表となりました。
そこで、これまでに制作された近現代を舞台とした大河ドラマを見てみましょう。ちなみに、幕末から始まって明治時代に至るという作品は除きます。となると、以下の作品がその近現代史大河ドラマに当たります。
放 送 年 作品名 時代設定
昭和59年(1984年) 山河燃ゆ 昭和時代
昭和60年(1985年) 春の波濤 明治時代~大正時代
昭和61年(1986年) いのち 昭和時代
今年2017年の「おんな城主 直虎」で56作目になる長い大河ドラマの歴史の中でもたったの三作品だけに過ぎません。2019年のクドカン大河で4作目(2018年は幕末を舞台とした「西郷どん」で決定済み)に過ぎず、しかも33年振りとなるという超レアな作品なのです。
五部作まで続かず・・視聴率低迷などにより「独眼竜政宗」で戦国大河へと回帰
上に述べた作品群を見てもらってお気づきになった方も多いのではないでしょうか。過去にあった明治以降の近現代を舞台とした大河ドラマの三作は、昭和59年から昭和61年の3年間で制作されています。もちろんこれは偶然3年間続けて偏ったというわけではありません。意図的にNHKがそうしたのです。
昭和59年の「山河燃ゆ」、昭和60年の「春の波濤(はとう)」、昭和61年の「いのち」が放送された三年間の大河ドラマは「近現代三部作」と呼ばれており、NHKが意図的に近現代を大河ドラマで描くというコンセプトで企画をたてた作品群です。NHKが打ち出した新機軸という事ですね。
この昭和59年からの3作は「近現代3部作」と今でこそ呼ばれていますが、当初のNHKの構想では5部作となる予定でした。しかし結果的には3部作で終わり、昭和62年では4年ぶりとなる戦国大河「独眼竜政宗」で原点回帰となる事となったのです。
五部作構想がなぜ三部作になったかという原因については複合的な要素が絡んでおり、これが原因という単純なものではないのですが、大きな理由の一つとしては視聴率の低迷が挙げられています。以下が三作品の平均視聴率です。
作品名 平均視聴率
山河燃ゆ 21.1%
春の波濤 18.2%
いのち 29.3%
テレビ界不況の時代と呼ばれる現在においては「驚異の高視聴率」といってもいい数字なのですが、当時の大河ドラマの基準としてみればこの数字はいささか期待外れの数字といえます。ちなみに近現代大河三部作の前年に放送された「徳川家康」の平均視聴率は31.2%であり、近現代三部作の翌年に放送された「独眼竜政宗」の平均は39.7%なのです。これを見てみると、やはり物足りなさが残るのは否めないでしょう。橋田寿賀子先生の「いのち」に関しては及第点ですが、この数字が出た時には既に翌年の「独眼竜政宗」は決定済みだったので致し方ありませんよね。
この過去の経緯を踏まえて見てみると、2019年の大河ドラマを近現代史にしたという事がなかなかの冒険であるという事がお分かりいただけると思います。
最強コンテンツが手掛ける東京五輪を舞台とした昭和史
2017年初頭の現時点では、まだ詳しいことは何一つわかっていない2019年のNHK大河ドラマ。
主人公が誰になるのか?そもそもドラマの主人公は実在の人物なのか?それとも架空の人物になるのか?主役は誰が演じるのか?
ドラマ受難の時代と言われる今のテレビドラマにおいて、なんだかんだと言われながら常に視聴率二けたをキープし続け、題材と脚本家を発表しただけでこれだけ話題になるのですから、やはり大河ドラマのブランド力、コンテンツ力はけた外れのものがあるといえるでしょう。
そんな最強コンテンツともいえる大河ドラマが昭和の東京オリンピック開催を描く2019年の大河ドラマ。33年前に当時としては超実験的ともいえる冒険をした「近現代大河ドラマ」は、平成の今の世代にどう受け止められるのでしょうか。
期待に胸を膨らませながらこれからの情報に注視していきたいですね。
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